タクティカル祓魔師の作戦記録   作:ゲルゲルググ

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お盆です。18日やけど


お盆……お盆?

 8月18だったか19日だったか。兎も角お盆の日(?)である。

 境対課や一部の職業意外は、ゆっくりとお休み気分な今日このごろ。

 

「ゲヘヘ、着いたぜ」

 

 俺チャンことミワシ隊第七隊長の楓呀刎々斬は、物凄い山奥にあるボロい温泉宿に来ていた。

 

 ………ん?あぁ、そこの君たち、おかしいな~って思ってるだろ。ミワシ隊に休みあんのかよってな。安心しろ、ちゃんと休暇はとってきた。ミワシ隊はアットホームな職場だからな。ん?休暇取るために誰にゴマ擦ったんだって?大きな声では言えないけど、白虹瑠璃って名前の人。あとウユセン。

 

 まぁ良い。取り敢えず中に入ろう。

 

「ヘイ大将!髄液ヤってる?!」

 

 死〜ン。何も返事が来ない。今回も外れか。まぁこんなわざわざ曰く付いてそうな宿を選んだのは俺チャンだ。だが、だがこんなの、あんまりじゃあないか!こちとらこの日の為に各地を歩き回って来たんだぞ!

 

 まあ、勝手に上がらせて貰うだけだけどね?無料で居座る温泉宿気持ち良すぎだろ!

 

「……いらっしゃいませぇ」 

 

 前言撤回だ、BBAがいた。俺チャンはマナーを守れるいい男。さっきの最低発言は忘れてくれ。

 

 

 

 

 

「ごゆっくりぃ」

 

 ほ〜ん、部屋も結構掃除が行き届いてて綺麗じゃん?窓から緑しか見えない事意外は充分じゃねぇの。

 

 いやダメだわ。こんなクソみたいな立地に立ってる事自体がダメだわ。

 まぁ取り敢えずコトが起きるまで適当に時間でも潰そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カポーン

 

「な〜んにも起きない。どうなってんのコレ?」

 

 黒コートをボディソープとシャンプーで綺麗にし、湯船に浸かりながら俺チャンは思う。何にも起きねぇ。

 

 そうだ、チミチャンガ達には言ってなかったな。俺チャンがわざわざこんな寂れた立地の悪い、如何にも潰れる寸前って感じの温泉宿に来たのは、とある噂を聞いたからだ。

 その名も、温泉宿失踪事件。どうやらこの温泉宿、立て続けに失踪事件が起きたみたいでな?それで誰も来なくなったんだとよ。可哀想にね。多分立地が一番の原因だと思うんですけど。

 

「( ´ー`)フゥー……気持ちよかった。ウチの温泉施設の2つ下ぐらいの気持ちよさだった」

 

 でもやっぱ、烏有先生の残り湯じゃねぇと駄目だな。肩こりが解消出来てねぇ。

 

 その後も、お出しされた割と綺麗な食事をモッシャモッシャした後、あっという間に夜の12時となった。暇だな。

 

「今日はハズレか?まぁ1週間粘るつもりだけどよ」

 

 さて、そんじゃそろそろ寝るか。っと前に、寝る前にコイツをスーッとするんだな〜。

 手のひらサイズの丸い板から生えたモフモフな淡い紫色の尻尾の塊。持ってきたコイツを顔にボフンとして息を吸う。

 

「スーッ……カァーッ!たまんねぇな。ミケくんちゃんと烏有先生のマリアージュ」

 

 烏有先生がモフッたミケくんちゃんの抜毛をセコセコ集めて作った甲斐があった。さて、気持ちよくなったし寝よう。そこで見ているお前チャン達もおやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………なんだか、風が騒がしいな。窓開けてなかった筈だが。チッ仕方ねぇな………開眼ッ!!!

 

「ん………?」

 

 ………わ〜すっごい見てコレ。下に連なる山々が見えるぜオイ。

 

「って違う!!!なんじゃこりゃァァァ!!!布団が吹っ飛んでらァァァ?!?!」

 

 よくわからんチミチャンガ達にも教えてやろう。俺チャンが寝ていた布団がいつの間にか俺チャンを乗せたまま空を吹っ飛んでいた。俺にもよくわからん。

 

 取り敢えず布団に潜って対策を考えよう。流石に誰もいない所でこんな高さから落ちたら俺チャンも死ぬ。

 

「クッソー。なんか持ってたっけな」

 

 取り敢えず持ち物を確かめようと布団を捲り……めく……め…ア゙ァ゙ン゙?!

 

『モッチャモッチャ』

 

 オイオイマジかよなんてこった。この布団界異だ。

 

「俺チャンの下半身美味しいか?美味しいだろうな。骨に気をつけろよ」

 

 じゃないとこうなる。

 

『繝斐ぐ繝」繝シ?!』

「ほーら言わんこっちゃない。まぁドンマイだな」

 

 俺チャンは布団の界異の内側から突き出た錫杖薙刀を引っこ抜くと、死んだってのにいまだ浮遊し続ける布団の上に仁王立ちをする。

 そんで何処に向かってんのかって感じで進行方向を見ると…なんてこった、沢山の布団が集合して蠢いてやがるじゃねぇか。ゴンズイ玉か?

 

「俺チャン集合体恐怖症なんだよね(大嘘)って流石にヤバァイ!」

 

 クッソあの布団玉、俺チャンに向かって大量の布団を差し向けやがったぜ。

 流石に牙を剥ける布団に群がられて体がミジンコになるまで食い千切るられるとか、そんなエロゲーみたいな事にはなりたくないんでね。

 

 俺チャンは目の前まで来た布団を真っ二つに斬り裂きながら跳躍。上の方にいた布団を突き刺しながら着地し、引き抜いた錫杖薙刀の刃のミネに、収納カプセルから取り出した忌火エンジンを装着させ、斜め下に向かって回転しながら勢いよく落下する。

 

「ヒャッハー!古臭い布団の在庫処分じゃァァァ!!!」

 

 エンジンから吹かされた忌火の推進力によってェ!布団は高速回転する刃と忌火で斬って焼かれる!派手な布団処分方法が完成しちまったなァー!これでイグ・ノーベル賞は俺ンもんだぜー!

 

 ってな感じにテンションを上げてるが、別にこの布団を全てカタすのが目的じゃない。周りから襲ってくる布団を捌きつつ、下にいる布団へキックしながら着地、そしてまた布団を捌きながらさらに下の布団に着地と、ドンドン高度を下げてく寸法よ。

 

「WRYYYYYYYYY!!!!!……ア?」

 

 チッ不味いな。布団共が統率を取り始めた。高さは……ギリギリか?

 

「まぁチンタラ出来ないからね、仕方ないね。スーパーヒーロー着地だ、行くぜ!」

 

 懐から取り出しますはコッパミジンコ。コイツの頭のスイッチを押して、すぐ後ろまで来ていた布団の群れに向かってブン投げる!

 

「あばよとっつァアツゥイ!!」

 

 イヤホントにあっついわ!爆発距離近すぎだろ!誰だそんな近くで爆発するようにしたバカは!俺チャンだわ!

 

 だが爆風によって、俺チャンの足場と化している布団ごと横に吹っ飛ぶ。このままこっちに来る群れから距離を離しつつ降下、途中でジャンプして物理法則を調節して無事着地だ。

 

「トゥ!ヘァーッ!」

 

 計画通りの高度でジャンプし、そのまま綺麗に着t――

 

「ッ…………スーッ、あ〜クソクソクソクソクソクソクソ。実戦向きじゃ無いだろコレマジで」

 

 地面に強打した膝をボキボキと伸ばす。最悪だ、マジで痛すぎる。やるんじゃ無かったぜあの無駄の無い動作の無駄な着地。

 

 つかよ、本当に何なんだあの布団の塊は。ちゃんと穢れで構成されてるっぽかったから界異なんだろうけどよ。

 もしかしてアレが失踪事件の本体?だとしたら絵面が酷すぎる。一応世界観はシリアス寄りなんだがね?

 

 まぁいい、本題に入ろう。正直言って初見の界異、しかも大群相手に無策で突っ込むのはやりたくない。

 

 ってな訳で、犠牲者に話を聞いてみる事にした。

 

「ピシュイン!ピコピコピコン!テッテレテッテッテーッテッテー!(効果音)精霊馬ー!」

 

 お盆なのでね、アレに喰われたのは無理そうだが、ここらで普通に死んだであろう人達に帰ってきて貰おう。コイツを方陣の上に置いてっと。

 え?どう見てもきゅうりで出来た人型ロボットに見えるって?そりゃそうとも、コイツの元ネタはトロイア・イポス。つまりはギリシャん所で有名な木馬だ。だから大丈夫なんだよね。

 

 それはそれとして茄子で出来たホワイトベースも置いておこう。木馬なんでね。

 

 さてと、こうこうこうして、後はコイツを南無南無っと読めば………出てきた出てきた、未練と言う名の加護によって、何時までも輪廻転生せず現世に留まり続ける霊体……幽霊。

 

「こんにちわ幽霊の爺さん、すこーし話をして貰ってもいいかな?」

『…………お主は、アレを祓えるのか?』

「あぁ、信じる者は救われるって聞いた事あんだろ?俺チャン、割とそう言うのは信じるタチでね」

『………いいだろう』

 

 そう言って、幽霊の爺さんは話してくれた。どうやらあのファッキン布団の群れは、元々ここらにいた付喪神だったって事。日本が第二次世界大戦するより前からずっと、ここらで人を喰らって魂を集めまくってたそうだ。

 そして爺さんは遠い昔にアレを祓おうとして出来ずに逃げ帰った祓魔師だと。

 

 マジかよ付喪神か。アイツら厳密には神になりかけの界異予備軍なくせに割と強ぇんだよなぁ……しかも喰った魂の数からして、既に神格化する一歩手前だろう。コレで信仰されてたら本格的に危なかったな。

 

 後はアイツの捕食方法を聞いた。やっぱり布団で挟んで消化吸収する感じらしい。ハードなエロ同人誌みたいだな。俺チャン純愛モノを中心にしたのしか描かないから、そんなにハードなのは好きじゃ無いけどね。

 

「よぉし良くわかった。ありがとな爺さん、俺チャン行ってくるよ」

『お主、本当にアレを祓えるのか?』

「もしかして不安してんの?俺チャンそんなに弱そうに見える?」

『……儂らの様なモノが見えるが故に、少なくとも手練れである事はわかる。だが、アレは祟神だ。人は……神には勝てぬ』

「いや、勝てるさ」

『何故それまで自信を持てる。アレは何人もの祓魔師をも喰らって来たのだぞ』

 

 俺チャンは知ってるからな。人は神を殺せる。

 

 ソレに……

 

「俺は、神を殺した事があるからな」

『ッ………!』

 

 跳躍する。

 きっと、あの幽霊の爺さんは俺をこう思うだろう。あらゆる国の、あらゆる時代に置いて存在したと言われる……神を殺す才能を持った人間――

 

『魔王……なのか、お主は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、俺チャン魔王じゃ無いんだけどね。

 

 オイオイそう怒るなよチミチャンガ達。別に神と言うか、祟神を祓った経験があるのは本当だって。

 だがアレは、スサノヲの写し身として作られてた本物の魔王とその他大勢で祓ったから、俺チャンだけの功績って訳じゃ無い。

 

 だが、あの爺さんは"俺を魔王かもしれないと疑った"。

 

「なら今から俺チャンは、神をも屠る魔王サマだ」

 

 風になびく俺チャンのカッチョイイコートの所々に、白い炎の様な模様が浮き出る。

 統率の取れた布団の群れが、ざまざまな方向から迫ってくる。

 

「空即是色、幾千の不浄、元品の無明、幾万の小乗」

 

 詠唱による擬似的な加護術式の構築。それを紡ぎながら、薙刀の刀身を撫で……黒い刀身が、白き輝きを取り戻す。

 

「奈落に謳うは六根清浄」

 

 一閃が、布団の群れの一部を斬り裂く。そして次の瞬間には、更に多くの布団が、複数の斬撃によって斬り裂かれる。

 

「無駄、無駄、無駄ァ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!アァァァヒィィィィィハァァァァァァ!!!!!」

 

 軽く新幹線の車両換算で17車両分程の長さにした錫杖薙刀を音速で振るい、迫りきていた布団の群れを悉く斬殺する。

 

 そうして全ての布団を斬り終え残心を行い、そしてすぐさま薙刀を変形させながら構える。

 

「おぉブッダ!俺チャン今から神をブチ殺すから許せ!んじゃ呆気なく死に晒せゴルルアァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 一瞬にして山をも両断する程巨大化した刃の一閃が、迫ってくる布団の群れを、その奥の本体であろう布団の塊を、真っ二つに叩き割った。

 

 こうして、クソみたいな神は原作を詰め込み過ぎた30分アニメ並みの呆気なさで死んだとさ、ちゃんちゃん。ほら見ろ、布団は落ち、囚われていた魂が空へ昇っていく。美しい……花は何処だ?手向けなければ…

 

 ん?そういやお前さっきから宙に浮いてないかって?良く聞いてくれたな、実際に空を飛んでる。

 だがついさっき癖で加護術式を解除したから今から落ちる。

 

「ブルァァァァァァァァァ?!?!?!」

 

 あぁクソやっちまったぜ!だがギリギリ着地可能高度で助かった!行くぜスーパーヒーロー着地だ!

 

 

 

 ヌゥン………ッ!(着地の音)

 

「……スーッ、あークソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ。フゥゥン…あ〜、咄嗟にやる着地じゃないっての。膝の骨折れた」

『……………』

「おう幽霊の爺さん。また会ったな」

『本当にお主は、魔王なのか?』

「いんや違う。俺チャンはただの仏僧だよ、髪はふさふさだけど。まぁ見ての通り、あの布団のゴミ束は無事お祓い完了だ。丁度朝だし、俺チャンは帰るよ。アンタも早く成仏しろよ。じゃないとお経読むからな」

 

 そう言って、俺チャンは黒く穢れた刀身に戻った錫杖薙刀を肩に担ぎ、その場を後にする。

 

『…………ありがとう』

 

 こうして俺チャンは、無事に失踪事件を解決して温泉宿に戻り、お金をちゃんと払って帰ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言うのが、あの居酒屋で話した笑えなかった話の全容だ。気に入ったかな日向くん」

「………貴方は、いつもそんなトンチキな出来事に立ち会ってるんです?」

「そんな事は無い。ないからその憐れみな目を向けるのは止めてくれ。俺チャンだって普通の夏休みを過ごしたい……」

「…………今度奢りましょうか」

「ありがとう日向くん、大好きだ、ハグしてもいいかな?」

「え、いや待っ」

「ありがとう」ハグッ

「………………」

「………………」

「………………………」

「………………………」

「………いやあの、コレいつまで続けるんです?第七隊長?第七隊長?」




お盆終わり!閉廷!解散!
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