タクティカル祓魔師の作戦記録   作:ゲルゲルググ

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前回の続きだゾ


グレイマン

 轟音、爆発。右翼を失いバランスを失った飛行機が傾き、墜落し始める。

 

「トラクション」

 

 筈であった。その男、ギデオンズ・グレイマンが足の爪先をトントンと床に独特なリズムで鳴らした瞬間、傾いていた飛行機が瞬時に水平と高度を保つ。

 

「警戒班……いったい…何が起きました…か」

『こちら警戒班。下から高圧縮された水がレーザーの様に放たれ、右翼を貫通しました』

「水…海上に……何かが…いる?」

 

 生首状態の祓魔警察官、アリアンデル・テスタロッサの会話を盗み聞いたグレイマンは、ポケットから不思議な形のトランシーバーらしき通信機器を取り出す。

 

「ハァイもしもしもし?いつものお偉いさんに鍵を開けるよう言っといてくれ」

『・―・』

 

 眼の色が変わる。

 

「テスタちゃん。仲間と一緒に飛行機をニホンの空港へ運んどいて」

「まさか…行くのですか……?ディアウスの…預言はまだ…」

「いや、多分ここが預言のピークだ。今までの経験則でしか無いが、これ以上未来を変えてくる事は無いと思う。術式を使う為のリソース不足か、或いは自分で設定した未来と現在の間が狭くなって介入出来ないのか知らないが、こういった絶好のタイミングに限ってアイツは放送を行わないんだ」

 

 そんな訳だから、頼んだぜ…と言った瞬間にはもう、機内に彼の姿は存在しなかった。恐らく、テレポーテーションで下へ降りたのだろう。

 

「全く……鍵がかけられた…今であっても、規格外な人…ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの警察官、そのアーマーかしてくんね?」

「あ、はい!どうぞ!」

「サンキュなー!」

 

 下からの追撃を警戒していた祓魔警察官が装備していたゴツい重装備のアーマー、O846型攻勢祓滅外装を譲って貰い、装着しながら急降下するギデオンズ・グレイマン。

 一瞬にして海面付近まで降り立つと、バックパックに備えられた反重力機構を起動。文字通り黒い海に仁王立ちする。

 

「さぁて何処から来るかっと思ってたら下から来るなっ!」

 

 ギュインッ!と真横に引っ張られる様に移動すれば、さっき立ってた海面が盛り上がり、30m程の円柱上の渦の塊が姿を現す。

 そして渦の先端が尖り、花が咲くかの如く6等分に渦が裂け広がれば、

 

 開いた口の中から覗く目が、グレイマンを捉えた。

 

「………美しい」

 

 対してこの男、興奮していた。

 

『谿コ縺呎ョコ縺呎ョコ縺呎ョコ縺呎ョコ縺呎ョコ縺呎ョコ縺呎ョコ谿コ谿コ谿コ谿コ谿コ谿コ谿コ谿コ!!!!!』

「おっとぉ、どうやら声も素敵みたいだな…!」

 

 日本のタクティカル祓魔師の上澄みレベルでも気圧されるであろう咆哮と穢れの重圧を真正面から受けても尚、ケロッとした様子で咆哮に耳を傾け…

 そしてすぐに、こちらも戦闘態勢を取る。バックパック上部に装備された2門のカラビナガトリングを回転させ、両肩とバックパックから伸びる4本の内の2本のサイドアームに装備された八連装加護ミサイルポッドを展開。両手には大型加護加速式レーザーキャノンソードを一丁ずつ装備し、その銃口を相手へ向けた。

 

ハザードクラス5(5号級)ユーマノイズ(界異)、リヴァイアサンでよろしいかな。そんじゃ……

 

 

 

シャル・ウィ・ダンス?」

 

 

 

 開戦。リヴァイアサンの口内にある目の様な器官から放たれた高圧縮の穢れの奔流と、O846型攻勢祓滅外装の加護ミサイル、加護ビーム、祓串(ペグ)がぶつかる。

 

 勝ったのは、更に1段階出力を上げたリヴァイアサンの穢れ。

 

「ちぇっ」

 

 すぐに反重力機構で横に回避。そのまま穢れのブレスは巨大な飛沫を上げながら海を割った。

 

「スゲェなオイ!アレ真面目に喰らって耐えられるの私とコクマーくらいだろ!ゾクゾクして来たな」

 

 再度放たれた穢れの奔流を回避しながら、加護ビームと加護ミサイルを発射。同時に相手を観察する。界異祓滅には欠かせない手段だ。

 先ずは、日本から輸入したアマテラスの加護がふんだんに盛り込まれた加護兵装をも防ぐ、その穢装出力。

 

 ――ま、あの体を見るに、海が鎧の役割を担ってるんだろうな。

 

 今の状況を見ればわかるが、界異が現れるのは陸だけではない。だが陸と違うのは、海中の境界異常に対処するのが難しいと言うこと。

 水中は動きが制限され、必然的に死亡率も跳ね上がる。水中での制限を軽減する祓魔術もあるにはあるが、浅瀬なら兎も角、深海に出来た境界異常の対処が簡単に出来る筈もなく。

 

 そうして海は、98%が穢れで汚染された。そしてこの界異は、どうやら穢れの塊と化した海水を操るらしい。

 

 ――アマテラスの加護も有効打無しか…流石にクラス5のユーマノイズだな。祓串は水流に流され、加護ミサイルとレーザーは高濃度の穢れを浄化し切れない!今まで祓滅出来なかったのも納得だ…

 

「全く、心が躍る!」

 

 もう一度放たれたブレスを避け、ミサイルを放ちながら吶喊する。観察して分かったのは、あの胴長の体は全て海水であると言うこと。であるならば、何処かに本体がある筈だ。

 どうやって見つけるかは……海水では無い部分、つまりあの口の中にある目の様な器官が何処から伸びているのか分かればいい。

 

「見つけたぜ箱入り娘」

 

 極彩色の瞳を輝かせながらレーザーとミサイルをリヴァイアサンの口と海面の丁度間、まるで隠れる様に浮かぶ黒い球体状の核へ向けて全力斉射。ミサイルが着弾し、海水が散る。

 

 次の瞬間、己の姿がバレたのを悟ったのか、核の周りの海水がうねり、複数本の水の触手がグレイマンに殺到し始めた。

 

「おぉっとォ!コレはまた……楽しい事を…………してくれる!」

 

 四方八方から迫る触手の間を潜り抜け、急加速、急旋回、減速からの急降下、水飛沫を上げながら水面スレスレを走行しつつ急停止、前から来るブレスを避けるために後ろから来る触手を避けながら斜めにバック走し、ミサイルで正面から追いかけて来る触手を迎撃しながらリヴァイアサンの周囲を旋回し、ノーロックでレーザーを照射して核の周りの海水を補填させるより早く蒸発させ削り取っていく。

 

 そして、唐突に急上昇し前後から迫っていた触手同士を激突させる。その一瞬の間に、レーザーで削り続けた部分目掛けてミサイルを放ち、加護の物量によって見事に核を露出させた。

 

「コレでフィナーレだっ!」

 

 2門のガトリングから祓串を放ちながら急接近。レーザーキャノンソードをブレードモードに変え、ハリネズミの様になった核を2本の加護ブレードで斬り裂く………

 

「……ッ!」

 

 筈だった。まるで水の様にブレードが核を掻き分けていくのを見るまでは。

 

 ――コイツ、土壇場で霊体を水と同化させやがったな!

 

 そして思い出す、飛行機ギロチンで殺したあの呪詛犯罪者の縁起の事を。

 

「そうか、あの改造縁起はテメェの分体だったか」

 

 すると、核の表面に横一線の割れ目が広がり、パックリと目が開く。その瞳はグレイマンを捉えると……嘲笑うかの様に歪んだ。

 

「チッ……」

 

 すぐに反重力機構を稼働させ距離を離すが、先程よりも圧倒的に数が多い触手が殺到し、やがて1本の触手がバックパックへ突き刺さった。

 突き刺さった触手は高速回転し、穢れの侵食耐性がある金属で出来たバックパックを物理的に掘り進み、内部の精密部分を破壊する。こうして反重力機構が機能停止したO846型攻勢祓滅外装に次々と触手が刺さり始めたのを見たグレイマンは、躊躇無く外装を脱ぎ捨て海へと飛び込む。

 

 そこに追い打ちとばかりにブレスが放たれ、巨大な水飛沫が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっき書いた通り、今の海は穢れの塊であり、たとえ境界対策課の狩衣を着ていたとしても一分も持たない濃度である。

 

「……いや遅すぎだろ、何時まで話してんだ」

 

 つまり狩衣を着ずに平気で海中にいるコイツは、少なからず人間では無いだろう。

 

「失敬な事書かれた気がするな。私はれっきとした人間だが……つか、お偉いさんは本当に何時まで――」

 

 その時、ポケットから独特なメロディーが鳴る。そこから絶対に入らない筈の大きさの独特な形のトランシーバーを引っ張りだし、スイッチを押す。

 ザザッと音がした後に、快活な女性の声が水中であるにも関わらず鮮明に響いた。

 

『こちらマルクトォ!聞こえてるかギデオンズ・グレイマン!もうやられちまったか!それは朗報だギャッハハハ!!!>』

「煩いな何処で憶えたそんなヘッタクソな話し方」

『んだとコノヤロー!アタシの何処が――』

「いいから、人間の物真似は私意外にやれ。そんで…

 

早く鍵を開けろ。窮屈で仕方が無い」

『・・・了解>クリフォトシステム第一層をアンロック>身体稼働速度・筋力活性限界・ギデオンズアイ(3つ眼)の1秒間の開眼を許可します>』

 

 最初のハッチャケ具合は何処へやら、機械的な女性の声が響き渡る。そして何も発さなくなったトランシーバーのアンテナの先端を己のデコへ向ければ、そこに浮かび上がった鍵穴の様な模様に向けアンテナから白い光が伸び……

 

 光が鍵穴へ吸い込まれると同時に、()が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リヴァイアサンは、右翼を貫いた飛行機が去った方向へ口を向け吸水器官に海水を装填する。

 そしてまだ遠くに小さく見える飛行機へ向け超圧縮した海水を放とうとし、

 

 ぐるりと向きを変えて海面へ放った。

 

 もう一度高く上がる水飛沫。抉れる海面。今度はじっと着弾地点を見つめる。

 界異はこの世のモノでは無いが、その本質は動物などと似通っている。つまりコレは、いわゆる野生の勘と言ったモノなのだろう。本能による防衛行動。だがソレを行っても尚、リヴァイアサンの中で響く危機感のサイレンが止まない。

 

 何故なら、不自然に抉れたままの海面に、その男は立っているから。

 その男は、ついさっき海に落ち、そこに更に追い討ちをかけて仕留めたと思っていた男だった。

 

 唯一その時と違う所があるとすれば、ソレは男の頭上に虹色に光るヘイローが浮かんでいる所であろう。

 

「第二ラウンドだぜ、阿婆擦れ女」

『菴輔〒縺セ縺?逕溘″縺ヲ繧薙□繝?Γ繧ァ??シ?シ――』

 

 ドパァンッ!!!

 

 一瞬だった。グレイマンの姿を見て直ぐに、口に海水を集め始め瞬間にはもう、物凄い破裂音と共に胴長の水の体は跡形も無く弾け飛んでいた。

 

 ヒビ割れた核の瞳に、困惑が浮かぶ。今の核は、霊体を水と同化させどんな攻撃をも透過させる無敵の状態である筈なのだ。

 瞳が下を向けば、拳を振りかぶった状態の男がいた。感知出来なかった。立った状態から急接近し、拳を振り抜くまでの間を、リヴァイアサンは認識する事が出来なかったのだ。

 

 生物的生存本能が鳴り続ける。死なない為に、核は海水を引き寄せ急造の丸い体を作り上げた。

 超圧縮したブレスを一発放つ為だけの無様な体。ソレを見たグレイマンは、笑みを浮かべる。

 

「祓う前にリベンジと行こう。最初は押し負けちまったからな」

 

 まともに喰らえばどんな祓魔師でもどれだけ形代紙を持っていようとも一瞬で死に至るブレス。迎え撃つは、自然体験で構える男。

 

『谿コ縺吶繧ゥ繧ゥ繧ゥ繧ゥ繧ゥ』

 

 圧縮が終わり、リヴァイアサンは目の前の男へ向けて渾身のブレスを放つ。

 

 

 対する男は

 

 

 顔が縦に割れ

 

 

 醜悪な青い肉に埋もれた

 

 

 第三の眼を光らせた。

 

 

 

 

 

 カメラのフラッシュにも似た短い閃光。それはリヴァイアサンのブレスを貫き、核を焼き祓った。

 虹色のヘイローが無くなり、元の顔に戻ったグレイマンは、後ろで黒い飛行物体の上に立っている、黒い軍服を纏った白い少女に顔を向ける。

 

「来てたのかよ、マルクト」

『はい>アナタの戦闘データを記録しなければならないので>』

「あっそう。じゃあ私あの飛行機に戻るから。報告はよろしくな」

『既に完了しています>・・・…テメェも国境問題に気を付けて日本を観光するんだぜぇ?>』

「だからそれヤメロ。まだエクソシストシャークの俳優のが上手い。見た目に全然似合ってないし」

『・・・そうですか>』

 

 そう言いながら、次の瞬間には海上から姿を消した。マルクトと呼ばれた女性は、見えなくなった飛行機を追って空を見上げ……やがて静かに去っていく。

 

『ギデオンズ・グレイマン・・・宇宙から帰ってきた男・・・早急な最適化を実行>一刻も早く・人類の可能性にならなければならない>』




私のカノンにおけるタクティカル祓魔師最強キャラの回であった。最強キャラって良いよね。

所でタクティカル祓魔師要素何処だよ
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