1つだけのセーブスロットで最高のハッピーエンドを目指すTS転生者のお話 作:名無しのRさん
目が覚めるとそこは……砂漠だった。
なにを言っているのか分からないと思うが、俺も何が起きているのか全く分からない。なぜ自分の部屋で寝たはずなのに目が覚めたら砂漠に居るんだ。何ここ鳥取砂丘?もしかして俺は夢遊病なのか?いや、今まで俺にそんな症状が出たことはないし、そもそも俺は道民だ。本当に夢遊病で北海道から鳥取まで歩いてきたのなら、俺は自分が人間なのか疑ってしまう。さすがに今まで人として育てられてきたのだから、自分のことは人間だと信じたい。というか、もうそこまで来たら俺じゃない誰かが乗り移ってるだろ。いやだとしても目を瞑りながら家から新幹線まで向かう自分なんて考えたくもないわ。だって傍から見たら、「私この道通いまくってるので、目を瞑りながらでも新幹線に乗れますよ」アピールしてる人みたいじゃないか。なんだよそのパフォーマンス。勝手にやってろや。
……冷静に考えればこんなこと言ってる場合じゃないな。目の前の光景と状況が意味不明すぎて気が動転していた。
とりあえず、何か分かることがあるかもしれないしここら周辺を見渡してみよう。
「えーと、前見て砂、横見て砂、後ろ見て砂、上見て青空。……ハハッ、雲ひとつねえや」
どうやら俺の人生はここで終わったみたいだ。振り返って見ても後悔しかない人生だったが、どうせ死ぬなら最後くらい巨乳の可愛い女の子と話したかったな…………なんて、さすがに諦めるにはまだ早いだろう。
確かにどうしようもない状況かもしれないが、俺はこんなんじゃ挫けないぞ。自分で言うのもなんだが、メンタルはかなり強い方だと思っている。
……とは言っても、一面砂だらけのこの場所で何か出来ることかぁ。
「う〜〜〜〜〜ん、よし、とりあえず歩くか!もしかしたら、誰かに会えるかもしれないしな!」
ただ何もせずに死を待つよりかは、絶対にマシだろう。それに、今はあまりにも情報が無さすぎるしな。近くに建物とかあるかもしれないし、そこからここが何処なのかとか考えよう。
そう思い、早速行動に移そうと歩を進めようとした瞬間、足になにかが当たる感覚がした。
「ん?なんだ……って俺のスマホじゃん!」
まさかの進展である。そういえば青空に向かって現実逃避してたせいで忘れてたが、真下の確認をしてなかったな。……今考えればめちゃくちゃ馬鹿だな。
起きた時に気づけや。なにが夢遊病だよ。なにが鳥取砂丘だよ。そのせいでワンチャン俺のスマホ見逃してたぞ。
「と、とりあえずスマホ開く……か…………は?」
そこには、金髪サイドテールで淡い青色の瞳をした、
「は、え、待って、は?え、これ俺?い、いや確かにいつもより声高いなーとはちょっと思ってたけどさ、え?俺女になってんの?と、というか、この天使の輪っかみたいのもしかしてヘイロー?つーことはここアビドス砂漠?……も、もしかして俺、……ブルーアーカイブの世界に来ちゃった?」
拝啓、お父様、お母様。どうやら私は、ブルーアーカイブの世界に転生してしまったようです。……女の子の姿になって。
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ふ、ふぅ……20分くらいしてようやく落ち着きを取り戻してきたぞ。
ひとまず、状況の整理をしよう。
まず、俺はブルーアーカイブの世界にTS転生してしまったみたいだ。
時系列に関しては、先生がまだ居ないということしか分かっていない。
スマホでシャーレのことを検索にかけても、1つもヒットしないし。
それと、スマホの他にSMGが1つ埋まっていた。俺が使いこなせるかは置いといて、銃があるだけでもありがたい。この世界で銃を持たないことは死に等しいからな。
あとは、スマホを一通り確認したが、どうやら前世のスマホのデータは全て消えていて、その代わりに『卯月コトハ』という今世での俺のデータが入っていた。……まぁ、モモトークも友達0人だし、名前と、あるメール1件ぐらいしか有益な情報が無かったのだが。
でだ、このあるメール1件というのが1番重要なのだが……簡潔に言ってしまえば、『貴方はセーブスロットを扱えます。辛い役回りになるかもしれませんが、どうかこのキヴォトスの未来をよろしくお願いします。連邦生徒会長より』とのこと。
ぶっちゃけよく分かっていないが、面倒事に巻き込まれたのは分かる。
でも、なんで俺をアビドス砂漠に転生させたんだ?連邦生徒会長が失踪した話はまだ出ていないし、俺を重要視しているなら連邦生徒会所属に置かない理由が分からない。確かに、アビドスは連邦生徒会を嫌っている節はあるが、それでも無所属にする必要まではないような気がする。それに俺は先生って立場で呼ばれた訳じゃないみたいだし……セーブスロットって言うのもまだよく分かっていない。
う〜ん、あまりにも情報が無さすぎるな⋯。とりあえず、このセーブスロットとかいうものが俺の神秘ということなのだろうか?しかしセーブスロットつってもどうすりゃいいんだこれ。頭の中に出てくるって訳でもないし、う〜ん⋯呼んだら出てきたりすんのかな。
……試すだけ試すか。
「セーブスロット、オープン!…………なんて、安直すぎブオン!!うおぉ!ほんとに出た!」
俺の目の前に、四角いホログラムでファイル1と書かれた画面が現れる。
「あーこれ、RPGとかでよく見るやつじゃん。⋯ファイルが1つしかないのは初めて見たけど」
俺がファイル1の部分を押してみると、空のファイルに
『卯月コトハ アビドス砂漠 00:00:32』と刻まれた。
「まんまRPGじゃんか。もしかしてもう1回押すと⋯『このファイルをロードしますか?』やっぱりこう言うことかぁ⋯」
とりあえず『いいえ』を押して、情報を整理する。
つまり、この力は簡単に言ってしまえば『やりなおし』が出来るようになるってことか。連邦生徒会長の未来をよろしくって言葉も、この力を使ってより良い未来を作り続けてくれってことなのだろう。⋯⋯ただなぁ。
『このセーブスロットにデータを上書きしますか?』
『 はい いいえ 』
はいの部分を押す。
『ここでそのコマンドは実行出来ません』
この通り、何故か上書きで保存することが出来ない。何か条件でも必要なのだろうか。もしロードすることになったらここから始まるのは少し面倒臭いが⋯まぁ、今はとりあえず放置でいいか。
大まかだがセーブスロットについても分かったことだし、この後のことを考えるとする。
ここがアビドス砂漠と言うことは分かっているから、目指すはアビドス高等学校だな。まだ先生が来て居ないし、きっと今もヘルメット団もといカイザーに襲われているのだろう。連邦生徒会長にも、未来をよろしくって頼まれたし、せっかくブルーアーカイブの世界に来たんだ。全員が笑いあって幸せに暮らせる、三流映画と罵られるようなハッピーエンドを迎えようじゃないか。
そんなことを心の中で宣言していると、どこからか声が聞こえてきた。
「あれ?なんでこんなところに人が……もしかして迷子になっちゃったのかな?ホシノちゃん!話を聞きに行こう!」
「ちょ、ちょっと!1人で突っ走りすぎです!ユメ先輩!」
⋯⋯まじかぁ。まさかの過去おじとユメ先輩の時系列かよ。もしかして、俺が先生として呼ばれなかった理由ってこう言うことなのか?まぁ、確かに全員幸せなハッピーエンドを目指すには都合はいいけど⋯さすがに初っ端から未来の知識が使えないのはだいぶキツいなぁ。
はぁ、とりあえず話をしないと進まないか。それに、1人で砂漠を永遠と彷徨い続けて餓死する⋯みたいな未来は無くなったしな。それだけで儲けもんだろう。
「こんにちは!私はアビドス高等学校で生徒会長をやってる梔子ユメだよ!気軽にユメって呼んでね!ほら、ホシノちゃんも!」
「はぁ⋯⋯アビドス高等学校の副生徒会長、小鳥遊ホシノです。それで、なんで貴方はこんなところに1人で居るんですか?」
そう言いながら此方を鋭い目付きで睨んでくるホシノ。
ん〜やっぱり警戒されてるな。そりゃ、普通に考えてこんな辺鄙な砂漠に1人で突っ立てるやつがいたらそうなるよな。というか何一つ警戒してないユメ先輩がおかしい。そんなんじゃ悪い大人に騙されちゃうよ⋯おじさん心配になっちゃう⋯。
とりあえず本当のことを言えるわけないし、それっぽい言い訳でも並べとくか。
「えっと⋯実は色々あって学園に通えなくなちゃって⋯その、路頭に迷ってたらいつの間にか此処に⋯」
いや無理だわ。馬鹿なりに頑張ってみたけど普通に怪しすぎるわ。つーかこの状況から納得出来る理由出せるやつとかいねえから。
「⋯⋯そうですか、それは大変でしたね」
あまりにも怪しすぎてとうとう呆れられるまで行ってしまった。⋯そのとりあえず視界に入れといてやるかみたいな顔やめて!すっごい心に来る!
いやでもこのままだと真面目に不味いな。俺のみんなハッピーだよ大作戦が開始5分で終わってしまう。何かここから巻き返せる逆転の一手は⋯⋯そ、そうだ!ユメ先輩!ユメ先輩ならきっとここから助け舟を出してくれるはず⋯⋯そういえばさっきからユメ先輩喋ってなくない?
も、もしかしてホシノ以上に俺に呆れてるのか?さすがのユメ先輩でもあの言い訳は無理がありすぎたか?いや、絶対そうだ。だってさっきから俯きながらプルプル震えてるし、なんか俺に抱きついてきたし、そのまま大声で泣き始めるし⋯⋯はい?どゆこと?
「そんな大変なことになっていたなんて⋯⋯今までよく頑張ったねぇぇぇ」
「え?え、え?」
「ユ、ユメ先輩!?本当ですかそれ!?」
「私たちに出来ることがあったらなんでも言ってねぇぇぇ、絶対助けになるからぁぁ」
「ユメ先輩!!!?」
う、嘘でしょ⋯。い、いや、確かにその行動は助かっているけどさ、さすがにここまで人を疑うことを知らないのは心配になるぞ⋯。本当に自分で言うのもなんだけど、俺のここに居た理由だいぶ薄っぺらいし怪しさしか感じないと思うんだけど。俺だったら絶対それを信じて、挙句には涙を流すなんて出来やしないんだが⋯。
まぁ、ここから俺が一緒に居てやればいいか。俺が見てれば悪い大人に騙されることは阻止できるし。行く宛てがないとか、借金の返済を手伝うとか言ってアビドスに連れて行ってもらおう。良心を利用しているみたいで心が痛いが、ユメ先輩を助けるためだしな。仕方ない。⋯そう割り切らないと罪悪感で吐きそう。悪い大人ですまない⋯もっといい理由を付けれたら良かったんだけど⋯。
「そ、それじゃあ、その⋯どこにも行く宛てがないので少しの間だけ匿って貰えませんか⋯?も、もちろん何か困っていることがありましたら、全身全霊でお手伝いします!」
うぅ⋯ホシノがすんごい目つきで睨んでくる⋯⋯こんな若い子にその顔されるのはだいぶ心にくるんだって⋯
「⋯⋯⋯はぁ、どうします?ユメ先輩」
「ふっふっふっ⋯そんなの決まってるでしょ?ホシノちゃん。⋯えっと、君の名前は?」
「え?あ、う、卯月コトハです!」
「そっか!いい名前だね!それじゃあこれからよろしくね、コトハちゃん!」
「少しでも怪しい素振りを見せたら殺します」
「⋯!あ、ありがとうございます!」
なんだか物騒な言葉が聞こえてきたような気もするが、とりあえずアビドスには行けそうで安心した。やっぱ人ってあったけぇよ⋯。
んじゃ、次の目標は交友関係を深めることかな。ユメ先輩は大丈夫だと思うけど、ホシノは俺を怪しい人では無いと認識したんじゃなくて、ユメ先輩に引くつもりが無さそうだから俺を匿うことに了承しただけだと思うから、まだまだ警戒されていると思う。まずはその警戒をとくことが最優先かな。
「それじゃあコトハちゃん!まずはアビドス高校に行くよ!」
「はい!分かりました、ユメ先輩!」
「あとこれから一緒に行動するんだし、言葉も崩しちゃって大丈夫だよ」
「分かった!ユメ先輩!」
ユメ先輩が最高の先輩すぎるよぉ〜。正直、敬語は堅苦しくてあんまり好きじゃなかったからすっげー助かる。この調子ならユメ先輩との交友関係については問題なさそうかな。
「よくそんなにもすぐに馴染めますね⋯」
「大丈夫、ホシノちゃんもすぐこうなるよ!」
「⋯ちゃん付けなんですね」
「も、もしかして嫌だった?」
さ、さすがに初対面でちゃん付けは早すぎたか?
「⋯⋯私、貴方に学年伝えていないはずなんですけど」
「?何言ってるのホシノちゃん。私、1年生だけど同じ学年でしょ?そんなの見たらすぐ分かるよ!」
本当に何を言っているのだろうか。この時のホシノの学年は1年生ってことは誰でも分かると思うのだ⋯⋯が⋯⋯⋯あ〜〜やっべ、完全にやらかした。そうだった、卯月コトハじゃなくて俺が勝手に知っているだけなんだった。
つーことは今ホシノにはどう伝わっているんだ。えっと⋯⋯⋯⋯あれ?これもしかして俺やばい?
「そうですか。私たちをひと目見て、ユメ先輩には先輩呼びで、私にはちゃん付けと」
「あ、いや、違うんだよホシノちゃん。これは、えっと、誤解というかなんというか」
「問答無用です!一発殴らないと気が済みません!!」
「あ、危な!ご、ごめんってホシノちゃん!お願いだから許して〜〜!」
「ん〜後輩2人が仲良さそうで先輩嬉しいよ!」
このあと5分くらいして普通に捕まった。あの時のゲンコツの痛みは、生涯忘れることは無いだろう⋯
どうも、作者です。
コトハちゃんには頑張ってもらいたいので、とりあえずいっぱい幸せにします。