「いやぁ〜・・・アヤネちゃん、ラーメン奢ってあげるから機嫌を直してくれないかな〜・・・?」
「別に、怒ってません…」
どう見ても怒ってる気がするんですがソレは…
今の言葉が真実で怒ってないにしてもいくらか機嫌は悪いよね、間違いなく。
そんな訳でアヤネの機嫌を直しつつ食事をしに来た私達、例の如く場所は柴関ラーメンです。
というかここ以外にどの場所に行けば良いんだって話になるからね…まぁ、私が知らないだけで他にもあるのかもしれないけど。
「はい、お口を拭いて…よく出来ましたね〜☆」
「赤ちゃんじゃありませんから…っ!!」
みんなから過度に世話を焼かれているアヤネを傍目に私は一人で頭を悩ませます…
いや、なんで悩んでるのかって言われるとこの後に起きるであろう出来事で私はどうするのが正解なんだっていう理由があるからなんだけど…
この後にこの店に来るであろう人物が…グループ?が割と私がどうこう出来るレベルの人達じゃないっていうか、下手に手を出せないっていうか…
「…そこは別に何でも良いんだけどさ、なんでまたウチの店に来たの…?」
…静まり返る店内、返事は一言も返ってきません。
あゝ可哀想なセリカ…ひとえに君がいじりがいのある性格なせいだと思うけども…
いや私はいじってる訳じゃないんすよ、ここで気の利いた答えを返す事が出来たら私はコミュ症でも何でもないただのTS少女だった訳でぇ…
「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」
「ん…ふぁい…」
「…あっ、あのぅ…」
ねぇ、来ちゃった…絶望的な意味で。
…彼女はハルカ、私がさっきまで悩んでた原因となるグループに所属する一人の生徒…
そして私がコミュ症なら彼女もコミュ症、タイプは違えど割と同類だったりします。
私より!!ハルカの方が!!コミュニケーションはよっぽど取れるけどね!!
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「…ぁ、えと…こ、ここで一番安いメニューって…おいくらですか…?」
入店直後にコレを聞いてくるお客様、多分人生で一度見るか見ないかレベルだと思う。
まぁ、席に座っちゃった後に何も頼まずに店から出て行くとか割と無理ゲーなのでその質問は割と正しい行動ではあるんですけども…
それはそれとしてコレだけ聞いて店から出て行くのも割と気まずいと思うけどね?
「え〜・・・一番安いのは…」
「580円の柴関ラーメンです!この店の看板メニューなので、美味しいですよ!」
「ぁ、ありがとうございます!!」
「えへへっ、何店も回ってや〜っと見つかったね〜・・・600円以下のメニュー!」
「ふふふ…ほら、何事にも解決策はあるのよ」
「さ、流石社長…何でもご存知ですね…」
「はぁ…」
うわ〜ん!お客様が多すぎます!このままではアリス、スネイルみたいになってしまいます!
と、存在する記憶のセリフをフルで言った通りにぞろぞろと店内に入ってくる生徒達…
めっちゃくちゃに見覚えのある方々です、例のBGMが似合いそうな方々です。
そう、つまり…便利屋69!!…ぇ、68だって?
…ァ〜・・・ッスゥ…ハイ、知ってましたけど?
「4名様ですか?お席にご案内しますね」
「ん〜ん、どうせ1杯しか頼まないし大丈夫」
「1杯だけ…?…でも、どうせならごゆっくりお席へどうぞ、今の時間帯は空いてる席も多いですし」
「お〜、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあせっかくだしお言葉に甘えて〜・・・ぁ、我儘のついでに箸は4膳でよろしくね?」
「4膳って…まさか、1杯を4人で…!?」
今日の便利屋は余裕がないので、ラーメンを1杯だけ頼んじゃいます!!
…うん、少しくらい後々の事を考えたお金の使い方をした方が良いって事だね。
「ごっ、ごめんなさい!貧乏ですいません!お金がなくてすいません…!!」
「ぁ、い、いや…別にそう謝らなくても…」
「いいえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!つまりは虫けらにも劣る存在…虫けら以下ですいません…!!」
私も虫けら以下…ってコト!?
いや『も』じゃないな、私『は』虫けら以下だよコレ、ハルカは虫けらなんかじゃないよ…
嫌だなこのミカ魔女構文的な何か、なんで基準が虫けらなんですか…?
虫けら虫けら連呼するのなんて何処ぞの伝説のスーパーサイヤ人さんだけで良いんすよ…
「はぁ…ちょっと声デカいよ、周りに迷惑…」
「お金がないのは罪じゃないよ!胸を張って!」
いやいくら何でも胸は張りづらいと思いますよ?
お金がないのに胸を張れる人は本当に少数しかいないと思いますよ…えぇ、何処ぞの岩神さんとかえろうイケちょるスーツの人とか…
いや改めて考えてみると結構いるな、じゃあなんとか胸を張って生きろ、うん。
「へっ…はい!?」
「そもそもまだ学生だし、それでも小銭を掻き集めて食べに来てくれたんでしょ?そこが大事なの!」
違うんだセリカ、微妙に…微妙にズレてるんだ…
君の言ってる事は確かに正しい事なんだけど、この子達は色々と特殊なんだ…!!
どれくらい特殊かって言うとここでの対応ミスでキヴォトスが滅ぶ可能性が出てきちゃうってくらいには私も手が出しづらい案件なんだ…!!
アビドスしかり便利屋しかり、あまりにも物語に与える影響が大きいグループだからなぁ…
それに加えて少数精鋭なんですもの、些細なミスが文字通り命取りになっちゃうんだよ。
そんな訳で口を挟めないのが今の私の状況です、ビビリとか言うなし〜!?
…本音を言うならこの空間にいる人が多すぎてちゃんと話す事が出来る気がしないからです、ハイ。
というか今の時点で私が便利屋に対して起こせるアクションとか限られてくるし…
この後の事も知ってはいるけど、それを暴露した所でその事を知っている私がただただ意味不明な人へと進化していくだけですしお寿司…
例のヘルメット団の件もぶっちゃけやらかしたなって思ってるんだもん、下手に動くと逆効果でしかないから私はとても困っているのです!!
「もう少し待っててね、すぐに持ってくるから」
ぁ〜・・・行っちゃったよセリカっち…
明らかに色々と誤解を抱えたまま店の奥に行ったけど、コレは正しく物語が進んでいる証拠なので私は敢えてスルーします…
…それじゃ私は耳をすませばしようとしますかね、便利屋の会話を盗み聞きするために。
「…何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」
「まぁ、私達いつもはそんなに貧乏じゃないし…強いて言うなら今回のコレも大体はアルちゃんの…」
「アルちゃんじゃなくて社長、でしょ?」
「もう仕事は終わってオフだし〜?それに、社長なのにラーメン1杯も奢れないの〜?」
ちくちく言葉やめてあげなよ、可哀想でしょ!
事実を並べられると人っいうのは傷付くものなんだよ!!…えっ、まぁ、うん、事実であるし?
600円しないラーメン…4杯頼んで2400円、4人分の食事代としては安い方だしなぁ…
「今日の襲撃任務に投入する人員を雇うために、ほぼ全財産使っちゃったし…」
「ふふふ…でも、こうしてラーメンを口にする事が出来ているのだからコレも想定内なのよ」
そんな『計画通り』みたいな顔で言っても説得力がないというか、ギャグにしか見えないというか…
まぁ、それは私が全部知ってるからそう見えるだけで傍から見ればとんでもなく顔が良い人がカッコよく部下に…カッコいいかな、コレ。
「たったの1杯分じゃん、少しは後先を考えてせめて4杯分くらいは用意しておこうよ…」
「ぶっちゃけ忘れてたんでしょアルちゃん、夕飯代取っておくの忘れてたんでしょ?」
忘れてたんだろうなぁ…アルちゃんだし。
大抵の事は『だってアルちゃんだし』で納得できちゃうの、あまりにもアルちゃんが過ぎる…
そこが彼女の良い所ではあるんだろうけどね、いやはやもう少し後先を考えようぞ…
「…アビドスは、全財産を叩いてまで人を雇わなきゃいけない程危険な連中なの?」
「多分アルちゃんもよく分かってないと思うよ〜、だからビビって保身掛けてるんだもん!」
「誰がビビってるって!?全部私の想定内!!」
便利屋さん、君達の近くの席に座っているその生徒さん達がアビドスの生徒さんなんですよ。
聞こえてるか…?…聞こえてないっぽいな…?
ここでこのやり取りが聞き取られてたら普通に事故ってたんだから気を付けてほしいものだけどね…
…その場合は私がどうにかしなきゃいけなかったってマジで言ってます?マジで?
そうはならなかったから良いけど、起こり得た事を考えるのは怖いぜよ…怖いぜよ…
「…流石に、無理があると思う」
「うぐっ…!?」
「はい、お待たせしました!」
そんなこんなで注文の品をお届けにきたセリカ…
その手に持たせているのは柴関ラーメン、そう、紛れもなく柴関ラーメンである。
そこに何の違いもありゃしませんが、ちょっぴり変わっている点が一つ…
ドンッ!!と大きな衝撃と共に彼女達の座る席に置かれたそのラーメンは…
「熱いので、気を付けてください!」
デカぁあああああい!!説明不要ッ!!