カヨコによる警告というか、アドバイス的なモノを受けてから早数日が経過してしまいました。
あの後もみんながブラックマーケットから帰って来たり会議があったりと色んな出来事があったんだけど、正直な話それら全てに反応している余裕がなかったというか…
言い訳を抜きにするなら、私が心ここに在らずって感じの状態になっちゃってたんだよね。
どうしてそうなってたのか…って言っても、その理由なんか一つしかないわけで。
『勘違いされてるって自覚があるなら、仲間にくらいそれを打ち明けても良いと思うよ』
あの言葉が脳内で反響し続けて、半永久なループ再生が起きてるからですかね。
ド正論もド正論、まさにド級の正論…
…なんだけど、私はこの言葉に対しての明確な回答をまだ持っていないというか…
まだ、心の中で悩んでいるというべきか…
多分、カヨコの言う通り私の知ってる事を包み隠さず話しちゃうのが一番丸いんだと思う。
このまま不審な行動を取り続けて怪しまれるより、そっちの方が良い筈だからね。
バタフライエフェクトだとか何だとか、今更そういうのを気にしているわけじゃない。
そもそも真っ先にシャーレに所属してこうやってアビドスに着いて来てる時点で原作乖離なんてとっくに始まっちゃってるんだからさ…
じゃあどうして、その事を話さないのか。
ひとえに、私の存在価値が無くなってしまうから。
それらを全て話してしまったら、秀でた能力が何もない私が物語に関わる資格が無くなってしまうから。
結局のところ、この物語がハッピーエンドに向かうのに必要な存在に『私』はいないのだ。
だって実際に私がいなくたってブルーアーカイブって物語は駆け抜ける事が出来るわけだしね。
つまりそういう意味では、私の傲慢な我儘だ。
それは自己保身か、或いはちっぽけなプライドか。
役に立たないだとか無能だとか、自分が役立たずなのは散々自覚してきたけどさ…
本当の意味で『いる意味のない存在になる』っていうのは、想像以上に怖いものなんじゃないかって。
正確に言うなら、それを自覚しちゃったらこんなメンタルも保てなくなっちゃうんじゃないかって。
そんな風に難しく考えてたら時間がどんどん過ぎちゃってェ…もうこんな時間になっちゃってェ…
そもそもこういう風にマイナスな思考に陥るって事自体が私らしくないんだもん、慣れない事をするのには時間が掛かってしまうものなのだよ。
前向き上等ポジティブ至高主義なんだぞ私は、伊達にメンタル強者やってないぞ。
その代わりコミュ症だけどね!!はっはっは…
“ヒノ、箸が止まってるけど…まだいけそう?”
「まだ、大丈夫」
そんな風にうだうだ悩んでいた私の思考を読み取ったのか、はたまた偶然なのか…
先生に柴関へ行こうと誘われた私は、二人で一緒にご飯を食べに来ております。
『ねぇ…二人っきりだね…///』
みたいな状況にはならないんだなコレが、残念ながら私は拗らせコミュ症かつ元男なのだよ。
先生の事をカッコ良いとは思うけど、そういう目で見るレベルで私は心までTSしていないので…
…フラグじゃないぞ〜?メス堕ちはせんぞ〜?
“そっか、無理はしないようにね”
「………」
その言葉に従って頷きながら、先程の話の続きについて考える。
言った通り、私の知っている事を何もかも全部話すっていうのは正直言って怖いという感情が勝つ。
…そもそも、ゲマトリアとかいうヤベェイ!!奴らがいる関係上迂闊な事は口走れない訳でして…
話すにしても何にしても、ちょっとは考えながら発言しなきゃ良かれと思ってやった事で変なバドエンの踏み方する可能性があってぇ…
「分かった!!何が引っ掛かっていたのか分かったわ!!」
と、聞き覚えのある声が聞こえるジャマイカ…
「問題はこの店!!この店が悪いのよ!!」
もはや伝家の宝刀とまで言えるアルの大声、私でなくても別に聞き逃さないね…
まあこの声が聞こえるという事はきっと他の便利屋メンバーも来ているという事だろう…
…ん?待てよ?このタイミングで便利屋が柴関に?
妙だな…先生と便利屋が柴関で遭遇するタイミングなんて無かった、は…ず…
…あれ?ちょっと待って…マジで言ってる?
本来の時間軸通りに物事が進むなら、今頃先生はアビドスで対策委員会のメンバーと一緒にいる筈…
だけど、この世界線には私という存在がいる。
この世界線には、私が存在してしまっている。
さっきの話じゃないが、バタフライエフェクトというヤツが起きてしまってる訳なのだ。
つまりだ、つまりどういう事かと言うと…
「それって…こんなお店はぶっ壊してしまおうという事ですね?」
今から起きるであろう柴関爆破事件に先生が巻き込まれるという事ですね!!!!!!
“ヒ、ヒノ?”
あまりにも唐突に訪れた出来事に驚愕のあまり卓上調味料を一部倒してしまいました!!ごめん店長!!
凄まじい危機の到来速度、私は咄嗟に反応出来ない…
いや待って、本当に冷静にならないレベルで焦っ…あせっ…慌てるような時間になっちゃってるのよ!!
「良かった、ついにアル様の力になれます…」
この直後にハルカが暴走して柴関が粉砕玉砕大喝采するって事は分かっている。
けどそのタイミングにどれだけの猶予があったか、流石にそこまでは覚えていない。
今から店を出る時間は…駄目だ、そもそもこの状況で先生を外に出すのが悪手過ぎる…
そもそも今無防備な先生を外へ出したところで横乳軍隊が先生狙いでやって来る訳だし。
「先生!」
この身体になってから恐らく初めて声を張りました!
張ってる割には声小さいとか言ったそこの貴方!!身体スペックと喉の問題でコレが限界でした!!
追い詰められた時こそ声が出なくなるのがコミュ症だけど、私はやる時はやるコミュ症だって所を…
ぁ待ってもう無理しんどい二声目発さなきゃ駄目?
「アビドスに至急、招集要請!」
なんて心の中で文句を言いながらもどうにか発する事が出来たその言葉、悲鳴を上げるその精神…
…で、この状況でその次に取るべき行動は!?
ちょっと状況が悪すぎる、そして私の頭があまりにも抜けすぎていた…ッ!!
猶予が…時間がない!!いちいち次の事を考えている時間すら惜しい現状!!
取り敢えずこの場で最優先なのは…先生の命!!
便利屋と大将は一定以上の耐久力はあるし原作の描写的にも致命傷にはならない筈…
私?一応ヘイローあるし多分大丈夫だと信じて…
アロナバリアがあるとか何とか言うけど、そもそもアレの詳しい描写を私は知らない。
というかこの状況で発動するのかと聞かれても私は反応に困ってしまう…
すーぱーアロナちゃんを信じろったって怖いものは怖いのよ!!万が一ってあるしさぁ!!
詰まるところ、この場で一番身の危険が危ないのは絶賛無防備状態の先生。
それが分かった今、私が取るべき行動は…!!
「………ッ」
“ちょっ…ヒノ!?”
先生を押し倒すように、上へと被さ…被さ…
私の身体小っさいなぁ!?全然覆い被されてないなぁ!?
何なら押し倒せたのだって奇跡だし、不意打ちじゃなかったら絶対にこの状況に持ってこれなかったし…
なんて言ってるバヤイじゃないの!!もう時間が…
「…へっ!?」
ぁ、まずっ…
響き渡る轟音、身体に伝わってくる振動。
全身に熱さのような痛みを感じる中で、私はその意識を手放した。