ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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というわけで先生視点です。
サブタイの通りヒノちゃんは喋りません。



題名の通り主人公の台詞が一文字も無いらしい

珍しくヒノが大声を出したかと思えば、急に押し倒される形となって彼女の下敷きになったのが現状。

何かあったのかと混乱しているタイミングで轟音と共に衝撃が来たというのだから、彼女は何らかのトラブルが起きる事を事前に知っていたのだろうか…

それにしては酷い焦りようだった、やはり直前で何かに勘付いたと考えるのが自然か。

 

結果として私は怪我をしていないし、今いる店内にも目立った損傷があるようには見えない。

とは言え先程の衝撃と轟音は軽い悪戯や事故で済ませるには些か大きいものだったと思う。

もしくは、もっと大きな被害になる筈だった所をアロナがどうにかしてくれたと予想するべきか…

 

“…ヒノ、ヒノ?”

 

返事は無い、彼女の身体は微動だにしない。

まさか何処かを怪我したのか、万が一があってはいけない…

そんな気持ちでヘイローの消えている彼女の事を確認するが、少なくとも息はあるように見える。

 

“…気絶してるだけ、かな…”

 

少なくとも、今すぐ対処しなければ命に関わってくると言ったような状態には見えない。

無理に動かすのはいけないかもしれないが、休ませておけばきっと回復する程度のものだろう。

そう考えてゆっくりと刺激を与えないように彼女を座席に寝かせ、周囲の人の被害を確認する。

 

“大将、そっちは!!”

 

「軽く足は打ったが大丈夫だ!!嬢ちゃん達は…」

 

「ん〜・・・目立った負傷はない、って感じ〜?」

 

大将も便利屋の子達も大きな怪我はないようで、間を置かずにそう返事が返ってきた。

一先ずは大丈夫と言ったところか、とは言え根本的なところは解決していない訳だが…

 

「ぁっ…私っ、その、そんな…」

 

…目をぐるぐると回しながらその場で狼狽える彼女。

なんと言うか、先程の彼女達の会話を途切れ途切れとして聞いてしまっていた身としては中々に難しいと言うか…

どう声を掛けるべきか、と頭の中で考え始めた所で溜息をつきながら横から口を出す者が一人。

 

「…さっきの衝撃、ハルカじゃないよね?」

 

「えっ…ぁ…」

 

「あぁ…いや、問い詰めてるとかじゃなくて…」

 

咄嗟の言葉に返答が出てないように見えるが、その様子からそれに対して否定はしていないように見える。

 

「明らかにボタンを押す前に衝撃が来たのが見えたから、それにハルカ本人も驚いてたし…」

 

「そりゃあつまり…どういう事だい?」

 

詰まるところ、答えは一つ。

 

“外部からの攻撃、って言いたいんだね?”

 

「まぁ、そういう事になる」

 

それを聞いて外に耳を傾けてみれば、機械の駆動音や誰かが何かを喋っているような声。

明らかにこの壁の向こう側に人が、それも大勢いる事が分かるような音が聞こえる。

 

「…うん、確かに外が騒がしい感じがするね?」

 

「ちょっ…私だけ話に置いてかれてる!?」

 

「大丈夫、私達もまだ全然分かってないから…」

 

先程の仮説が本当ならば、便利屋のみんなとはまた違った団体が此方へと攻撃を仕掛けてきた事になる。

理由は何にせよ私にはその真相を確認する義務があるが、生憎此処へ一緒に来たヒノは現在行動不能…

アビドスのみんなに連絡は飛ばしたが、此処に到着するまでに多少の時間は掛かる筈だ。

二度目の攻撃が来る可能性もある今、悠長にしている時間があるかと聞かれると素直に頷く事は出来ない。

 

ならば、ここで私がするべき事は二つ。

 

“…大将、急な申し出で申し訳ないんですが…”

 

「そこの嬢ちゃんの事を見守っててやれば良いんだろう?そんくらいはお安い御用さ!」

 

“…任せました!!”

 

とても察しが良くて助かる、話が早い。

大将にヒノの様子を見るのを代わってもらい、その座席から離れ便利屋のみんなの下へと近付く。

 

「ア、アル様…」

 

「うぅ…一体何が…?」

 

私がするべき事の二つ目、それは…

 

“ごめん、ちょっといいかな”

 

「どうしたのさ先生、ちょっとこっちもこっちで立て込んでて片手間にしか聞けないけど〜・・・」

 

“外から聞こえる騒音に、さっきの衝撃…また何らかの攻撃を受ける可能性も十分にある…”

 

“だから外の様子を見に行こうと思うんだけど…今は私一人だから、君達に護衛を頼みたくて…”

 

彼女達に、協力を仰ぐ事だ。

 

「…そう来たか〜、軽く予想はしてたけど…」

 

外の状況が何も分からない、だが敵対勢力がいる可能性は非常に高いという状況。

私が一人で外へ出て行った所で出来る事は少ないし、彼女達をこの店の中に残して行くというのもまた悪手だ。

出来るならば私と一緒に一時的にでも良いから着いて来て欲しい、そう思って掛けた言葉…

 

「だってさアルちゃん、どうする?」

 

「どうするって…先生と私達は今敵対してて、今回は仕事は関係無いとは言え…」

 

“なら私が君達を雇う、それで良いかな?”

 

一刻一刻と過ぎていく時間が惜しい、そうしている暇があるかすら怪しいのだ。

私が『そう』した方が彼女達がやりやすいと言うのなら、私の役割は彼女達がやりやすいようにサポートしてあげる事である。

とは言ったものの、無理強いは出来ないが…

 

「ぁっ、うぅ、えっと…」

 

「…社長、社長が目指すアウトローっていうのはどういうものなんだっけ?」

 

「私が目指す、アウトロー像…」

 

今私の中で彼女の株が物凄い速度で上がっている、彼女の一言一言に周りをよく見ている事を察せられる程の正確さがあるというか…

仕事が出来るタイプの人間なのだろう、彼女は。

 

「…そう、そうね、これが依頼だというのなら無碍にする訳にはいかないものね…!!」

 

そんな彼女の言葉を聞いてか、それとも自分の中の我を貫き通そうと決意したのか。

先程の迷いが嘘のように気を持ち直した様子で他のメンバーに向けて指示を出していく。

…少し抜けているところも目立つが、リーダーシップという意味ではよく出来ているのだろう。

 

「よし!!ムツキ、カヨコ、ハルカ、行くわよ!!」

 

「くふふ〜、そうと決まれば突っ込むよ〜!!」

 

「で、では私は真っ先に特攻しに行きます…!!」

 

「…そういう事じゃないんだけど…まぁ、いっか…」

 

微妙に統率が取れていない気もするが、私と一緒にやる気になってくれた彼女達。

これで目の前の問題と向き合う準備が整った、今すぐにでも外の様子を確認しに行く事は出来る…

…のだが、その前に些細なやる事が一つ。

懐からタブレットを、シッテムの箱を取り出し画面をタップして電源を付ける。

画面の向こう側にいるのは、当然だがアロナだ。

 

“ごめんアロナ、君が守ってくれたんだよね?”

 

確認の意味も込めて、そう口に出す。

とは言ったものの、あの状況で場に干渉出来る味方と言えばアロナだけだったのだからほぼ確信を持ってそう言った訳だったのだが…

 

『…あの、先生、大変申しあげにくいのですが…』

 

画面の向こう側で困ったように、目線を下に向けながらぽつぽつと呟く彼女。

何かを言いたいようで、それでいて言いづらそうな様子の彼女を見て少しばかり不思議に思う。

 

“うん、どうしたんだい?”

 

故に、そう問い掛けてみれば…

 

『今回の攻撃は、私が何かアクションを取る前に何らかの力で防がれたようでして…』

 

『詰まるところ、私は何もしてないというか…』

 

“…なんだって…?”

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