「ごめんごめん、ちょっと昼寝しててねぇ…遅れちゃったんだけど、間に合った?」
展開的な意味では間に合ってるけど、戦闘的な意味で言うのなら間に合ってはいない。
いや、先に来られてたら来られてたで私が店から出てきた時の空気が余計に地獄になってた可能性もあるからやっぱり良いタイミングだったのかも…
…これもう分っかんないな…?
「昼寝ぇ!?もう、こっちは色々大変だったって言うのに…!!」
そんな私の事情は露知らず、アビドスの面々からすれば今まで何してたんだ案件なのはそりゃ当然。
しかもその理由が昼寝だって聞いたら、ねぇ…?
実際のところはホシノはホシノで色々と苦労してたというか、大変だったんだけど…
…これに関しては、まぁ、後で触れよっか。
「………ッ」
「で、ゲヘナの風紀委員会ねぇ…便利屋のみんなを追ってここまで来たの?」
そんな出来事の後だからか、惨状が惨状だからか。
ちょっぴり“
スチルの1枚や2枚描かれても良いんじゃないかってレベルで様になってるんだなコレが。
「う〜ん…まぁ、なんて言ったら良いかなぁ…」
「対策委員会は、これで全員揃ったよ」
煽るねぇ…!!煽りにいくねぇ…!!
ホシノがある分状況は良い方向には進んでるんだけど、一発触発の雰囲気は相変わらず…
というかホシノが『おっ?やんのかぁ?』的な雰囲気を自ら出しにいってるというか?
とはいえ、感情任せな考え無しの行動というよりかは計算した上での行動だと思うけど。
「…1年生の時とは随分と雰囲気が変わった、人違いじゃないかと思うくらいに…」
まぁ、分かる、その気持ちはよく分かる。
狂犬と言わんばかりの様子だった過去おじと今のおじさんを比べちゃうと…いや
そんな過去ホシノも実際はそこそこアホの子ムーブ晒してたし、結局他人が抱く印象なんてアテになんないか…
「…ありゃ、おじさんの事知ってる感じ?」
「…勿論…だけど、てっきりあの事件の後にアビドスを去ったものだと思い込んでいた」
あっ、ヒナ、その言葉は多分まずい。
「………」
「………」
睨み合いが、始まってしまいました…
ゲヘナ最強対アビドス最強、その間での睨み合いなんか起きたら当然空気もピリつく訳で。
私はもうレベルが違い過ぎるから直接的なプレッシャーはないけど、多分恐らくきっとめいびー…
…ほら!!イオリとシロコが!!過酷な顔に!!
「…まぁ、今回は…そうね…」
そんな場の空気を察してか、はたまたこれ以上の睨めっこは流石にまずいと判断したか。
目を逸らすようにして向き直ったヒナは、風紀委員会のメンバーに向かって告げる。
「…撤収準備、帰るよ」
「…えっ…?」
「帰るんですか!?」
いやマジで帰るとは思ってなかったって気持ちはよく分かるけど、よく分かるけどその反応は…
…最終的に帰るって事を知ってたから私は落ち着けてるのであって、知らなかったらそんな反応にもなるか。
だって、ねぇ、明らかに今からやり合いますみたいな雰囲気醸し出してたしねぇ…?
詰まるところ、場の空気が乱れたとはいえ未だにこの二つのグループの間には火花が飛び交ってるというワケよ。
お互い鎮火するようなポイントを見つけられてないんだから、そりゃあ納得出来る筈もない。
だからこそ、その双方を納得させるために…
「………」
「頭を、下げました…!!」
ヒナが謝罪をするって事なんだろうなぁ…
「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こした事…」
「この事については私、空崎ヒナよりゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対し正式に謝罪する」
風紀委員長であるヒナがこうして謝罪をしたのだ、風紀委員会の面々はこれ以上下手に口を出さない。
そしてアビドスとしてもこれ以上無駄な争いをせずに済み、被害が増える事も無くなる。
恐らくベストアンサー、目に見える範囲では最善の選択肢を選んでるんじゃなかろうか。
対応力…手慣れてる、って方が正しいかな。
「今後ゲヘナの委員会が無断でここに侵入することは無いと約束する…どうか許して欲しい」
「委員長…」
便利屋の確保を目標に動き出した風紀委員会は、不幸にもアビドスの自治区に損害を出してしまう。
他の委員を庇い全ての責任を負ったヒナに対し、対策委員会委員長、ホシノが言い渡した返答とは…
「…まぁ、そうだねぇ…今回はそれで飲み込んでおいてあげよっかな?」
…感情的な話をするなら満足はしてないけど、って感じかな。
アビドスの代表としてちゃんと状況を見れるホシノ、ここで藪を突くような真似はしないのです。
それはそれとして次は無い、って感じだろうけど…
正直状況が状況だから、普通だったらもっとキレててもおかしくなかったし?
「待って委員長!!便利屋は…」
「………」
「ぁ、ぅ…」
失せろ!!ばりの視線がイオリを射抜く!!
当然ながらcritical、当然ながらweak。
一気に戦意が削がれてしまったイオリ、これ以上余計な事は言えないと黙り込む…
「ほら、帰るよ」
そうなるともうヒナに口出しを出来るような人はいない、つまりそのまま撤退する事になる。
ゾロゾロと風紀委員会の面々を引き連れて、元来た方向へと戻って行く…戻って…
「…先生、それと…ヒノ、で合ってた筈よね」
…何となく、何となく察してたけどね?
こうやって先生の隣に佇んでるんだから私の方にも話し掛けてくるとは思ってたけどね?
泳ぎそうになる目を必死にコントロールしながら、その名前で合ってると示すために頷く。
ボディーランゲージ、とても、大事。
「貴方達に伝えておく事がある…カイザーコーポレションの事は知ってる?」
“…まぁ、ざっくりだけどね”
「右に、同じく」
私の場合はざっくりどころか大体知ってますけども!!
ここでそれを言ったところで変なすれ違いが起こるだけなのでね、嘘は言ってないからね。
「…これはまだ万魔殿もティーパーティーも知らない情報だけど、教えておいた方が良いと思って」
「アビドスの捨てられた砂漠…あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでる」
“カイザーが…?”
「一応、教えておこうと思って」
その情報をちゃんと仕入れてるのも、このままじゃ廃校になるであろうアビドスにそれを伝えるのも。
貸しを作る的な意味もあるんだろうけど、それはそれとして人が良いんだろうね。
あとは…先生に対しての信頼か、これくらい出来るでしょって感じで試す意図も含んでいるのか…
その真相は、ヒナにしか分かりませんわ。
「…じゃあまたね、先生、ヒノ」
「また」
“うん、また今度”
これから、関わっていくだろうからなぁ…
世話になる機会もあるだろうし、シャーレが手助けをする機会もあるかもしれない。
そこで私が活躍出来るかはまた別の話ですけどね!!
それはそれとして、きっとまた会う機会があるから…
…そして、わたし、つかれました、もうむりです。
お前は何もしてないだろうがって言われたら仰る通りなんだけど、これでも負担が凄いというか。
さっきまで感情がジェットコースターだったのよ、もう焦りと混乱でそれどころじゃなかったのよ!!
だから今日の私はもう行動不能です…
“…ねぇ、ヒノ、ちょっと…”
やったね!!もう一回遊べるドン!!(泣)
そんな…なんだか神妙な顔つきで話し掛けられたら私だってちゃんと話を聞かなきゃって思うワケで…
「………」
“…いや、やっぱり気の所為かな”
…ねぇ!!なんだったの!?なんですの!?