“私に用事がある、って事で良いのかな…?”
違うんだ先生よ、貴方を困らせたい訳じゃないんだ。
ただ私の脳がいざ誰かと話すとなるとフリーズを起こしてどんな言葉をどんな表情で話せば良いのか分からなくなるだけで、こんな時どんな顔すれば良いのか分からないの…きっと笑えば良いと思うよハッハッハ。
むむむむむりです、むりです絶対!!
やっぱり私に人とコミュニケーションを取るだなんて行為は早かったんだよ!!
いや、頑張れ、頑張るんだ私…
シャーレに所属したいって事を簡潔に伝えるだけで良いんだ、簡単な事じゃないか。
いける筈だ、きっとその程度なら話せる筈だ…
よ〜し、心の中で深呼吸をしてもう一度…
「シャーレ」
い い 加 減 に し ろ 。
うわ〜ん!!流石にコミュ力が無さすぎます!!
なんだよシャーレって、急に現れて組織名を呟き続ける少女とか不審者以外の何者でもないじゃん…
人と話す機会なんて全然なかったから気にならなかったけど私のコミュ力、ヤバすぎるな???
マズイぞ私よ、このままいくと…
『私のコミュ力がヤバいっていうのは、低すぎるって意味だよな?』
なんて状況になってしまうぞ…!!
このセリフを言葉の通り本当に低すぎるって意味で使う人、私だけなのでは…?
異世界転生したボッチがハーレムを築く時代はもう古いってか、チクショーめ!!
なんで転生先で一番苦労している事が前世でも日常的に使うような対人技術なんですか…?
“シャーレに何か頼み事があるの?”
急に顔を近付けないでください、死んでしまいます。
うおっ、イケメンっ…面良すぎ、顔面国宝かよ…
これは生徒にモテるのも分かりますわぁ…この面にあの性格のハッピーセットはズルいっすよ。
ホスト界の頂点取れるんじゃないか、先生よ。
私と契約してナンバーワンホストになってよ!!
ぁ、ならない?そうっすか、残念です…
うん話が進まないわ、そろそろどうにかして本題を伝えなきゃ話にならないと思うんだ。
くだらない茶番もここまでにしましょうね、えぇ…
良いかいフェルン、コミュ症っていうのはね、傍から見る分には何も喋ってなくても心の中ではこうやって騒がしくしている生き物なんだよ。
嘘です諸説あります、私だけかもしれません。
どんどん話が逸れていくんですけど、目の前の現実に向き合えない系TS転生者はどうしたら良いですか?
答えは一つ、現実に向き合えって事ですね!!
「私、シャーレ」
よっしゃぁあああああ!!言ったぁあああああ!!
1つの単語しか喋れなかった人が2つの単語を続けて言えたんですよ!!これは進歩でしょう!!
私、やったよ…!!私、頑張ったよ…!!
私はやったんだぁあああああ〜ッ!!
…そんな冷たい目で見ないでくれよ、私にとってはこれでも大きな一歩なんすよ、ハイ。
“えっと…シャーレに所属したいのかな?”
惚れました、私先生と結婚します。
えっ、暴動が起きるって?怖っ…やめとこ…
災厄の狐さんとか冷酷な算術使いさんとかを敵に回して私に勝ち目がある筈がないのでね?
それにしても、こんな挙動不審な人物から発されたこんな言葉で察してくれるのかこの出来る大人は…
正直めちゃくちゃ助かる、頼むから私に喋るという行為を出来るだけさせないでくれ…
「………」
“成程ね…?”
ってなわけで首を縦に振らせてもらいますぜ…
あんまり大きい動作をすると私は死んでしまうのでとても小さな頷きを返すぜ…
もっとちゃんと反応しろって?コミュ症なんだぞ私は、喋れないだけがコミュ症だと思うなよ。
いや、マジでしんどいんだよ、ポーカーフェイス装ってるけどここまで歩いて来るだけで相当な体力使って私はもう限界一歩手前なんだよ。
なんだったら立ってるだけでも死にそう、あまりにも身体が弱すぎますわ…!?
“えっと、大丈夫?”
大丈夫だ、問題ない…嘘です大問題です。
だけどそんな事を言える訳がない、私はさっき喋った二言だけでもういっぱいいっぱいなんだ…
これ以上私に喋れというのか、死んでしまう、死んでしまうぞ先生よ…!!
や〜め〜て〜く〜れ〜!!そんな優しい目で私を見つめないでくれ〜!!
逆に辛い、逆に辛いんだソレ…!!
“ん〜・・・じゃあ、君の名前を聞いても良いかな”
…名前、名前っすか、えぇ、名前ねぇ…
わっちゃぁねぇーむ、あいあむかめんらいだ〜・・・
ぇ名前、名前なんて考えてないぞ私!?
前世の名前をそのまま名乗る…のは流石にマズいよな、思いっ切り男の名前だしな!?
ぇ、何、こういうのってなんかそれっぽい偽名を名乗った方が良いヤツなんですかね?
いや普通に無理だよぉ…!!私にネーミングセンスを求めるなよぉ…!!
ゲームの主人公に『あああああ』とかの名前付けるタイプの人間だぞ私はよぉ…!!
いいや落ち着け、逆に考えるんだ…適当な名前でも良いじゃないかって考えるんだ…
良かねぇわ!!これからの人生に関わるぞ!?
アレだ、こういう時は自分の特徴とか元ネタを文字ったような名前を考えるのが良かった筈…
➡ボッチ
⇨コミュ症
⇨無口
…おかしいな、何故か心が痛くなってきたぞ。
いや、私にも良いところはある筈!!
今の私は顔が良い、うん、顔は良い!!
となるとそういう目線から考えるのが良い筈…そうか、アルビノか、アルビノだな!?
アルビノを文字ってなんか良い感じの名字と名前を…無理ですわこんな短時間で思い付く筈がありませんわ
“もしかして、名乗れない理由とか…”
待ってください、死んでしまいます。
違うんだよぉおおおおお!!
確かにさ!!名乗れない理由はあるけどさ!!
先生が思っているような理由じゃないんだよ多分!!
こうなりゃヤケだ、語感とか気にせずに適当に当て字で名乗るしかないじゃんね…!!
アルビノ…ビノ、だと流石にアレだから…
「ヒノ」
よし、取り敢えず名前クリア!!次名字!!
…アルってなんだよ、殺してやるぞ陸八魔アル…?
いや、アルって言葉をそのまま使う必要はないんだから同じ読みの文字を持ってきてそれっぽい名字を作り上げれば良いのではないか?
我ながら名案だね、そして迷案だね?
いや冷静に考えて『ア』ってなんだ…アから始まる一般的な漢字…アレか『安』とかか?
んじゃ次は『ル』…留とか瑠とか…呼びやすさを考えると多分『留』の方が違和感ない、のか…?
前世の名前を捨てたって訳じゃないけどさ、キヴォトスで行動するにあたってこれからの私の名前は…
「
だよ、よろしくね!!命名理由がクソ雑だけどね!!
…今思えば、この時から私は行き当たりばったりだったなぁ…なんて思う訳なんだけど…これもまた、私の個性って事なんだろうね。
そんなぐだぐだなスタートで、私と先生のキヴォトスでの活動が始まったのです。
◇◇◇
すいません、元の世界には帰れません…
私は今、シャーレのオフィスにいます。
本当は、天国とも言えるような自分の部屋でゲーム三昧ネット三昧していたあの頃が懐かしいけれど、今はもう少しだけ知らないフリをします…
茶番もここまでにしておいて、私は無事にシャーレに来る事が出来た訳ですよ!!
これで最低限の生活は保証された…それってつまり最ッ高って事じゃないですかァ〜・・・!!
“ねぇ、ヒノ”
ハイ、なんでしょうかしぇんしぇ〜どにょ…
私はここに来るまでの道のりとさっきの会話で体力を使い果たして首を上下左右に振る事しか出来ない悲しきモンスターと化しているぞ。
つまり今なにか質問されたところで私は『Yes』か『No』の二択しか選ぶ事が出来ない訳だ!
出来損ないのアキネーターっすかね、せめてもう少し選択肢の幅を広げようぜ…
“ちょっと調べてみたんだけど…安留ヒノって名前の生徒が所属している学園はないって…”
ギクッ、ギクギクッ…
いや、そりゃそうだわ…その名前だって私がさっき適当に考えた名前だし、そもそも私っていう人物自体急にスポーンした謎存在な訳だし…
逆にそれで所属学園がヒットしたら怖いわ、あれもこれも全て神秘の仕業にすれば何とかなるって思ってても流石に無理がありますぜ…?
まぁ、私はこの質問に対して何も言える事がないからだんまりを決め込む事しか出来ないんだけど…
「………」
…うわ〜ん!!気まずいです!!
どれくらい気まずいかっていうとサクラコ様が『わっぴ〜!』した後の空気感くらい気まずいです!!
私は辛い、耐えられない!!
頼むから言及しないでおくれ、無茶だっていうのは分かってる、だけどさ…私だってさ…もう既に色々と無茶して限界突破してるんだよ…
コレ以上の会話は私の許容範囲を超えてしまう、具体的に言うとこの会話の効果により私は死ぬ。
だから頼む…ここは、流してくれ…!!
虫の良い話だっていうのは分かってる…けど、私はそれでもを叫び続けないといけないんだ…!!
それでも!!ユニコォオオオオオン!!
…っふぅ、っていう冗談はさておき、本当に頼む、頼むよしぇんしぇ〜どにょ〜・・・
“…まぁ、色々訳ありって事なんだね”
…おい、本当に言ってるのか先生…ッ!!
こんな怪しさの塊みたいな生徒をそれでも受け入れてくれるというのか貴方は…!!
バカな生徒をそれでも愛そうってか!?
先生が生徒をバカだなんて言う筈がないだろう!?
…言ってないよな、アレ、もしかして原作でもサラッと言ってたりする?
いや、言わない、先生はきっと言わない筈…
“大丈夫、入部手続きは私の方で何とかしておくよ”
ぁ〜・・・もう、駄目、駄目ですコレは。
もうこんな事されて堕ちない生徒いないでしょ、私だって覚悟決めちゃうよこんな事言われたら…
…覚悟ってその覚悟じゃないからね、ハイレグシスター服を着る訳じゃないからね?
うん、めちゃくちゃ調子狂わされたけど…
やってやるよ、このキヴォトスが果たしてどの世界線なのかは分からないけどさ…
ハッピーエンド、目指してやろうじゃないの。