ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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何でもは知らないわ、知ってる事だけ

「話が、したい」

 

そう私に言ってきた彼女、それを断る理由もなく…

 

「良いよ、おじさんとお話しよっか」

 

まるで面接のような空気感で、決して楽しいとは言えない会話の時間が始まった。

 

「私は、敵じゃない」

 

「うん、そうだね」

 

散々怪しいと思って観察していたからこそ、彼女が敵意の類を持っていない事はよく分かっている。

まぁ、それにしても一挙一動があまりにも怪しさの塊なので監視の目を止める事はしなかったが…

結局、彼女が明確に悪意を持ってこちらに対する行動をした場面は無かった。

逆に言えば、こちらに対して明確に利となる行動をした場面もだいぶ少なかった気がするけど…

 

「………」

 

そんな『知ってたの?』みたいな目でこっちを見られても…私だってそこまで物分かりが悪い訳じゃない。

何か裏があるんじゃと今の今まで疑い続けてはいるが、理由もなく私が彼女に負の感情を抱いたりはしない。

信用し切っている訳ではない、ただそれとこれとは少々話が別と言うか。

寧ろ最初の方から疑い続けてきたからこそ、彼女の行動理念というものもちょっとは分かってきた。

 

「…そして、私は、その」

 

「元はこの世界の、キヴォトスの住民じゃない」

 

…なんか、ちょっと私の予想していた言葉とは違った方面の告白をされた。

キヴォトスの住民じゃないという事は、先生と同じくキヴォトスの外から来た人物なのだろう。

ただ、まぁ、そうなるとちょっと不思議な点が出てくる。

 

「…ヘイローとか、あるのに…?」

 

「…私も、よく分かってない…」

 

「そっかぁ…」

 

そう言われてみるとなんだか他の生徒と雰囲気が違うようにも感じるが、恐らくプラシーボ効果だ。

どんな理由でキヴォトスに来たのかは分からない、けれどそう言うからには何らかの理由がありそうだ…

まぁ、こうやって話している感じ彼女は先程から全て本当の事を話しているのだろう。

というかここで嘘を吐く理由がない、内容が内容だしこれが嘘だとしても彼女は何のメリットも得ないし。

 

「それに加えて、私は」

 

そうなってくると、次の言葉はある程度予測出来る。

 

「これからアビドスに起きる事を知ってる、とか?」

 

「…うん…」

 

「…ま、そりゃあ最初から知ってなきゃあんな行動する訳ないもんねぇ〜」

 

セリカちゃんの件とか、あとはまあ今回こうして私のバッグを漁りに来た事とか。

最初は『敵だから』情報を知っているのかとも思ったが、今までの雰囲気的に多分違うんだろう。

というか、仮に敵だったとしても普通は知らないような事まで知っていた節があるし。

 

「それ以外にも私は、これから起きる出来事を…」

 

「…これからのキヴォトスを、知っている」

 

言い方的にそれは恐らく直近の事ではなく、遠い先の未来の事まで知っているという事なのだろう。

 

「それは、アビドスに限った話じゃない」

 

しかもそれは『キヴォトス』の未来という事であり、今までアビドスで起きていた事の数々を知っていたのもそのうちの一つの要素としてでしかないのだろう。

別に納得出来ない、信じられない事はない。

それを信じる事が出来るだけの材料があったし、そんな事が出来る人がいても特に不思議では無かった。

 

「…どうして知ってるか、どうやって知ったのかはどうしても話せない感じかな?」

 

「………」

 

その問いに対して彼女は黙り込み、答えと言わんばかりに申し訳なさそうに首を縦に振る。

全て教えてくれるに越した事はないが、彼女に対してそれを強制するつもりは私にはない。

 

「いいのいいの、結局大事なのはそこじゃないから」

 

『何かある』のは私とて理解している、話せないであろう事を必要以上に詮索するつもりはない。

誰にだって話せない事というものは存在するだろう。

それが絶対に聞いておかねばならない事ならまた話は別だが、これは私が知らなくてもきっと大丈夫な事だ。

逆に言うのなら、私は彼女からどうしても聞いておかねばいけない事というのもあるのだが。

 

「で、だから?」

 

そう、私は彼女の口から聞かねばいけない事がある。

 

「君はそれを知っているから、何をどうするつもりなのかな?」

 

「それは…」

 

言葉に詰まる彼女、それでも私は言葉を止めない。

 

「君がどれだけの事を知ってるか、君がどんな境遇でそれを知ったのか、それはおじさんには分からないけど…」

 

私は彼女本人ではない、いくら観察して監視してそれを知ろうと思ったところで全てが分かる訳じゃない。

それなりに読み取れる事はあったのだが、結局肝心な部分は私は知らないのだ。

だからこそ彼女に対する疑問が、私には彼女から聞いておかなければいけない事が出てくる。

それは私のエゴではなく、対策委員会の委員長として責任を持って知らなければいけない事。

 

「知ってるだけならいくらでも目を逸らせる、でも君はこうやって行動に移した…」

 

見て見ぬフリは簡単だ、寧ろ自分に何らかのメリットがない限りはそうするのが賢い生き方だろう。

ただ、彼女は自分なりに行動に移そうとしている。

それが何かを変えたかという点は重要ではない、動こうとしたという点が重要なのである。

ならばそこには何らかの意思がある、それか行動するだけの相応の理由がある。

 

「これからの未来を知ってるなら、君はその未来をどうするためにアビドスに来たのかな?」

 

私としては、彼女のその部分が知りたい。

 

「それは、その…」

 

言葉を探すように、自分自身に質問をするように。

視線を彷徨わせながら声にならない声を口から出す彼女は、今まで以上に感情の揺らぎ方が分かりやすかった。

私は口を開かない、ここで私から口を開いてしまったらそれでは意味がない。

そうして私が彼女を見つめ続けて何分経ったか、いや、一分も経ってないかもしれない。

そうしたやり取りの結末として、彼女は…

 

———彼女は、倒れた。

 

「…うぇ!?」

 

何事だと急いで駆け寄るが、意識はない。

ただちゃんと呼吸はしているし、命の危険があるとかそのような状態ではないのは分かる。

それはそれとして、まさか倒れてしまうとは…

 

「あちゃぁ…ちょっぴり鎌を掛けようと思っただけなんだけど、意地悪しすぎちゃったかな…」

 

追い詰めすぎてしまったか、それが分かっていた上でわざとやっていたからこそ余計に罪悪感を感じる。

いや、まぁ、疑われるような行動ばっかりしていた彼女にも一定以上の非はあると思うんだが。

それはそれとして、今回の件を含めて分かったのは…

 

「悪い子って訳じゃ、ないんだろうなぁ…」

 

そもそもの話、私は彼女に危害を加えられたりしていない。

やる事なす事がことごとく空回っているような雰囲気はあったが、それが逆に彼女の事を物語っていた。

私でも分かる、というか観察していればよく分かる。

多分、ただただ言葉足らずで不器用なだけなのだろう。

それはそれとして疑うだけの理由はあるし、実際に色々と訳アリみたいだし。

 

それが全て、私を油断させるための行動だとしたら。

その場合は私達からの疑いを晴らすために、敢えてあのような行動をしていたという事になる。

…あり得ない話ではないが、私には彼女にそこまで器用な事が出来るとは思えない。

私にそう思わせる事も含めて全てが演技だったと言うのならば、もうそれはこちらの完敗だ。

 

「…ま、いずれにせよ…」

 

彼女が何をしようが、彼女が何を言おうが。

 

「最後にどうするかを決めるのは、私自身だから」

 

私がその意思を、曲げる事は無いのだから。

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