ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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寝ている子を起こすなよ、いややっぱ起こしてよ

夢を見た、やけに現実に近いような夢を。

 

『まさかこんなに早く客人が来るとは思っていなかったのだが、これも巡り合わせというものか…』

 

意識は朧げでハッキリとしない、だが目の前の彼女の事は記憶として知っている。

ただ、夢の中で自意識を保つ事が出来る人間というのは非常に稀である事には変わりない。

何かを言おうと、その『何か』の答えが見つからないままひたすらに時間だけが過ぎていく。

 

『…返事はないか…いや、果たして意識がハッキリしているかも分からない…』

 

それでもお構いなしと言わんばかりに、私の前に立つ彼女は何らかの事を話続ける。

内容は微塵も理解出来ない、なのに何故だか理解しなければいけないような気がして。

必死になって耳を傾けても、やっぱりぼやけてしまい何が何だか分からなかった。

 

『そうだな…聞こえていないのならそれで良い、仮に聞こえていたら軽く頭に入れておいてくれれば幸いだ…』

 

ただ、彼女が私に質問をしようとしているのは分かった。

 

『君は、神秘を知っているかい?』

 

私は、その言葉に何かの答えを返そうと…

 

 

◇◇◇

 

 

…トリニティセクシーフォックスの夢を見た気がする。

というか見た、登場人物がセイアって時点で明らかに何らかの会話を交わしている筈…

彼女の事だ、きっと何らかの理由があって意味深な言葉を残していったに違いない…が。

…冷静に考えて覚えてる筈ないがぁ!?夢の内容を全部覚えてたとしたらそれは多分人間じゃないがぁ!?

 

…はい、落ち着きました、流石にアレは一人でやるテンションじゃない。

いつもあんなようなテンションだろうと言われたら…いや、流石にそこまで酷くない…よね…?

 

うん、私の現在地は恐らく保健室のベッドかな…

なんで私こんなところにいるのかなぁ…いや、多分倒れたからここにいるんだろうけど…

さっきまで何してたんだっけ、ちょっと記憶が…

え〜っと確か、先生の代わりに便利屋に行ってカヨコにどやされて、その後に…

 

「………!!」

 

思い出した、そして同時に理解した。

持っていた筈の退部届が、ポケットから消えている。

 

「ホシノ、ホシノは…」

 

急いで保健室を飛び出し、廊下に出て…

駄目だ!!外暗い!!もう夜!!終わり!!

どれだけ寝てたんだ私は、ちょっと酷すぎるぞ…!!

結局ホシノとの会話でも一番肝心な事が伝えられなくて、そのまま過呼吸になって倒れて…

情けなさすぎる、にしても程がある…!!

 

今から先生に相談を…は無理だ、多分説明時間も含めてそこまで時間に余裕がない。

というか既にホシノがいない可能性だってある、私に出来る事は急ぐ事だけ…

皆無に等しい体力を酷使して、息も絶え絶えになりながら辿り着いたのはいつもの教室。

 

「…ホシノ…」

 

その扉を開けたら、まさに今からいざ行かんと言わんばかりの様子のホシノの姿が目に入った。

 

「…いやぁ、凄いタイミングで起きちゃったねぇ…」

 

私のセリフである、間に合ってるのも加味すると運が良いのか悪いのかよく分からなくなってくる。

 

「ほら、ヒノちゃんが寝てる間に色々あってさ〜」

 

彼女はごく自然な雰囲気で、いつもとほとんど変わらない様子で私に話し始める。

 

「凄かったんだよ〜、あの後アビドス砂漠に行ってみんなでカイザーのところへ…」

 

「知ってる」

 

知らない訳がない、だって私は転生者だから。

多少の差異はあるかもしれない、だけど私はその出来事をちゃんと知っている。

 

「…ん〜…じゃあ、今度シロコちゃんと…」

 

「知ってる」

 

それも知ってる、次にホシノが口に出そうとしていたであろう事も、全て。

 

「知ってるから、もう、やめて」

 

その話を聞いていても、辛くなるだけだ。

いや、きっとホシノが『最後までそんな話をしていた』事を知った対策委員のみんなが一番辛くなる。

誰も幸せにならない、ある意味で一番のタイミングで私は彼女と遭遇してしまった。

 

「…ほんっと、凄いタイミングで起きちゃったんだから…」

 

そう、私のセリフだ、私が言ってやりたい。

どうして、どうしても、どうしようもないのか。

 

「分かってるよ、君の言いたい事も分かってる…」

 

「でもごめんね、おじさんはこうするしかないからさ?」

 

「私の行動が間違ってたとしても、今の私はこの選択肢しか選ぶ事が出来ないんだよ」

 

「…どうしても?」

 

「どうしても、これは決定事項だよ」

 

分かっていた、彼女がそれくらいで曲がるような薄っぺらい意思で行動していないというのは分かっていた。

…そうだ、ここを曲げる事が出来ないというのは最初から理解していたじゃないか。

そして私はこの後に訪れるであろう『ハッピーエンド』を知っているじゃないか、なのにどうして足掻こうと…

 

「…君が未来を知っているって言うのなら、きっとアビドスの未来も知ってるんだろうねぇ〜」

 

「きっと、私がこの後どうなるのかも」

 

…そうだ、私はそれじゃあ満足出来ないんだ。

 

「だからさ、これからのアビドスの事を…」

 

「断る」

 

「…どれだけ説得されても、今更曲げるつもりは…」

 

「違う」

 

終わり良ければ全て良しなんて、それは結局過程で何か辛い事が起きていてもお構いなしの終わり方でしかない。

とは言え、ホシノにとっての何でもない私が一人で彼女のこれからを覆す事なんて出来る訳がないのだ。

でも、それでも、少しでも良い方向を目指そうと。

 

「止まらないのは、もう分かってる…」

 

それは、薄々ながらも最初から理解していた。

 

「私は、弱い」

 

「けど、みんなは違う」

 

ただ、彼女を止められないからといって残された道が存在しない訳じゃない。

みんなホシノの事を大切に思っているし、ホシノと同じでいくら論理的な理屈を並べられようと誰かを犠牲にする選択肢を選ぶような子は一人もいない。

そして、それを許さない『大人』もいる。

 

「これはホシノが決める事じゃない、意思」

 

「先生は、貴方の事を絶対助けるから」

 

騙されているという事はどうせ理解している、なら最初から救われる事を前提に考えてしまえば良い。

そうすれば、きっとダメージは小さくなる筈。

根本から変える事が出来るほどの力を私は有していない、ならば私は都合の良いように解釈する。

そんな都合の良い話があるか…否、彼女達は実際に救えるだけの技量を持っている。

 

「…いやぁ、そういう方向性は予想してなかったなぁ…」

 

否定せず、肯定せず、しかしてスルーもせず。

貴方がどうこうしようが勝手だが、何があっても後から貴方を無理矢理連れ戻しに来る。

一見すると無茶苦茶な内容だ、実際に言っている事は無茶苦茶にも程があると思う。

ただし、それで通るのならそれで良いのだ。

所詮は付け焼き刃の後付けだ、だがホシノは自分のやろうとしている事の内容的にもここで首を横に振れない。

 

「良いよ、待ってる」

 

…その言葉を他ならぬ彼女本人が言ってくれれば、みんな心置きなくホシノの下へ行く事が出来る。

出来るだけ早く、時間を掛けないで、そうすればきっと彼女の心に傷を付ける事もないだろう。

そうすればきっと、悪い方向へと拗れる事はないだろうから。

 

「ま、それはそれとして話が拗れても面倒だし…」

 

…あの、ホシノさん、どうして盾を構えてこっちにジリジリと近寄ってくるんですか…?

さっきまで良い感じの雰囲気だったじゃないですかやだー!!どうしてそんな乱暴するn

 

…またまた倒れた私が次に目を覚ましたのは、翌朝だった。




ヒノちゃんなりにですが、結構頑張りましたよ。
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