…ジーザス、最悪の目覚めだぜ全く。
悪い夢なら覚めてくれ…いや、最初っから夢みたいな事ばっか起きてるんだから今更これを悪夢だとは思わないけど。
それにしても目覚めは悪いんだよ、それはそれとしてってヤツなんだよ。
私に出来る事は、私に出来る精一杯はやり切ったつもりだけどそれで結果が伴ってないとすると…
…いやぁ、しんどいなぁ、ダメージが来るなぁ…!!
「うぇぇぇぇえ…」
まぁ、自虐もこれくらいにしておかなきゃキリが無いので…
自称メンタル強者を貫き通さなきゃやってけないんだ、これ以上ヒスってたら本格的に私は何も出来なくなっちゃう。
私に出来る事はまだある筈、そうさ、まだ絶望するような時間じゃないんだから…
いや絶望するような時間ではあるんだけど、一応ここからでもどうにかなるという事を知っているので…
「…にしても、にしてもなぁ…」
それでも独り言はやめられない、前世からぼっちの癖にひとりぼっちは寂しいんです。
まあ我ながら面倒くさい、とても面倒な性格をしているなとまた自己嫌悪モードに入りかける。
本当に駄目である、気絶前の出来事が出来事だったからちょっとメンタルが本格的に弱ってきているのか。
「ふへへ、しんど」
普段だったら一旦落ち着こうと深呼吸でもして、先生の後ろに隠れて、また他人に頼って…
…う〜ん!!また悪い方向に思考が進んでる気がするぞ!?
いや、そうじゃなくて、今はそんな事をしている場合じゃないから早く行動に移さなきゃいけないっていう話で。
自分一人の行動で何かが変わるとは思ってない、けれど行動しない事には何も始まらない。
「…行かなきゃ…」
私は相変わらず校内にいる、先生や他生徒の姿は見えない。
この場に留まるなんて選択肢は最初からないし、逃げるなんて選択肢を取れる筈もない。
というか、逃げるにしてもそれはそれで危険だし。
アイキャントエスケープ!!ディゲンヌッ!!
…とまぁ、どのみち行く以外の選択肢はないのだ。
机の上に置かれていた退部届と手紙を右手に持ち、丁寧に壁に立て掛けられた盾を左手に持ち。
…重いなぁ、なんて。
色んな意味で重いなぁ、なんてそんな事を思いながら教室を出て校舎に向かい。
いざ行かんと、いざ行かねばとその一歩を踏み出し…
「…行かなきゃ、だめかなぁ…」
◇◇◇
「うぅん、おかしいですねぇ…」
昨夜から今に至るまで、ホシノから連絡が返ってこないという言葉を聞いてアヤネに着いて来て。
連れられるがままに案内してもらい、ヒノとセリカを除いたいつものみんなとホシノの家の前に辿り着いたのが現状。
だが、どの窓を見てもカーテンは全て閉まっておりインターホンを押しても返事は返って来ない。
この様子だと、丁度すれ違ってしまったか…
“シロコ?何をして…”
と、そんな中でシロコが玄関の扉に手を掛ける。
物は試しと言わんばかりの表情でそのまま扉を開けようと、手を引き…
「…鍵、開いてる…」
ガチャリ、という音と共に何事もないように扉が開く。
電気は付いていない、朝だというのにカーテンが閉まっているからか家の中は全体的に薄暗く見える。
…なんだか、とても嫌な雰囲気を感じてしまう。
だがやはりというべきか人の気配は感じられず、とてもじゃないがホシノがまだ家にいるようには思えない。
「…ホシノ先輩、ホシノせんぱ〜い、聞こえてるなら返事をお願いします〜!」
そのアヤネの言葉に対する返答はやはりなく、僅かに響いた声が虚しく消えるのみ。
これまたみんなの表情が少しばかり険しくなる、万が一という可能性が少しずつ見えてくる。
とは言えまだ確証にまでは至らない、故に不安が残る中でもまだ断言する事は出来ない。
「えっと、失礼しま〜す…?」
だからと念には念を入れて、勝手に入るのはどうかと思うがそこは今は目を瞑るとして…
ノノミが先陣を切って家の中に入るものの、当然ながらホシノの姿がある筈もなく。
それに関してはほぼ全員察していたようで、やっぱりかといった感じの反応を各々がしている。
“…やっぱり、いないね…”
「既に学校に着いていて、いつも通り寝ているのかもしれませんねぇ…」
「じゃあ、先に学校へ行ったセリカちゃんに話を聞くため連絡を…」
確かにそういう事があってもホシノらしいというか、その可能性はあり得る話ではあった。
…のだが、それでも流石に昨夜から連絡が途絶えているというのは彼女らしくない。
仮に校内で寝ているにしても、その前に何らかの連絡をよこしそうなものである。
そう、音信不通なのだ、恐らくは行方不明なのだ。
「…いや、多分…」
“…そうだね、もしかしたら…”
そうなってくると、嫌な可能性が浮かび上がってくる。
最近の…風紀委員会の襲撃の時も含め、らしくない動きをしていたホシノ。
いつも不審な動きをしているのなら逆に良いが*1、それをしているのがホシノとなるとまた話は違う。
あの様子だと何かがあるのかもしれない、そう思い始めてきた矢先にコレなのだから。
そう思っていたのは勘の良いシロコも、もしかしたら他のみんなも薄々勘付いていたのかもしれない。
詳しい事は分からない、本人の口からその言葉を聞く事は出来ていないから。
彼女が一体何をしているのかも分からない、本人の口からその答えを聞く事は出来ていないから。
そう考えると話していたようで必要な会話は全然足りていなかった、人の事を言える立場じゃない。
そんな反省も、今更するべきものではないと。
そう現実を突き付けてくるかのように、ここら一体に轟音が鳴り響く。
「…先生、あそこ!!」
シロコが指差した先を見れば、いかにも襲撃を受けたと言わんばかりに火の手が上がっている。
それも一箇所からではなく、次々に様々な場所から火が、煙が、先程のような轟音が。
“煙…それに、火が…!!”
一体何処の誰の仕業なのだろうか、やはり考えられる一番の相手はカイザー。
だがここはアビドスの自治区、睨み合いが続いていた中で急にこんな大規模な襲撃を仕掛けてくるだろうか?
それともやはり、それを行えるだけの理由が、行うだけの理由があるのだろうか?
その理由も、今現在ホシノが失踪している理由と関係しているのだろうか?
「敵…応戦しないと…」
考えている時間はないと言わんばかりに続けて聞こえる轟音に、明らかに増えていく被害。
ヒノはまだ学校の保健室で寝ているだろうか、それとも既に目覚めているだろうか。
先に学校へ行ったセリカも大丈夫だろうか、道中で被害に遭ったりしていないだろうか。
もしかしたら、二人共校内で襲撃に…
「先生、指示をお願いします!!」
…やり場のない感情とはこの事か、私は一人しかいない。
物事に優先順位を付ける気はないし、やれる事は全てやるつもりだが時間というものは迫り来るもので有限だ。
今私の目の前にあるのは自治区に対する襲撃への対処、二人の事も心配だが同時進行で対処するのは無理だ。
それこそ、必要以上の被害を生んでしまう可能性の方がとても高い。
“…分かった、急ぐよ!”
目先の問題から、順番に解決していくしかない…
そんなジレンマに苛まれながら、彼女達と共に自治区に走り行くのだった。
シロコと先生とホシノとの退学届の下りがないから凄いややこしい事になってますわ〜!?!?!?