ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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失踪じゃないです、ちゃんと更新します。



遅れてやって来る者が、ヒーローだとは限らない

「ゼェ…ゼェ…」

 

耳を劈くような悲鳴、あちらこちらから上がる煙。

そしてそんな騒音の中でも聞こえる、自分の呼吸音と心臓の鼓動。

それ程までに物凄い速度で心臓がバックバクいってるのは後先を考えない無茶な疾走のせいか、先生達の状況に対しての焦りのせいか、はたまたその両方か。

そんな事を気にするのは後にするべきで、今の私はどれだけ早く先生達の下へ辿り着けるかを考えた方が良い。

 

「うわぁぁぁぁあ!?」

 

「早急に立ち去れ!!今この場所は…」

 

「負傷者が!!こっちに負傷者が!!」

 

…そもそも、辿り着けるのかという話ではあるのだが。

 

それはそれはもう容赦無く発砲を繰り返すカイザーの皆様、何処へ行こうが危険地帯。

もはや周りを見ずにがむしゃらに走ってはいるが、それも中々に辛くなってきているのだ。

体力の限界が近いというのは紛れもない事実だが、それ以上に精神的なダメージが大きい。

自分がテンション高めでいかなきゃ駄目になっちゃうのは分かっている、けれどもそれ以上に恐怖心がヤバい。

 

此処はキヴォトス、慣れ親しんだ日本じゃない。

今行われているのは日常と言えるような行為ではないが、それでも何処かの日常で起こり得てしまう事。

アビドスのみんなが銃を持って敵対勢力と対峙して、お互いに戦闘を行うのを見ているだけでもビビっていた。

そんな精神で一方的に、いとも容易く行われるえげつない行為を見て冷静になれる筈がない。

 

当然のように銃持ち出してるんだよ、この世界。

今までの戦闘は何処か傍観者だったというか、当事者って立場じゃなかったからなんだか他人事だった。

けど今の私はそんな風に区別されるような状況に立っていない、場合によっては今すぐに心の臓を撃ち抜かれたっておかしくはない。

恐らく死にはしないけど、そんな冷静な思考とは違って感情の方は怖いという言葉を連呼してる。

 

この惨状の中で、前向きになれる人物が果たしてどれだけいるのだろうか。

誰だって精神的に来るだろう、取り繕うとかそういう問題じゃない。

私に力が…いや力があったところでどうこう出来る規模じゃないコレ、元凶どうにかしないとダメなヤツ。

だが嘆いたところで何も始まらないし、一周回って私にとっての一番安全な場所は先生の傍。

ありえるのかも分からないような『いざ』に備えて無力な自分でも力になれるよう、私は道を歩むのです。

 

「待ってて、ホシノ…!!」

 

 

◇◇◇

 

 

悲鳴の聞こえる場所へ、煙の上がっている場所へ。

道中で何度か交戦を行った先で出会ったのは案の定と言うべきか、カイザーPMC理事。

どうやら自身の計画が上手く進んだらしく、上機嫌な彼はペラペラと現状を語り始めた。

 

ホシノは私達を、みんなの事を守るために自分の事をカイザーに対して売ったのだ。

 

そしてホシノがアビドスから離脱した以上、アビドスの生徒会は機能を完全に停止した。

 

もう既に、アビドスのみんなは何者でもないのだと。

 

ホシノも、他の対策委員会のみんなも、最初からカイザーに騙されていたのだ。

対策委員会はあくまで個人間で作ったグループのようなもの、委員会としての正式な力はない。

既にカイザーの行為を咎めるためのこちらが取れる手段は潰えてしまった、という事である。

 

当然だが私もみんなも、そんな事が認められる筈がなかった。

 

自分の居場所を守るために、信念を貫き通すために、銃を抜いたみんなの指揮を取る。

しかし足りない、大切なものが欠けている。

ホシノとセリカがこの場にいない事もそうだが、みんなの心の中に迷いが生まれてしまっていた。

ここを乗り切ってもホシノは戻って来ない、何をするにせよ先程カイザー理事が語った事は事実。

 

頭の片隅にそんな情報がちらつく中での戦闘となると、刹那刹那の判断に遅れが生じる。

ここでその迷いを振り払えるような言葉を掛けられない自身が不甲斐ない、指揮者としてそれはどうなのか。

だが今の私に出来る事はこれが限界であるというのもまた事実であった、限界一歩手前を維持していたのだ。

つまり、このままじゃいずれジリ貧で…いや。

 

“もう既に、ジリ貧…!!”

 

続々と援軍が到着する相手に対して、着々と疲労が溜まっていく自分達。

大逆転の一手、なんて都合の良いものを用意する時間も運も私には無かった。

焦りが見え始めた脳を戒めて、頭をフル回転させる。

どうすれば、どう行動するのが一番良い方向へ、どう判断するのが最善の答えか。

彼女達にとって一番大切なのは、どの選択か。

 

「もう諦めたらどうだ、もう結果は分かり切っているだろう?」

 

そんな此方の様子を見て、カイザー理事があからさまにそう言葉を発してきた時だった。

明らかに彼らのものとは毛色の違う、聞き覚えのある銃声が鳴り響いて来たのは。

 

「…やっと…見つ、けた…」

 

“ヒノ!!”

 

銃弾に撃ち抜かれ兵士が倒れた事により空いた隙間から走り寄ってくる少女が一人。

揺れる瞳に乱れる呼吸、ヒノだ、ヒノである。

だが違う、あの銃声を鳴らしたのはこの子ではない。

何よりヒノは銃を持っていないのだから、自力で道をこじ開ける事なぞ出来ない筈。

それに、あの銃声と紅い軌跡はきっと…

 

「有象無象が一人増えた程度で、状況に変化など…」

 

「そ、それが…!!」

 

「あら、サプライズはお嫌いかしら」

 

再び鳴り響く銃声、今度は理事の傍から状況を報告していた者の頭部が撃ち抜かれた。

その時に耳に届いたのは彼女の声、活動場所を移すと一度は姿を消した筈の彼女の声。

陸八魔アル、紛れもなくその人。

 

「残念ながら計画通りという言葉は、貴方が使うにはまだ早かったみたいよ?」

 

「………」

 

恐らくこの場にいる誰も予想していなかったであろう展開、当然ながら唖然とするカイザー理事。

そんな相手にも容赦無く言葉を続けながら、テンポ良く兵士達を撃ち抜いていくアル。

それとは別に、少し離れた一箇所で兵士の列が崩壊しているのが目に入った。

ショットガンの銃声に、怯えたような低い声。

 

「う、恨みはありませんが死んでください…!!」

 

アルだけではなく、ハルカの姿も確認出来た。

突如としての意識外からの奇襲に明らかにカイザー側の流れが崩れ、乱れが見え始めてくる。

持ち直した、まだ、まだ諦める状況じゃない!!

そんな願ってもいないような状況ではあるが、どんな理由があって彼女達は此処にいるのか。

 

「ふざけるな便利屋!!どうして…」

 

「どうして私が此処にいるのかって?」

 

私がその疑問を口にする前に当の本人達が問答を始め、問い掛けが終わるよりも早くに答えが返ってくる。

それは質問に対しての明確な解答ではない、本心を語るならただの彼女の善性が生んだ行動なのだろう。

それでも彼女には面子があり、誇りがあり、他の全てを投げ捨てても貫き通す信念がある。

尤も、彼女は全てを手に入れるやり方以外認めないが。

 

「覚えておきなさい、遅れてやって来るのはヒーローだけじゃないのよ」

 

理由なんてない、そこに助けを求める人がいたから。

アウトローが来たと、彼女は言い放った。

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