ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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日間inや感想でモチベが最高潮なので連日投稿です。
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誰も“お前”を愛さない

不器用な少女を送り出した結果、孤軍奮闘といった状況を繰り広げている私達。

ムツキとの連携は普段通りに、黒見セリカも戦闘慣れしている経験から此方に合わせてくれる。

たったの三人でもなんだかんだやれるものだと、自分達の事を少しばかり褒めてやりたい。

だが現実はそう甘くなく、都合良く回るものではない。

 

「減らないんだけど!?むしろ増えてない!?」

 

「あっはは!!ちょっと洒落にならないかも〜!!」

 

もうどれだけ戦闘を続けているだろうか、少なくとも何事も無ければヒノが先生の下に辿り着く程度の時間は稼げたと思う。

それだけ長い間これだけ人数差のある戦闘をしていれば、当然浮上してくる問題がある。

 

「戦力差はどうにでもなるけど、消耗が激しいね…」

 

物量の差、資源の差、体力の差。

此方はカツカツのリソースを考えながら消費しなければいけないのに対して、相手方はそれはもう好き勝手出来る。

此方がどれだけ疲労を感じていても、相手方は人員がどんどん入れ替わるのだから体力は無限のようなもの。

それに対して明確に此方側が上回っていると言えるのは、技術力くらい。

分かりやすく、追い詰められ始めていた。

 

「ジリ貧じゃない…どうにかならないの…!?」

 

「う〜ん、元凶を叩くのが一番なんだろうけどソッチはアルちゃんの方が対処してるっぽいし…」

 

正直な話、ここから逃げたって良い。

どれだけ切り捨てた所で痛手にならないような下っ端を処理しても、根本の問題は解決するだろうか?

いいやしない、元凶をどうにかするしかない。

ならばここから今すぐにでも逃走して、社長達と合流するのが良いのではなかろうか?

黒見セリカには悪いが、それが一番合理的な判断…

 

そう、ロジカルに考えればそれが最善だろう。

 

だが、社長は果たしてその選択をするだろうか?

 

だが、社長は私達にそう指示してくるだろうか?

 

いいや、アルがそんな事する訳ないね。

 

「私達は私達に出来る事を、か…」

 

この場を防衛し続けるのが、私達の役目。

別に防衛に拘らなくたって良い、アレらを全て片付けてしまっても構わないのだ。

仕事は徹底的に完遂する、それが私達。

 

「つまりはここにいる全ての敵を…」

 

背後から爆発音、僅かに遅れて聞こえてくる絶叫。

 

「ぶっ殺せば、良いんだよねぇ!!」

 

どうやらムツキも、ギアが上がったようだ。

 

「…やるしかない…気合い入れて行くわよ!!」

 

この中で一番モチベが、戦う理由がある彼女は言うまでもなく。

消耗しているからなんだ、私達全員が折れるまでは負けてない。

そして、折れてやるつもりなんか最初からない。

 

「そっちは任せたよ、社長」

 

便利屋68の課長として、私は銃を握るだけだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「髪!!髪の先端焼けたわ今!!」

 

私より少しばかり遅れて遮蔽物へと隠れたアルが、そんな事を叫びながら白目を向いていた。

ゴリアテから放たれた攻撃、私からは避けきれているように見えたのだが…

そう言われてみると、なんだか焦げ臭い気がする。

まあ些事である、物理的なダメージは皆無だ。

 

「ん、大丈夫、私が無事で良かった」

 

「ちょっとぉ!?」

 

ただアレは直撃したらまずい、掠るだけでも正直怪しい。

今の段階でも拮抗するのがやっと、もはやそれすら出来ていないというのにここで戦力が欠けるのはダメだ。

意地でも避けなければいけない、流れ弾が行くような事態にもなってはいけない。

そもそもの話、これ以上撃たせてはいけない。

 

「アル様の綺麗な、大切な髪を…死んで、死んでくださっ…!?」

 

「っと、危ないですよ〜」

 

吹き飛ばされたハルカの身体をノノミが受け止める。

直撃は受けていないようだが、それでもあの衝撃…

考えたくもない、余計な思考は脳から省く。

どうやったらアレを“倒せる”のか、どうやったらアレを“倒した”と言えるのか。

 

「…先生、アヤネ、何か打開策とか…」

 

「隙は伺っているんですが…」

 

“考えてる、けど…”

 

一筋の希望を追い求めて、後方で指揮に回る二人にそう問い掛けてみるも…

 

“ちょっと、キツいかも…!!”

 

ご都合主義の作り話じゃないんだ、そう簡単に盤面をひっくり返すような作戦は出てこない。

しかしながら行動を起こさない事には何も始まらない、何か違う方向からアプローチするしかない。

ならばどうする?不意を突くのが一番現実的か?

どうすれば不意を突ける?どう慢心を誘う?

 

「シロコ、耳を貸しなさい」

 

その時、横にいるアルから発せられた一言。

 

「手短に」

 

「ハルカが体勢を立て直し次第、私も前に出るわ」

 

彼女の持つ得物は、狙撃銃。

素の身体能力の高さや戦闘センスから、最前線に出ても立ち回る事は出来るだろう。

しかしながら、当然パフォーマンスは落ちる。

一部の例外を除いて、一人一人が全う出来る役割というのは決まっているのだから。

彼女の本領は、後衛からの指示と狙撃。

 

「ヘイトは買ってあげる、見せ場は譲る事になるけど…」

 

だが、彼女の言わんとする事はそうではない。

 

「一撃で、仕留められるわよね」

 

本命()のための囮になるのだ、彼女は。

 

「出来ないとでも?」

 

「いえ、貴方なら出来て当然よ」

 

不意打ちを前提とした上で、明らかにリスクリターンの合っていないと言える作戦。

だからなんだ、立ち止まっていてこの状況が好転すると言えるのか?

やるしかない、そして、やるからには全力で。

目配せをした後に頷き、実行に移す。

 

「何度向かって来ても、同じだと言っているだろうに!!」

 

ハルカの後ろに張り付く様に、同タイミングで駆け出したアルの姿を確認して私も行動を始める。

悟られないように、見つからないように。

私の姿が見えない事で怪しまれる、という可能性を無くすために道中で何人かの兵士を倒して。

それでいて、出来るだけ理事の視界に映らないように。

 

「あら、私の事を過小評価すると痛い目を見るわよ」

 

ハルカは攻撃を受け止めない、あくまでアルにヘイトが向くように。

それでいて、致命となる一撃は確実に受け流す。

距離を詰める、距離を詰める、視界を彼女一人で埋め尽くせるように。

 

「巻き込まれる事に怯えるな!!もっと、もっと理事の周りに戦力を…」

 

「あらら、ここは通しませんよ〜♤」

 

此方が何か企んでいるのを察したのか、集団で固まろうとしたカイザーの兵士達をノノミが蹂躙する。

これで私は自由に動ける、後は…

 

「良いのか?後衛が最前線にノコノコ出て来て」

 

「バカね、前に出てこそのリーダーよ」

 

理事の目の前まで肉薄したアルは、片手で狙撃銃を構える。

その銃口をゴリアテへ向けると、一発。

 

放たれた弾丸は当然と言うべきか、ゴリアテに致命的な傷を付けるまでの威力を発揮するには至らなかった。

バレバレな軌道、あからさまな一撃、防ぐ事が出来ない方が悪いと言うほどの馬鹿正直な攻撃。

しかし、着弾すると同時に爆発したその弾丸は私の気配を隠す役割は完璧に果たした。

 

飛び上がり、背後から、全力の一撃を。

 

「…捉え…っ!?」

 

しかしながらカイザーPMC理事、彼とて馬鹿ではなかった。

既に一度屈辱を味わわされている上で慢心をする程、彼という男は甘くはなかった。

視界に映っていない筈なのに、まるで知っていたかのようにゴリアテの砲身は此方へ向いていた。

目の前にいるアルとハルカには目もくれず、此方へ。

 

「私が“釣られた”形…!!」

 

最初から、狙われていた。

ここで私が落ちるのはマズい、駄目だ。

それを理解した上で誘導された、慢心しているのは私の方だった。

甘く見ていた、どうにかなるだろうと。

今から避ける?防ぐ?どうやって?

 

無理だ、空中に身を乗り出したのが悪手だった。

足場がない以上、ここからどうにかする程の機動力は私にはないんだから。

アルが銃を構えたが、恐らくもう遅い。

此方が与えるダメージよりも、私が欠けるダメージの方が明らかに多い。

相打ちじゃ駄目なんだ、食らっちゃいけない。

食らっちゃ、いけない、けど…

 

「最初から、そんな事だろうと思っていたよ」

 

視界いっぱいに広がる光は、私の身体を包み込んで。

瞬間、誰かの叫び声が聞こえたような気がした。

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