ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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会話量が跳ねちゃった関係でいつもの2〜3倍くらいの長さです。
読者様方のお気に入り部分が分かると嬉しいので、ここすき等してくれると非常にありがたいです。



笑って許せるのは自分の事だから

私はこの世界におけるイレギュラーである。

 

それも意図して物語に介入する事になったわけではない、読んで字の如く異常存在。

招かれるべくして招かれた者、自らの意志で此の地へ赴いた者。

私以外にもイレギュラーと呼べる存在はいるものの、それとこれとでは在り方が違う。

 

私は何故、キヴォトスに転生する事になったのか?

 

ラノベのタイトルとかにありそうな問い掛けだね、完答出来たら100点満点花丸をあげちゃおう。

因みに答えは私にも分からない、分からないからこその一連の流れである。

 

“安留ヒノ”としての自分の事を微塵も理解出来ていない現状、そんな中で送られてきた黒服からの手紙。

まあ過剰なビビり方をしたけれど、その内容は先生御一行に対する招待状でしかなかった。

脅し文句的な文言は書かれていなかった訳だ。

 

御一行と書かれている事からも分かる通り、十中八九私も誘われてる感じだけどね。

 

私経由で手紙を渡したのは正解だったよブラックスーツさん、先生に直接渡してたらあの人絶対一人で来てたもん。

御一行って書かれてるのに私と二人きりで来てるのがその証拠だ、多分私にも着いて来て欲しくなかったんだろうけど…

そこはもう、なんというか流れで着いて来た。

手紙の存在を知られた時点で私相手に“誤魔化す”って選択肢は取れなかっただろうし。

 

そんなこんなで、不思議と近寄り難い雰囲気を放つビルの前に我らは二人。

 

“…ここから先の事は君達にとって関係のない…いや、関係してはいけない事柄だ”

 

当然だけど先生からしてみれば、私に着いて来てほしくはないだろう。

そこまで付き合い長くないしお互いの事も全然分かってないし、無闇に私を巻き込みたくないんだろうね。

ちょっと状況が状況というか、相手が相手だし…

 

“突き放すつもりはないけれど、それでもと言うならしっかりと君の意思を…”

 

それはそれとして、私にも自分から着いて行くという選択肢を取った理由がある。

 

「無関係じゃない」

 

それは明らかに招かれていたから、って言うのも当然理由の一つとしてはあるんだけど…

 

「アレと顔を合わせる必要が、私にはある」

 

まあ私がどうしてキヴォトスに存在しているのか、って話の続きだよね。

元々現代日本に生きていた私がこうして転生してるんだ、ゲマトリアが裏で色々やっててもおかしくはない。

というか理由の一つとして考えられるのがそれというか、だとしたら私の存在自体が厄ネタというか。

 

あんまり想像はしたくないけど、そこら辺の確認を取っておくのは大事だよねって話。

 

自覚症状があるのとないのとでは話が色々別だからね、私は自覚症状が全くないタイプだから余計に!!

そんな理由もあって、この機会にそれっぽい話を聞けたらいいななんて思っていたのが理由の一つ。

もう一つは、ちょっと黒服に対してキレてるから。

 

“ありがとう、それなら私は咎めないよ”

 

分かってて止められなかった私も悪いけどさぁ!!

やっぱりホシノがこうやって苦しんでる原因となってるのは黒服の存在があるからこそでぇ!!

ちょっと一言くらいは言ってやりたいというかぁ!!残念ながら自分から喋れる自信は微塵もないけど。

 

脳内でキレ芸を披露している間に時間はどんどんと過ぎて行き、気が付けば現在位置はエレベーター。

アナウンスの音が聞こえたと思えば扉が開き、その先には当然ヤツが待ち構えていた。

 

「お待ちしておりました先生、そして安留ヒノさん」

 

ゲマトリア第一の刺客、黒服。

見た目がカッコ良くて結果的にいないと困るから許されている、物語における悪役。

因みに私はキャラとしては好きでした、だって異形ってカッコ良いんだもん…

 

「貴方達の事は知っています、と言いたいところですが私とて全てを知っている訳ではありません」

 

此方の言葉を待つなんて真似はせず、エレベーターから降りて来た私達に一方的に話し続ける彼。

一言一言に重みが、というよりかは得体の知れない不思議な圧がある。

息の詰まるような重々しい空気が、場を占領する。

 

「連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在、シッテムの箱の主であり連邦捜査部シャーレの先生」

 

「その傍らに突如として現れた生徒、私達とはまた違う方向から干渉する力を持った少女」

 

先生の事と私の事、情報を並び立てて語る。

とは言ったものの足りないところが多々あるというか、あくまで大まかに把握しているだけのようで。

文字通り、ある程度知っているだけのようだ。

そしてこの時点で黒服が私の事を“知らない”事が確定した、他のゲマトリアメンバーが変な事でもしてない限り私はゲマトリア関連の厄ネタではないと思って良さそう。

 

やったね!!心配していた事が一つ減ったよ!!

じゃあ余計に何なんだよ私は!!あぁ!?

 

「個人的な評価を述べるとするならば、私は貴方達と是非とも手を組みたい」

 

私という存在はあるが、あくまで原作通りに話は続いていく。

 

「私達の計画において一番の障害になりうるのは、私達の計画において不確定要素となりうるのは」

 

先生の持つ影響力はゲマトリアにとって邪魔になると、私にも同じ事を言ってるっぽいけど流石に過大評価な気がするぜ黒服さん…

わざわざそれを口に出す必要はないので黙っておくけど、過度に警戒して貰える方がこの場合は都合が良いし。

 

「貴方達は私達にとって、些事として看過する事の出来ない存在なのです」

 

それくらい君達が存在する影響はデカいんだよ〜、と伝えてくる黒服。

計画を遂行する以上予想の出来ないガバは減らしていきたいよね、ガバが許されるのはガバガバRTAくらいだから…

と、そもそも目の前の彼が何者なのか伝えられていない先生がここで口を開く。

たとえ“察して”いたとしても、直接本人の口から“聞く”まではそれは事実とはなり得ないから。

 

“貴方達は、一体何者?”

 

その一言によって自己紹介を忘れていた事に気付いた彼は、ハッとしたように己の事を話す。

 

「私達は貴方達と同じキヴォトスの外部から訪れた者…尤も、別の領域の存在ではありますが」

 

彼らは観測者、彼らは研究者、彼らは探究者。

キヴォトスの外から来訪した彼らは、嘗て存在した組織の名前を拝借しこう名乗る。

 

「先人達の適切な名前をお借りして、今は“ゲマトリア”と名乗らせてもらっています」

 

そして彼はその中の一人、ホシノから呼ばれたとある名称を語る。

 

「そして私の事は“黒服”と、この名前が気に入っておりましてね」

 

自己紹介も済んだ事だし、アイスブレイクでも…

あぁ、いらないか、そっかぁ、そんな空気じゃないもんね…

先生と黒服の視線が明らかにバチってるのを横目に、私は現実逃避を行います。

状況が状況だし仕方ないんだけど、お互いに牽制の仕方がガチのソレである。

 

「…一応お聞きしますが、ゲマトリアと協力するつもりはありませんか?」

 

“断る、そんなつもりは微塵もない”

 

普段の口調や声色とは違い、明らかに語気を強く。

鋼の意志であると言わんばかりに誘いを断ると、再び黒服の事を睨みつける。

牽制合戦再びである、どちらかが一歩踏み出すまではこの地獄の空気感が変わる事はない。

私まで胃が痛くなってきた、胃薬をくれると非常に助かる…

 

「では、そちらの貴方は?」

 

…私!?私も対象なの!?先生とは別で!?

セットとかじゃないんだ、私単体でも良いんだ…

まあ完全に予想外って訳でもなかったけど、そんな事を聞かれたところで答えなんか一つしかないし。

 

(先生)がそう言うのなら、私もまた同じ」

 

「…左様ですか、えぇ、左様ですか…」

 

もし私がゲマトリア側に付く事で結果として上手くいくって言うならちょっと考えるけど…

いやそれでも本当の本当に必要な時だけだな…ちょっと自ら望んでアレに混ざりに行くのは嫌だな…

 

「実に魅力的な提案だと私は思うのですが、この提案を断ってまで貴方達はキヴォトスで何を追求するおつもりで?」

 

まあ魅力的ではあるんだと思う、私は全く魅力を感じないけど人によっては喜んで飛びつく提案なのかもしれない。

対価というかそのために犠牲になる子達の事を考えると、あまり乗り気になれる人はいないと思うけど。

 

“私はただ、ホシノを返してもらいに来ただけ”

 

先生がここに来たのは、ホシノを返してもらうため。

何があろうとその目的は揺るがない、何があろうとその結末は譲らない。

 

「…ククッ、クックックッ…」

 

その言葉を聞くと、堪え切れないと言わんばかりに黒服が笑い始めた。

何がおかしい、言ってみろ!!

…いや実際彼からしてみれば“笑える”言葉である事は間違いないんだけどね、この反応もおかしくない。

 

「これは交渉の場です、今の貴方にはそんな要求をする権利など無いのでは?」

 

彼からしてみれば、今先生が言った言葉はただの我儘でしかないから。

既に契約の上で成り立った事象を、感情論と根性論だけで覆そうとしている愚か者の言葉だったから。

 

「小鳥遊ホシノは既にアビドスの生徒ではありません、貴方は確かに届出を確認した筈…」

 

その前提があるからこそ、黒服は笑った。

 

“私は、対策委員会の顧問だ”

 

その前提を覆すからこそ、先生は続けた。

 

“顧問である私がサインをしていない退部届に、彼女の所属先を変えるための効力はない”

 

「なるほど、なるほど…」

 

屁理屈である、ペラを回しただけに過ぎない。

が、この世界において相互作用する概念というのは大きな力を発揮する。

そこら辺の事は私は詳しくないので、有識者の皆様にお聞きしたいところなんですけどね!!

残念ながら有識者のプレイヤー様方はこの世界にはいない、強いて言うなら目の前にいるブラックスーツが有識者である。

 

「…ふむ、こうなってくると中々に厄介な概念ですね」

 

素人質問で恐縮ですが、どこら辺が厄介なのでしょうか…?

正直な話をするなら今すぐにでもそう聞いてやりたいが、話に着いて行けてないわけではないのでお口にチャック。

シリアスなところはしっかりシリアスにやらねばならない、これが真面目な話だからこそ尚更。

 

“貴方達はあの子達を騙し、心を踏み躙り、最初からそうするつもりでその苦しみを利用した”

 

止まらずに責め立てる、事実を並べ立てる。

彼らは自身の目的のために、他者の目的を蔑ろにするかのような立ち回りを披露して見せた。

残酷な現実である、既に起こってしまった事だ。

 

「仰る通りです、他人の不幸よりも自分達の利益を優先しました」

 

が、そのような事に罪悪感を抱く黒服ではない。

 

「善悪を問われれば、自分自身ですら悪だと答えるような行動です」

 

たとえ自分が悪役として立ち回っていたとしても。

たとえ自分が善行を貶すような行動をしていても。

 

「しかしあくまでルールの範疇です、私達は都合の良い全ての元凶ではありません」

 

それはルール違反ではない、それは非情な現実でしかない。

 

「不幸にも襲い掛かってきた災害を利用し、私達はその機会に付け入った…」

 

アビドスが異常気象に見舞われたのも偶然だし、そこに彼が目を付けたのも偶然。

全ては偶然の出来事で、結果として彼が悪役として収まっているというだけの話。

何から何まで彼が全て仕込んだという訳ではない、元凶であれど諸悪の根源ではない。

 

「ただそれだけの事です、実にありふれたよくある話でしょう?」

 

彼の行動を咎めようと、過去は消えないのだ。

 

「貴方が責任を取るべき事象ではない、持つ者が持たざる者から搾取する」

 

それはキヴォトスに限った話ではない、何処にでもあるような無意識下で分かっているような常識。

自然と生まれた上下関係、現代的に落とし込まれた弱肉強食の具体例。

 

「貴方達のよく知る世の中の形です、そこに何か間違いがあるのでしょうか?」

 

私は悪いかもしれない、それはそれとして私は悪くない。

そう言わんばかりの発言の反発、しかしてそれを咎める事が私達に出来るのだろうか?

所謂レスバの上手いやり方である、ここで私達が反論すればそれらの発言は全てブーメランと化す。

私達は完璧超人ではない、私達は善行だけを積んで生きてきたわけではない。

 

「そういう事で、理解は出来た筈です」

 

それらの前提を全て含めた上で、彼は私達に“理解”させようとしてきた。

 

「アビドスから手を引いていただけないでしょうか?」

 

あくまで、自分の非も認めながら。

 

「彼女達が報われないのが気に食わないというのなら、私の方でアビドスの事は守ってあげましょう」

 

あくまで、此方へ利益を提示しながら。

 

「ホシノさえ諦めてもらえればの話ではありますが」

 

反論の余地を潰して、反抗の意思を潰して。

 

「そしてこれは、ホシノ自身も望んでいる事の筈」

 

最後の最後に“彼女自身”を例に挙げる事で、完璧とも言える提案の仕方をしてみせる。

 

“断る”

 

だが完璧すぎるのは時として逆効果になる事がある、それこそ最初から話を聞くつもりのない。

意志を曲げるつもりのない、頑固者を相手にしている時とか。

 

「…どうして?」

 

その疑問も当然である、彼からしてみれば先生の発言は衝動的に言っているだけにしか聞こえない。

 

「貴方には私達と戦う手段などない、それでも私達と敵対すると言うのですか!!」

 

何処にそれだけの発言をする力が、その質問に対する答えはすぐに提示された。

懐から取り出された、たった一枚のカード。

何の変哲もないように見えるクレジットカード、それは彼らの間でこう呼ばれる。

 

「…悪い事は言いません、私はソレのリスクを薄っすらとですが知っています」

 

先生の持つ一つの武器、大人のカードと。

 

「貴方の生が、時間が、使えば使う程に…」

 

それは代償の上で成り立つ、強大な力。

それは犠牲の上で成り立つ、盤外の力。

 

“ブルーアーカイブ”を知る私でもよく分かっていない、メタフィクションの権化とも言えるアイテム。

 

「そのカードはしまっておいてください、貴方にも貴方の生活がある筈です」

 

黒服はその危険性を知っていた、理解していた。

当然ながら先生自身も、それを理解していた筈。

 

「無意味でありながら有意義な、貴方自身にとっての大切な事に使うべきでしょう?」

 

睡眠、食事、通勤、運動、入浴、えとせとら。

やろうと思えばいくらでも出来るような日常をなぞるための莫大な時間。

それらを無駄にするような真似をするなと、黒服は忠告する。

本心から、理解し難いモノを見るような瞳で。

 

“何を言われようが、断る”

 

それでも先生は引き下がらない、引き下がる筈がない。

ここでみすみすと引き下がるような人物だったら、最初からカードを取り出す真似なんかしていない

それは脅しの道具ではない、必要ならば使う事を躊躇わないという意志の象徴。

 

「なぜ?」

 

 

なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?

 

 

「理解出来ません、なぜ断るのですか?」

 

…ぞわってした、いや実際に目の前で見ると怖いね。

目の前にいる大人の言葉が心底理解出来ないと、単調な疑問を反復する。

 

「どうして?一体それは何のため?それにはどんな理由があって?」

 

確かに彼には理解の及ばない事かもしれない、確かに彼には考える必要のない事かもしれない。

 

“あの子達の代わりに責任を取る大人が、一人もいなかったから”

 

それでも先生にとっては、何よりも大切な事だった。

 

「…だから、貴方が責任を取るとでも?」

 

そしてそれは私にとっても、同じだけの意味を持つ事。

 

「赤の他人である貴方が、どうしてそこまで?」

 

そうだ、どこまで行こうと赤の他人だ。

血は繋がってないし出会ってから1年も経ってないし、入れ込みすぎだと言われても仕方がない。

それでも自分の通う学校を愛して、自分達の大好きな先輩のために奔走している少女達がいた。

 

「あの子は、最後の最後に助けを求めた」

 

だから私は口を開いた、それは必要だからじゃない。

私が彼に言ってやりたかったから、私はここで黙っていたくないと思ったから。

 

「甘える先を知らなかった子供が、糸の切れる寸前で誰かに支えてもらおうと手を伸ばした」

 

きっかけがなんだったかなんて私には分からない、もしかしたらほんの些細な出来事だったかもしれない。

それでも彼女が助けを求めたという事実がそこにあった、彼女が弱音を吐いたという事実がそこにあった。

 

「私には、その手を掴む事は出来ない」

 

どれだけ焦がれようと私は主人公じゃない、どれだけ手を伸ばそうと私に彼女を救う事は出来なかった。

けれど、それでも、たとえそうだったとしても。

 

“それでも誰かが、その手を掴もうとしたという結果は残った”

 

その行動は、確かに主人公の目に留まった。

 

“ならば私は、一緒に手を差し伸べる義務がある”

 

その行動は、確かに主人公の手を動かした。

 

“それが大人の…いや、私達のやるべき事だから”

 

私は大人じゃない、たとえ元が大人だったとしても。

今の私は嘗てそうだったという影を纏うだけの、見た目通りの子供に過ぎない。

それでも私には、私のやるべき事があるから。

 

「…無意味だと感じました、私は貴方達の選択に対して疑問が膨れ上がるばかりです」

 

どれだけ理由を語ろうと、彼には理解が及ばない。

理論の話ではないのだから、理屈の話ではないのだから。

 

「敢えてもう一度聞きましょう、なぜ?」

 

そこに大層な目的なんて、きっとないんだろう。

それでも私達なりの目的はあるし、頑張るだけの価値はある。

 

“…言ってもきっと、理解出来ないと思うよ…”

 

青臭く言うのなら、彼女達の笑顔のために。

 

「…交渉は決裂ですね、私は貴方達の事を気に入っていたのですが今後は“そう”対応させていただきます」

 

これでゲマトリアとシャーレは明確に敵対する事となった…

手を組みたいと言えばいつでも歓迎はしてくれるだろうが、そんなつもりはないのでコレは確定事項だ。

私達にとって、彼らは宿敵となった。

 

「ホシノはアビドス砂漠のPMC基地中央にある実験室にいます」

 

黒服は語る、交渉が決裂してしまった以上は隠し続ける意味がなくなってしまったから。

 

「『ミメシス』で観測した神秘の裏側(恐怖)を、生きてる生徒に適用する事が出来るか実験するつもりでした」

 

カイザーの事は切り捨てるつもりなのだろう、元々黒服にとって彼らの事など気にする事ではなかっただろうから。

 

「もし失敗した時にはあの狼の神が代わりに、などと思っていたのですがどうやら前提から崩れてしまったようです」

 

自身の計画を粗方語り合えた彼は、呆れたようで何処か感心したような目で先生の事を見つめ直す。

 

「精々頑張って生徒を助けてあげると良いでしょう、微力ながら幸運を祈っております」

 

その言葉を聞き終えた瞬間に、先生は黒服に背を向けた。

もうこれ以上、話す事はないと言わんばかりに。

 

「私達は、貴方達の事をずっと見ていますよ」

 

反応は示さない、あくまで無視の姿勢を貫く。

 

「その前提がある上で、最後に一つだけ質問を」

 

それでもお構いなしと、黒服は言葉を続ける。

 

「先生はそっぽを向いてしまったようなので貴方に一言、安留ヒノさん」

 

…私!?この流れで私に来るの!?ナレーションだけに徹してたかったんだけど!?

あんまり気乗りはしないけど、無視するのもなんかアレだし答えられる範囲で答える事にして…

 

「貴方は一体、何なのでしょうか?」

 

一体何なのか、と聞かれましても…

私自身にもよく分かってないし、一番それを知りたいのは私自身なんじゃないかなって。

 

「貴方達には、どう見える?」

 

だからこそ、聞き返す。

 

「実に興味深く、実につまらなく見えました」

 

黒服から返ってきたのは、矛盾した答え。

だが恐らく、彼がそう言うのなら今の私は“そういう存在”なのだろう。

 

「それが答え、だと思う」

 

「…えぇ、今はそういう事にしておきましょう」

 

体力を使い切ってしまったのか、この後の事はよく覚えていない。

意識がハッキリとしたのは、次の日の朝だった。

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