対策委員会の部室、もう座り慣れた“自分の席”。
対策委員会のみんなも、シャーレとしての私達も。
俗に言う後処理を終えて、今は所謂エピローグ。
って言っても私は大した事してないし、ほとんどは先生が動いてた感じなんだけど…
そこはまあ、適材適所って言いますか…?
私に適した場面はあるのか、それは謎である。
「アビドス対策委員会の一日は、まだまだ慌ただしいです」
あの後、対策委員会は先生の公的な認証によってアビドスの正式な委員会として承認された。
二度とあのような事が起こらないようにと、やれる事をやった形である。
非公認の委員会だったせいで、色々と酷い目に遭ってきたんだから賢明な判断だよね。
これで全部が解決するって訳ではないだろうけど、それでも幾分かはマシになる筈だ。
「そういえば、セリカちゃんがヒノさんに…」
…私?先生じゃなくて?私に対して?
いや何を言われるか予想が付かない、ちょっと怖いよ…
セリカがそういう子じゃないっていうのは分かってはいるけど、分かっていてもちょっと怖いよ…
「確か、こう言っていました」
果たして何を言われるのか、内心ビクビクしていたところで口に出された伝言。
『いつでも歓迎するから…たまには柴関までラーメン、食べに来なさいよね!!』
「…そう、伝えておいてほしいと」
…ツンデr…セリカらしい言葉だなぁ、なんて感想を言っておこう。
そう言われてしまったら仕方がない、何度だって訪ねてあげよう。
たまにはなんて言葉じゃ収まらないくらい、何回も何回だって食べに行こうじゃないか!!
常連さんになってあげる、私が便利屋に続く柴関ラーメンの常連さんだ…
そもそも一人で行ける店、柴関くらいしかないし…
悲しい現実である、多少は“マシ”になったとはいえやっぱり初対面の相手にはコミュ症爆発しちゃうのだ。
「色々と問題は解決しましたが、アビドスの借金は変わらず9億円のまま…」
そこに関しては、どうしようもならない。
先生の力を借りていたのは“アビドスがルール外の悪事”で苦しめられていたという事実があったからで、これ以上先生が権力を振るう事は出来ない。
まあ肩入れは出来るんだけど、私達の手伝いによって減る借金なんてたかが知れている。
これに関しては、付き合わなければいけない。
これからも向き合わなければいけない事だ。
「ですが、カイザーローンは諸々の悪事がバレて連邦生徒会の捜査が入るとの事でした」
ブラックマーケットの大企業、良くも悪くも見て見ぬフリをしていた連邦生徒会と言えど…
ここまで大々的に事を起こされちゃ、流石に対応せざるを得ない。
「…正直これでどれだけ事が上手く行くかは分かりませんが、きっと少しずつ良い方へと向かってくれる筈です」
カイザーローンの行く末についてはここで語られる事ではない、私の知る道筋へ行くとも限らない。
だけどきっと、悪い方向には行かないんじゃないかな。
何はともあれ、状況は良い方向へと向かっているなんて考えられるくらいには余裕が出来た筈だ。
「そういえば、カイザーコーポレーションの理事長はあの後生徒誘拐事件の容疑者として指名手配されたようですよ」
これに関しては黒服やカイザーの上層部が、ある事ない事彼に全部押し付けた結果だろう。
都合の良い捨て駒となってしまったわけだ、同情する気は起きないけどちょっと可哀想だね。
南無南無、でも少しは痛い目を見ろ。
「…すぐに捕まるかどうかは、怪しいですけどね…」
…うん、まあ、うん…(アロハ理事を脳裏に思い浮かべながら)
「トカゲの尻尾切りって言うんでしょうか、大人達はちょっと怖いです…」
彼もなんと言うか、可哀想な大人だったというわけだ…
それはそれとして、今までやってきた悪事の数々に対しての報いを受けるべきだと思うの。
強く生きろカイザーPMC理事、その先できっと…
…もう一回、叩きのめされるから…ね?
「無理に引き上げられた利子は常識的なモノへと引き下げられたので、そこは助かりました」
初邂逅時に脅しとして引き上げられた利子は、元の常識的な利子へと戻ったらしい。
って言っても私はその場にいなかったから、これは私にはあんまり関係のない事だね。
既に終わった事だけど、本当に気絶してばかりの初仕事だったよ…
本当に、そのせいで余計なトラブルが起きた節があるから反省をしなければならない。
「アビドスの自治区の大半は、未だカイザーに所有されたままです」
取引自体は違法じゃなかったから、これは当然。
借金と同じで一度行われてしまった事は、そう簡単に消えてなくなるものではない。
「でもそれは、これから考えていく事ですから」
しかしこれは後で、ゆっくりと解決策を考えていく問題だから。
「そ〜そ〜、今はゆっくり休むべきだと思うなぁ〜」
そう、今は少しばかりの休息を。
「先生もヒノちゃんも、一緒にお昼寝しない?」
扉を開ける音と共に、欠伸をしながら部室へと入ってきたホシノ。
そこに私と先生の姿を見つけると、ニヤリと笑ってそんな提案をしてくるのだった。
“う〜ん、魅力的な提案だけど…”
やんわりと断る先生に、遠慮なく詰め寄っていく彼女。
そんな様子を眺めていれば、アヤネが私個人に話しかけてきた。
「…対策委員会は、変わらず元気に過ごしています」
それは、今回の件で導き出された一つの答え。
「変わらない日常、何よりも嬉しい日常」
彼女達にとって一番大切な、手放せない数々の想い。
「本当に、ありがとうございました」
まだまだ続けていく、これからが本番の物語。
だけど一時的にでも肩の荷が降りた彼女は、軽く頭を下げると笑うのだった。
「アヤネも、お疲れ様」
「なんだか、初めて名前を呼んでもらったような気がしますね…」
…マジで?いや、そんな事はないと思うけど…
いや、呼んだ事なかったかもしれない…心の中で呼んでただけかもしれない…
ごめんアヤネ、割と長い時間一緒にいたのにマトモに話せなくて本当にごめんね…!!
今なら話せ…ん、いや、うん…ちょっとくらいなら、お話出来ると思うから…
「ほらほら、ヒノちゃんも一緒にお昼寝する〜?」
アヤネへの申し訳なさが限界突破しかけたところで、先生にちょっかいを掛け終えたホシノがそう聞いてくる。
彼女の笑みがどれほど解放されたものなのかは分からない、きっとまだ引き摺っているのだろう。
残念ながら私はアビドスの“これより先”のお話を最後まで知らない、多くを語る事は出来ない。
けど、今はまだそんな事は考えずに。
「うん、いいよ」
目の前にいる彼女と、今を生きるべきだろう。
「…ダメだよヒノちゃん、そんな表情でそんな事を言われちゃったらおじさん自制出来なくなっちゃう」
…ぇ、私どんな顔してた!?なんか変な事言った!?
いや言ってないよな、質問に対しての解答を示しただけだし…
もしかして冗談のつもりで言ってたのに、私が変に本気で返したから内心で惹かれてる…?
んー!!分からない!!コミュニケーションが下手くそ!!
「冗談じょーだん、いや全部が全部冗談ってわけでもないんだけど…」
冗談なら良かった…どこが冗談じゃなかったのか、そこが問題なわけだけど…
まあ、そこを追求したらきっと私は死んでしまうから聞き流す事にして。
「ヒノちゃんが笑顔を見せてくれるようになった、これだけで十分過ぎるくらいに役得だよ」
…へぇ〜、そう言う事言っちゃうんだ〜???
自分はそういう立場じゃないみたいな雰囲気出しながら、そんな台詞言っちゃうんだ〜???
「…ねぇ!!おじさんが悪かったからさぁ〜!!黙り込んでそっぽ向かないでよ〜!!」
無理です、たぶん私のキャラが崩壊しちゃうような表情をしちゃっているので無理です。
実はちょっと嬉しかったなんて、思ってないんだからね…!!
それ以上に恥ずかしさが勝って消えてしまいたいなんて、思ってないんだからね…!!
「現状の報告は、一旦こんなところです」
…さて、纏めよう。
アビドス対策委員会の襲撃騒動、メタ的に言うなら対策委員会編1〜2章。
これにて一段落、ちょっと変わってしまったところはあったが納得のいく終わりを迎えられた。
「先生とヒノさんには、本当に助けられました」
長かったようで短かった、私の初仕事。
“終わった”かのようで、寧ろ“これから”な私のキヴォトスでの生活。
「私達の学校は、先生から見てどうでしたか?」
己の未熟さを知った、己の非力さを知った。
彼女達の覚悟を知った、彼女達の強さを知った。
“最初から最後まで、私の心は変わらないよ”
私は部外者じゃない、私はこの物語に関わる事になった一人の生徒。
いくら道筋が分かっていても、私が通る道はきっと元とは少し変わったモノになるのだろう。
私が踏み出した小さな一歩、けれどそれは彼女達にとっては大きな一歩。
歩幅は違えど同じ一歩、共に踏み出した一歩。
「…そうですね、引き続きよろしくお願いします!」
嘗て見た足跡を追い求める、私達の記録。
対策委員会編、これにて一段落です…!!
色んな意味で長い戦いでした、ここまで付き合っていただいた読者の皆様には感謝しかありません…
ヒノの紡ぐ物語を、ヒノが追い求める物語をこれからも見守ってくれたら作者としては嬉しい限りです。
作品に区切りがついたので、改めて…
高評価、是非ともよろしくお願いします!!
赤バー転落ギリギリの当作を、救ってください…
ファンアート等も、お待ちしております。