ふむ、私に喋れと言うのだな!?   作:хорошо!

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未来が狂う、だからミラクル

ええ、本当に丁度良いと思ったんですよ。

 

彼女を気遣っての言葉ではありませんが、私は確かにそう思って言葉を続けました。

“丁度良い”顧客が見つかった、って。

積み重ねというのは大切ですからね、たった一羽の小鳥であろうとも。

上手く丸める事で、鶴になるんですから。

尤も、金という言葉の付く鶴ではありますが。

 

ですが。

 

「……セミナーの……」

 

私にとってそれは、予期せぬ答えになりました。

予期していた答えがあった、とかそういう話でもありませんけど。

それは私の目的が揺らぐ、話しかけた理由が揺らぐ。

思惑と外れる言葉だったのですから。

 

「セミナーの、生徒会長の事で」

 

「びっ……!?」

 

そんなわけで、そんな理由で。

彼女の言葉に取り乱しはしましたが、結局のところ。

ええ、本当に丁度良いと思ったんですよ。

話しかけた理由、目的とは少々違ってはきますが。

 

あのビッグシスターに一泡吹かせる事が出来る、そんな話が見えてきたんですから。

 

 

◇◇◇

 

 

人柄を知らない生徒にどこまで話していいのか。

っていう話があってさ、初対面の相手に情報を漏らしすぎるのも良くないと思ってて。

親切に話を聞く姿勢を取ってくれた、そこだけ見れば縋りたくもなる相手ではあるんだけど……

軽い相談というより共犯探しだからね、今の私がやってる事って。

 

ただ逆に言うと、相手も私の事をよく知らない筈だ。

 

相手は安留ヒノがどういう存在かを、知らない。

安留ヒノが突如として現れた、正体不明の生徒だと知らない。

だから私がどんな情報を知っていたとしても、そこに対する疑念が少なくなる。

 

“シャーレ所属”の生徒が何故かミレニアムの生徒会長、その思惑を知っている。

“ミレニアムにいた”生徒が何故かミレニアムの生徒会長、その思惑を知っている。

 

こう並べると、前提条件的に後者の方が少し怪しさが減るじゃん?

ミレニアムの生徒がミレニアムで起きているトラブルを知っている、表面上はそう見えるんだから。

だから敢えて切り込む、曖昧な言葉ではなく具体性のある言葉で話す。

そうする事で、後に生まれる筈の疑念を先に減らしておく……

 

ってつもりで、話してみたはいいんだけどね?

 

「詳しく」

 

「詳しく説明してもらっても」

 

「よろしいですか?」

 

私は今、冷静さを欠こうとしております……

近いッッッ!!!!!!!!!!

最近の若者ってみんなこうなのか、ってくらい近い!!

いやまあ私も若い方だけどね、実年齢。

それはそれとして顔が近いッ!!

 

「……ここでは、話せない……」

 

ばくばくと、身体を揺らす心臓の鼓動を誤魔化しながら続ける言葉。

無表情を貫こうにも変な汗が出そう、面がいい。

キヴォトスの生徒ってみんな面良くないか……?

かくいう安留ヒノも、面がいい。

隙があれば自分語り、隙を見せるのはほんの一瞬。

 

「それはどういう……」

 

私の言葉には二つの意味があった。

片方はコミュ症全開フルマックスなので、一旦落ち着かせてもらえないかという要望。

ただぶっちゃけ、こっちはオマケ要素が近い。

頑張れば話せない事もない、私だってやれば出来る。

……出来るから!!出来るかんね!?

 

では、重要な方の理由というのは。

 

「……なるほど……」

 

ここは、ミレニアムサイエンススクール。

最初から“彼女”のテリトリーだ。

 

ミレニアムガクエン……

とまあ、相手の生徒……

ミライが辺りを見渡した後に、そう一言。

なんとなく意図が伝わってる気もするし、なんだか変なところですれ違ってるような気もする。

察しが良すぎる気がするのよね、なんとなく。

 

「焦らせるつもりはないので!!」

 

ただ私安留ヒノ、生徒を疑う事知らず。

盲目的に信じちゃいないが、頼らせてもらってる立場なんだからこれ以上の詮索は野暮ってものです。

 

「悩みがある、その事実さえ聞ければ私としては十分」

 

折角こうやって親切な生徒が、条件に合致する生徒が相談に乗ってくれてるんだから。

 

「その悩みが続くようでしたらきっと、私が力になれると思いますよ?」

 

私に出来る事は、事態を悪化させない事。

事態を、ストーリーを好転させる事。

そのためにも彼女、ミライには力になってもらおう。

 

「ですから、改めて相談の場を設けるために連絡先の交換を……」

 

あっ。

 

「………」

 

「……あの……?」

 

スマホを手に持ち、首をかしげるミライ。

多分モモトークか何かの画面を開いて、困ったような瞳でこちらを覗いてきている。

が、しかし。

 

「………」

 

私は、キヴォトスに来てから。

 

「……私、スマホ……」

 

まだ、スマホを買っていない。

ぷらぷらと、手を振って手ブラアピをすれば数秒の沈黙の後にぎこちない笑みで続ける彼女。

 

「わ、訳アリってヤツなんですかね……?」

 

はい!!訳アリではあるんですけども!!

たぶんあなたが存在しているようなタイプの訳アリではありませんので!!

ほんと!!すいませんね!!ね!?

 

「……ですが、あなたは幸運でした」

 

しかしそのぎこちない笑みはすぐに、自信に満ち溢れた。

ぺかーっ、って感じの効果音が似合う笑みに変わる。

 

「こうして出会ったのが他ならぬ“私”だったのですから!」

 

ぺかーっ(セルフ効果音)

 

「このゲルマニウムブレスレットを腕に付けておいてください」

 

そうして手渡されたのは金属製のブレスレット。

 

「先行投資……いえ、これは私からのプレゼントです!!」

 

胸元から取り出されたそれを大袈裟にアピールすると……

ぇ待ってどっから出したのそれ?用意良いですね?

 

「それを付けていれば、私とあなたは再び巡り会う」

 

ぎゅっ、と。

そのブレスレットを手にした私の手を握りしめ。

 

「………」

 

「その目、オカルトだと疑っていますね?」

 

いえ、距離の近さがトンデモすぎて化けの皮が剥がれ始めているだけです。

そもそも私がここにいる事、キヴォトスにいる事自体がオカルトみたいなもんだし。

今更何が起ころうと私は動じません、堂島の龍。

んまあ、ミレニアムらしくはないと思うけど……

特異現象捜査部なんてのもあるしね、この学校。

 

「ふっふっふ……これは科学的に証明出来る、確信から来る言葉なんですよ」

 

胡散臭さが増しませんでした???

いやまあ、本人が信じてる分には私は否定しないけど……

 

「そう」

 

その言葉と共に軽薄な、ぺかーって感じの笑みを浮かべてた彼女は表情を変え。

見る人が見れば……言ってしまえば、女生徒にモテそうな表情と声色でこう語るのです。

 

「あなたとは、再び巡り会う」

 

やだ……かっこいい……

んまあ私は惚れないけどね、初対面すぎるし。

コミュ症の方が先行してるし。

 

「最後に、名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

パッと手を離した彼女が距離を取り、最後に聞いてきたのはそんな言葉。

そういえば彼女の名前を聞いておきながら、私自身は名乗ってなかったな……

なんて、思いながら考える。

 

安留ヒノという名前は、若干有名になりつつあるっぽい。

シャーレの先生ほどじゃないけど、私の情報もいくつか噂されるようになっている。

その影響が出たのがあの正実生徒ちゃんなわけだし。

ただここで偽名を名乗っても色々と、信用的に不利になる気もするから……

 

「ヒノ」

 

最悪名前が同じ一般生徒って事で、乗り切ろう。

 

「ヒノさん、あなたとは良い友人になれそうです!」

 

しかし彼女はそれ以上の問いを続けずに、あっという間にその場から姿を消した。

私の事を知らない……って事で、良いのかな?

それはそれで良いのですけど!!というかそっちの方が都合が良いんですけども!!

 

親切な生徒だったなぁ、ミレニアムって狂人多いけど治安は良い方な気もするしな……

なんてそう感じさせるような出来事だったが、一つ。

些細な引っ掛かる部分が、私にはあった。

 

「………」

 

ゲルマニウムのブレスレット、どこかのストーリーで出てた気がするんだよなぁ……

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