「…数十年前、この学校の郊外にある砂漠でとても大規模な砂嵐が起きたんです」
「この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のもので…」
アビドスの砂嵐、割とマジの異常気象ってヤツだね。
誰かに仕組まれた結果による損害や、ヘルメット団の襲撃みたいな他者によって引き起こされた訳じゃない本当にただの自然災害…
逆にタチが悪いっていうか、誰も悪くないからこそ八つ当たり出来る対象がいないっていうか…
そのせいで逆に人間関係がギスる事もあるんだろうね、それくらい極限状態になるって事だ。
実際に『そう』なっちゃった例もある訳だしね…
…うん、あんまり考えたくないなぁ…
私がもうちょっと早く来ていたら救えたのかも、なんてIFの話をしたくなっちゃうからさ。
考えれば考えるだけ鬱になっていく、一先ずは思考の隅へと追いやった方が良いんだろうね。
今の話とは関係がない事だしこの話題はもう終わり!!暫くこの事は考えない!!ヨシッ!!
それはそれとして、今は話の続きだね。
「その砂嵐によって埋まってしまった学区の整備、そして砂嵐に対する対策…」
「それらを克服するために、我が校は大量の資金を投入せざるを得ませんでした」
何の企みも細工もない自然災害によって引き起こされた被害、当然だけどその対処に使うお金は自分達で払うしかない訳なんだけど…
いくら何でもそんな金額をポンポン出せる筈もない、ここがトリニティみたいな金持ち学校だったら話は別だったかもしれないけどね。
いくらアビドスが元々は大規模な学校だったとしても、所詮は田舎の地域にある一つの学校に過ぎない…
「…こんな片田舎の学校に巨額の資金を貸し出してくれる銀行なんて存在する筈がない…だから、悪徳金融業者を頼るしか無かった」
当然、そんな学校が真っ当な方法でその金額を払える訳がなかったっていう事なんだよ。
現実は非情である、なんてよく言うけど世の中そんな都合の良い事ばかりで回っていく訳がないからさ、その借金をした所からどんどんどんどん沈んでいって…
「毎年毎年悪化していく砂嵐による影響…学校の努力も虚しく、借金は増えていく一方…」
「そしてついに、アビドスの半分以上が砂に飲まれて砂漠と化してしまったのです…」
最終的には、もう退けないレベルになってしまった。
なんというか負の連鎖だよね、誰が間違ったのかって聞かれるとその答えは出ないし、誰が戦犯かと聞かれてもその答えは絞り切れない…
ぶっちゃけこの子が悪いって生徒はいないのにこんな状況になっちゃってるんだもん。
強いて言うなら悪徳金融業者…カイザーローンのヤツらが悪いんだろうけど、別にあの人達だってちゃんと取引内容自体は守ってる訳だからなぁ…
いくら悪徳業者とは言え、そこから借りたアビドスの生徒達にもまた非はある訳じゃん?
少なくとも最初に決められた借金はどうにかして返さないと悪いのはこっちになっちゃうからね…
「セリカがあそこまで神経質になってるのはこの問題に真面目に向き合ってくれる人がいなかったから…そう、あなた達が初めてだから」
まぁ、キヴォトスってそんな余裕ないからね。
キヴォトスの大人が全員無能とか悪い人だとかは言わないよ、探してみれば案外優しい人だって、頑張ってる人だっていっぱいいるもん…
なんなら私の方が無能かもしれないわ、この中で一人だけ何もしてない人じゃんか私。
…うん、いや、問題に真面目に向き合って話は聞いてるからさ!!聞いてるだけだけどね!!
何が酷いって、それを真面目に聞いてくれる人すらこの子達の周りにはいなかったって事なんだよなぁ…
柴大将みたいな例外はいるにしろ、彼女達から見た味方っていうのは本当に少なかったんだろうね。
これが日本だったらもう少しマシな状況にはなってたと思うんだけどなぁ…いや、アッチはアッチで色々と面倒くさいかもしれないけど。
「…ま、先生達のお陰でヘルメット団っていう厄介な問題もなくなった訳だし…これからは借金返済に向けて全力投球出来るって事だよ〜」
…ッスゥ〜・・・いや、うん、ソレに関しては私は全くと言って良い程に役に立ってないんだわ。
役に立てなくてぇ、ごめんねぇ…?
なんて犬系ヒノちゃんを演じてみますけども、私はこういうキャラを演じられるタイプじゃないので自分でやって自分に寒気が走っただけなんだわ。
さて、と…ガッバガバな私の記憶が正しければ、この後彼女達は先生に対して…
「もしこの委員会の顧問になってくれるにしても、借金返済については気にしなくて良いからね〜」
「ん、これ以上迷惑はかけられない」
…助けを拒む、遠慮した言葉を口にする。
まぁ、でもなんというか、ねぇ?
流石にコレはフラグだよねぇ〜・・・?
そんな見え見えの分かりやすい虚勢に先生が気付かない筈がないし、私だって気付いてるし。
それに、生徒第一のある意味で狂人な先生がこんな状況の生徒達に手を差し伸べない筈がないよね。
“いや、ここまで来てみんなを見捨てるなんて真似は私には出来ないよ”
ほら、期待通りやってくれたよ!!
やっぱり先生はこういう人だよ…ブラボーブラボー、流石はシャーレの先生って感じだね!!
…今までの言動を振り返ると私の悪役感凄いな、自分で言うのもなんだけど最後の最後で裏切ってラスボスになる人の言動してる…
ぁ、いや、全然そんな事ないっすよ!?
私だって先生のソレには及ばなくとも生徒達の事を助けたいと思ってるっすよ!?
…説得力ねぇ〜・・・自分で言ってて悲しくなる〜・・・
「そ、それって…」
“ヒノも、そうだよね?”
ぇっ、ぁっ、急にこっちに話を振らないで?
やめて視線を私に集めないで、あんまり見られると頭が真っ白になっちゃうから、マジで。
…いやぁ…うん、正直なところ私が見捨てようが見捨てなかろうが力になれる可能性は低いし、ぶっちゃけ先生と比べると力不足感が否めないんだけど…
「………」
当然その言葉には、頷かせてもらいますよ。
というか最悪を辿った場合の√を知ってるからねぇ…原作知識を保持した私がいながらこの世界線のキヴォトスをプレ先時空にしちゃうとか本当に笑えないからさ、協力しない理由なんてないって事よ〜!!
なんのトラブルもなく終わって役に立てなかったら悲しいけど、それはそれで平和に終わったって事だから私からすれば万々歳だしね。
「…変わり者だねぇ、こんな面倒事に自分から首を突っ込もうとするなんてさ〜?」
…ん〜・・・まぁ、そうだね、変わり者かもしれない。
ぁ、私の事じゃないよ?先生の事言ってるんだよ?
私はここでしくじったら最悪キヴォトスが滅亡するって事を知ってるし、これから起こるであろう事を知ってるからこそ乗り気な訳だけど…
先生は、単純な善意だけで協力してるからなぁ…
やっぱりキヴォトスにおいて先生っていう存在は偉大なモノなんだろうね、こうやって身近で見てると余計にそう思わされるわ…
「良かった…あの『シャーレ』が力になってくれるなんて、少しは希望を持っても良いんですね…?」
「そうだね、希望が見えてくるかもしれない」
…あの『シャーレ』と言われましても、まだ私達にはそこまで実績がないのですが?
いや、まぁ、ネットとかニュースとかで話題になってるのは何となく知ってるけどさ。
そんなに過度な期待をされてもちょっと困っちゃうかなぁ…って、私ってプレッシャーに弱い生き物だから、あんまりそういう事言われると辛いかなぁ…って。
「うへぇ〜・・・じゃあ、改めてよろしくね?」
「先生…そして、ヒノちゃん?」
…えぇ、ハイ、そうですね。
自分の意思で着いてくる事を決めて、自分の意思で協力する事を決めたんだもんね。
確かに期待されるのはちょ〜っと荷が重いなぁ…って思うけど、それも仕方無いと割り切らないと…
「………」
今更惨めに逃げる事なんて出来ないぞ、私よ。