機動戦士ガンダム0085 元素の歌姫〈エレメンタル・ガールズ〉 作:滝川 海老郎
戦果は上々ではあった。
全体でモビルスーツ十機以上撃墜。ゲルググ大破。
こちらの損害もそこそこあった。ジム改二機撃墜。ジム・カスタム小破二機。
幸い、戦闘艦は五隻全艦無事だった。
また重力ブロックに行きシャワーを浴びる。
「はぁ、生き返る……それにしてもジーク・ジオンか」
今日の戦闘を回想する。
ジオンのモビルスーツを倒しても何も感じず動揺した。
今度は執念を感じるザクに突撃された。ミカがコックピットをビームサーベルで貫いて断末魔の悲鳴を聞いた。
やはり人が乗って操縦しているのだ。
モビルスーツを倒すことは人を殺すことを意味している。
こちらも地球衛星軌道から付き合いのあるジム改のパイロットが亡くなった。
顔はそれほど覚えていないけど四十代くらいのベテランパイロットだったと思う。
もともと宙間戦闘機セイバーフィッシュで戦時中にジムのパイロットに機種転換したらしいと聞いた。
彼にも人生があって家族もいたはずだ。
やはりこれは戦争なのだ。終わったはずなのに何も終わっていなかった。
私たちがこんな悲しみの連鎖を断ち切らないといけない。
脚を破壊したのでしばらくはオセロットは出てこないだろう。
ただ暗礁宙域はジオン残党の巣といってよく他の部隊に襲われる可能性もある。
ほとんどがデラーズ紛争に参加し破壊されたか残った部隊もアクシズ先遣艦隊に回収されて木星圏に離脱していった。
そのため昔よりは地球圏宇宙のジオン残党の数は少ない。
地球にも地下基地を作ったりして立て籠もり潜伏しているジオン残党はたくさんいる。
こちらは連邦基地などを攻撃してこなければそれほど有害と見なされていないのか、まだまだ残っている。
連邦軍もそれほど暇ではないらしい。
「隊長、お疲れ様です」
「あっうん、ミカ、アンジェお疲れ様」
二人のほうがシャワー時間が短かったみたいだ。ちょっと考え事をしていたからだろう。
「アイスね。こんなときはアイス食べよう、な、隊長」
「うん」
自動販売機の機械の前に行ってボタンを押す。今日もバニラでいいかな。
一台の機械で味は四種類しかない。
普通の自動販売機は二十種類くらい入るので、同じ味のボタンが並んでいる。
同じ種類を何セットも枠を使って在庫数を確保しているらしい。
すでにイチゴが二か所、バニラが一か所、売り切れの表示になっている。
自動販売機のメーカーは国際展開していて、地球圏中の基地に在庫を置いている。
飲食部門とかは民間委託しているので普通のメーカーのアイスだ。
ガチャン。
バニラアイスモナカ。このモナカというのは日本語らしくて実は日本発祥らしい。
すばらしい文化が世界に残っていて私はうれしい。
国は地球連邦ができたときに地域に降格になって解体された。
それでも個々の地域の文化とかも残っているものも多い。
「アイス、美味しいね」
「はい」
「ふふふ」
オープンスペースには油絵が飾ってある。森の妖精の絵だろうか。
そして大きなモニターがあった。
今は外で偵察しているジム・カスタム小隊が映っている。
さっき叩き起こされて後で出撃したのでそのまま任務を続行している。
私たちは先に上がってアイスをムシャムシャしていると思うと、ちょっと後ろめたい。
このジム・カスタム小隊はかなりのベテランらしい。
もちろん同じ艦にいるのでジャブローでの顔合わせ以来、普通に会話をしたこともある。
「ジム・カスタムのみんなはお疲れ様。そう思うでしょ、ミカ、アンジェ」
「まったく、足向けて寝られないね」
「助かります」
それぞれ好みのアイスを食べながらしばしリラックスする。
こんなところでしかリラックスしている時間はない。
一人の部屋に戻ると、それはそれで変なことを考えてしまったりする。寝ていても悪夢を見ることもある。あのアムロさんさえそうだったんだから。
まだ私たちは軽症だけど死というものに直面して、これから不安だ。
ジオンの人たちも毎日悪夢にうなされているのだろうか。
それは『連邦の亡霊』なのだろうか。私たちは『ジオンの亡霊』って呼んでるけど。
襲撃はまたあると思われる。
次回の出撃に備えて待機のまま睡眠をとる。
「おやすみ、パパ。ママ」
唯一残された写真を見つめる。家族一緒に撮った数少ない印刷した写真だ。
隣にはジャブローの義理の両親の写真もある。
ほとんどサイド7を着の身着のまま逃げ出したので、もう残っているのはこれだけだった。
まさかシェルターに避難して、そのまま家に帰れないと思っていなかったので最低限の物も携帯してこなかったのだ。
そのまま私たちは結局ホワイトベースに避難することになっていた。エレカが使える人は一旦家に帰った人もいたみたいだけど、私はまだ小さかったからそれも無理だった。
その時にはすでに両親と連絡が取れなくなっていた。後日、死亡認定がされたけど、今でも死んでしまったという実感がないのだ。
だから襲撃した部隊のシャアへの憎しみ自体はほとんどない。その代わり大本のジオンへの憎しみは感じている。
こんな戦争をそもそも起こさなければ、こんなことにならなかったのに。
相変わらず両親がザクに殺される悪夢を見るのは続いている。
私たちも幸せに暮らしていけたはずだったのだ。ただサイド7で普通の生活がしたかっただけなのに。
●Track6 『未来宇宙日記』
天気は晴れ 夕暮れの公園で ブランコに乗る
宇宙は晴れ 朝日の眩しい中 学校へ行く
そんな日が 僕にも あったよね
天気は晴れ 昼過ぎの海岸で 波間で遊ぶ
地球は晴れ 朝日の輝く中 仕事へ行く
そんな日が 僕にも あったよね
午後のひととき 行きつけのカフェで
お洒落な椅子に座って コーヒーブレイク
老後の楽しみに 行きつけのカフェで
白髪の友達を囲んで コーヒーブレイク
コロニーは 今日も晴れ 青空に雲が浮かんで
僕たちの 人生を静かに 見守っている
コロニーで 恋をする 晴れ間に見える
君の笑顔 将来を約束し 共に歩きたい
未来は わからないけど そんな人生も
将来は 決まっていないけど 楽しい時間を