機動戦士ガンダム0085 元素の歌姫〈エレメンタル・ガールズ〉 作:滝川 海老郎
暗礁宙域ルウムを無事通過。
「あれがコンペイ島ね。確かにコンペイトウだわ」
ミカが訳知り顔でモニターに映る小惑星を眺めている。
スペルはConfeitoでポルトガル語で砂糖菓子の意味であり、日本語の「金平糖」の語源として知られている。
この金平糖の形に似ているのだ。丸にトゲトゲが付いている。
月の進行方向から見て月の後ろ側にある旧サイド1宙域に位置している。旧サイド1のコロニー群は一週間戦争でジオン軍の攻撃に遭いほぼ壊滅していた。
「ソロモンです」
「え、コンペイ島でしょ」
「ソロモンです。ドミーもそう言っています」
「まぁいいや」
ジオン出身のアンジェに言わせれば確かにソロモンだった。
もともとは資源採掘のための小惑星だったものをジオンが宇宙要塞ソロモンとして使用していた。一年戦争末期に連邦が攻略した後、コンペイ島に改称されて現在に至る。
一年戦争ではソーラー・システムが使われジオン軍の艦隊に大きな被害を出した。このソーラー・システムは無数のミラーを並べて太陽光を集めて熱攻撃するという大規模な装置だ。
それからドズル・ザビのビグザムが出てきたことは有名だろう。
連邦軍としては非公式ながら0083年のデラーズ紛争で観艦式をしていたところを核爆弾で大規模な被害を出した舞台でもある。
ここでは多くの人が死んだのだ。今でも数多く浮かんでいるデブリにその痕跡を見ることができる。
連邦軍の要塞なので、無人砲台や多くの哨戒機などが飛んでおり周囲を警戒はしていた。
「それで、あのまだ小さく見えるのがダルギルスね、どれどれふーん」
「えぇ」
私もあいまいにうなずいておく。
宇宙機動要塞ダルギルスだ。一年戦争末期からルナツーで建造をしていた移動要塞だという。何度も建造中止になりそうだったのだが、なんとか進宙式にこぎつけたそうだ。
その航行テストで現在、ルナツーから私たちとは反対回りでソロモンにいるというわけだ。今も内部では艤装工事が続いているらしい。
だから半分未完成なのだけど、すでに稼働状態ではあるようだった。
特徴的なのは1Gを作り出せるドーナツ状の重力区画だ。ホワイトホースにも重力ブロックはあるものの規模は小さいし1Gにはならない。
簡易型の移動可能なミニコロニーだともいえる。これは長期間の任務を想定しているという意味でもあった。
近い宇宙船でいえばアナハイム所属のラビアンローズだと思う。同じく回転式の重力ブロックがある。ラビアンローズは宇宙船と同じくらいの大きさだがダルギルスはもっと大きくドロス級や木星輸送船に近いだろうか。
モビルスーツデッキがあり、かなりの数を搭載できるようだ。
「ふぅ、これで一息吐けるわね」
「はい、隊長」
「楽ちんです」
コンペイ島から迎えのサラミスとジム改の部隊がやってきて私たち艦の周りに展開した。
哨戒任務とはこれで少しの間おさらばだ。
そのままどんどんコンペイ島は大きく見えてくる。
コンペイ島はルナツーほどではないけどかなり大きい。やはり小惑星はでかい。
ルナツーのときは接近してそのままモビルスーツライブを開催したけど、今回は艦に乗ったままコンペイ島宙域を進む。
そのままホワイトホースはコンペイ島ではなく宇宙機動要塞ダルギルスに入港した。
真ん中に宇宙船ドックがあるのだ。
周りには囲むようにモビルスーツデッキがついている。
「へぇ。ダルギルスに入港できるとはね」
ミカがうれしそうに笑った。
翌日、私たちはモビルスーツデッキに見学へ行った。
「私のガンダム!」
「ミカ、大丈夫」
「でもぉ」
目の前にはハンガーから引き出されて作業中のピンク色のガンダムAX・サラマンダーがあった。
バックパックに追加装備を装着しているように見える。
事前に知らされていたものの、やはりガンダムがいじられているところはなんだか不安にさせる。
私のウンディーネにはバックパックの左右にカヌーのような形の増槽プロペラントタンクが設置されていた。タンクの上下先端には小さなバーニアもついている。
これは作戦時間を長くできるタイプの追加ユニットだった。
ミカのサラマンダーにはサイズダウンしたプロペラントタンクが取り付けられ、ウンディーネより大きいバーニアが装備されていた。
こちらは高速移動ユニットらしい。
アンジェのシルフィードには上半分はジムキャノンⅡについていたものに似ているビーム砲で下半分がプロペラントタンクになっていた。
バックパックは四角い箱になっているのでその左右に装着できるように元々マウントポイントが設置されていた。
今回の装備はそこにつける追加ユニットなのだそうだ。
アンジェ機はさながらガンダムキャノンとでもいうのだろう。
ガンキャノンというのもあったね……。
違うんだ、顔とか。ガンダムキャノンね。
ということで私たちのガンダムに追加装備が配備された。
周りでは調整中なのか、まだ作業が残っているのかたくさんのノーマルスーツを着たメカニックさんたちが文字通り飛び回っている。
私たちパイロットは最後にチェックして実戦に使うだけなので、出番はもう少し後になりそうだ。
メカニックさんたちに頭を下げて現場を後にした。
ガンダムも機械に過ぎない。人の手によって整備されるものだった。