機動戦士ガンダム0085 元素の歌姫〈エレメンタル・ガールズ〉   作:滝川 海老郎

18 / 27
17.コンペイトウ/宇宙要塞(2)

 さてダルギルスへの上陸許可が下りた。

 

「へへへ、隊長。ダルギルスだよぉ」

「だね。アンジェ、カフェオレあるといいね」

「楽しみです」

 

 宇宙船ドックから桟橋を渡りダルギルスに入った。

 中はまだあちこち工事している。よくネジ留めや溶接の人が作業している。

 それでもすでに工事関係者が住んでいるので居住区はほぼ稼働していた。

 モビルスーツデッキはAブロック以外はまだ工事中だ。

 

「重力ブロックだ」

「ダルギルスご自慢の重力かぁ」

「重力、重力です」

 

 中央通路からエレベーターを降りるとそこはまぎれもない1G。

 地球と全く同じではないけれど環境が整備されていた。

 エレベーター前にはライトが照らされて植物が花壇に植えられている。

 パンジーやラベンダーか何かが花を咲かせていた。

 さすがにコロニーのように屋外があって建物が並んでいるわけではないようだ。

 豪華客船の中が近いかもしれない。

 ゆっくり斜めになっている通路を進んでいく。

 

「カフェ、モーモー」

「うん」

「カフェラテです」

 

 噂があったのだ。ダルギルスにはウシがいて新鮮なミルクが飲めると。

 重力環境下で乳牛が飼われていてミルクが生産されている。

 代用粉ミルクなら広く普及しているけれど、どうしても本物のカフェラテが飲みたかった。

 軍艦には似つかわしくないお洒落な内装のカフェだ。

 受付カウンターでお姉さんに注文をする。

 

「アイスカフェラテを三つ。あとプレーンドーナツも三つね」

「ご注文ありがとうございます」

 

 本格的な重力下仕様のコーヒーメーカーがあった。

 コーヒーのいい匂いがしている。

 店員さんはまずグラスに氷を入れた。

 グラスに純白のミルクが注がれて、そこにコーヒーが追加されカフェラテになる。

 

「お待たせしました」

 

 ドーナツは店内で製造しているものの作り置きだ。プレーン、チョコ、ストロベリーの三種類があった。

 プレーンはお砂糖味とでもいうのだろうか。白いシュガーがかかっている。

 

「「「いただきます」」」

 

 みんなで挨拶をして私はまずカフェラテからいただく。

 蓋つきの密閉容器ではない本格的なグラスは久しぶりだった。

 三人でストローの先を口に含んで吸う。

 

「んんっ、美味しい」

「はい、美味しいね」

「美味しいです」

 

 パックコーヒーのカフェオレ味ならいくらでもホワイトホースでも飲めるものの、やはりなんとなく違う気がする。

 さまざまな店もある。洋服店、寝具店、雑貨店、コンビニ。

 ない店といえば本屋はなく電子化されたものしか見れない。

 ただし専用の印刷機があって出力することはできる。

 

 

 さて今日からしばらくはダルギルスホテルでの寝泊まりになる。

 こういうときパイロットというのは特別待遇なのだ。

 重力下にいないと筋肉も痩せてしまって操縦にも影響するため、健康維持のためには重力のある場所で生活するに限る。

 ダルギルスはそのために重力ブロックがあるといってもいい。

 

「ふかふか」

 

 普通のベッドに普通の布団で就寝する。

 無重力用の場合はベルトで固定したりするため少し寝にくい。

 ここはホテルという名前だけあって布団も高級品でふかふかで気持ちがよかった。

 

「ふふっ、おやすみなさい」

 

 久しぶりのベッドで快適に眠れそうだ。

 目をつぶったらあっという間だった。

 これほどぐっすり眠ったのはいつ以来だろうか。

 

 

 さてライブのリハーサルだ。

 今までライブは基本系があって予行練習はするものの、その都度の会場リハーサルは簡単にしかやっていなかった。

 特にルナツー講演では入港からそのまま本番だったので、ぶっつけ本番とかけっこうドキドキする。

 もちろん途中の宇宙空間で練習はしたんだけどね。

 ここはダルギルスの中にある大ホールで、久しぶりの本格的なリハーサルだった。

 なんでもコンペイ島から偉い人たちが見に来るので、今回は念入りにやるらしい。

 ガンダムは通路を通れなかったので今回は背景映像に差し替えられている。

 それでも私たちはパイロットスーツだった。

 たまにはかわいいドレスとかでライブしてみたいなと思ったのだけど、ダメなんだって。

 

 

 持ち歌は全部で十七曲。実はライブでは歌ったことがない特典CDの曲などが他にもある。

 CDやレコードといったレトロ装置も今でも一部で現役だった。

 ほぼすべての曲は電子化されてはいるんだけど、実物を楽しみたかったり、レコードのDJのスクラッチは今でも行われている。

 通しでのリハーサルは大変だ。新曲がないのでそうそう間違えたりはしないけど、それでも汗だくだし、体力も使う。

 カラオケだったら一人ずつ順番に歌うけど、ライブはそうはいかない。

 またダンス曲も多い。ダンスほど派手ではない腕を振る程度の曲もあって、そうやって途中休憩をしつつ、何曲もこなしていく。

 三人で歌う曲、順番に歌う曲、一部分だけハモる曲とかもあって手は抜けない。

 口パクではなく私たちは正統派なので生声を使っているのだ。

 ダンスが激しかったりする歌手の中には声は別撮りということも場合によってはあるそうな。

 ダンスは映像ではなく自分が立ってる以上、そちらを疎かにできないので声を妥協するしかないのだとか。もちろんそれはダンスが売りなので問題ないわけだけど、私たちは歌で売っているアイドルなので、そうはいかないのだった。

 本業はパイロットなのにアイドルの審査が厳しくて何人も落とされたのだ。私たちも散々テストで歌わされた。

 なんでパイロットなのにという声が何度も出かかったくらいだったけど、今はこれでいいと思っている。

 アイドルとはそういうものだ。今更ただのパイロットをしているつもりもない。

 

 

 翌日。

 

「それでは本番よろしくお願いします」

「「「はい」」」

「ミカ、アンジェ」

「うん」

「はいです」

「「「えいえいおー」」」

 

 三人で手を出して円陣を組む。

 さて連邦宇宙軍のお偉い人たちを前にこの最新鋭艦ダルギルスで私たちのお披露目をするのだ。

 壮年の男性たちが最前列に並んでいるのがステージの上からも見えた。

 コンペイ島方面艦隊にも私たちのライブが中継される。

 今日のために周辺の艦はほとんどが集結していた。

 それぞれの艦のブリーフィングルームの大型モニターでリアルタイム中継されている。

 ミノフスキー粒子があっても光通信などの手段で通信そのものはできるのだ。

 

「それでは聞いてください。『宇宙にピクニック』――」

 

 ライトアップされて私たちはマイクを握り、精一杯全力で歌った。

 コンペイ島、ソロモンで散っていった数多の人々を鎮魂するために。

 そして今を生きる戦士たちの健闘を祈って。

 

 

 

●Track8 『来世は未定』

 

 次生まれてくるときは 無限の 可能性

  次生まれてくるときは なんでも なれるよね

 ネコ イヌ ウサギ 動物もかわいいね

  男の子 女の子 どんな子にもなれる

 あぁ 来世ってなんだろう

  今を生きる 僕たちは 何をすればいいのか

 あぁ 未来ってなんだろう

  明日を生きる 僕たちは 何をすればいいのか

 ライフ それが人生  ライフ ただ生きるだけ

  ライブ 歌を歌う  ライブ 君にこの声届けよう

 来世は未定だもん 無限の 可能性

  来世は未定だもん なんでも なれるよね

 来世でも 僕は 君に 会いたいな

  来世でも 僕は 君に 会いたいな

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。