機動戦士ガンダム0085 元素の歌姫〈エレメンタル・ガールズ〉   作:滝川 海老郎

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5.暗礁宙域1/遭遇戦(1)

 大歓迎のルナツーを離れる。

 ライブの後、ホワイトホースとサラミス改も入港して補給を済ませ、ゲルググは引き取られていった。

 あのゲルググは新たなパイロットによりまた戦争をするのだろうか。

 一週間の寄港の後、出港した。次のライブがある。

 ルナツーは月の軌道のちょうど地球の反対側にある。ラグランジュ点L3にあたり地球圏では一番月から遠い。

 そしてジオン共和国があるのが月の裏側のサイド3というスペースコロニー群だった。

 つまりルナツーはジオンから一番遠い。それで一年戦争でジオンに攻略されにくかったのだろう。

 普通の島3号コロニーは内部が六分割されていて三面がガラスでその外側に採光用と発電を兼ねた太陽電池パネル兼ミラーがある。

 サイド3では他のサイドと違って密閉型コロニーが採用されていた。密閉型は全部の地面が使えるので人口密度は単純計算で2倍にできる。

 ルナツーの近くにある我が故郷サイド7には寄って行かないらしい。少し残念に思うけれど命令は命令だ。

 どうせなら両親に花の一つや二つお供えしたかったとは思う。

 だんだんモニターに映るアーモンドが小さくなっていく。

 私たちは次の目的地、サイド5に向かっていた。

 一年戦争で多くのコロニーが破壊され、戦後『コロニー再生計画』が行われた結果、コロニーの移動が行われたりサイドの番号が変更されたりした。

 現在のサイド5は月地球間のラグランジュ点L4に位置している。

 一年戦争時はサイド6と呼ばれており中立を宣言したものの、戦争末期にはジオン劣勢になったころに連邦軍に関与してジオン軍の攻撃を受けたコロニーもある。開戦直後の一週間戦争で攻撃されなかったのでコロニーが多く残っている。

 次のライブ会場はそのサイド5だ。

 

 

 サイド5の近くでも戦闘が行われた結果、小規模な暗礁宙域があった。

 暗礁宙域というのはデブリのたまり場でたくさんの戦闘艦、コロニー、モビルスーツなどの残骸が浮遊していてそれだけでも危険だった。

 ラグランジュ点L1旧サイド5ルウムは大規模な暗礁宙域として有名で、ジオン軍が一年戦争の初期の一週間戦争、ルウム戦役でスペースコロニーを破壊したせいで、デブリはものすごい量となっている。

 さらにジオンの残党が隠れていることがあるうえに、現代では宇宙海賊もいる。

 

「はやくこの仕事は終わりにしたいわ」

『ゴミばっかりですね、隊長』

「そうね」

『デブリ死すべし慈悲はない、です』

「そうね、アンジェ」

 

 二十四時間体制で準警戒態勢が続いている。

 モビルスーツも三機ずつ出して周囲の警戒をしている。

 ただモビルスーツで長時間監視をローテーションするにしてもパイロットへの負荷が高いので、今回は私たちもローテに加わっていた。

 ということでガンダム三機で上下左右と周りを見て、流れてくるデブリの間に敵がいないかチェックしている。

 気が滅入りそうだ。

 しかし気を抜くことはできない。それは死につながることを意味している。

 私たちは戦争が終わったのに、まだ終わっていないと思っている人々の相手をしているのだ。

 永遠に続く鬼ごっこ。果たしてそんなことになんの意味があるのか。戦争は終わったのだ。ジオンは物量に勝る連邦軍に負けたのだ。

 まだその事実を受け入れられずに駄々をこねている。子供じゃないんだから、そろそろ現実を直視してほしいよ。

 いつまでも空想の世界を信じているピュアな人でもあるまいし。

 私もスペースノイドだから自治権の確立に思うことがないわけではないけどね。

 夢物語を現実にしようとするのは大変だ。

 ファンタジーは小説に限る。

 

『ぬいぐるみ、です』

 

 アンジェから通信だ。

 

「え、なに」

 

 アンジェ機がやや左へ進路を変える。

 前方、五十センチくらいの茶色いクマのぬいぐるみが確かに流れてくる。

 デブリにしてはとても綺麗な状態だった。どこも破れていない完全体だ。

 根気よく探せばこういう有用なものも流れているけれど、大量の宇宙ゴミを識別して、使えるものを探す作業は殊の外大変だ。

 もちろんデブリ回収業という仕事はすでに確立しており、宇宙のあちこちで作業している。

 アンジェ機シルフィードがハッチを開ける。スラスターを動かしぬいぐるみがうまくコックピットに流れてくるように調整していた。

 そのまま無事、コックピットにぬいぐるみが到着する。

 

『やったです』

 

 抑揚のない声で報告してくる。

 彼女はいつもそうだ。「感激です」とか「うれしいです」とは言っても声そのものには感情を載せてこない。

 アンジェはいつかどこかに顔に感情を出すということを忘れてきたようなところがある。

 ライブや人に見られているときは作り笑顔なのだろう。無表情のほうが素だと思う。

 

『ぬいぐるみさんです』

「よかったね」

『はい。迷子を救出しました』

 

 可愛いところもあるんだなって改めて思う。

 普段表情は無愛想でもどこか女の子らしくて可愛いのだ。

 それにしてもクマのぬいぐるみか。それが流れてくるということは、女の子の生活しているような場所が宇宙に放り出された過去があることを意味していた。

 戦争はこれだから嫌いなのだ。一日でも早く戦争がなくなるように頑張らないと。

 それにはジオン残党を討伐して回るしかない。

 

『今日から君はドミーです』

 

 ふふっと思う。アンジェは一人でいることが多い。

 いいお友達になってくれるといいと思う。

 もうしばらく偵察したら交代時間だ。

 結局時間まで何事もなく過ぎていった。

 

「ガンダムAX、帰投します」

『『了解』』

 

 ホワイトホースに戻る。シャワーを浴びて着替えよう、もうデブリは見飽きたわ。

 

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