ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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ちなみに最終回はもう決まってます。いつになるかわかりませんけど


14話 海

「さあ、今日は海よ!」

 

 イェーナさんの故郷にやって来て二日目の昼。昼食を終えて数十分、アスカがホテルのベッドで北海が運んでくる涼しい潮風を受けゴロゴロしていたオレの布団を引っ剥がした。

 

 忘れてた、初日はレーマン家でのんびりしてたから二日目にアクティビティを楽しむって話だったな。それに海は今オレ達が宿泊しているホテルの目と鼻の先だ。行かないわけにはいかない。

 

「オッケー、じゃあミサトさんを」

「準備出来てるわよ!」

 

 ミサトさんを呼ぼう。そう提案しようとしたときに、部屋の扉がバン! と開かれ、ホットパンツにパーカーというラフな格好に少しの荷物と、立派なカメラを首に下げたミサトさんがやってくる。

 まあ楽しみにしてたんだろうなってのはあるけどさ、楽しみの趣旨が違うよね。撮影する気満々じゃん。

 

 

「そういえば、イェーナさんが道具一式を持ってきてくれるそうよ。二人は水着だけでも平気だけど」

「あたしは向こうで水着に着替えるからすぐ出れるわ。タローは?」

「んー、履いて行こっかな。着替えは念のため持っていくけど」

 

 荷物を入れているボストンバッグの中から、海パンを取り出す。さて、着替えるだけなんだが......

 

「いや、出てけよお前ら」

 

 腕を組んで気にしてませんよアピールしながらチラチラと見てるアスカと、舌なめずりをしながらカメラを構えるミサトさんを追い出し、オレのシャイな愚息を視線から守って着替えた。

 オレはシンジくんと違ってミサトさんでも反応しちまうんだよ悲しいことに。

 

「結構賑わってるじゃない」

 

 ホテルを出て目の前のビーチを見ると、箱型のビーチチェア。シュトラントコルプが埋め尽くすかのように並べられている。よく見てみると数字が書かれているので、レンタル式なんだろう。あれを持ってくるのはしんどそうだし。

 

 のんきにそんなことを考えていると、どこからともなく厳ついエンジン音のようなものがしてくる。音の方向を見てみると、ターコイズブルーのゴツいボディに銀色のスリーポインテッド・スターを鈍く光らせたSUV車が走っている。

 一体どんな人が乗ってるんだ。そう思いながらビーチに視線を移そうとした時、その車はオレ達の目の前で止まった。

 

「おまたせ」

「え、ええ......」

 

 運転席の窓を下げて顔をのぞかせたのは、まさかのイェーナさんだった。サングラス下にずらしてこちらを見ている。似合いすぎでしょ。

 

「今度から姉御って呼んでもいいですか」

「お断りよ。さ、乗りなさい」

 

 イェーナさんの許可が降りたので、ミサトさんが助手席、オレとアスカは後部座席に乗る。もちろんジェントルマンなので、扉を開けてアスカの手を支えてから最後に乗り込んだ。

 

「うわ、色々モニターついてる」

「良い匂~い。これなんの香りですか?」

「映画とか見れるわよ。あとこれはスパイスウッド、今度車用のをあげる」

 

 アスカとミサトさんはすごく自然体で車に乗っているが、オレは緊張が止まらなかった。

 コレ絶対高いやつだよ、ぶつけたら黒スーツのおっかない人出てくるやつだよ。しかもドアを締めた瞬間に普通だった窓がスモークガラスになったし、明らかに厳ついカスタムされてるよ。

 

 車に揺られることたったの数分。車が車なのでミサトさんのように豪快な運転をするのかと思ったら、イェーナさんはやっぱりイェーナさん。堅実な運転で非常に助かった。速くはあったし現在進行系で砂浜をガッツリ走ってるけど。

 

「着いたわ」

「結構ホテル前のビーチから離れましたね?」

 

 車から降りて、人の居ないビーチに降り立つ。ここでもやはりシュトラントコルプがいくつか並んでいた。

 

 ミサトさんが言うように、時間こそ短かったがホテルからはそこそこ離れている。

 それだけでなく、ホテル前から長く続いていたビーチが岩と木々でここだけ切り取られたような形になっており、すこしリッチな気分だ。

 

「ここら一帯はレーマン家のプライベートビーチなの」

 

 イェーナさんの発言に、オレ達三人は驚いて後ろにのけぞってしまう。イェーナさん、首をかしげて何だコイツらみたいな目でこっち見てますけどオレ達からしたら何者だ貴女はって感じですよ。

 

「もしかしなくてもイェーナって、お嬢様?」

「まさか。ご先祖様が凄いだけよ」

「それをお嬢様って言うんじゃないですかね......」

 

 よく考えれば高級リゾート地が実家な時点でお嬢様な気がするが、父親が海洋学、母親が脳科学の第一人者というエリート家庭の生まれでもあるんだよな。

 この世界でエヴァを操縦する感覚を掴むために穴が空くほど呼んだ「脳と身体」って本の著者がエルナさんって昨日聞いたときは興奮しちゃったの思い出した。

 

「遊び道具は色々あるわよ」

 

 イェーナさんはそう言いながら、車のトランクを開ける。空気の抜けた浮き輪、サーフボード、空気入れの為にコンプレッサー。

 コンプレッサーがあるのは良いが、どこから電源を取るんだろう。そう考えていると、イェーナさんはトランクのどこかにコンセントを差し込んだ。

 

「車って普通のコンセント使えましたっけ?」

「色々カスタムしてるのよ。走って発電してそれを使う、電気は新人類の象徴ね」

 

 得意げな顔をするイェーナさん。ただの高級車かと思ってたけど、外面だけじゃなくて内部もいじりまくってそうだな。

 

 そう考えているうちにも、浮き輪に次々と空気が入っていく。一般的なドーナツ型のもの、横になれるくらいのサングラスをかけたアヒル型、大人数でも乗れそうな屋根が付いたイカダのようなもの。

 これだけあれば優雅にビーチを楽しめそうだ。

 

「鍵開けるから、荷物しまっちゃいなさい」

 

 そう言いながら、イェーナさんはシュトラントコルプに近づく。どこの鍵を開けるんだと後ろをついていくと、座席の部分が蓋をされるような形になっており、その蓋を動かすための鍵だった。

 

「シュトラントコルプって日本だと全然見ないんですけど、多機能なんですね」

「ここに折り畳み机があって、引き出しを引っ張れば足置きになるから横になれるの。もちろん収納もあるし、普通のビーチだと座席に荷物を置いてカバーの鍵を閉めれば荷物を気にしないで遊べるわ」

「へ~、便利ですね。日本にもこういうのってないのかしら」

「日本は年中夏なんでしょう? シュトラントコルプを持っていったら大人気間違いなしよ」

 

 確かに人が多いビーチでこれだけ快適かつ完全とは言えないにしてもプライベートな空間を持てるのは最高だな。ずっと夏らしいこの世界の日本でこれのレンタルサービスやったら儲かりそう。

 

「タロー、泳ぐわよ!!」

「ちょ、待てよお!」

 

 どうやってレンタル業をスタートさせようか考えているオレの横を、アスカが駆け抜けていった。

 彼女の後ろを、某タクヤをリスペクトしたセリフと共に追いかける。後ろから見たアスカの水着にはフリルが付いており、体はそれなりに隠れているとは言えそれを着こなしているように思う。ていうか足長いよねアスカ。

 

「おりゃ!」

「ぼはっ、しょっぺえ!」

 

 くるぶしほどまで海の中に入ったところで、アスカは振り返り海を蹴って海水を飛ばしてくる。ちょうどアスカの名前を呼ぼうとしていた時だったため、口に海水が入って盛大にむせてしまった。

 セカンドインパクトで赤くなった海が南極大陸の周りだけで良かったぜ。赤い海水とか絶対口に入れたくない。

 

「ぼ、ぼはって......ぼはって......っくく」

「んにゃろう......くらえ!」

「ちょ、冷たいじゃない!」

 

 お返しと言わんばかりに両手で海水をすくい上げてアスカに投げて浴びせると、口では不満げながらも笑顔が弾けた。なんだコイツ可愛すぎだろ。

 しかし、確かに水温がちょっと低いかな。けど日差しが刺すような暑さだしちょうど良いくらいだ。

 

「よぉし、私達は二人をとうさ......んん、二人の思い出を写真に収めましょう!」

「盗撮は遠慮しておくわ」

 

 二人も楽しんでるっぽいな、片方はやっぱり不純だけど。

 そう思いながら砂浜の方に目をやると、シュトラントコルプに座ったミサトさんと目があう。ミサトさんは目一杯大きく手を降ってきたので、それに答えてやるとチャンスと言わんばかりに一眼レフを構えてきた。

 

「アスカ、ミサトさんに写真取ってもらおうよ」

「えー......あたしは別に」

「アスカと一緒の写真が欲しいんだよ。駄目?」

 

 以前まではアスカ単体の写真のほうが良いと思っていた。だがそれでは、ただアスカを遠くから見ているだけなのと変わらない。一緒の写真のほうが思い出になるってことに気付いたから。

 

「まあ? タローがどうしてもっていうんなら、良いけど?」

「うん。どうしても一緒に写った写真が欲しい!」

 

 そう言うと、アスカは仕方ないわねと言いながらオレの腕に掴まりカメラ目線を決めた。オレはそれに答えるように、ミサトさんに向かってピースして、一緒に笑顔を見せる。

 っぱアスカよ、このチョロ可愛いアスカちゃんしか勝たん! 歯が生え揃って眩しい笑顔が見れるようになって嬉しい!!

 

「んぁぁああああ! 最高よおおおおお!!」

「ミサト、うるさいんだけど。せめて叫ぶなら不適切発言って口実で貴女を殴れるから、ドイツ語にしてくれるかしら」

「ふっ、バッカみたい」

「ははは、確かに。でも......」

 

 少し背の高いアスカと目線を合わせる。思ってることは同じだ、なんだかんだ言いつつもオレ達

 

「「楽しい(わね)!」」

「尊いッ!」

「トート? お願いだからドイツ語にして。殴りたいから」

 

 なんだかイェーナさんが本格的にイラついてきた雰囲気を感じ取ってしまった。基本的に怒らない人だけど、ミサトさんの声は離れたここまではっきり聞こえるほどの声量だ。その真横に座ってるイェーナさんの鼓膜がお逝きになる前に、叫ばせないように立ち回るか。

 

「アスカ、あれやろうよ。ビーチバレー」

「お、いいじゃない。イェーナ! ボール借りるわよ!」

「ええ、使いなさいッ」

 

 ミサトさんへの鬱憤を晴らすかのように、イェーナさんはその長い腕を存分に活かした超高速サーブをオレに向けて打ってくる。それをすくい上げようと構えた所、一歩前に立ったアスカが鮮やかなレシーブをしてみせた。

 

「よっ、と。ダンケ~!」

「さすが」

 

 あっさりとやってのけてしまうアスカちゃん。そこにシビれるあこがれるゥ!

 

 そんな気持ちで頭を撫でていると、アスカは次第に頬を膨らませ、ボールを優しくオレの顔に投げつけてきた。

 

「ほげ、ってなんで!?」

「うっさいバーカ。ほらやるわよ、じゃんじゃん打ち込んで来なさい!」

 

 べーっと舌を出したアスカは、バックステップで距離を取って準備する。

 ほうほう、良いだろう。このオレに向かって挑戦するつもりか小娘よ。理解(わか)らせてやろう!

 

「チェエイ!」

 

 ボスン、とバレーボールからなるとは思えない鈍い音を出したイェーナさん以上の高速の打球が、アスカに向かっていく。およそ普通の少女ならば本能的に避けるべきボールだ。だがアスカは違う。

 

「おいしょっ」

 

 左右の手を一つに組み、当然のように受けきる。

 

「今度はこっちの番!」

 

 不敵な笑みを浮かべたアスカは、自らの頭上に高く上がったボールとタイミングを合わせジャンプする。背中を反らせて力をためつつ滞空時間を伸ばし、左手でボールの位置を正確に捉えそれを目印に右手でボールを打ち込んできた。

 

「てぇい!」

 

 掛け声と共に放たれたそれはもはや弾丸と言ってよいだろう。それだけでなく、回転をかけられたボールはオレから見て右に曲がったあと急激に左へと曲がってきた。

 甘いぞアスカちゃん、見切っている!

 

「ふっ」

 

 息を吐きながら最短で動く。せっかくビーチなんだ、安易に飛び込んだりせず足を動かして鍛えよう。

 しっかりとボールの着弾地点に体を動かし、ボールにかかった回転を考慮して若干左側に腕を当て、当たった瞬間に腕全体で勢いを吸収しレシーブする。

 そして真上に上がったボールにジャンプで合わせて打ち込む。

 

「エイッ!」

 

 それをまたアスカが受け、オレに打ち返してくる。ちゃんと足を動かしてて偉いぞアスカちゃん。

 

「いけぇタロちゃん! アスカ!」

「......ミサト」

 

 アスカとの激しい攻防(健全)の最中、ミサトさん達を横目で見ていると、突然イェーナさんがミサトさんからカメラを奪った。ミサトさんは珍しく慌てた様子だったが、イェーナさんの一言ですぐにいつもの調子に戻った。

 

「ミサトの写真も一枚くらい撮りなさい。ほら、撮るわよ」

「えっ、あ、ありがとうございます。じゃあ、ピ~ス♪」

 

 ......な~んか見たことあるポーズで写真撮られてるな、ミサトさん。

 

「ん、やっぱり貴女写真写り良いわよね」

「そんな、イェーナさんには負けますよ。イェーナさんも撮って良いですか?」

「ええ、お願い。二人が遊び終わったら四人でも撮りましょう」

「名案ですぅ!!」

 

 まあなんやかんや楽しそうだしヨシとしよう。

 

 

 

 -----このときのミサトの写真が、後の「シンジくん江♡」に使われることになるとは誰も知らなかったのであった。




正直あのミサトさんのブロマイド(?)ほしいですよね。シンジくん興味なさそうだし、お願いしたらくれるのかもなと何度思ったことか。

物語の密度と1話ごとの文字数について

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