ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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本編前:ドイツ編
1話 原作に無い男


 白露・タロー・ドレッドノートは転生者である。突然何を言うんだと思うだろうし、オレもそう思う。だがコレは、紛れもない事実なのである。

 それは何故か? 理由は、今まさにオレの隣で筆記試験に励んでいる幼女。惣流・アスカ・ラングレーが証明してくれる。

 彼女は、前世。もしくはパラレルワールドで二十三歳まで生きたオレがアニメで見ていた少女の過去の姿だ。来年から小学校と言われていたので、年齢は五歳といったところか。そしてそれは、オレも変わらない。

 

「......」

 

 目の前の紙に視線を落とす。さあどうしよう、全くもってわからない。なぜなら問題文が英語ではなくドイツ語だからだ。二十三歳まで生きた記憶があるなら勉強は楽勝だろって? バカこけ、こちとら大卒とはいえFランどころかGランだぞ。公立中学校よりぬるい大学だぞ。

 数学......いや、算数であればわかる。分数が出てきたら多分詰むけど、ドイツ語......とは言わないか。ここはドイツだから国語よりもマシだ。

 

「......わかんないの?」

 

 試験官役の男が部屋を出ていったタイミングで、アスカが視線を答案用紙に向けたまま、聞こえるかどうかギリギリの声量で問いかけてくる。

 うん、わからないよ。とは言わない。オレは常に、彼女の前では頼れる男でありたいのだ。彼女の残酷な結末を、断片的ながら知ってしまっているから。

 

 

「いや、簡単すぎて呆れてたとこ」

 

 だからこそ虚勢を張る。アスカはそれに、満足気に鼻を鳴らして答えた。

 ドイツ語なんて全くわからない。そう思って答案用紙をじっと見つめると、不思議な感覚に襲われる。なんとも言えないが、日本語の文を理解するのと同じような感覚。ドイツ語を日本語に変換して思考せずとも、言葉の意味がすっと理解できる。ドイツ語ネイティブになったような気持ちだ。

 

 右手に持った鉛筆を走らせる。手は止まることなく、スラスラと進む。そして、気がつけばすべての問に答を書き終えていた。

 なんとも不思議な気分だ。世界Aの記憶を得る前のオレは、世界Aのオレよりも賢いことだったろう。だが、ベースが二十三年の経験を得ているオレの脳は、より簡単に思考をまとめる事ができた。若く吸収力の高い脳が社会人に至るまでの経験を得ている。つまるところ、強くなってニューゲーム状態だ。

 

 そう考えていると、扉がガチャリと開かれ体格の良い試験官役の男が入ってきて、鉛筆を置いたオレとアスカを見て一言。終わったか? と問いかける。もちろん日本語ではなくドイツ語だ。けど脳はそういう意味だと捉える。ほんやくコンニャクってこんな感覚なんやろな。

 

「次は体力テストだ。ついてこい」

 

 そう言う男に、オレとアスカはヤーと答え、後をついていく。広い施設の廊下、その一室に案内され、二人で入る。二つのロッカーが並んでおり、真ん中にはパーテーションがあるだけ。なんともまあ質素。

 

「もうちょっと気にしてくれても良いのにな」

「本当よ。無駄に広いんだから更衣室くらい分けろっての」

 

 二人して日本語で文句を言いながら着替える。初めてアスカと出会ってからすでに三月が経過している。それなりに仲良くなったが、お互い両親の話はしていない。しかし年齢と今まさにオレ達がエヴァパイロットとしての英才教育を受けていることから、彼女の母親はすでに死去しているだろう。浅い原作知識によると、彼女は今後自分がエヴァパイロット、しかも英才教育を受けたエリートであることに依存していく。

 

 何が言いたいかと言うと、今のうちにアスカちゃんを手懐けておけば成長した彼女とイチャコラできる、というわけ。そして、それがこの世界でオレが目指す未来。だがライン設定だけは間違えてはならない。もとより私だけを見て!とツンデレかヤンデレかわからぬ性格に育つ彼女のことだ。他の女性キャラ、例えば綾波 レイや葛城 ミサトと会話しただけで後ろから刺されるようになりかねないからな。まあ日本に行く機会があるかわからないし、消されるかも知れないけど。

 

「はーあ、早くシンクロテストがやりたい」

「それは六歳になってからって話でしょ? あと一年我慢しよう」

「でも!」

 

 運動着に着替えたアスカがパーテーションをどかし、ちょうどシャツに着替えたオレの前に顔を出す。その顔には、焦りと不安が感じられた。

 

「エヴァのパイロットにならなきゃ、私が私である証明が......」

 

 五歳にしてこれだ。前世でのほほんと生きていたオレには、この世界は残酷すぎる。だが、最低な見方をすればこれはやはりチャンスだ。アスカに好意を抱いてもらい、アスカを元気づけるための。

 オレよりもわずかに背の低いアスカの頭を優しく撫でると、彼女は不安と期待が入り混じった青色の瞳にオレを映す。ちなみにオレは瞳の色が若干薄くなった以外、前世とは変わりがなかった。もうちょっとイケメンになっててほしかった。

 そんな落胆をアスカに見せないよう、頭を撫でる手を動かし続けた。

 

「大丈夫だよ、アスカはアスカ。オレにはわかるし、証明できる」

「......もし、エヴァのパイロットになれなかったら?」

「そのときはアスカしか見えないオレと結婚でもすればいいよ......なんちっ」

 

 て。大きくなったら結婚しようは、五歳児よりも幼い子どものセリフかもなと思ったオレは、そう言ってごまかそうとした。だがアスカの笑顔でごまかすのをやめる。クソ可愛い、責任取りてえ。

 

「ちゃんと、私が惣流・アスカ・ラングレーである証明をしなさいよ。バカタロー」

「もしかしたら、白露 アスカになるかもよ?」

 

 笑顔のアスカに、そう返す。多分、以前のオレならば彼女に罵倒されるのでは、と考えただろうし、実際「気持ち悪い!」と言われただろう。だが今となっては違う。

 

「それもありかもね、バカタロー!」

 

 笑顔で優しく罵倒だ。

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