ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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書いてるうちに長くなっちゃいました。反省。


3話 我が家

「まあそう落ち込むことないじゃない。......色々立派だったって、リツコも言ってたわよ?」

「もう、お婿に行けないや......」

 

 プラグスーツの調整のためにリツコさんの目の前で全裸になった後の記憶はない。一つ確かなのは思ったよりもプラグスーツのフィット感が良くて感動したことだ。

 データを取らなきゃいけないっていうのはわかるが、肉体は年頃の男の子なんだぞ。全裸を倍以上歳の離れた女の人にまじまじと見られる恥ずかしさっていうのをリツコさんには理解しておいて欲しかった。しかもミサトさんに余計なこと言うのやめろよ。

 

 それが原因で意気消沈してしまったオレは、昼食を取った後にネルフの施設を見て回っただけで、結局、綾波 レイと会うことは出来ず。学生らしく学校に通っているらしいが、そもそも今日はネルフに来る予定が無かったのか、エヴァ関連の何かしらで忙しいのか。綾波 レイに関してはどうせそのうち嫌でも顔を合わせることにはなるので気にしていない。今一番重要なのはそう、ミサトさんの運転する車がどこに向かっているかだ。

 

「ミサトさん、これからどこ行くんですか?」

「どこって、決まってるでしょ。家よ」

「家ぇ?」

 

 家というと、ホームのことだよな。そういえば日本行きが決まったのが急すぎて、日本に来た後のことは何も知らされていない。住む場所、今後の生活がどういうものになるのか。

 幸い大学に関しては一ヶ月前に学士号と修士号をすっ飛ばして特例で博士号を取得しているので心配はない。正直なところ特例中の特例すぎてズルした気分だし、オレが専攻していた体育科学で博士号を取得出来たのも脳と身体の関連性を別視点で説いたからだが、それもネルフドイツ支部で脳科学のエリートに囲まれていたからこそ出来た話であって。

 恵まれた環境で取得できたものなのであまり自慢できることではないと思うが、それにしたってわざわざ中学校に通う必要は無いと思う。これまた特例だがドイツでの義務教育は修了した認定だし。

 いずれにせよ、ミサトさんに聞けば何かわかるかも知れない。

 

「ミサトさん知ってたら教えてほしいんですけど、オレは日本でどういう生活をすれば良いんですか? ネルフに泊まり込みでひたすらエヴァの訓練とか?」

 

 まだエヴァンゲリオン:プライマルとやらの実物も見れていない。イェーナさんの言い草的に、既にイギリスで建造を終えて日本にある感じだと思うので、アスカの弐号機みたいに建造中ではないと思うが......いや、プラグスーツと同じで諸々と調整があるか。無いなら何のために今日オレはリツコさんの前でスッポンポンになったんだって話だ。

 

 ミサトさんの返事を待ちながら今後の生活について予想を立てていると、信号が止まったタイミングでミサトさんはダッシュボードを開き、何かパンフレットのようなものを二つ取り出して渡してきた。

 

「タロちゃんには学生とエヴァパイロット、二足のわらじを履いてもらうわ。本来なら中学校に通う必要は無いと思うけれど、私の判断で通うようにしてもらったの」

「ミサトさんの判断ですか」

「そ、タロちゃんにエヴァ以外のことも知ってもらいたくて。学校で沢山友達を作って切磋琢磨して。その経験が使徒との戦いが終わった後に絶対に役立つから。余計なお世話かも知れないけど、勉強ができるだけじゃ社会を上手に生きていけないっていうお姉さんからのアドバイスよ」

 

 そう言いながらウインクしてみせるミサトさん。そんなこと言われたら好きになっちゃうジャマイカ。

 まさかエヴァパイロットとして生きた人生のその後のことまで考えてくれるだなんて、流石に思ってなかった。学力が人並みあれば良いよねで終わらせるのではなく、人間として成長してほしい。そんな思いを聞いて誰が学校に行きたくないなんてわがままを言うものですか。

 

「ありがとうございますミサトさん。学校、楽しみです」

「ん、良かった。ちなみにだけど、ファースト・チルドレン(第一の少女)、綾波 レイと同じ中学校よ。そのパンフレットが学校のだから読んでおいてね」

「わかりました」

 

 ミサトさんから受け取ったパンフレットに視線を落とす。一つは「ようこそネルフ江」と書かれたもの。おそらくは民間用だからエヴァに関することは書かれていないと思われる。そしてもう一つが「第三新東京市立第壱中学校概要」。開いてみると、学校の理念と校歌に設備、カリキュラム、制服、そして立地が書かれている。結構自然豊かな場所にあるんだな。

 

「あそうだ忘れてた、学校なんだけどいきなり明日から通うことになってるのよ」

「明日からですか?」

「うん。しかも制服は今日の採寸データをもとに仕立てるから最短で明後日、だから明日はそれっぽい格好で......っていうか、今の服装で多分大丈夫ね。上履きは買ってあるし」

 

 ジャケットにスラックスというオレの服装は、どちらかというと生徒より教師の服装な気がするが、フォーマルであれば良いだろう。

 この歳で中学校か。最低限オール1......いや、日本だからオール5か。それくらいは取って見せないとミサトさんの期待に答えられないだろうし、アスカに呆れられるな。

 

「よし、そろそろ着くわよ~」

 

 ミサトさんに声をかけられ、パンフレットを読み込んでいた顔を上げる。

 でっけえマンションだなこれ、何となくドイツで住んでた家と、横浜の赤レンガ倉庫を思い出す感じの作りをしている。そのどちらと比べても高さは三段重ねレベルだけど。

 

 もちろん使徒との戦闘時には第3新東京市にかかる被害を最低限に抑えるつもりだ。だが、全てを守るなどと誓えるほど自惚れてはいない。ここは使徒が狙う第3新東京市からは離れた郊外にあるので大丈夫だとは思うが、要塞都市ではないし最低限ここだけは何としても守らないと駄目だ。仮に使徒がここまで襲撃してくることがあれば、その時は。

 

 マンションを眺めながらそう心に決めていると、ミサトさんに右肩を叩かれた。

 

「どうしまピッ」

「あっはは! ピッってなによ~!」

 

 ミサトさんの方へ向くと肩を叩いた左手の人差し指を伸ばしていたため、頬にあたって間抜けな声が出てしまう。それを聞いた彼女は手を叩き、涙を流しながら大笑いしていた。そんな笑うこと無いだろ。

 

 一分ほど一人で笑っていたミサトさんだったが、過呼吸のようになりながらも落ち着いたのか、はーっと大きく息を吐いた。

 

「あーごめん、そんな不貞腐れないでよ。タロちゃんがちょっち難しそうな顔してたから、どったのかなーって」

「いえ別に......」

「仏頂面はタロちゃんには似合わないわよ~? じゃ、降りましょう。必要なものは全部持って」

 

 シートベルトを外し、一人先に車を降りるミサトさん。

 背伸びする彼女の後ろ姿を見ながら、ひょっとしたらこの世界はオレの知る世界よりも温かいのかも知れない。そう思う。

 今の彼女ならば、碇 シンジの良き保護者となれるだろう。赤の他人のオレに、ここまで良くしてくれるんだ。ATフィールド全開で彼の家族になりきれなかった葛城 ミサトはここには居ない。母性全開の葛城 ミサトだから。

 

 物事を考える時、常に最悪の事態を想定するのがオレの悪いところだと思う。そんなオレでも楽観的に考えられるようになったことに驚いて、一人で笑ってしまった。

 ミサトさんを待たせるのも悪いし、早く降りよう。

 体を捻ってシートベルトを外し、膝においたボストンバッグを手にして外へ出る。年中夏とはいえ、流石に夜風は涼しくて気持ちが良い。

 

「ついてきて」

 

 そう言ったミサトさんの後に続く。マンションのエントランスに入る時、チラリと見えたコンフォート17マンションという看板。それがこのマンションの名前なのだろう。

 エレベーターホールまで向かうと、ミサトさんはA棟と上に書かれているエレベーターを呼び出す。やがて軽快なベルの音とともに1階に到着したエレベーターに二人で乗る。12階建てのようだが向かう先は......11階か。

 

 少しの間無言が続く。やがて11階に到着すると、ミサトさんが降りたのを確認してからオレもエレベーターを降りる。中庭もあるようだし、通路の時点で既に豪華な感じがする。

 世界Aの実家はお屋敷だったし、実家を出て一人暮らしをしてたのも平屋の賃貸だからこういうマンションには憧れがある。システムチックな感じが良いよね、やっぱり。

 

「前ここに越してきたばっかりだから、まだ散らかってるかもしれないけど気にしないで」

「あ、はい......ん?」

「うん? どうしたの?」

 

 足を止めたミサトさんが振り返る。

 

 この前ここに越してきたばっかりだって言ってたよな。記憶が正しければそのようなことを碇 シンジにも言ってた気がするが、それだと時系列的に合わない気がする。となると既にオレの知ってた世界とは違うってことか......ただでさえほとんど覚えてないってのに、変化まであるなんて思わなかった。

 それに、まるでオレが住むかのような感じだが......まさかねえ?

 

「ここってミサトさんの家ですよね?」

 

 かなり遠回しに聞いてみる。ここにオレも住むんですか、とダイレクトに聞くこともできただろうが、もしかして嫌だ? などとミサトさんに言われた日には罪悪感で胃が破裂してしまうので聞けない。

 そんなオレの意図を察してか、ミサトさんは笑顔で言う。

 

「そうよ。そして、今日から私とタロちゃん。二人の家になる場所」

「......ありがとうございます、ミサトさん」

 

 心の何処かで期待していた答えが返ってきたことに、少し恥ずかしくなって目をそらしながら礼を言う。ミサトさんの表情は見えないが、満足そうな「ん」という一言と共に歩き出した。

 

 日本ではネルフ管轄のどこか適当な所で一人暮らしをすることになると思っていたが、ミサトさんと二人暮らしになるとは。おそらくはオレの保護者を買って出てくれたのだろう、頭が上がらないとはこのことだ。

 

「たっだいま~」

 

 自動ドアだろうか、葛城という表札がかけられた扉が横にスライドすると、ミサトさんは疲れを弾き飛ばすような声とともに玄関に入る。

 だが靴を脱いで家に上がることはせずに、玄関でオレのことをジッと見つめている。

 わかるよ、ミサトさんが何を言ってほしいのか。それに、それはオレが言いたい言葉でもあるから。

 

「ただいま、ミサトさん」

「うん! おかえり!」

 

 一歩踏み出して玄関の中に入ると、ミサトさんは笑顔と共に出迎えてくれる。背後でシュインと扉が閉まる音に一瞬ビクッとしてしまった。尻とか挟まれないで良かった。

 

「ほら、上がって上がって。ここはもうタロちゃんの家でもあるの、遠慮はいらないわよ」

 

 バタバタと乱雑に靴を脱いでいくミサトさん。段差の低いバリアフリー仕様のため、廊下にミサトさんが脱ぎ捨てた靴が乗っかってしまっている。

 こういうところ変わんねえよなあ、ほんと。

 少し呆れながらもやっぱり変わらないミサトさんを嬉しく思いつつ、脱ぎ捨てられたミサトさんの靴を揃えてから自分の履いているスウェードで出来た靴を脱ぎ、すこし離れたところに揃える。夏ばっかなら靴替えないとしんどいかな。

 

 家に上がり、電気の付いている方向へ歩く。が、あと一歩のところで足が止まる。思い出してしまったのだ、記憶の中にあるミサトさんの汚部屋を。

 ドイツのミサトさんの部屋にオレは上がったことが無いからわからないが、ただオレとアスカの前でそういう素振りを見せなかっただけで酒好き故に、ビールの缶やら日本酒のビンやらが散らばってたらどうしよう。

 幻滅......なんてもちろんするわけ無いが、シンプルに衛生的にどうなのとは思うので掃除したい衝動に襲われるかもしれない。意を決して歩を進めよう。

 

「あれ、綺麗だ」

 

 ダイニングだろうか、大きな机とキッチンに冷蔵庫があるその部屋はオレが想定した最悪の部屋よりも。いや、最善の状況よりも綺麗だった。ジャンクフードやコンビニの惣菜のゴミが散らばっているのかと思いきや、床にはゴミ一つ落ちていないし、お酒の残骸などもってのほかだ。

 唯一壁に沿うように置かれている引き出しの上には日本酒のビンがいくつか並んでいるが、どちらかというとインテリアのような置かれ方をしている。多分良いお酒なんだろう、知らんけど。

 

 部屋が思ったよりも綺麗で安心したオレは、何となく怖いもの見たさで冷蔵庫に手を伸ばす。そこで見てしまった、ビールと開封済み、未開封が混同したおつまみで埋め尽くされた冷蔵庫に、冷凍食品と氷で溢れている冷凍庫を。

 なるほど、あの女隠してやがったな......。

 

「タロちゃん、まずは部屋を紹介......あ」

「ミサトさん? なんですかぁコレ?」

 

 髪を結び、ピアスも小さなものになってラフな格好に着替えていたミサトさんが心身共にリラックス状態といった様子でこちらにやってきたが、冷蔵庫の中を指差すオレの顔を見るやいなや冷や汗を流す。

 

 そりゃそうだ、おそらく今のオレは鬼のような形相をしているだろう。それは何故か? 許せないのだ、このような自堕落な生活をして資本である体をぞんざいに扱うことが。

 ボストンバッグをおろしてゆっくりとミサトさんに近づく。引きつった笑みを浮かべるミサトさんの後ろに見えるリビングは綺麗だが、問題はそこではない。見られないであろう場所なら良い、その腐った根性を叩き直さねばならないのだ。

 

「ミサトさん、まずミサトさんの部屋を案内してくださいよ」

「え、へ部屋!? い、いやぁ~、流石のタロちゃんでもそれはちょっち......ね? ほ、ほら、プライバシーっていうかさ? ね?」

「んなこたあ関係ないです、ほら案内してくださいよ。ミ・サ・ト・さん?」

「......ハイ」

 

 笑顔で威圧してみると、ミサトさんはしおらしくなってトボトボと歩き始める。その後をついていくと、リビングへ入ってすぐ左のふすまの前でとまり、ここですと消え入りそうな声を出した。

 

 深呼吸を一つしてから、覚悟を決めてふすまを勢いよく開く。

 和室だ。敷きっぱなしでくちゃくちゃになった布団を中心に、転がる無数のビールの空き缶に、おつまみとスナック菓子のゴミ。丸められた使用済みティッシュの数々、読みっぱなしで放置されたたくさんの雑誌、脱ぎ捨てられたいくつかのズボン。世紀末を部屋で表現してください、というお題を出していたら間違いなく満点をつけていた。だが成人女性が暮らす部屋としては

 

「うっわぁ......ないわ」

「ちょっとぉ!? 乙女の部屋を見て、うっわぁ......って言うのはないでしょお!?」

 

 もう見せません! と言いながらオレの前に立ち、両手足を広げて隠そうとするミサトさん。それをするりと抜け、オレはこの魔境に足を踏み入れる。

 

「うっわって言いたくもなりますよ、転がってる衣類がズボンだけなのが唯一の救いですね。シャツとか下着とか転がってたら本当にドン引きしてましたよ。だとしてもお菓子のゴミとティッシュくらい捨てたらどうですか......ってなんだコレ、変な匂い。何拭いたんですかもう」

「あ、それはぁ......」

 

 とりあえず転がっていたポテチの空袋を手にしたオレは、小さなゴミをその中に入れていく。その途中、布団の横にあった丸められたティッシュを手にしたときにスポーツドリンクのようななんとも例えがたい香りがしたのでミサトさんに文句を言うと、彼女は顔を赤くしうつむいていた。今になって恥ずかしがるなよ、この汚部屋を見られた時に恥ずかしがれ。

 

 ポテチの袋がいっぱいになってもミサトさんの部屋に転がるゴミは収まりきらなかったので、諦めてミサトさんにゴミ袋の場所を聞くと、持ってきますとつぶやきダイニングの方へ向かった。

 改めて部屋を見るとひどい有り様だな。とりあえず、おつまみとスナック菓子の袋は汚れてるだろうからもう燃えるゴミとしてティッシュと一緒にまとめちゃおう。割り箸とかもあるし。

 

 掃除プランを立てていると、ミサトさんがゴミ袋を持って来てくれた。それを受け取りとりあえず缶以外、燃えるゴミを詰めていく。小さなものばかりだったので、袋にまとめるとそれほどの量は無かった。最後に残ったティッシュを手にし、ミサトさんに説教する。

 

「良いですかミサトさん、こういう小さなゴミでも放置していくとどんどんかさばって部屋が溢れていくんです。常日頃から生活してて出た小さなゴミはすぐ捨てる、これを心がけてください。

 

 そう言い、最後のティッシュをゴミ袋に放り込んで縛る。まだ入る余地はあるが、面倒なのでこれを一つとしてしまおう。

 ゴミ袋を縛り終えると、ミサトさんが何故かモジモジしながら話しかけてくる。

 

「あの......手洗ったほうが良いかも」

「そりゃ洗いますよもちろん、ポテチの袋の油とか付きましたし」

「いやぁ、それよりもティッシュの方が気になるっていうか......」

「ティッシュ? ああ、やけに多かったですけどミサトさんって花粉症なんですか?」

「そうじゃないけど......まあ女性なので」

 

 何故最後に小さな声で女性なのでアピールしてきたかはわからない、花粉症なんて誰だってなるだろ。

 

「で、手洗い場はどこですか?」

「あ、うん。案内するわね、こっち」

 

 案内された先は、ダイニングに面した部屋。ついでに浴室とトイレの場所も把握できたから良いが、下着を干しっぱなしにするのは勘弁してくれ。赤色のめっちゃ派手なやつとか干してあったから今後顔を見る度に想像してしまいそうで嫌だ。

 

 手を洗い終えたオレがダイニングに出ると、ミサトさんが神妙な顔で椅子に座っていた。まあんな汚い部屋を見られるとか女性の尊厳が破壊されたようなもんだし当然か。

 

「そんな顔しないでくださいよ。オレは別にあれ見たくらいじゃミサトさんの事嫌いにならないですから」

「......ほんと?」

「本当ですよ、むしろ安心しました。ミサトさんも完璧じゃないんだなって」

「あなたは神カッ!!」

 

 椅子から飛び上がり、抱きついてくるミサトさん。ヒールじゃなくなった分、いつもよりやけに柔らかい胸元に顔をダイレクトに押し付けられて呼吸困難になりそうになる。

 

「よっ、世界一器の広い伊達男!」

「もうわかりましたって、ほら。部屋案内してくださいよ」

「もっちろん!」

 

 ミサトさんの包容から開放され、部屋を案内される。リビングが広いだけじゃなくて、追加でもう二部屋......いや、窓がないここを物置認定するともう一部屋か。ファミリー向けの広さだなこりゃ。

 

「で、タロちゃんはこの部屋を使って。家具はまだなにもないから、今度買いに行くかネットで注文しましょう」

 

 向かい合った二つの部屋。そのうち、広くて窓のある方を使ってと言われる。

 大体6畳くらいはありそうな広さだが、碇 シンジが来た時に狭い部屋だと病みそうな気がするから、ここはあけておこう。

 

「いえ、自分はこっちで良いですよ」

「え? でもここ、物置よ? 窓もないし......」

「でもエアコンついてるじゃないですか。それにオレ、小さい空間のほうが安心できますし小さいからエアコンの電気代も浮きますよ」

 

 冷房しか使うことは無いだろうが、それならなおさら小さな部屋のほうが涼しく快適に過ごせるだろうな。体を動かしたい時はネルフのトレーニングルームを使えば良いし、ここでも自重トレーニングくらいはできる。

 

「......わかったわ、じゃあここをタロちゃんの部屋にして。あと、本当に遠慮しなくて良いのよ? 電気代なんて気にしないで」

「はい、ありがとうございます。じゃあ遠慮なくミサトさんの生活を改善させてもらいますね」

「うっ、たまのお酒くらいは許してちょ......」

 

 手を合わせて懇願してくるミサトさん。まあ、オレも世界Aでサラリーマンやってた時は仕事のストレスで紅茶がぶ飲みしてたから駄目だとは言えない。

 でもお酒の場合はちゃんと節度を守ってもらわないといけないから、そこだけは厳しくさせてもらおう。

 

「たまになら良いですよ。でも食事はオレが担当させてもらいます」

「えっ、タロちゃんって料理できるの? 美味しいケーキ作ってくれた覚えはあるけど......」

「人並みにはできますよ。体には気を使ってますから」

「たっすかるぅ~! 流石にレンチンばっかじゃ飽きてきてたのよ!」

 

 ダイニングに向かいながらそんな会話をする。

 レンチンばっかとかいう言葉が聞こえてきた気がするが、それはとりあえずあとにして。まずは今日の献立から......ん? あれ、おかしいな。日本人ならば持っているべきあの家電が無いぞ。

 

「ミサトさん、炊飯器どこです?」

「あっ......そ、それは~、ないんだけどぉ。でもほら、三種の神器はあるでしょ!? テレビ、冷蔵庫、洗濯機、それに電子レンジまで!」

「......とりあえず今日は冷凍食品で我慢しますけど、明日絶対に早く仕事終わらせてくださいね。炊飯器とか料理道具諸々と食材買うんで。安心してください、オレが払います」

「そ、そんなタロちゃんに払わせられないわよ! 私が全部......はちょっち厳しいかもだけど、払うから!」

 

 この様子からして酒とおつまみと冷凍食品、食費がかなりかかってそうだな。改善すべき点はまだまだありそうだ。

 

「大丈夫ですよ、それなりにお金ありますし」

「す、すごい自信......。でも、料理をしてくれるのにその道具まで買わせられないわ」

「いいえ、オレが選んでオレが買います。ミサトさん、今日からここはオレの家でもあるんですよね? だとしたら一緒に住むミサトさんは家族です。家族に遠慮はいりませんし、家族の体を心配するオレのわがままだと思って聞いて下さい」

 

 キッチンを吟味していたオレが視線をミサトさんに戻すと、彼女は拳を突き上げ号泣していた。我が生涯に一片の悔い無し、とでも言いそうだな。

 

「ありがとうタロちゃん。これからも、よろしく」

「はい、こちらこそ。ミサトさん綺麗だしスタイルも良いんだから、それに甘えないでちゃんとケアしたほうが良いですよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。じゃあ、ご飯にしましょっか。レンチンだけど」

「今日だけですよ」

 

 仕方ないなと笑うと、ミサトさんもそれにつられて笑った。

 この見慣れない日本に、帰るべき我が家が出来たんだ。いつもの癖なのか、オレが気づかぬうちにビールを開けたミサトさんが気まずそうな顔をしているが、今日はゆるそう。

 

「オレのネルフ本部着任、祝ってくださいね?」

「っ、ええもちろん! パーッとやらせてもらうわ!!」

 

 勢いよくビールを流し込むミサトさん。その後、酒に呑まれた彼女を介抱する羽目になったのは言うまでもない。




久しぶりに小説情報を見たらびっくりするくらい見てくださる人が多くて驚きました

それと感想で頂いている主人公の名前がヤバい件ですが、何故こんなめちゃくちゃな名前になってしまったのかというと、実は次回のワンシーンのためだけにドレッドノートになってしまったんです。白露とタローに関しては、船の名前と日本人っぽい名前で出てきたのがコレだからです。

ぶっちゃけあとになってマシな名前が思いついたものの、それがかなりストーリー進んでからなので書き換えるのが面倒になってそのままゴリ押してます。二次創作のオリキャラ(主人公含む)の名前なんて読む人が自由に変えて良いと思いますので、名前は気になさらず自由に読んでください。

最後に、語字報告助かります。基本的に見直さず衝動的に書いてから投稿スタイルなので。

物語の密度と1話ごとの文字数について

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