ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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3話 戦闘 サキエル

 タローとエヴァンゲリオン:プライマルこと壱型は、ネルフ本部から第三新東京市地表まで、1キロメートル以上はあるエヴァ射出シャフトを高速で登っていた。

 今までに感じたことのない重力に加え、目の前の壁が超高速で動いていく様子にタローは乗り物酔い寸前。軽いパニック状態になっていた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~!」

 

 エントリープラグ内でガタガタと小刻みに揺れるのに合わせ、タローは『あ~』と声を出す。体が揺さぶられていることでオペラ歌手顔負けのビブラートと共に壱型はグングンと登っていき、やがて使徒に感知されない位置のハッチが開くとともに、今回は飛び出す形を取っていないため飛んでいかないように固定されて止まる。

 一気に移動が止まったことによりうつむいていた壱型の顔が強制的に前へ向き、夜の第三新東京市にエヴァが登場した。

 

「いへっ、舌噛んだ!」

 

 口を開け声を出していたタローは、当然のように最後の急停止で舌を噛み涙目。しかしちょうど通信回線を切っていたこともあり、その醜態を発令所に晒すことはなかった。

 ミサトの『最終安全装置解除!』という指示とともに、エヴァ専用拘束兼移動式射出台のロックが外される。

 

「エヴァンゲリオン:プライマル、リフトオフ!」

 

 ロックを外された射出台から壱型が切り離される。タローは背中が楽になったような感覚を受けたあと、素早く右足を出してバランスを取る。

 エヴァが第三新東京市に足をつけた。その事実に発令所内では『おお』と歓声が上がる。

 

 人類の叡智を詰めた二つの技術の結晶が、ようやく役に立つ日が来た。

 最新鋭の技術を詰め込んだそれらに戦闘によって損害が発生した場合の修復費とその労力。それらを考えるとタローにはなるべく被害を抑えて戦ってほしい、というのが都市とエヴァに関わる全員の思う所だろう。

 だがしかし、本心は違う。『思い切り暴れてこい。そして盛大に倒してこい』、そんな気持ちで姿勢を低くしながら都市を移動する壱型を見つめていた。

 

 肝心のタローはというと、リフトオフしてすぐに建物の影に身を隠してサキエルの動きを警戒していた。マヤから送られてくる情報を元に、サキエルの予想される行動ルートを計算して先回り。ゆっくりと呼吸を整え裏を取るその瞬間を待つ。

 

「ふぅ......よし、大丈夫だ」

 

 自分に言い聞かせるようにしたタローは、壱型の肩部ウェポンラックからプログレッシブナイフを取り出す。両刃でありながらやや湾曲したそれは、突き刺すことと切り裂くことの二つに特化した形状。イェーナが日本刀からヒントを得て設計したものだが、特殊な形状ゆえその扱いの難しさから実質的に壱型(タロー)専用装備となっていた。

 

 ドシン、とサキエルの足音が聞こえる。それと同時に、マヤが緊迫した声で距離を告げた。

 

「目標との距離、200......」

 

 ドシン、ドシン、とその音が徐々に大きくなっていくにつれ、エントリープラグ内から壱型の足を通し、都市の振動を感じる。

 タローはマヤから『距離残り100』という声を聞いて、閉じていた目を開く。大きなビルを軸に円を描くように壱型を移動させ、サキエルの視線から逃れる。

 

「目標、目の前」

 

 チラリとビルの影から壱型の顔だけを出して覗き見る。そこにはマヤの言う通り、目標。第3使徒 サキエルの姿があった。

 近くで見るとその大きさと異様な形状、雰囲気に思わず圧倒されるタロー。僅かに呼吸が乱れるが、その音はエヴァの中であれば聞こえないため整え放題。数回深呼吸し、サキエルが通り過ぎるのを待つ。

 

「......ッ!」

 

 サキエルがビルに隠れる壱型の存在に気付かず通り過ぎた所で、タローは鋭く息を吐くと同時に飛び出した。

 

 完全にがら空き状態の背中めがけて走り、まずは逆手に構えたプログレッシブナイフを挨拶代わりと言わんばかりに背中へ突き立てる。サキエルは攻撃に気付いていないため、それはATフィールドに阻まれることなく深く突き刺さり、青色の血しぶきが飛んだ。

 

 タローはプログレッシブナイフを更に奥まで押し込み、鋭い切れ味とプログレッシブナイフの振動も加わることで刃が見えなくなるほど奥まで突き刺さる。その状態で右手にはプログレッシブナイフの柄を、左手は肩の部分を持ち、しっかりと固定したサキエルの足に前蹴りを放つ。

 

 あえて足首付近を狙い、飛び出した加速とエヴァの重量が乗ったその蹴りはサキエルの足首を粉砕する。

 自らとエヴァの体重を支えきれなくなったサキエルは前のめりに倒れるが、その途中に背中に刺したプログレッシブナイフをぐるりと回して肉をえぐるようにして抜き取り。

 自由に動ける様になったタローは、サキエルが倒れる瞬間に上手く自身とサキエルの体勢を変えて地面に叩きつけるような形へ持って行き、馬乗りになってマウントポジションを取る。

 

「すごい!」

 

 その間僅か数秒。あっという間に使徒へダメージを与え有利な位置を取ったタローを見て、シンジは思わず声を出す。

 当然、そう思ったのはシンジだけではない。普段タローがエヴァを動かしているところを見ていない職員達はもちろん、リツコやマヤを始めとした実験場で動く壱型を見たことのある職員も驚きを隠せなかった。

 

 接近戦で彼の右に出る者は居ない。それはネルフドイツ支部でタローが受けていた評価。

 エヴァパイロットの中で。というくくりではなく、生身の人間同士。軍人を相手に体術訓練で得た評価だ。接近戦に特化しすぎたあまり、汎用性が求められる弐号機の正パイロットになれなかった、という話はもはや一種の武勇伝として語られている。

 それを耳に挟んでおり、戦闘シミュレーションを見ていたミサトでさえこの展開は予想外だった。『まるで熟練の兵士ね』と小さく楽観的な笑みを浮かべる。

 

 このまま勝てる。誰しもがそう思った。

 事実ダメージを与えているし、タローは抜き取ったプログレッシブナイフを振り上げ、無防備になったサキエルのコアめがけてそれを振り下ろす寸前だった。

 

 しっかりとコアに狙いを定めたタローは、目一杯伸ばした右腕をそこに打ち付けようとする。だが寸前でサキエルの目が光ったのを見て、慌てて動きを止めて上体を逸らす。

 

「アチッ」

 

 サキエルの目から上に向かって十字に光るビームが放たれたのだ。それが僅かに壱型の顔に掠ったことで、タローは顔に熱風を浴びたような痛みを覚える。

 

「タロちゃん!?」

 

 発令所では映像が乱れたことで、それまでのこれで終わりというムードから一転、何が起きたんだと動揺が広がる。

 奇しくもサキエルが放ったビームと同じ十字形のネックレスを握りしめ、ミサトは悲痛な叫び声を上げる。しかし急いでタローの安否を確認しようとしたオペレーター達から『シンクログラフ正常、パイロット健在!』という報告を受け、一旦安堵する。

 

「ゼロ距離のあれを避けるか......すさまじいな」

 

 ゲンドウの横に立つ冬月が、映像を見て呟く。一見冷静な様に見えるが、それでも彼の額には冷や汗が浮かんでいた。

 

「白露くん......」

 

 レイが拳を握りしめスクリーンに映る壱型を見る。ビームを避けた壱型は再びプログナイフを振り上げ、今度こそトドメを刺そうとしていた。

 ナイフの先端がコアに向かう。だがそれはコアに届くこと無く、ガキィン! という音とともに現れたATフィールドに弾かれた。

 

「な、なんですかあのバリア!?」

 

 それを見ていたシンジが近くにいたミサトに問いかける。ミサトは苦虫を噛み潰したような表情で応えた。

 

「ATフィールドよ......あれがある限り、接触することはできない。タローくん、ATフィールドを展開して!」

「やってます!」

 

 ATフィールド、心の壁。それは表と裏、反発(跳ね返し)吸引(受け入れ)の二つの性質を持ち、使徒とエヴァのみが展開可能なバリアのようなもの。意外と万能。

 

 ミサトの言う通り、ATフィールドがある以上は使徒にダメージを与えることは出来ない。特に今のように、壱型の攻撃に対して使徒が意図的にATフィールドを展開しているなら尚更。

 とはいえ、ATフィールドも万能ではない。ATフィールド以上の破壊力を持って貫通するか、既に展開されているATフィールドよりも更に強力なATフィールドを押し付け干渉し、同じ性質で中和か逆の性質で侵食することで破ることが出来る。

 

 確証はないが、エヴァの作り出すATフィールドの強さはパイロットとのシンクロ率によって変わる。それがミサトの見解。

 であれば、壱型とのシンクロ率が70パーセントのタローが展開するATフィールドでサキエルのそれを中和か侵食することが可能と考えたのだ。当然タローもそれが頭にあり、プログレッシブナイフを突き立てつつ自身のATフィールドでサキエルのものを中和しようとしていた。

 

 しかしサキエルはそれを許さない。細い両腕を何倍にも肥大化させ、壱型に抱きつくような形を取って力で押しつぶそうとするが、それはタローにとって想定済み。

 

「チッ、仕切り直しか」

 

 サキエルの腕が背中にまわる途中に、体を丸めて回避しバックステップで飛び跳ねて一気に距離を取る。

 当初の予定であれば、背後から強襲しサキエルに何もさせず撃退する予定だった。それはサキエルがN2地雷の攻撃を受けて機能増幅及び僅かな知恵をつけていなければ成し遂げられただろう。国連軍によってサキエルが無駄に厄介な敵となってしまったのだ。

 

 起き上がったサキエルを見て、タローはここから撃退する方法を考える。

 もう不意打ちは出来ない。下手に距離をとってもビームを撃たれて被害が増えるだけ。油断すれば手から光る槍のような物を展開してくる。壊した足首も回復された。ヤツに痛覚が無いなら痛みで動きを制御させることも出来ない。

 四肢を切り落とす? 顔のようなものを潰せばビームは出なくなる? 打撃のほうが有効的か?

 正対し、頭の中で打開策を探す。だがそのどれもが完璧な策とは思えないものばかり。頬をかいたタローは『それならば』とプログレッシブナイフを握り直す。

 

「まだアレが人っぽい形で良かった。手から槍、目からビームに気をつけて......力押しだ!」

 

 プログレッシブナイフを両手で握りサキエルに向かって突撃する壱型。その刃はやはりサキエルに届くこと無くATフィールドによって弾かれるが、壱型も同じ様にATフィールドを展開しそれを中和しようとする。

 だがそれでは破るのにまだ足りない。ATフィールドにプログレッシブナイフを突き立てたことでピン留め状態になった壱型にビームを浴びせようと、サキエルの目が光った。

 それを見たタローは、プログナイフを突き通す勢いを緩めずに頭と顎を引いて。

 

「おりゃあ!」

 

 渾身の頭突き。頬をかく時にイェーナが頭部の拘束具まで武器に変えたことを思い出したタローは、この際キツツキと呼ばれても構わないと決心してそれを放つ。

 プログレッシブナイフの切断力と壱型のATフィールドでの中和に加え、鋭いその頭突きにサキエルのATフィールドはガラスの様に粉々に砕けた。

 そこで頭突きの勢いは止まらず、壱型の頭部拘束具がビームを放とうと光っていたサキエルの顔までめり込み、グシャリという音をたてて粉砕した。

 

「めちゃくちゃよ......」

 

 まさかその拘束具が役に立つとは思っても居なかったリツコがそう呟く。

 『レーマン博士のことは同じ科学者として尊敬している。だがいくらなんでも頭突きを想定した装備など使いこなせるわけがないし、それが通用する距離に近づくことなど無いだろう』。それが初めてイェーナからの壱型改修案を見た時のリツコの考えだった。

 

 だが相手はあのドイツ史上最高の天才であり幼少期からタローを見ていたレーマン博士。ここは大人しく従っておこう。そんな軽い気持ちで改修案を承認したのだが、まさか初戦でいきなりATフィールドを砕く決定打になるとは思わず。

 自身の浅はかな考えを恥じると同時に、対使徒には型破りであることも必要だと認識することになった。

 

「でい!」

 

 タローは顔を潰されて倒れたサキエルに再び馬乗り状態になると、光る槍を飛び出させるその両手を一つにまとめて地面にプログレッシブナイフで突き刺した。

 これでもうビームは出ないだろう、両手を固定しているから光る槍も出せない、ATフィールドも砕いた。あとはコアを破壊するだけ!

 左肩のウェポンラックに手を伸ばす。だが出撃前からずっと忘れていた、唯一の失敗にタローは気付く。プログナイフは一本しか装備していなかった、という事実に。

 

 発令所で何時までもトドメを刺さず、何も入っていないウェポンラックを展開した壱型を見たミサトもタローの唯一の失敗に気がつき、リツコに詰め寄る。

 

「まずい、ナイフ一本しか装備してないの!?」

「ごめんなさい、準備不足だったわ......」

 

 ミサトに視線を向けること無く、スクリーンを見ながら謝罪するリツコ。

 壱型が装備しているプログレッシブナイフは生産が一つしか完了しておらず、予備はおろか二本目もまだ出来上がっていない状態であった。ここで生産出来ていないことのせいにすればそれで楽になるのかもしれないが、リツコはそのようなことはせず『何故私は初号機が装備していたプログナイフを臨時で壱型に装備させなかったの!?』と心の中で自分を叱りつける。

 

 プログレッシブナイフが無いことで、壱型は決定打を欠いてしまった。かといってここでサキエルの腕を固定しているナイフを抜けば手を自由にさせることになるし、兵装ビルからライフルやらを出そうにも場所が場所で取りに行くまで時間がかかる。もしそのうちにサキエルがまた体を再生させてしまえばやり直し、同じ手が通じるかわからない。

 そんな状況下でタローが選択したのは、ひたすらコアを殴りつけることだった。

 

「セイ! ッヤァ! チェェェェェェ!!」

 

 殴るたびに力を入れるための掛け声が叫び声のようなものに変わっていく。しかしサキエルの胴体が衝撃を吸収しているのかコアの固定が完璧では無いのか、殴りつけた100パーセントの力をコアに伝えることが出来ずにいた。

 そこでタローはコアのまわりにある尖ったあばら骨のようなものに目をつけ、それを力任せに引きちぎるとコアに向かって振り下ろした。

 

「こんのぉ! とっとと! 往生! すれやぁああああ!!」

 

 何度も何度もそれを叩きつけていく。タローの声が発令所に響くたび、その場にいる人達は自分が乗っている訳ではないと分かっていながらも腕に力が入っていた。

 

「っ、あと少しよタロちゃん!」

 

 ミサトが叫ぶ。

 サキエルのコアにはヒビが入っており、あと数回この骨のようなものを叩きつければ割れるというところまで来ていた。

 もう勝利は目の前。ミサト達だけでなく、コアを叩く壱型からのフィードバックで感触が変わったのを感じ取っていたタローもそう思っていた。

 

 誰も、サキエルの目が僅かに光ったことに気が付かないまま。

 

「これで終わりぃい!」

 

 全身を目一杯使って腕を振り上げ、タローが最後の一撃を叩き込もうとしたその瞬間。サキエルは体を液状化させて壱型にまとわりついた。

 

「嘘、自爆する気!?」

 

 体を膨らませたサキエルを見たミサトが直感でそんな言葉を言う。

 もし自爆させれば、被害は甚大なものになるだろう。だがこの男はそれを許さなかった。

 

「もー! オレはキツツキじゃ、ねえんだよぉー!」

 

 腕を伸ばしていたことでまとわりついてきたサキエル、そのコアと頭部との間にスペースを取れていたタローは、ATフィールドを砕いた時の様に壱型を頭突きさせる。

 ヒビの入っていたコアは、その頭突きで真っ二つに割れた。

 

 ピシッ。

 そんな音が聞こえてから少しの間だけ時間が止まったかのような静寂の後、ドカァン! という爆発音と共に発令所の大型スクリーンは真っ白になる。全員が映像の復元を固唾をのんで見守っていた。

 

「タロちゃん......」

「白露くん......」

「タローくん......」

 

 ミサトはネックレスを握りしめ、レイは目を閉じ、リツコは唇を噛み締め、マヤは祈るように指を組み、マコトとシゲルは拳を握りしめ、シンジは目を見開き。

 発令所に居る人達それぞれが、思い思いにタローの名を呼ぶ。ただタローの無事を願って。

 それは彼の名を呼んでいないゲンドウも例外ではない。組まれた腕に力が入り、隣に居る冬月も少しでも早く情報を得ようと、意味がないことはわかっていても一歩足を踏み出していた。

 

 そこに発令所が。いや、ネルフ中が待ち望んだ知らせが入る。

 

Mission abgeschlossen(任務完了).目標爆散、我らの勝利です!」

 

 全員が見ているスクリーンに映し出されたエントリープラグ内の映像。タローが笑顔でVサインと共に勝利を宣言する。

 その瞬間、発令所が歓喜に揺れた。

 

「ぃ~よっしゃあ!」

「ちょっとミサト、危ないわよ」

「良いじゃないの!!」

 

 ミサトは隣に居たリツコに飛びついて喜ぶ。リツコは鬱陶しそうにしながらも、喜びを隠せていなかった。

 

「よかった......お疲れ様、タローくん」

「はい! マヤさん、補助ありがとうございます!」

 

 マヤは安心から瞳に涙を浮かべていたが、一番にタローへ声をかける。

 それは『ひと仕事終わった後に美人からもらうお疲れ様は格別だぜ』とタローを大いに喜ばせていた。

 

「やったな! 俺達の勝利だ!」

「ああ! 見たかあの戦闘! こう、シュバババって!」

 

 シゲルとマコトはタローの戦いを思い出し、興奮した様子でそれを語り合う。

 

「......」

 

 レイは何も言わないが、その顔は優しく微笑んでいた。

 口には出さないだけで、心では『頑張った、ありがとう、良かった、どれかしら......』とタローに直接伝える労いの言葉を考えていた。

 

「すごい、これがエヴァ......」

 

 シンジはまだ現実味が無いのか、少しだけ呆けた顔をしていた。

 エヴァを駆って使徒を撃滅したタローに、憧れや尊敬にも似た感情を持ちながら。

 

「勝ったな」

 

 冬月が拍手しながら、隣で僅かに口角を上げているゲンドウを見る。

 

「しかし、相手が彼で良かったのか?」

「問題ない。老人達は覚醒すればどちらでも良いが、ドレッドノートの覚醒が我々にとって好都合だ」

 

 ゲンドウの発言に冬月は同意見なのか、それ以上何も言うことはなかった。

 

 ざわつく発令所の声を聞きながら、タローはエヴァの回収を待つ。自らの手を見ながら。

 

「ん~、脳が疲れたよ......お疲れ様、壱型」

 

 エントリープラグのレバーをそっと撫でながら、壱型に呼びかける。

 もちろん返事など無いが、それでもタローは心が温まるような感覚を。レイの言葉を借りるなら、『心がぽかぽか』したように感じる。

 

 それまでは叢雲が隠していた月も、サキエルのコアを割った爆発で顕となり、夜の第三新東京市とそこに佇む壱型を照らしていた。

 お気に入りの音楽を口ずさみながらその風情を楽しんでいたタローに、風情など蹴散らすような叫び声が聞こえる。

 

「タロちゃぁあああああああん!?」

「おわっ、びっくりした......どうしました? ミサトさん」

 

 エントリープラグ内に現れた画面に映るミサトの顔と、タローを呼ぶ悲鳴のような声。ミサトがドイツを離れてから久しく聞いていなかったその声に懐かしさを覚え、タローは笑ってしまう。

 それを見たミサトは、勝利報告の時にタローが見せた笑みが無理して作ったものではないと確認し、本格的に感情を爆発させる。

 

「やったわよ! あなたが勝って、あなたが守ったの! 人類を!」

「......そう、ですね。オレが勝って、オレが人類を救いました! よっしゃー!」

「そう! あなたが勝ったのよタロちゅわぁああああん! ああカッコイイわああああああああ!!」

「葛城一尉、うるさい」

 

 レイのツッコミで、発令所は笑いに包まれる。ミサトの隣では、彼女から開放されたリツコが苦笑いしつつ『これがミサトの本性か......』と何度目かわからない来たるセカンド・チルドレン(惣流・アスカ・ラングレー)来日を想像し、どうなることやら遠い目をしていた。

 

「ミサトさんって結構、残念な人......?」

「シンジ。それは言うな」

 

 シンジの呟きをゲンドウが拾う。呼びかけていないのに父が応えてくれたのはいつぶりだろうか、と考えるシンジ。

 ゲンドウも自然とシンジと会話を出来たのはいつぶりだろうかと考え、お互いに無言が続いた。

 

「......ぷっ、そうだね。ごめん父さん」

 

 笑顔でそう言うシンジに、ゲンドウは心の中でミサトと同じ様に愛を爆発させていたが、それに気付くのは冬月だけ。

 

「よ~しタロちゃん。初勝利を祝ってお家でパーティーするわよ!」

「いや料理作るのオレじゃないですかそれ!?」

「気にしない気にしない! サービスするから!」

「いや言いたいだけでしょ、それ......」

 

 負ければ人類滅亡の使徒対人類の初戦。それは人類の勝利で終わると共に、要であるネルフの団結をより強固なものにした。

 その中心に居るプライム・チルドレンは、歩むことを辞めなかった。




戦闘描写難しいですね、一人称じゃ絶対書けない。
この視点でもまだまだ改善点あると思いますので、気になる所があれば指摘していただけると助かります。

とりあえずアスカ来日までは日常パートを挟みすぎないようにしますが、来日してからは日常パート書きまくります。もちろんストーリー進行もしますが、ただ楽しそうに学生やってるアスカが見たいんや。
ちなみにアスカが登場する日常パートではシンジくんはほぼ出番ないことが予想されます。ネタバレになりますが彼のヒロインは本編で登場しないので......

物語の密度と1話ごとの文字数について

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