一応前書きでも書かせていただきますが、ストーリーこそTV版準拠ですが設定は新劇やらエヴァ関連のゲームやらから色々引っ張ってきてます。
14年ぶりの使徒出現。それを使徒迎撃用要塞都市である第三新東京市と人類の希望、エヴァンゲリオンで撃破した翌日の夕方。
土曜日でタローは学校が休み。しかし昼からあることの為に忙しなく大量の料理を作っていた。
「ペンペン、これ一緒に持っていってくれる?」
「クァ!」
温泉ペンギンであるペンペンには枝豆の入ったボウルを、自身はサラダの盛られたプレートを手にしリビングへ向かうタロー。
いつものミサトとの食事であればダイニングでだが、今日はリビング。その理由はこれから行われるタローの初出撃と初勝利を祝った祝勝会。『オレの祝勝会なのにオレが料理作ってもてなすって何だかなあ』とタローは心の中で愚痴るが、ミサトが作ると祝勝会がお通夜になりかねないため納得する。
実はそれに加え、自らが料理を作る理由がもう一つあった。それはこの祝勝会に参加するメンバーに、マヤが居ること。世界Aで二番目に推していた彼女に手料理を振る舞い好感度爆上げ大作戦のため、既にマヤからの好感度が上がりきっていることに気付かないタローは腕によりをかけていた。
ずらりと葛城家のリビングの中心にあるローテーブルに並んだのは、タローが最も得意な和食に加え、イタリアンやフレンチを混ぜ込む彩り豊かな料理達。肉嫌いなレイのために野菜と魚を多めに取り入れ、ピザは市販の生地ではなくわざわざ朝起きてイチから作った代物。
「セカンドインパクトの影響が南極周辺に留まって良かったよ。魚が食べれないとか日本にいる意味無いし」
作り終えた料理を見てタローは呟く。レイが肉嫌いな理由は血なまぐさいのが苦手であるからで、魚は火を通せば大丈夫ということは毎日のお弁当作りで理解している。
普段彼女に作るお弁当は和食ばかりであるが、ここで魚を使った和食以外も大丈夫か試そうという思惑もあった。
「......ク~」
ローテーブルに並べた料理を見ながら気に入ってくれるかを考えていたタローに、ペンペンが何かを言いたげな視線を向ける。
『こんなに美味そうな料理を見せられて運ばされて、もう我慢できない。何か一つよこせ』、ペンペンの目からそれを感じ取ったタローは、枝豆を一つとってペンペンの口に運んだ。
「はい、手伝ってくれてありがとね。ミサトさん達には内緒だよ?」
「バァ!」
ペンペンは枝豆を口にくわえると、くちばしで器用に力を加減して中の豆だけを出して食べる。タローは手に残った枝豆のさやを見てしっかり食べたことを確認すると、ペンペンの頭を撫でる。
最初の頃はペンペンに鬱陶しいと言わんばかりにくちばしで刺された撫でる手も、今は寧ろペンペンの方から積極的に撫でられにくる。それでもあくまで『撫でられてやってる』という態度を崩さないペンペンにすっかりタローは夢中になっていた。
そこに、玄関のドアがシュッと鳴って開いた。
「たっだいまぁ~!」
聞こえてくるミサトの陽気な声に、タローはダイニングのゴミ箱に枝豆のさやを捨ててから玄関へ向かう。
「おかえりなさいミサトさん」
「ただいまー!」
「あら、本当にお出迎えがあるのね。しかもエプロン姿」
ミサトの後に入ってきたリツコが、エプロン姿のタローを見て呟く。ここに来る前、ミサトが『タロちゃんはいつも私が帰ってくるとお出迎えしてくれるのよ!』と得意げな顔で言っていたことが事実であることに、少し驚いていた。
「こんにちはリツコさん。服、リツコさんの雰囲気に似合ってて良いですね」
「あら、ありがとう。今日は期待してるわ、ミサトが散々自慢してきたタローくんの料理が食べられるんだから」
「っはは、ちょっとハードル高いですね」
『お邪魔します』と言いながら上がるリツコ。その後ろに続く人は居なかったが、ドアが開きっぱなしなことでまだ誰か居ると察し、タローはその場に留まる。
少し時間を置いて、誰かに押されながらレイが入ってきた。
「ほら、レイちゃん。きっとタローくんも喜んでくれるから」
「でも......」
「マヤさん、こんにちは。綾波も」
「うん、こんにちは」
「......」
手にタッパーを持ったレイを押しながら、マヤが入ってくる。レイはやはり制服だったが、タローはマヤの私服に心のなかで大歓喜。
レイとマヤが入ってきたことで、扉が閉まる。これで今日の祝勝会のメンバーが全員揃ったのだ。
人数が少なく女性だけなのは、男性陣の『タローの初勝利に文字通り華を添えてやろう』という謎の気遣いによって。
本来ならシンジの歓迎会とともにネルフの食堂で行う予定だったが、シンジがとある事情により欠席したことと、上記の理由から葛城家でささやかに祝勝会をすることになった。
レイは手に持つタッパーを見た後、タローを見る。タローがその視線に気付いて見つめ返すと、彼女はサッと視線を外して後ろに居るマヤを不安そうな顔で見た。
「大丈夫だよレイちゃん、勇気出して!」
「......」
再びタッパーに視線を落とし、レイはうつむく。その頭では、タッパーの中にあるものをタローに渡した時のことを考えていた。
どんな反応をするだろうか。受け取ってくれるだろうか。赤木博士も葛城一尉も、伊吹二尉も彼が喜んでくれると言っていたけれど、そもそも彼の口に合うかどうか。
コレを渡すことに対しての不安。レイはタローの顔を改めて見る。
「っ......」
僅かに微笑み、レイを待つタロー。頭の中で『綾波ちゃん今日もかわちいですねぇ~』等と考えているとは思えないほどのポーカーフェイスにまんまと騙され、レイは勇気を振り絞る。
「これ......肉じゃが。肉、入っていないのだけど」
両手でタッパーを差し出す。レイが顔を上げて見ると、タローは目を輝かせてタッパーを見ていた。
「これ、綾波が作ったの!?」
「ええ。前にお弁当に入ってたの、美味しかったから。私も白露くんに、ぽかぽかしてほしい......」
「わぁ! ありがとう綾波!」
タローはそれを、レイの両手ごと受け取る。レイの両手に触れたのはわざとであり、自然にボディータッチすることでレイとのさらなる交流を図ろうとするタローの策略。逆に言えば、レイを女性として意識していないから可能であるとも言えるが、それに気がつく者はこの場に居ない。
ダイニングの方から二人の様子を覗き見るミサトとリツコでさえ。
「普段大人びてるのに、わぁ~とかって急に子供っぽくなったり自然と触ってくるトコロに落とされちゃうのかしらね、女の子って」
『ラブレターめちゃめちゃ貰ってたわよ』と付け加え、リツコに問いかけるミサト。リツコは『それはミサトの方がわかるんじゃないの』と前置きしたうえで応える。
「まあ彼、顔も性格も悪くないもの。きっと中学生は皆イチコロよ。それをもってレイに色々な感情に気付かせてくれたことに感謝してるわ」
「何よリツコ、あんたもやられてんじゃない」
「まさか。そういうあなたはどうなのかしら?」
「ガッツリやられてるわヨ?」
生気のないどす黒い瞳で自らを見つめてくるミサトに、『やっぱりこいつガチだ』と若干恐怖を覚え後退りするリツコ。
後ろでそんな会話がされていることなど知る由もないタローは、レイからタッパーを受け取り満足そうにしていた。
「これ、早速今日食べても良いかな?」
「駄目。食べないで」
「え」
「もうレイちゃん? それじゃ言葉足らずだよ。ちゃんと理由も言ってあげないと」
食べるな発言に固まってしまったタローを見て、マヤは笑いながらレイに言う。
正確には食べては駄目という訳ではなく、今日は食べないで欲しいという意味。
その訳をレイから聞いていたマヤは、彼女の不器用さに初めて『可愛い』という感情を抱き、タローの言っていたのを耳に挟んだ綾波 レイを見守り隊とやらに入隊することを決意していた。
一方レイは、タローが自分の作った料理を食べられないことにショックを受けているという状況に、今までに感じたことのない。いや、零号機の起動実験後に更衣室まで走ってきたタローを叱った時と同じ高揚感を覚えていた。
であれば、次にやることは一つとレイは決める。
「今日じゃなくて、明日。お腹が空いたら食べて。味、わかるから」
「綾波......!」
一気に顔を明るくするタローを見て、レイは『やっぱりこれは、ぞくぞく』と自分の中に渦巻く感情を表現する言葉を見つけた。
タローが綾波 レイを見守り隊だとすれば、レイは白露 タローを落として上げ隊とでも言おうか。しょんぼりした後に喜ぶタローを見ることに、得も言われぬ快感を覚えつつあった。
そんなレイの歪んだ感情にタローが気付くわけもなく、手に持ったレイの肉じゃが肉抜きを見て『レイちゃんお手製!』とホクホク顔。
マヤは『微笑ましいなあ』と二人を見つめ、ミサトは『アスカ......レイは強敵よ!』とやはりアスカのことを考える。そんな中でリツコだけは違っていた。
「レイ、タローくんに歪ませられたわね。良くも悪くも」
ずっとレイと行動をともにしていたリツコには、レイがタローを弄んで喜んでいるのに僅かながら気付いている。
だがそれも彼なら受け入れてくれるだろう、受け入れるはずというか受け入れろと1年間でのレイの変わりように考えることを放棄していた。
「ここで話し込んじゃうと折角の料理が冷めちゃうな。綾波、上がってよ。マヤさんもどうぞ」
「ええ」
「お邪魔するね」
二人が靴を脱いで上がるのをしっかりとタローは見届けてから後を追うタロー。主役であるのにもてなす側が板についているのは、彼の性格上仕方のないこと。
冷蔵庫にレイの肉抜き肉じゃがをしまい、リビングへ。いつの間にかいつもの薄着スタイルになったミサトがビールを片手にタローが来るのを待っている。ミサトによって既にレイにはオレンジジュース、リツコとマヤにはビールが渡っていた。
「ほらタロちゃん、早くこっち! 今日はビール解禁ねっ」
「もう、飲み過ぎだったら止めますからね」
「大丈夫よタローくん、ミサトのセーブ役は私に任せて」
「......凄い心強いです。リツコさんがいると」
ミサトさんの介抱しなくて済みそうだ、とタローは安堵する。それと同時に、改めてテーブルを見る。
自身が作った料理と、それを取り囲む美女三人に美少女一人と可愛いペンギン。人懐っこいタイプ、知的なタイプ、おしとやかなタイプ、クールなタイプ。どこに座っても楽園だなと鼻の下を伸ばす。
だがミサトが自分の横をバンバンと手で叩いていたため、そこに座ることにする。時計回りにタロー、レイ、マヤ、リツコ、ミサト、そしてタローに戻る順番。
料理を取り分けられるように、沢山の紙皿と人数分の箸は準備してある。あとは食べるだけ、という状況で珍しくミサトが待ったをかける。
「今日の主役はタロちゃんってことで、コレ!」
ミサトがカバンから取り出したのは、本日の主役とデカデカと書かれたタスキ。それをタローに渡し、彼がかけるのを待つ。
「......ありがとうございます」
タスキに書かれた文字を見たあと、タローはそれをゆっくりとかけた。
「ぃよ~し、じゃあ今日はタロちゃんの初出撃と初勝利を祝って......乾杯!」
『乾杯!』
ミサトの掲げたビール缶に、四人が手に持ったものをカチンと合わせた。
「ねえタローくん、コレ全部一人で作ったの?」
「ええ。皆さんに喜んでもらいたくて」
「タロちゃん、ピザとか生地から作っちゃうのよ」
「き、生地からですか!?」
は~と関心してタローの作ったマルゲリータを見るマヤ。彼女はおもむろにそれを一切れ取り、紙皿を下にそえながら一口食べる。
「美味しい......!」
「自分好みの生地で食べれるので、気付いたら最初から作るようになっちゃったんですよね。気に入ってくれたなら幸いです」
「うん! すっごい美味しいよ!」
パクパクと小さな口を動かして食べるマヤを見て、タローは微笑む、いやニヤつく。マヤが自分の手料理を食べる喜びを噛み締めながら。
ペンペンはそんなタローを見て嬉しそうに鳴いたあと、自分の分をササッと取って定位置に戻っていった。
タローの右隣では、ミサトがカプレーゼを食べながら早くも2缶目のビールを流し込み、『ぷっはぁ~!』と一息ついてタローに肩を組み自分の方に寄せる。
「いや~どうよ! うちのタロちゃん! 家事全般がハイレベルに出来てとにかっく優しい! こんな男が家に居たらもう死ぬ気で働いちゃうわよね!」
「もう酔ってるじゃないのミサト。でもこれは凄いわね、ちょっとしたバイキングよ......このフィッシュアンドチップスも流石本場仕様ね」
「味付けはご自由にどうぞ。塩、カレースパイス、レモン、タルタルソース、色々ありますよ」
「じゃあレモンでいただこうかしら」
レモン果汁をかけ、フィッシュアンドチップスのフィッシュ。白身魚のフライを食べるリツコ。魚と衣の食感にレモンの酸味を堪能しながら、やや緊張した面持ちのタローに対して『とても美味しいわ』と素直な感想を言う。
良かったです、と笑顔になったタローを見て、リツコは『ミサトにああ言ったけど、私も大概タローくんにやられてるわね』と。タローの笑顔を見て嬉しくなっている自分を受け入れている。
一方、タローの左隣に小さく座っているレイはやはり思い入れがあるのか、彼の作った肉なし肉じゃがを無言で食べている。頭の中で自分が作ったものと比較して、こっちの方がもう少し優しい味付けだなと分析しながら。
そこに、タローがスマホを向けた。
「綾波、写真良い?」
「良いけど......今日は赤木博士も居るわ」
「いや、なんか。綾波が食べてるところ撮るのが、もう日課になっちゃったっていうか......」
「......そう」
それ以上何も言うこと無く、レイは箸で切り分けたじゃがいもを口にいれる。そこをタローはパシャリと写真に収めた。
普通なら写真は撮らないだろうと思うかも知れないが、僅かにレイが持っている肉じゃがの皿を顔に近づけたこと。それが写真撮影の承諾であるという、二人にしかわからないやり取りがあった。
そこまで来て、タローはようやく自分の作った料理に手を付ける。ひとまずサラダから。用意してある取り分け用の箸で紙皿の上に乗せてから食べる。
特に味は変わらない。それでも、いつも昼食を一緒に食べるレイ、夕食を一緒に食べるミサトとリツコにマヤ。これだけの人数が揃っていると不思議と美味しく感じていた。
「あ~タロちゃん、ニヤついてるわね~?」
「えっ、そうですか? まあ、今日楽しいですもん」
「でしょ? そうだ、イェーナさんが喜んでたわよ」
「イェーナさんが?」
「そ、無事で良かったって。後で電話番号教えてあげるから連絡したらもっと喜ぶわよ」
ドイツでは携帯電話を契約していなかったタローにとって、ミサト経由でドイツ支部の人達と連絡を取れるのはとてもありがたいことだった。
当然、ドイツ支部の人達と連絡が取れれば気になることは一つ。アスカだ。
『ミサトさんに聞くのはちょっと恥ずかしい』と、タローは言葉を濁してミサトに尋ねる。
「その......ほ、他にドイツ支部の人達の電話番号って、聞いてたりします?」
「あ~......」
さり気なく聞いて入るが、ミサトはタローの考えを読み取った。アスカの連絡先が知りたいんだな、と。
しかし彼女はタローにアスカの連絡先を教えることはしなかった。
「いんや、特に他は聞いてないわね」
「......そうですか、ありがとうございます......」
『めっっっっっちゃ良心が痛む! こんなの無理よアスカ!』と叫んでしまわぬよう、ミサトは口を強く閉じる。
実のところ、ミサトはアスカの連絡先を知っている。それどころか定期的にメールまでしている。大体はアスカからの『タローはどんな感じ?』で始まるその会話は、いつしかまるで監視報告のように一日のタローの動きを事細かに知らせる内容になっていた。
そこまでタローの様子が気になるなら本人に直接電話なりメールなりで聞けば良いではないか。とはミサトも思い、実際アスカにそう提案したこともある。しかしアスカから『再会した時のトキメキ? が減るじゃない』と言われ、あくまで自身も乙女でもあるミサトは言い返す言葉が見つからず撃沈した。
それと同時に、アスカから絶対にタローに連絡先を教えるなと釘を刺されている彼女は、最愛の存在が知りたい連絡先を知っているのに、最愛の存在からの言いつけで教えられない、という罪悪感で精神ダメージを受けていた。
そんな彼女の苦悩を知らないタローは、文字通り人生に絶望した顔。そこでマヤが話題を変えるために、この場に居ないもう一つの主役になったであろう人物の名を出す。
「そ、そういえばシンジくん、碇司令と住むことになったんだってね」
「あれ、そうなんですか? てっきりミサトさんが引き取るものかと」
「流石に司令の息子を預かる度胸は無いわよ~。まあもし彼が一人で良いって不貞腐れて言うなら、タロちゃんも居るからって提案したケド」
「本来ならばジオフロントの居住区だったのを、自ら碇司令との同居を望んだそうね」
クイッとビールを飲みながらリツコは言う。彼女の言う通り、シンジは父親であるゲンドウに一緒に住むことは出来ないか、と直談判しに行ったのである。もちろんゲンドウはそれを断る訳がなく二つ返事で承諾。
本日の祝勝会兼歓迎会が祝勝会のみになったのは、シンジが引っ越し作業で時間を作れなかったため。それならば日程をずらす、という手をミサトは提案したのだが、やんわりとシンジに歓迎会は父親と二人でやるからと断られていた。そのときのゲンドウの得意げな顔を思い出し、ミサトはビールで忘れようとした。
一方のタローはというと、シンジがゲンドウとの同居を望んだことに驚きを隠せていなかった。なまじ新世紀エヴァンゲリオンという世界を知っていた彼にとっては、シンジとゲンドウがわかり合うことは無いだろうと思っていたのだ。
事実、この世界でもゲンドウから歩み寄らねばシンジとゲンドウの同居は無かっただろう。その原因を作ったタローはそんなことを知る由もなく『シンジくんこそヤルオだったか』と嬉しそうにポテトを食べる。
「でもシンジくん、碇司令と同居するってのも驚きですがエヴァパイロットになってくれた事にビックリですよ」
「え? なんで?」
「昨日のアレを見て、なろうとは思わないかなと」
「彼、白露くんの動きを見て凄い凄い言ってたわ。白露くんは頑張ってたもの」
自分と同じようにポテトを食べながら真顔のレイにそう言われ、タローは『不意打ちは卑怯可愛い綾波さん』と頬を赤くし照れ隠しに笑う。
パイロット目線、タローから見れば昨日の戦闘はグダグダだったと感じている。終始決め手に欠き、建てたプランも成果を出さず最後は頭突き。
人類の存亡がかかっている戦いとはいえ、エレガントな勝利を目標としていたタローはいささか理想とは遠い結果に寝付きが悪かった。しかしそれは、タロー目線での話。
実際に外から見ていたミサトは彼を『熟練の兵士』と例え、同じエヴァパイロットのレイも『合理的』という言葉しか出てこない程には見事な戦いぶりだった。
第3使徒 サキエル、それを機体への損傷は頭部の僅かな焦げのみ。都市への被害は最後の爆発で迎撃システムのいくつかとプログレッシブナイフを突き立てた道路のみで撃破。まさに奇跡としか言いようのないくらい最小限の被害で済んでいたことから、タローの出身であるネルフドイツ支部はエリート戦闘員養成機関ではないのか、と噂がたつほど。
「タローくん、今更だけどあなたに謝っておかなければいけないことがあるの」
「オレにですか?」
ちょうど昨夜の戦闘の話になったことで、リツコはずっと心残りだったことを謝罪する良いチャンスが巡ってきたと言わんばかりにミサトを押しのけ、タローの横に座る。
「壱型に装備しているプログレッシブナイフ、あれを一本だけしか装備させていなかったのは私のミスよ。ごめんなさい」
「そんな、謝らないでくださいよ。そもそもちゃんとエヴァが動く状態だったのはリツコさん達のおかげですし、無事に倒せ『何もなかったから良い、とは言えないのよ』......でも」
「でもじゃない。大丈夫だったから良い、という精神ではいつか重大な失敗を犯すことになる。それでタローくんを失うのはごめんだわ」
人差し指でタローのおでこをつつきながら語るリツコに、タローはありがとうございますと小さく呟いた。それを後ろでピザを食べながら見ていたレイは『ああいう上げ方もあるのね』とぞくぞくを感じるためのバリエーションを増やしていた。
「ま、今はただタローくんのお陰で今日という日を迎えられたことに感謝しましょう。ほら、コップが空よ。レイも」
「あ、ありがとうございますリツコさん」
「......ありがとう、赤木博士」
「ええ」
にこやかに微笑むリツコを見て、マヤは平和だなあと卵焼きをぱくり。ミサトはアスカに送るためバレないようにタローだけが映り込む写真を撮ったあと、レイとリツコとのスリーショットも撮影し、笑顔で保存しながら5缶目のビールを開けた。
『......ずっと、こんな日が続けば良いのに。アスカも一緒に』
レイが美味しそうにムニエルを食べるところを見ながら、タローは目を細める。その穏やかな空気に、彼はスマホに入った親友からのメールに気付くことはなかった。
いつも誤字報告と感想いただきありがとうございます。
私的にはこういう日常パートてきなものをアスカが登場してからじゃんじゃん書いていきたいのですが、そうなった場合は話のタイトルを変えようと思っています。
具体的にはストーリー進行がある場合は「◯◯話 (タイトル)」のような感じにして、日常パートの場合はただ題名だけ、のような感じで。もちろんストーリー進行に合わせた日常パートを書くつもりなので、上から順番に読んでいただければと思っています。
物語の密度と1話ごとの文字数について
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サクサク進む(3000~4000字程度)
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少し書き込む(5000~6000字)
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ガッツリ書き込む(7000字以上)
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サクサク書き込め