テレビアニメ、新世紀エヴァンゲリオンをはじめて見た時、オレはすでに社会人だった。そして、社会人としての感想は「大人が大人してねえ」だった。
そういうアニメだ、ということは理解している。だがそれでも、弱冠十四才の子供達にすべてを背負わせ、大人達はみんな何かに逃げ続けている。そう感じていた。
「ぁあ~可愛い! 可愛い、可愛い可愛い可愛い! かわい~~~~い!! 可愛すぎるわよタロちゅわん! アスカぁ!」
そしてそれは、今まさにオレとアスカを両腕でがっしりと抱きしめ、語彙力を崩壊させている女性。
主人公、碇 シンジの逃げ道にはならず、自らは酒と男に逃げる始末。残念なアラサーだな、と思っていた記憶がある。
「うっさいわよミサト。あと、暑い!」
「んも~そんなこと言わないで、あとちょっと!」
大人の女性が醸し出す香りを充満させた胸元から逃れようと、アスカが腕に力を込めた。だが七歳と二十二歳ではあまりにも力の差があり、次第にアスカが力負けしてミサトさんの胸に顔を押し付けられ、不服そうな顔で頬をふくらませる。可愛いよアスカたん!
ちなみにオレはというと、もう諦めてる。いや別に役得だなんて思ってないですよ? うん。オレにはアスカしか見えない、アスカしか見えない......クソ、心が三十歳じゃなければ二十二歳のミサトさんをババア呼ばわりできたのに。
つい先日まで女子大生だったミサトさんは、あまりにも魅力的すぎる。もちろん原作開始時点の年齢、確か二十九歳だったかな? でも外から見る分には十分魅力的だろうが。
「明日はアスカの誕生日なんでしょ? 華金だし有給も取ったし、私張り切っちゃうわよ~!」
ミサトさんは今年の四月に、ここゲヒルンドイツ支部に入社してきた。原作ではどうなのかオレの知識では知らないが、アスカと過去に関わりがあったような描写があったし、おそらくこの流れは原作通りなのだろう。
ただ、おそらく違うのは彼女がアスカとオレを溺愛していること。母語で会話ができることがよほど嬉しかったのか、まだ出会って八ヶ月ほどしか経っていないにも関わらず、仕事終わりに毎日オレ達の部屋に来て養分補給などと言い強烈なハグを食らわせてくる。正直助かる。
それに、二人より一足早い十一月が誕生日だったオレのために、パーティー。訂正しよう、レトルト食品食べ放題をしてくれたから邪険にはできない。
あと単純に、原作でビールを飲みまくってたイメージがあるが、ビールの本場であるここドイツに居るにも関わらずそういった話を聞かないので、酒に依存されるくらいならマシかなとも思ってる。
「は~可愛い、二人共持って帰って食べちゃいたい」
「犯罪ですよミサトさん」
「でへ、ごめん!」
でへ、ってなんだよ。コイツなんだよ! 可愛いんだよ!
クソ、こうなったらミサトさんを真っ当な大人になるようになんとか誘導するしかないだろ! オレだって大人のキスされてえよ! できればあんな悲惨な状況じゃなくてロマンティックな状況でねぇ!?
「......タロー、鼻の下伸びてる」
「いや、ちょっと鼻がむずむずしただけだよ。うん」
アスカから冷たい視線を感じ、慌ててごまかす。もちろん本命はアスカだし、彼女を幸せにするというのがオレの使命であることに変わりない。
彼女とは学校で、ゲヒルンで、この部屋で、三年近くずっと行動をともにしてきた。初めよりも、大きな感情を見せてくれるようになったと思ってる。今みたいな嫉妬のような感情もそうだし、笑顔だって微笑み止まりだったのが声を上げて笑ってくれるようになった。
「そうだ、二人共。明日は学校おやすみよ」
腕の力を緩めたミサトさんが、オレとアスカの顔を見ながら告げる。下から見ても美人だなこの人、まあ加持 リョウジが変な気を起こさぬようミサトさんには彼とまたくっついてもらうつもりだけど。
「良いんですか? おやすみで。明日は普通に登校日なのに」
「タロちゃんは真面目ね~......はっ、今のは深い意味は無いわよ!? 真面目で偉いなっていう純粋な気持ちだから!!」
オレを抱き寄せる右手で後頭部を撫でてくるミサトさん。わざわざそんなこと気にしなくても良いのにと思うが、それにはわけがある。
惣流・アスカ・ラングレーという名前の通り、アスカはドイツの血が入っているクォーターである。
ではオレ、白露・タロー・ドレッドノートはどうだろうか。自分自身全く以ってそんな実感は無いし、純日本人なつもりでは居るが、イギリス出身でイギリスとのクォーターとなっているそうだ。
この世界でオレを産んだ顔も知らない母親がイギリスと日本のハーフだと、以前チラ見したゲヒルンのデーターベースに書いてあった。
確かに皮肉は好きだ。だがそれは純日本人だった前世から変わらない。顔も変わらないんだからそんな実感はない。
とはいえ、ミサトさんはイギリス人イコール皮肉大好きなひねくれ者と捉えているのか、複数の捉え方がある発言にはいちいち訂正を入れてくれる。そのときの焦りようったら普段の彼女からは想像がつかないほどだ。
「わかってますよ、ミサトさんはそんなこと言わない素直な人だって」
「ほっ、よかっ......ちょっと待ってそれ皮肉?」
皮肉なの? ねえ!? と泣きそうな顔になっているミサトさんをガン無視して、隣のアスカに話しかける。
「明日、楽しみだね」
「......うん。悪いことしてるような気持ちもあるけど」
「はは、十二月四日にアスカの誕生日より大切なことなんて無いよ」
オレがそう答えると、アスカは笑みを見せた後に急いで唇を噛んではにかむ。
小学生にもなれば歯が生え変わってくるが、アスカは歯が抜けているところを見られるのが嫌なのか、最近は隠すように笑う。それがとてもキュートなのはもちろんだが、ゲヒルンの歯科医師にキレイな歯並びになるよう相談してるとか。本当可愛すぎだろコイツ、嫁にさせろよ!
「ねえ~無視しないでよタロちゃ~ん......」
アスカと二人の世界に入っていたが、このお姉さんがいよいよ本格的に泣いてしまったのでそろそろ対応してあげよう。全く、モテる男は辛いぜ!
ミサトさんは日本酒一筋だったのがドイツでビールにハマってそうという勝手な考察
物語の密度と1話ごとの文字数について
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