短いですがチマチマ更新させていただきます。
使徒を目視したタローとアスカ。当初はミサトからの指示を仰ぐ予定だったが、アスカが『国連軍はエヴァ出撃を認めないだろうし、こっちで勝手に出撃するわよ』という提案。それに同意したタローの腕を引き、彼女はボストンバッグを肩にかけ中に入っているプラグスーツへと着替える場所を探して輸送船を走り回っていた。
「よし、ここで良いわね。来て」
「およよよ」
手頃な階段を見つけたアスカは、非常事態の今なら誰も通ることはないだろうとタローの手を引いて降りる。
カンカンと音を立てていた二人の足が踊り場で止まると、アスカは肩にかけたボストンバッグを地面に落とし、その中から一つのプラグスーツを取り出す。
「プラグスーツも赤色なんだ。02って書いてあるし」
「そうよ。これなら遠目からでもあたしだってひと目で分かるでしょ?」
「うん、どこに居てもアスカを見つけられる」
「あんたなら赤色じゃなくてもあたしを見つけれるじゃない」
そのアスカの言葉に『確かに』とタローが同意すると、アスカはおもむろに着ていたワンピースの肩紐に手をかけて左腕をそっと引き抜いた。
「ちょおッ!?」
アスカの左肩が露わになる直前、タローは勢いよく両手で目を隠し後ろを振り向く。その反応に満足げな表情のまま、アスカはワンピースを脱いで下着に手を付ける。
「早い段階でつけとかないと崩れるのよね、形」
「か、かたっ、形ィ!?」
「そ。形が綺麗なら見応えもあるし」
「そ、そうっすかね......」
スルスルと布と肌がこすれる音を聞きながら、アスカの裸体を想像しないように首を振るタロー。調子が上がってきたアスカはさらに追い打ちをかける。
「タローもシワがなくてピッと張ってるほうが好きでしょ、見せてあげるから振り向きなさいよ」
「いや駄目でしょそれは流石に! オレはちゃんと健全なところから始めていきたいと思ってるんですよアスカさん!」
「健全でしょ。あたしとアンタの仲だもの、だれも文句言わないわ。おら、振り向けこのッ!」
「イヤァァァァァァァァァ......ァ?」
後ろを向いているタローを力任せに振り向かせるアスカ。それに叫びながら抵抗しつつも怪我をさせることを恐れた彼が一瞬力を緩めて振り向くと、そこには赤色のプラグスーツに身を包んだアスカが居た。
「どうよ、これがあたしの専用プラグスーツ。シワ一つなくて綺麗でしょう?」
「......スーッ、ソッスネェ......」
勝ち誇ったような表情のアスカに、息を呑んで安堵と落胆の二つの感情が混ざったなんとも言えない顔のタロー。そんな彼の胸元にアスカはプラグスーツのスペアを押し付けた。
「はいこれ、あんたの分」
「ああ、ありが......ん? オレの分?」
「あんたも乗るのよ、弐号機に。あたしは使徒との実践経験がないから」
タローの胸を人差し指で二度トントンとつつくアスカ。
第三新東京市に使徒が襲来するまでの間、彼女のドイツ支部での戦闘シミュレーションは対エヴァを想定したものだった。当然海上での戦いなど訓練でも経験しておらず、対使徒を想定した戦闘シミュレーションでの仮想敵は第三使徒サキエル。人の形に近いことからそれまでの対エヴァとの訓練経験を存分に活かすことが出来た。
しかし今は海の上で標的の姿すら見えない。アスカがその状況下で単身突撃するようであれば、タローと合わせてドイツ支部最高傑作の評価は得られていないだろう。
もちろんタローを弐号機のプラグ内に連れ込もうとしているのは『カッコイイところを見せる!』という年頃の少女らしい思惑もあるが、彼女とて不安がないわけではない。彼を連れ込むことで『カッコイイところを見せつつ指示をもらえて精神安定剤にもなるから一石三鳥』と内心ではこの状況に喜びを感じる余裕さえ持っていた。
「わかった。けどプラグ内にパイロット以外の人間がいるとノイズ認識されるからね?」
「なに言ってんのよ、タローも実質弐号機パイロットみたいなもんじゃない。それに、あんたとあたしの考えることは大体同じだから無・問・題」
「えーそういうもんかなぁ......いやそうかもね......うん、わからんけど多分大丈夫!」
アスカと彼女に渡されたプラグスーツを交互に見たタローは、その自信満々な表情になぜだか出来る気がして納得する。そして着替えるためにジャケットを脱いだ時に、自身の体に向けられる視線に動きを止めた。
「アスカさん、流石に恥ずかしいんだけど」
タローはその視線の先にいる、普段はタレ気味の瞳をカメラのように真ん丸にしたアスカに声を掛ける。
「良いじゃない別に」
「良くないでしょ明らかに。とりあえず、オレちょっと下で着替えてくるから」
「っはぁ~......」
「いやなんのため息だよおい。絶対覗かないでよ? てかこれ普通アスカが言うセリフだからね?」
「はいはい、いってらっしゃ~い」
ひらひらと手を振って階段を降りるタローを見送るアスカ。その足音に自分の足音を重ねてバレないように移動した彼女は、タローが脱ぎ捨てたジャケットを手に取る。
「......行くわよ、アスカっ」
黒いジャケットに埋められたアスカの顔には曇り一つない笑顔が浮かんでいた。
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オーバー・ザ・レインボー。加持はその中で自身に割り当てられた部屋から双眼鏡を用い、現在進行系で海中を暴れまわり艦隊に甚大な被害を与えている使徒を観察しながら、肩と耳に挟んだ携帯越しにゲンドウと会話をしていた。
「ここで使徒襲来とは、流石に想定外では?」
少し煽るような口調の加持。それにゲンドウは声色一つ変えずに答える。
「問題ない、そのための弐号機だ。プライマルのパイロットに初号機のパイロットもいる、必要はないだろうが最悪の場合は君だけでも脱出したまえ」
「おや、ずいぶんと楽観的ですね。よほどチルドレン達を信頼しているようで」
「言い方を変えよう。最悪の場合、君はとどまってくれて構わない。依頼したものだけ確実に届けてくれたまえ」
「ひどいじゃないですか」
ゲンドウのまさかの発言に、やはり人が変わったなと苦笑する加持。その横には厳重に閉じられたケースに遭難しても数日は持つだけの荷物が準備されていた。
所変わって管制室では、使徒の不可解な動きにミサトが目を細める。
「まるで何かを探しているようね......まさか、弐号機?」
顎に手を当てて考え込むミサト。艦長をはじめとした国連軍の太平洋艦隊は使徒への対応にあたふたとしているが、彼女は以外にも楽観的だった。
「弐号機のところに二人がいってるなら、あとはこっちが指揮権を握るだけね」
すでに使徒撃退のストーリーを描くミサトは、それが始まるキッカケとなる動きを待つことにした。
物語の密度と1話ごとの文字数について
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少し書き込む(5000~6000字)
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