ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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月に1,2回投稿を目指します。
学校襲来:下と、葛城家襲来にネルフ襲来も書きたいので物語の進行が進むのには時間がかかりますがご了承ください。


アスカ(学校に)襲来:上

 第6の使徒、ガギエルをタローとアスカ。そして国連軍太平洋艦隊で撃破した翌日。これまでの使徒襲来とは異なり使徒迎撃専用要塞都市である第三新東京市ではなく、海の上での戦闘だったとうこともあり何も知らない街は今日も平和に一日が始まっていた。

 

「おはよ~」

 

 それは使徒を撃破した張本人の一人であるタローとて例外ではなく、戦闘のレポート作成で若干寝不足気味のためかあくびとともに第壱中学校二年A組の扉を開けて入室する。レイを除く全クラスメイトから挨拶を返されたタローは、それに応えつつ窓側最後尾の自席へと向かっていく。

 

「おはよう綾波」

「......おはよう」

 

 タローはその道中、自身の一つ前に座るレイにも挨拶をし、机の上にお弁当が入った袋をそっと置く。頬杖をついて外を眺めていた彼女は、ゆっくりとタローの方へ振り向くと目を見ながら小さく挨拶を返し『ありがとう』と言いながらお弁当袋を机の横にかける。それには自身を綾波 レイを見守り隊の副隊長と自称するタローもニッコリ。何を笑っているんだ、というレイの視線に気づくことなくホクホク顔で後ろの自席に座った。

 

「おうティーチャー。どや、昨日はよう眠れたか?」

 

 そのタイミングを見計らい、トウジとケンスケが横にやってくる。朝の時間、タローと一緒に登校するという名目でミサト目当てで葛城家にやってくることが多々ある二人だが、今日に限っては昨日の出来事もあり押しかけることはしなかった。

 

「まあまあだね。いつどこで何があっても眠れる、それがオレの取り柄だから」

「もっとほかにあるだろ」

「なんちゅうか、反応に困る取り柄やな」

 

 微妙な顔を浮かべるケンスケとトウジ。そのタイミングで教室の扉がまた開かれた。

 

「おはよう」

 

 入ってきたのはシンジ。イヤホンを外しながら歩き、クラスメイト達に挨拶をしていく。

 シンジの席は中央列の最前、つまり教卓の前。リュックを下ろしてイヤホンを器用にまとめていたシンジは、後ろから向けられる視線に気づき振り返る。そこには相変わらずの仏頂面で外を眺めるレイ、その後ろで顔の横で小さく手を振るタローと、手招きするトウジとケンスケ。

 シンジは手早く荷物を整理すると、三人のもとへと歩いていく。

 

「おはよう、三人とも」

「おはようシンジくん」

「おはようさん」

「おはよう」

 

 いくらエヴァパイロットとはいえ、学校に通っている間は普通に中学生。朝の挨拶は欠かせないのだが、レイに関して一度ガン無視されたショックから挨拶ができないシンジであった。

 

「シンジは昨日どうやったん。面倒やったか?」

「僕は当事者じゃないからね。あっさりしたやつでも大丈夫だったよ」

「そりゃラッキーやったな」

 

 と言うトウジに、シンジは『なにもないのが一番だけどね』と返す。その後に視線をタローに向け、どうだったんだと目で訴えかける。それに気づいたタローは腕を組んでのけぞりながら答える。

 

「オレはまあいつもどおりだったよ。けど、なんかミサトさんがずっとニヤニヤしてたのが気になるんだよな......」

 

 顎に手をやり考え始めるタロー。そのタイミングでチャイムがなり、各々自分の席に戻っていく。すこしの間静寂が教室を包み込むと、担任の根府川がやってくる。いつも通りのおじいちゃん先生に、クラスは一瞬緩い雰囲気になるが、すぐさま空気が引き締まった。

 

「......は?」

 

 赤色の髪留め、インターフェイスヘッドセットでツーサイドアップにまとめ上げられた茶色に近い金の長髪をなびかせ、スラリと伸びた背筋に手足を優雅に動かして歩く少女。根府川のあとに続いて入室してきた彼女に、タローは驚きから声を漏らす。

 驚いたのはタローだけではない。二年A組の男子は息を呑み、女子はまるで芸能人でも見たかのような驚きと羨望が混ざった声を出す。

 しかし根府川の後に続いた少女と遭遇したばかりのシンジとトウジ、ケンスケに加え、はなから興味のないレイは特に反応はせず。注目の的となった少女はというと、口を開けて唖然としているタローに視線を向けた後、くるりと後ろを向いてチョークを手にし、黒板に流れるような達筆で。日本語で名前を書き始める。

 チョークが黒板をカツカツと跳ねるような音にサッサッと滑る音が静かになった教室に数回響いた後。少女はまたお姫様のようにフワりと振り返り、自らの名前が書かれた黒板を背に教室を見渡し良く通る声で名乗った。

 

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくおねがいします」

 

 直後、教室が揺れた。男女両方からの黄色い声に、タローはもちろんクラスのまとめ役であるヒカリも圧倒され注意する言葉が出ず。しかしそれでも頬杖をついて外を眺めるレイだけはいつもどおりだった。

 クラスがいつまで経っても静まる気配がない中、流石にと根府川は声を上げる。

 

「静かに。えー、今日から我が校の仲間となる惣流さん......ラングレーさんです。座席は廊下側の一番後ろね」

 

 根府川が空席を指さして言うと、その前と横の席に座る男子生徒は隠さずガッツポーズ。ニコニコとしているアスカを見て二人がシャツの襟を直したところで、アスカは根府川に提案する。

 

「先生。わたし、実はあそこの席のタロー......くんと旧知の仲なんです。彼の後ろでも良いですか?」

「む、ああそうらしいね。忘れてた。白露、ラングレーさんのことを任せても?」

「......あ、はい。お任せください」

 

 じゃあ席の移動もよろしく、と根府川に言われたタローが空席の方へ歩いていくと、本来アスカの近くになるはずだった男子生徒から恨めしそうな目で睨まれ苦笑い。心の中で謝罪したタローが椅子と机を軽く持ち上げて自分の席の後ろに置くと、アスカはゆっくりと彼に近づく。

 

「よろしくね、タローくん?」

 

 タローにだけ表情が見えるように体の向きを調整したアスカは、ニヤニヤといたずらっぽい笑みを浮かべて小さく呟く。まさか昨日の今日で彼女が転入してくるとは思わなかったタローは、それにもやはり苦笑いしか出来なかった。

 そして二人がそれぞれの席に座り、根府川が諸連絡を始める。が、思ったよりも時間を取っていたのか朝のホームルームの時間の終わりを告げるチャイムがなり、根府川は教室から出ていく僅かな間に顔だけ残し。

 

「白露、ラングレーさんに学校の案内は任せたよ」

 

 と言うだけ言って教室から出ていく。それを見届けた後、クラス中の生徒がアスカを中心に輪を作って集まる。

 

「どこから来たの!?」

「白露と知り合い?」

「ハーフですか!」

「日本に来てどれくらい!?」

 

 絶え間なく降りかかる質問。アスカはそのどれにも答えることなくニコニコと愛想を振りまく。が、それでもクラスの生徒からは悪い印象を抱くことなく、むしろこんなにも笑顔で対応してくれていると好感度がうなぎのぼり。顔の良さを存分に活かしたアスカの『面倒くさい質問は全部無視して猫かぶっとく』という策略にまんまとハマっていた。

 

 アスカが愛想を振りまいているなか、その前に座るタローは背中に突き刺さるような視線を感じながらもそれに屈しないようにと意思を強くもってレイの後頭部を眺め続ける。

 助け舟を出そうか。とタローは何度か振り返りそうになったが、ドイツでは初等学校以降は飛び級に飛び級を重ねオンライン授業で課程を修了したアスカに学生生活というものを感じてほしいという彼なりの気遣いでそれをこらえる。しかし、そのアスカから声をかけられては無視はできなかった。

 

「タローく~ん?」

 

 いつものようなさっぱりした呼び方ではなく、ねっとりと自らの名前を呼ぶアスカにタローは一瞬体をはねさせてゆっくり振り返る。するとそこには、腕を組んで笑顔。しかし健康的な肌色の額には青色の血管を浮き出させたアスカの姿が。

 

「ちょっとごめん! アスカ来て!」

 

 たまらず立ち上がったタローは、アスカの手を掴み走り出す。二年A組にラングレーという美少女が転入してきたという噂が広まるのは早く、教室の外には同学年や三年生の野次馬が。通るのも億劫になるほどの行列が出来ていたが、タローも学校内の有名人ということが幸いし自然と道が開かれていく。

 二人は何も会話せず、手を引っ張り引っ張られ走る。たどり着いた先は屋上へと続く階段。二人は手を繋いだまま階段を駆け上がるが、タイミングをあわせなければ引っ張っているほうも引っ張られているほうも転んで大怪我の危険性がある行為。最も両者互いにそんな心配はしておらず、軽やかに階段を登りきって屋上へと出た。

 

「よし、ここなら大丈夫か」

 

 扉を閉め、屋上に他に誰もいないことを確認すると、タローはシャツをパタパタと伸ばして空気を取り込みながら『暑い暑い』とボヤく。露わになった彼の首筋を見て、アスカはムッとした表情になる。

 

「あんた、まさか年中この日差しなのに日焼け止め塗ってないわけ?」

 

 しょうがないわねえ、と言いながらアスカは自ら脇腹あたりからスカートの内側に手を突っ込み、一回使い切りのパックになっている日焼け止めを取り出す。

 

「スカートのそこ、内ポケットあったんだ......」

「普通はついてないわよ。この制服、最初見た時からデザインは結構良いと思ってたけど機能性がないから縫い付けたの。フレアスカートなんだから最初からつければいいのに」

 

 日焼け止めの封を切り、中身を押し出して左手に出しながらアスカは熱弁する。しかしアスカに裁縫の技術があったことと、スカートに種類があることを知らなかったタローは混乱して明後日の方向を見ている。しかし、それでもアスカの理想の紳士として生きることを宿命にしている彼は日焼け止めのゴミをアスカから受け取り、自分のポケットに入れる。

 アスカは両手の平に日焼け止めを伸ばした後、それをタローに塗るために両手を広げて近づく。

 

「......」

「なによ」

「いや、なんでも」

 

 あまりにもジッと見られたことでアスカは動きを止めて首をかしげる。誤魔化したタローは『なんかえっちだな......とは口が裂けても言えない』と頭に浮かび上がった邪念を滅するのに精一杯。それが理由でアスカが再び動き出したことに気づかず、右腕に塗られた日焼け止めの冷たさに驚いた。

 

「おわっ......なんか、スースーするね」

「日焼け止め兼冷感、しかもベタつかないのよ。日焼け止めの効果は海の上に居たあたしが保証するわ」

「確かにアスカの肌、変わらずに綺麗だね」

「それだけ?」

 

 腕に日焼け止めを塗り終えたアスカは、タローの首に手を添えながら目を見て言う。変なこと言ったら首絞められるやつだ、変なこと言ったら首絞めてやろう、とやはり多感な時期を共に過ごしたからか同じことを思いつく二人。最も、人に首を締められる趣味も締める趣味もない両者はそんなつもりは毛頭ないが。

 とはいえ何かを言わないことには始まらない、とタローはアスカの全身を改めて見て呟く。

 

「制服、すごい似合ってるよ。赤が似合うのは知ってたけど、青っぽい色も髪色とのコントラストですごく良いと思う」

「ぷっ、なによその評論家みたいな感想」

 

 吹き出したアスカはうりうりとタローの首に日焼け止めを塗りたくる。されるがままのタローだが、途中にアスカが呟いた『でもポケットはやっぱりあったほうが良いわよ絶対』という言葉に反応する。『そこから内ポケットにアクセスできるのはスタイルが良いアスカだけでしょ』と。

 

 プラグスーツ姿からわかるように、アスカのスタイルは抜群。ミサトやリツコ、マヤにレイといったネルフにいる女性陣も同じだが、そんな彼女達と比較しても細く高い、それでいて女性らしさを感じさせる腰回りを誇るアスカ。制服姿の今でさえとてつもないプロポーションを見せる彼女とこれから嫌でも隣に並ばざるを得ない第壱中学校の女子生徒達に、タローは心の中で十字を切る。

 実際、二人が飛び出していったあとの教室と通過した廊下ではアスカの話題でもちきり。あの腰の高さは日本人ではあり得ない、手足がスラッと長くて羨ましい、通り過ぎた時すごくいい匂いがした、等危険なワードも飛んでいた。それを聞いたアスカが必要以上の交友関係を断つとタローに宣言し、苦笑されるのはそう遠くない話。

 

「そうだ、ファーストチルドレンもいるんでしょう? リツコから話は聞いたし、お昼休みにでも紹介しなさいよ。話したいことがあんのよ.....色々と」

「もちろん。お昼にゆっくり顔合わせしよっか。......まあ、すぐにでも紹介できる距離ではあるけど」

 

 一体リツコさんはアスカに何を言ったんだろう、と若干のマッドサイエンティスト気質があるリツコの発言に心配し、アスカお目当てのファーストチルドレンが近くにいることを教えず小さく声に出したタロー。そのタイミングでチャイムが鳴った。

 

「......一応聞いとくわ。これって予鈴?」

「残念ながら本鈴です」

「ちょ早く戻るわよ! 流石に転入初日で授業バックレはマズイ......いやいい感じに勘違いさせられれば虫が寄らなくなるか?」

「まあ、月曜の一限は先生がやる気起きるのに時間かかるとか言って何故か実質的に短縮授業になってるみたいなとこあるし、大丈夫だよ。他のクラスには見つからないようにソーッと行こうか」

 

 口元に指を当てるタローを見たアスカは思わずニヤけてしまったのをバレないように、行きとは逆に彼女が手を引いて教室へ向かっていった。

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