ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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ちょっと日常回ぽいですが、次回への導入として。


8話 ストレス発散

 エヴァンゲリオン弐号機のパイロット。セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーがドイツより来日してネルフ本部所属となり、タローたちと同じ第壱中学校に転入してきてから早くも二週間が経とうとしている頃。アスカは荒れに荒れていた。

 

「もう本ッ当信じらんない! なんなのよ!!」

 

 バシンッ! と乾いた音を立てて葛城家のリビングからダイニングに投げつけられたのは一枚の手紙。

 白い封筒に、ご丁寧に赤色のハート型のシーリングスタンプが押されたそれを、タローは苦笑しながら拾う。

 一緒に居たレイは無言でタローが拾った手紙を睨んでいた。

 

「アスカも、大変だね......そろそろ先生方に相談しないと駄目だこれ」

「ええ。私もそう思う」

 

 ビリッと雑に破いて中の手紙を読んだタローとレイは、途中から一気に表情が険しくなる。

 内容としては普段自分の考えを言葉にしないレイですらドン引きするほどに勘違いも甚だしい、アスカに向けられる一方的な歪んだ感情と謎の物語。

 ソレが一つ上の学年の生徒から送られたものだということを確認した二人は、目を合わせたあとにタローは手紙を人力でシュレッダーにかけ、レイはうなだれるアスカの元へ近寄る。

 

「アスカ」

「最悪......」

 

 カバンの中身をすべて床に出して力なくペタンと床に座るアスカ。

 その弱々しい姿を見てられないと思ったレイは、そっと左肩に右手を置いた。

 

「心配いらないわ。いざという時は、ネルフの力で」

「......レイ」

 

 初めて出会った時の無関心さからは想像もつかないほどに距離が縮まった二人。

 レイは最初こそよく飽きもせずに毎日自分に話しかけてくるものだ、とアスカに対して思っていたものの。気がつけば互いに放っておけない関係性に。

 それをダイニングから見ていたタローはニッコリ保護者顔になっていたところで、アスカからの視線を感じて飛んでくる。

 

「そうだよアスカ、流石にこれは度が過ぎてる。オレもできるかぎりでアスカのそばに居るけど、諜報部の人に入ってもらうことも視野に入れないと」

 

 度が過ぎている。

 というのも、アスカはその美貌と学校内での人当たりの良さから、瞬く間に学校の注目の的。いわゆるマドンナの立場へと持ち上げられている。

 それ故に連日のように呼び出しを受けては告白され、下駄箱や机の中には大量の恋文、ラブレターがあふれる日々を過ごしていた。

 もちろん呼び出しを受けた際は必ずタローとレイが控え、諜報部もすぐ駆けつけられるように準備はしている。だが下駄箱と机の中に仕込まれるラブレターに関しては、ポッと突然に、アスカに言わせれば虫のように現れるため対処のしようがないのが現実。

 

 もとより例外を除いて男嫌いの気があるアスカにとっては、顔も見たことない、名前も知らない男からの告白とラブレターは相当に堪えるものがあった。

 加えてやはり例外を除いて潔癖気質であることも重なり、知らない男。というよりタロー以外の男が普段学校で自分が利用している下駄箱と机を勝手に触っている、ということにとてつもない嫌悪感を持っている。

 その程度はこの十数日ですでにローファーと上靴を数回買い替え、机は学校が簡単に変えさせてはくれないためアルコール消毒を繰り返しコーティングが剥がれ白くなるほど。

 そこで先程アスカが投げた手紙に戻る。学校から帰ってきて仲の良い二人と、自宅で課題に取り組もうといういかにも学生、青春らしい行動。それをしようとカバンの中を開けたところ、カバンの内ポケットにあの手紙が入っていたのだ。

 カバンの中を勝手に触られた。その事実がアスカにとってはお気に入りのペンケースとその中身、授業で使うノートパソコンやノート、今日配られた課題。全てを『気持ち悪いモノ』と認識させていた。

 

「はぁ。これからは、カバンも持たないようにするわ」

「アスカの荷物はオレが預かるよ。そうすれば多少はマシになると思うし」

「必要なら私も持つけれど」

「......とりあえずはタロー、任せたわ。レイもあんがと」

 

 吐き出すだけ吐き出して落ち着いたのか、普段通りの様子に戻ったアスカは立ち上がりカバンとその中身をつまんで持ち上げると乱雑にゴミ箱へぶち込む。

 ボスッ、ボスッ、とゴミ箱へ投げ入れられるそれをタローは一つずつカウントし、アスカが手を洗っている間に諜報部に頼んで注文し、レイは自分の分の課題を葛城家のプリンターでコピーする。意外にも面倒見の良いレイの後ろ姿にタローがニッコリしていると、手を洗い終えたアスカが若干頬を膨らませながらタローを真横で睨んでいた。

 

「見・す・ぎ!」

「そんなに見てたかな?」

「見てたわよ。大体あんた、一年ちょっとでレイと仲良くなりすぎじゃない?」

「いやオレからすればアスカこそ二週間もしてないのに仲良くなりすぎだよ。オレなんて名字を呼んでもらうのに一体どれだけかかったことか......」

 

 おまいうとアスカに向けて苦笑するタロー。『そうかしら?』と首をかしげるアスカに『コレが女の子のコミュ力』とタローの表情が戦慄としたものに変わったところでレイが戻って来る。

 ゆっくりと座ると、コピーした課題のプリントをアスカの前に差し出して一言。

 

「これ、使って」

「レイ......!」

 

 目を輝かせながらプリントを受け取り、『あんたやるじゃない』と言いながらレイのことをそっと抱きしめるアスカ。そして若干の抵抗を見せるレイ。

 当然それを見たタローはまるでミサトがアスカに絡むときのようだ、と絶賛業務に追われている同居人を思い浮かべる。

 

 予想外にもアスカとレイの関係と相性は良好。これはミサトのみならずリツコにとっても嬉しい誤算だった。タローの存在でレイの行動も徐々に変わってきていたが、よりダイレクトに感情を表す同性同世代のアスカの出現がレイに思いやりを与えたのだ。

 タローは自分の感情を抑制し常に気を使った行動をすることが多く、レイに対してはどちらかというと与える側であるのに対して。アスカは嫌だと思えば嫌。良いと思えば良い。と程度と場面をわきまえつつも態度に表すタイプ。故にそれを見たレイが気の利いた行動を考え与えることが多い。

 レイはそれまでタローからこれをされたら自分はこんな感情、こんな気持ちになった、と情報を集め。アスカに対して彼女は今こんな感情、こんな気持ちだろう。だからこれをすればこうなるはず、と実験をしている。

 早い話タローがレイに対してすること全てが彼女にとっては『ぽかぽかする』ものであり、それのみを学習してきたレイはアスカからしてみればタローと同じように自分のツボを知っている存在。だからこそ短期間でアスカはレイに対してここまで心を開けたし、レイも自分と同じ気持ちになってくれるアスカに対して代えがたい何かを感じている。

 結局はタローがレイに対してひたすらに絡み続けた結果であるし、ネルフの大人たちにとってはそれが周知の事実ではあるが、肝心の本人はそれに気づかずレイと、アスカと仲良くなりすぎと両者に対して若干のジェラシーを感じてしまう始末なのだから救えない。

 

「とりあえず面倒な課題はパパッと終わらせましょ!」

 

 アスカが二度手を叩いて宣言する。基本的に三人で行動する時はアスカが仕切ることが多く、シンジ含めた四人で行動する時はタローが仕切ることが多い。

 

「そうだアスカ、捨てたやつは全部注文しといたから明後日にでも届くよ。とりあえずペンはオレの使う?」

「じゃあ遠慮なく使わせてもらうわ。でも届くの明後日か、今日が金曜日じゃなかったら学校でもあんたの使えたのに」

「別にいつでも持ってってもらって大丈夫だよ。綾波もなにか足りないのあれば言ってね」

「ありがとう」

 

 そんな会話をしながら各々スラスラと課題をこなしていく

 三人集まって課題に取り組む、といっても勉強会とは違う。ドイツで実績を残してきたタローとアスカは言わずもがな、レイの学力も非常に高いため、基本的に教えあいっこというイベントは発生しない。

 わざわざ三人集まる理由はというと、単に仲が良いだけ。もちろんアスカが一人暮らしのレイを気にかけていることもあり、一緒に住まないかと提案したこともあるが以前にタローがそれなりに話を持ちかけた時と同じように『大丈夫』の一言で断られている。

 レイにとってはネルフ本部から近く知らない人の気配がない今の住居が気に入っているためであるが、それを遠慮してると捉えたアスカは転入三日目以降から平日は基本毎回学校終わりにレイを家へ連れ込み、タローも含めてゲームをしたり世間話をしたりで夕方までとどまらせ。ミサトが帰ってくれば『ついでに食べてきなさいよ』と自身やタローが作った夕飯も食べさせ、帰りはミサトの車に四人で乗って送る生活が続いている。

 

 一度ミサトが私に任せなさいと張り切って作った醤油味カップラーメンのレトルトカレーがけを食べたレイが見事に具合が悪くなり、お泊りコースとなったことがある。ミサトはタローとアスカのベッドにレイも一緒に三人で寝ればいい、と提案したがタローはそれは色々と駄目だと、アスカが『いくらレイでもタローと一緒のベッドに入れるのはダメ!』とあいつは私のもの理論を振りかざしたため、結局はアスカとレイがベッド。そしてタローはリビングに敷いたはずの布団がミサトによって彼女の部屋に持ち込まれ、やけに期待の眼差しを向けられたことで折れてミサトの部屋で寝ることに。

 翌日の葛城家では理性と貞操を守ったタローが戦場から帰ってきた兵士のような顔で、ミサトはツヤツヤで、アスカはレイの寝顔が見れなかったと悔しがり、普段通りのレイが朝食をとる光景が見られた。

 

「お~わり。そっちはどう?」

「終わったよ」

「私も」

 

 アスカが声を掛けると、先に終わらせていたタローと、ちょうど終わったレイが返事をする。

 その返事を聞いたアスカはニッと笑った。

 

「よし。じゃあ昨日の続き、やるわよ!」

 

 どこからともなく取り出したのは携帯ゲーム機。赤、黒、青の三色あり、黒をタローへ、青をレイへと渡す。

 プレイするゲームは自由気ままに世界を堪能するサンドボックスゲームのマインワールドや、アクションゲームであるスーパーマリモ、同シリーズのレースゲームであるマリモカートや村を作るアニマルフォレスト、シューティングゲームのステラプーンなど様々。

 だが今日は続きということでスーパーマリモをプレイすることに。余談だが、ミサトも自分用の黒色にメタリックレッドとメタリックブルーの差し色が入ったゲーム機を持っており、四人で遊ぶこともある。スーパーマリモの場合はアスカがミサトを持ち上げて崖から投げ落としたり、偵察と称して敵キャラの山に投げ入れる場面が度々見られる。

 

「今日は一気に進めるわよ。目標は三面のクリア!」

「おっけー。頑張ろっか」

「了解」

 

 アスカにとっては学校はストレスが貯まるが、タローとレイの二人と過ごす時間が伸びるため登校している。幸いにも学校が終わればすぐにそのストレスを忘れられる平和な時間が続いていた。

 二日後の日曜日、三人でどこか出かけようという約束をしながらマリモたちを躍動させて。




アスカは中学校で苦労してそうというイメージ。常識的に考えて転入早々に顔も知らん男たちから下駄箱に大量のラブレターとか恐怖でしかない。
でもここにはアスカの仲間がたくさんいます。

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