ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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13話 Der Sieg erwächst aus Harmonie.

「目標、強羅絶対防衛戦を突破」

 

 青葉の声とともに、発令所の大型スクリーンには第七使徒イスラフェルの姿が映し出される。

 その姿は上陸直後と同じく、鈍色の体皮を持つ分裂前の姿だった。

 

「来たわね、計算通り」

 

 発令所全体がイスラフェルを睨みつける。そんな中でミサトは腕を組み不敵な笑みを浮かべていた。

 

「しかし、まさか葛城がこんなギャンブルじみた作戦をするなんてな」

 

 自信満々、といった様子のミサトに後ろから声をかけたのは加持。

 権限の無い箇所に無断で侵入し、本部異動後そうそうに受けていた謹慎処分が解除された彼は、どことなくやつれている。

 それを見て気遣ってくれたのがタロー以外居ないことで荒んでいるのか、光のない目で続けた。

 

「あの二人の連携に全てを託すなんてらしく無いじゃないか。いや、らしくないのは俺の方か。まさかこの歳になってあれだけの説教を受けるなんて思わなかったさ......はは......」

 

 誰が見てもしょぼくれている様子の加持だが、ミサトは彼に構うことなく答えた。

 

「確かに今回に限らず、大事なのはタロちゃんとアスカ。そしてレイやシンジくんたちの連携力よ。私たちはそれを信じるしか無い......ただ、私たちにもやれることはあるし、それをするだけの能力がある。今までも、そしてこれからもそうやって勝ち続けるだけよ」

 

 と言い切るミサト。その後ろでは未だに光を取り戻さない加持に対して呆れた顔を向けていたリツコが、発令所を見回してからそっとミサトに近づいた。

 

「流石ネルフ本部の作戦指揮官様ね。職員たちの士気管理もバッチリってとこかしら」

「はえ? なにがよ」

「......この親にして子ありね」

 

 先ほどの力強いミサトの言葉で引き締まった雰囲気となった発令所とは真逆の、気の抜けた表情をしているミサト。

 その顔を見て、リツコは現在出撃待機中のエヴァパイロット二人の顔を思い浮かべながら苦笑してしまう。

 

「二人に繋いで」

「はい!」

 

 作戦開始を告げるため、タローとアスカへの回線をつなぐマヤ。と同時に、発令所へ二人の声が響いた。

 

「ボッコボコのギッチョンギッチョンにしてやるわよ!」

「ヤアアァァァァァ!!」

 

 物騒な言葉を放つアスカと、それに同意するかのように目をまん丸に開いて雄叫びをあげるタロー。

 突然のカオスに発令所のピリッとした雰囲気は崩れ落ちるかと思われたが、実際はその逆。全員が出撃を待つ兵士のような雰囲気を纏う。

 ミサト率いるドイツ支部組三人の洗脳に見事なまでに染まってしまったネルフ本部では、一見すると気が狂ったかのようにも思われる二人の行動をも戦意高揚につながっていた。

 

「二人とも」

 

 そんなタローとアスカにミサトは声を掛ける。そして端的に内容を告げる。

 

「音楽スタートと同時にATフィールドを展開、あとは作戦通りよ」

『了解!』

 

 先程までのバーサーカーっぷりはどこへ行ったのか、真顔で返事を返す二人。

 第七使徒イスラフェルを撃破するためには、分裂時に同時にダメージを与える必要がある。そしてコアの破壊は損傷に耐えられなくなった融合時、二つに別れたコアが融合し切る前の一瞬だけ。

 その計算に基づいて生まれた作戦は、修復が完了した防衛設備を活用しつつタローとアスカが音楽に合わせての同時攻撃。つまり、戦闘時の移動ポイントや要所での行動は決められているがほとんどアドリブである。

 だが、それが二人にとってはわかりやすいことこの上なかった。

 

「目標、山間部に侵入」

 

 青葉から続けて報告が入った。

 イスラフェルの現在地から推測し、まもなく出撃であることを察したアスカはタローへと声をかける。

 

「最初っからフルスロットル、最大火力でかますわよ」

「もちろん。きっちり六十二秒で沈めてやるさ」

 

 ニッ、と二人が歯を見せあった時、青葉がイスラフェルのゼロ地点到達を告げる。

 それと同時にミサトの指示で壱型と二号機の外電源が外され、内部電源のカウントダウンが始まる。

 

「発進!」

 

 よく通る声と同時に、壱型と二号機、そして発令所に音楽が流れエヴァが射出された。

 

 五十五秒、壱型と弐号機はイスラフェルの眼前で輸送台から飛び出し、天高く舞い上がる。

 

 五十一秒、壱型は肩部ウェポンラックからプログナイフを、弐号機は両手首に格納されているビームグレイブを取り出し投げつける。

 

 四十八秒、壱型の投げつけたプログナイフはイスラフェルに弾かれるが、その隙に弐号機が投げたビームグレイブ二本の柄から展開したビームスクリーンでイスラフェルを甲乙に分裂させる。

 

「よし!」

 

 第一関門である目標の分裂に成功し、ミサトは声を上げる。

 直後素早く指示をだし、パレットライフルと最近実用化にこぎつけたポジトロンライフルを展開させる。

 

 四十二秒、壱型はパレットライフルを手に弐号機のもとへ移動しつつイスラフェル甲を相手に弾幕を形成、弐号機はポジトロンライフルを可能な限り全力で連射し壱型が合流できるようイスラフェル乙の動きを止める。

 

 三十九秒、壱型と弐号機が合流するとイスラフェル甲乙が光線を放つ。それを両機揃ってバク転で後退しつつ五度回避、指定されたポイントに到達すると足元のスイッチを押して防壁を展開。

 

 三十一秒、防壁から両機が半身を乗り出しパレットライフルを乱射。イスラフェル甲乙は浮遊して距離を縮め、防壁を五つに切り裂いた。

 

「防衛設備、全部ぶっ放して!」

「了解!」

 

 左右に回避した壱型と弐号機の距離が再び離れたことで、ミサトはマコトに半ば怒鳴りつけるような指示を送る。

 山やビルに擬態したミサイル、さらには道路に配備された自走式多連装ロケット弾発射機からのロケットの雨がイスラフェルに降り注ぎ、足止め。

 その一瞬の隙があれば二人には十分だった。

 

「アスカ!」「タロー!」

 

 二十二秒、二人が同じタイミングで互いの名前を呼び合うと始まったアドリブでの同時攻撃。壱型は右手で、弐号機は左手で強烈な一撃をそれぞれイスラフェル甲、乙に叩き込む。

 

 二十秒、体をくの字に折り曲げたイスラフェル甲乙相手に、両機は殴った勢いそのままに壱型は反時計回り、弐号機は時計回りに回って左足と右足での回し蹴り。背中合わせ、まるで鏡に写っているかのように完璧なタイミングで繰り出された連撃にイスラフェル甲乙は吹き飛ばされる。

 

「もういっちょ」

 

 十八秒、目にも止まらぬ速さで再び飛び出した壱型。発令所でミサトたちがタイミングがズレたかと弐号機の姿を探すと、弐号機は遅れることも先走ることもなく、ピッタリとその横で飛び出していた。

 

 十六秒、再びエヴァ両機によるコアへの打撃にイスラフェル甲乙は分裂の限界を迎えたのか融合を始める。一つになったイスラフェル、その胴体には二つのコアが。それを確認したタローとアスカは顔を見合わせることもなく不敵な笑みを浮かべると、壱型と弐号機を全速力で走らせた。

 

『決める!』

 

 発令所に二人の揃った声が響く。マヤ、マコト、シゲルの三人は後は託すのみとモニターをじっと見つめ、ミサトとリツコは早くも勝利を確信したような表情。それはようやく目の中に光を取り戻した加持のみならず、臨時で司令を務める冬月も同じだった。

 

 十二秒、助走をつけた壱型と弐型は高く飛び上がり、クルリと空中で前回転をし壱型は右足を、弐号機は左足を。再び背中合わせで一本の槍となりイスラフェルの左右のコアに突き立てるような飛び蹴りの体勢で突撃。

 

 十秒、とてつもない衝撃とともに繰り出された蹴りをコアに受けたイスラフェルは、地面をえぐりながら吹き飛ばされていく。二機のエヴァの足元では、イスラフェルのコアが徐々にヒビを広げていた。

 

「だああああああ!」

「りゃあああああ!」

 

 九秒、八秒、七秒、六秒、五秒。壱型と弐号機、イスラフェルが山岳部あたりまで突き進んだところでついに。イスラフェルのコアが眩しい光を発し初めた。

 それを確認したタローとアスカは、空いている足でイスラフェルの体を踏み台にして飛び上がる。

 直後、イスラフェルはまばゆい閃光と轟音、激しい衝撃を残して爆散。爆発の光で真っ白になった発令所のスクリーンを、ミサトたちは誇らしげな表情をして見つめる。

 爆発が収まり発令所のスクリーンが正常に戻ったのは、ちょうど五秒後。エヴァ両機の電源が切れたであろう時間だった。

 

「やっるぅ~!」

 

 カメラが壱型と弐号機の姿を捉えた時、先に声を上げたのはやはりミサトだった。

 爆発の影響で作り出された大きなクレーター、その端で両機はやはり鏡合わせのように片膝立ちの姿勢を取っていた。

 

「エヴァ両機、確認」

「完璧、という言葉はこのためにあるのかもしれないわね」

 

 二度目だったとはいえ、あまりにもスムーズに進んだこの作戦にリツコでさえ完璧という言葉をこぼしてしまう。

 イスラフェルが跡形もなく消し飛び、エヴァ両機は傷一つなく健在。鳴り物入りで本部へやってきたアスカの実力も目の当たりにした発令所では、どこからか鳴り響いた拍手の音を皮切りに職員一同のスタンディングオベーションが始まった。

 

 壱型と弐号機の内部電源が切れたことで発令所との通信が途切れており、盛大な拍手が送られているとは知らないタローとアスカはエントリープラグを排出する。

 両機の立ち位置調整が狙って行われたのか、排出された二本のエントリープラグはちょうど横並びで手が届く距離。先に勢いよく飛び出していたアスカは、後からゆっくりと出てきたタローの両肩を力強く掴んだ。

 

「やったわよ! あたしたちの勝利!!」

「おーおー落ち着いてアスカ、危ない危ない」

「なによ、もっと喜びなさいって!」

 

 高所に居るからと落ち着くように促すタローだが、アスカとて年頃の少女。日本でのデビュー戦こそ不甲斐ない結果に終わったものの、そこから今に至るまでの過程と結果に舞い上がりタローの体を激しく前後に揺さぶり初めた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁ! やめて、やめてくださいアスカさん! 落ちる、落ちちゃうってぇぇぇぇぇ!!」

 

 アスカに揺さぶられ情けなく響く真っ白な顔で涙目なタローの悲鳴に、発令所では拍手の音に変わって笑い声が響く。

 これは珍しい、という表情をしているリツコたちだったが、ミサトはタローが高所恐怖症であるということを知っているため驚かずシャッターチャンスとカメラを起動していた。

 

「タローくんのあんな姿が見られるなんてね」

「へえ? ああリツコってタロちゃんが高所恐怖症なの知らない感じだった?」

「俺も知らなかったな。まさか、彼にも苦手なものがあるなんて」

「高所恐怖症で、よくエヴァに乗れているわね」

 

 立派なものだ、と関心するリツコを前にミサトは言おうとしていた言葉をグッと飲み込む。実はJ.Aの暴走を止めるときも先日の水際迎撃作戦のときも、エヴァを降下させると聞いてしばらく現実世界に戻ってこれなかったのよ、と。

 

「あ、あぁ......あかん......」

「勝利よ勝利! あたしたちがDer beste!」

 

 興奮のあまりドイツ語を叫びながらタローに抱きつくアスカと、本来ならば内心大喜びしながらも澄ました笑顔を見せていただろうが気絶寸前のタロー。それを見た冬月は一言呟いた。

 

「まったく、恥をかかせおって......」

 

 口元を緩ませながら報告と事後処理の準備に入った冬月。

 彼が発令所を去った後も、発令所は大喜びではしゃぐアスカと口から魂が抜けたタローの普段と違った様子の微笑ましさ、そして作戦終了のリラックスが重なり笑い声が響き続けていた。




GWですね

物語の密度と1話ごとの文字数について

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