タローとミサトは、それからもネルフ本部の職員たちにドッキリを仕掛け続けた。
ネタバラシを受け、ある者は『よかった』と微笑み、ある者は『安心した』と肩を落とし、ある者は『またとんでもないことを』と苦笑した。
全員に共通しているのは、タローの体に施された特殊メイクの傷跡を見て、それから冷たくタローに接するミサトを見て、ミサトに対して意見するということだった。
階級や所属等関係なく、全員がタローのためにとミサトに立ちはだかる姿を見せられ、タローは既にお腹一杯状態。でなくとも、今のように役作りのためとはいえタローに冷たく接さなければならないミサトからの抱擁でいっぱいいっぱいだった。
「辛い......」
「ははは......それじゃあ、もうこのへんで終わりにしましょうよ」
苦笑しながらタローが言った。
「ダメダメ、あとちょっとだけ続けるわ! なんなら今のコレで私的にはプラスだから!」
「ハグで回復するからって、本当にこれ回復してますか?」
「もちろんしてるわよ。イェーナさんのお母さんの、エルナさんも昔言ってたけど。ハグすることで幸せホルモンが出るって有名でしょう? それに」
ミサトはギュッとタローの腰に回す手を強めた。
それに返すように、タローもミサトの背中を撫でていた手を止め少し力を込めた。
「抱きしめて欲しい時に抱きしめてくれるって、ほんと出来た男ね?」
「ミサトさんだからですよ。いつもお世話になってますし、こんなことで良ければ」
「おいおい、ちょっとメロすぎんかうちの子。んん、そうね。アスカに仕込まれただけあると思うわ」
「......まぁ、どっちかというとイェーナさんからの指導ですけど」
タローの瞬発力はアスカで鍛えられたもの、と考えるミサト。実際には、アスカに好きになってもらうためにと幼少期にイェーナから女心というものを学んだ賜物であるため、やはりここでもイェーナが絡んでくる。
ドイツ支部に居たミサトたちから話を聞いたネルフ本部の職員たちは、イェーナのことを完璧超人で経験豊富な女性という認識。その認識が少々変わるのはもう少し先のことだ。
「ぃよっし、まだ時間あるしあと何人か行くわよ! できればネームド個体だと最高ね」
「昨日やったゲームに影響されすぎじゃないですか。剥ぎ取りは出来ませんよ」
ミサトは微笑み、タローの頭に頬ずりをした。直後、コツコツとヒールが地面を叩く音が。
おいでなすったわね、と片方の口角を上げたミサトは『じゃ』と短く言い、音を立てないように素早く移動してカメラを確認出来る部屋へ。
軍隊で訓練でも受けてきたのか、とタローが言いたくなるほど無駄に洗練された動きのミサト。その背中をタローが見送った頃、自販機前の休憩スペースへ一人の人物がやってきた。
「あら、タローくん。奇遇ね」
「お疲れ様ですリツコさん」
現れたのはリツコ。何かの資料を手に持ち、集中する時用なのかメガネをかけた彼女にタローは立ち上がって挨拶をする。
自販機前のスペースに居るのを不思議がられないようにと買っていた水は既に飲み終えていたタロー。手ぶらの彼をみてから、リツコは自販機前の前に歩いていった。
「何か飲む?」
「あ、いえ。お構いなく」
これから騙すのに飲み物まで奢ってもらうのは申し訳ない、と返事をするタロー。
リツコは彼に、仕方ないなと息を吐きながら肩を落とした。
「構うわよ。せっかくだし、時間があるなら何か飲みながら話しましょう」
「......そういうことなら、緑茶をいただいても?」
「もちろん」
リツコはいつもの白衣のポケットに手を突っ込むと、そこにあった小銭を適当に鷲掴みして自販機に投入する。
そしてペットボトルの緑茶を一つ、缶の小さめの甘いミルクティーを一つ買うと、緑茶をタローに手渡した。
「はい」
「ありがとうございます。珍しいですね、リツコさんは甘いのですか」
「ちょっと糖分が欲しかったのよ。コーヒーに砂糖を入れるのもいいけれど、たまには既製品の甘ったるい加糖飲料をと」
「なるほど」
少しトゲのある言葉で手に持ったミルクティーを表現するリツコに、タローは苦笑する。
普段のリツコはミサト等と同じように、ネルフ本部に設置されているコーヒーメーカーで抽出したコーヒーを愛飲している。時折、自分で豆を挽いていれることもある。
そもそも現金自体滅多に使うことの無い彼女だが、今日はたまたま、エヴァの調整中に引っ掛けて破けたストッキングを履き替えるため、コンビニで買った時に使った現金のお釣りがポケットにあることを思い出し。疲れた頭をリセットするために普段とは違うことをしようとした次第だ。
「本格的に紅茶を楽しむタローくんには、ミルクティーとは名ばかりのこれは邪道かしら?」
カシュ、と缶を明けて一口飲んだリツコは、それを自分の顔の横に持ってきてタローに聞く。
ちょうど緑茶を一口、喉に流し込んだタローはペットボトルのキャップを閉めて口を開く。
「いえ、オレの思うミルクティーとは別物ですけど。それはそれで美味しいことは美味しいですから。これでもかって香りと味が付いていて、雑に美味いというか」
「確かにそうね。けれど、前に淹れてもらった紅茶。とても美味しかったわ。またお願いしたいくらい」
「リツコさんにそう言われると嬉しいですね。もちろん、いつでも淹れますよ」
まっすぐリツコから言われたことに、照れくささから首を人差し指でかくタロー。
首に作った根性焼きの跡のメイクなど全く意識しておらず、自然に出た動作。ところが、偶然にもその行動がリツコに首にある根性焼きの跡を発見させた。
「ちょっと失礼するわ」
「え、あわわわ」
飲みかけの缶と脇に抱えていた資料を地面に置き、リツコはタローに接近する。
すっかりミサトにしてもらった特殊メイクのことを忘れていたタローは、リツコの行動に少し後ずさり。
リツコの目にはそれが、首の跡を隠したがっているように見えた。
「これはなにかしら」
右手をタローの首筋に当て、空いた左手でシャツの襟と肌着をおろしながらリツコが言った。
「こ、これは......」
「こんな跡、同級生同士では滅多につくことがないわね。貴方たちの通っている学校は喫煙者が居るほど治安が悪くないもの」
メガネに光を反射させながら、リツコが問い詰めるように聞く。
そこでようやく実験という名のドッキリのことを思い出し、タローはリツコの手をスルリと抜けて距離を取った。
「気にしないでください」
「それは無理な話ね、数日前の身体検査ではそんな跡は無かったもの。他にもまだ隠しているものがあるんじゃないかしら」
「......」
「......沈黙は、肯定と捉えるわよ」
カツカツとヒールを鳴らし、大股で再びタローに近づくリツコ。
思ったよりもキレてる? と、タローはリツコの顔を見て考える。これはミサトさんがお叱りを受けるだろうな、と。
リツコはまず、タローのベルトやや上当たりの服を、腹ごとねじ切る勢いで掴んでガバっと上に持ち上げた。ズボンに入れていた肌着とシャツがめくられると、ちょうどそこにはミサト渾身の青痣の特殊メイク。
瞬間、リツコの視線が鋭くなった。
「なんてことを」
「り、リツコさん」
青痣の特殊メイクを見て、リツコは完全にそれが本物だと信じ切っているのではないか、と不安になったタローはもうネタバラシをしてしまおうと声を掛ける。
さらに、服をめくりあげられたことで胸ポケットに入れていたボールペン型のマイクがガサガサとシャツとこすれ合い。ミサトの耳が破裂してしまうことを心配しリツコがめくりあげたシャツを右手でピッと張った。
「リツコさん、これは」
「大丈夫よ」
タローが言葉を続けようとすると、リツコは彼の背中に肩を回して自らの体に抱き寄せた。
ハグはミサトに何度もされているが、そんなミサトからのハグですら心臓が破裂しそうになる思いを必死に抑えているタローが、リツコから急にハグをされて平常心を保てるわけがなかった。
口をパクパクとさせ、何度か声にならない息漏れの音を鳴らしながら呟く。
「こ、これ、ドッ、ドッキ、リ......」
「......ドッキリ?」
そこでリツコは、改めてタローの首筋にある根性焼きの跡らしきものを見る。
本当によくよく見ると、肌の焼けただれたものとは違い、平面的である。メガネを少し上にずらし、リツコはもう一度見る。彼女も本物の根性焼きの跡は見たことがないが、少なくともコレがそれとは別のものであることは理解できた。
途端に、リツコの額に自分の今の状況が誰かに見られたらマズイのではと冷や汗が。しかし、彼女は機転が効いた。
「なら、こうしましょう」
「ちょ、なんでもっと強く!?」
「こうすれば、胸ポケットにあるマイクが音を拾えなくなるでしょう? タローくん、少し時計回りに動いて頂戴」
ドッキリ、ということはおおかたミサトが絡んでいるだろう。リツコは推測した。
そうなれば、自分が見たことのないタローが胸ポケットに刺しているボールペンは、おそらくマイク。ならば彼のことを想って動いたこの体は、はなからミサトを出し抜くために動いたことにすればいいのだと。
リツコは自分の胸の下部分に当たっているボールペン型マイクを押しつぶすようにタローに密着し、立ち位置を変えてこのスペースに設置されている監視カメラに自分の背中だけが映るよう立ち回る。それに伴い、リツコのミサトに負けず劣らずな胸部装甲がタローの理性を削いでいった。
「面白いことを思いついたわ。タローくん、ちょっと顔を上げて」
「かか、顔ですか?」
「ええ。その真っ赤な顔、ちょっと傾けてみて」
「真っ赤って......ぐぅ」
そんなことはない、と否定できないタローは大人しく指示に従う。タローが自分から見て右に顔を傾けると、リツコもまた同じように顔を右に傾けてみせた。
顔を見合わせて傾け合うとは、横から見ればなんともシュールな光景になっていただろう。しかし、監視カメラの映像を見るミサトはリツコの背中側しか見えない。
バァン! と自動扉が強引に引かれる音が二人の耳に届いた。
「リツコォ!!」
「ふふ、やっぱりね」
ズカズカと大股でミサトが歩いてきた。リツコはあくまで、はじめからこれを狙っていましたよという顔を作りタローから離れる。
タローの顔は、リツコの熱や香り、感触が僅かに残りまだ赤かった。
「アンタ、何してくれてんの!? 心配とかそういう次元じゃないでしょうッ!!」
「何もしてないわよ。ただ、てっきりタローくんがミサトにいじめられているのかと思って」
「嘘おっしゃいこの泥棒猫! 明らかに私が仕掛けた罠だと知っていたわね、こんのォ!」
「落ち着きなさい、全く」
今にでもリツコをはっ倒しそうな勢いのミサト。前傾姿勢の彼女の頭を右手で受け止めながら、リツコは呆れたとあくびを一つ。
「タローくん、ちょっとこの猛獣を引き取ってくれるかしら」
「あ、は、はい!」
後ろからミサトの両脇に腕を差し込み、抑えるタロー。解放されたリツコはメガネを直し、地面に置いた資料と飲みかけの缶紅茶を手に取る。
白い首、喉仏を上下に動かして残っている缶紅茶を一気に飲み干したリツコは、それをミサトの前に差し出す。ミサトはつい反射でそれを受け取った。
「私が本当にタローくんに何かをしたっていうのなら、その飲み口みたいにリップが付いているはずよ。そういうわけだから、私は仕事に戻るわね。ゴミ捨てヨロシク、葛城三佐?」
赤い唇の両端を僅かに持ち上げたリツコは、くるりと白衣をなびかせながら回れ右をし、そのまま歩いていく。
ミサトは手に残った缶紅茶、その飲み口に付いた赤いリップとリツコの去った方向を交互に見て叫んだ。
「よくも私をおちょくってくれたわね! 覚えときなさいよリツコォオ!!」
「み、ミサトさん落ち着いて! 暴れないでください!」
リツコは既に離れているだろう、と声を荒げるミサトと彼女が怪我をしないように注意を払って抑えるタロー。
完全にしてやられたな、という二人の声を、リツコは曲がり角すぐ横に背中を着いて聞いていた。
「ふっ......全く、心臓に悪いわね」
口元に手を当て呟く彼女は落ち着いているように見えた。壁から背中を離し、人差し指で自身の唇に触れた彼女の金髪から覗く耳は、リップと同じ色になった。
「ミサトさん、あんだけやってまだ続けるのか......」
リツコに出し抜かれたままじゃ終われない! とミサトは実験の続行を指示。
暴れる彼女を必死に抑えたタローは、汗ばんだ体を冷やそうとシャツをパタパタ動かす。ちょうどそのタイミングで彼女が現れた。
「あれ、タローくん」
「あっ、マヤさん! お疲れ様です!」
先程のリツコと同じように、資料を手に持ったマヤだ。
彼女は小走りでタローに近づいた。
「タローくん、せんぱ......じゃなかった。赤木博士を見なかった?」
「リツコさんですか? それなら」
シャツを動かしながら普通に案内しそうになったタロー。それでも実験は続いていることを思い出した彼がどうやってドッキリのきっかけを作ろうかと考えていると。マヤの顔がみるみる青くなっていった。
「マヤさん?」
「た、タローくん、それ......」
「あ」
よほどリツコに抱きしめられたことがきいたのか、タローの中の名俳優スイッチは既にオフになっていた。
なんにも考えずにシャツをあおいでいた彼だが、そのせいでマヤは首筋に作られた根性焼きメイクのみならず、鎖骨下あたりの青痣まで見てしまっていた。口元を両手で抑え、信じられないと瞳を揺らすマヤに、タローの良心がズタズタに引き裂かれた。
「う、嘘......誰が、誰がこんなことを?」
「あの、これ」
見るからに取り乱しているマヤに、タローはドッキリなど仕掛けている場合じゃないだろうとすぐ説明しようとする。
いくら特殊メイクといえど、もともとマヤはこういったものを見ることは苦手。それを知っているからこそ優しく微笑みながら事の顛末とリツコの向かった方向を教えようとするタロー。マヤには、彼の微笑みが我慢をしているように見えた。
「タローくん! 大丈夫よ、大丈夫だから私に教えて。誰がこんなひどいことをしたの?」
「えっと、その」
「言えない? 言いたくない? 心配しないで、私がなんとかしてあげるから」
グイグイくるなぁこの人、とタローは一瞬固まってしまう。
これほどまでにマヤから気持ちを向けられていることは、マヤのことが推しだったタローにとっては嬉しいことこの上ないのだが。ブチギレた幼き日のアスカ以上にかける言葉を選ばなければならない気がした。
どう説明しようか、とタローは考える。その様子を監視カメラから見ていたミサトにとって、マヤに対してタローがこの実験を遂行できないことは想定済み。だからこそマヤはどんな反応をするのか気になっていた彼女は、ウッキウキで部屋を出て二人の元へ向かった。
「お疲れ様、二人とも」
「葛城さん!」
リツコの時には出来なかった、偶然を装っての遭遇。マヤはすぐミサトに駆け寄った。
「た、タローくんの体に、怪我が。痣がっ!」
どうにかしてあげましょう、と懇願するマヤ。
直属ではないにしろ可愛い部下だ。ミサトは少し心が痛んだが、それでも期待以上のリアクションに少しニヤけそうになった口元を抑えてタローを見る。
マヤの後ろでは、タローが『もう可愛そうです。やめましょう』申し訳なさから魂の抜けた表情で首を横に振っている。ただ、ミサトはリツコにひっくり返されたことで溜まった鬱憤を彼女の後輩で晴らそうとした。
「それがどうしたの」
「......え?」
ミサトが冷たく言い放つと、マヤは唖然とする。タローは頭を抱えた。
「エヴァのパイロットだもの、それくらいの怪我はするわよ」
「で、でも! 前回の身体検査では、あんなひどい怪我は無かったんですよ!? それに、首の跡なんて明らかに人為的なものです!」
「時にはそういうものも必要なのよ。悪いけど、私はタロちゃんに用があるから」
この実験で何度聞いたことか。とタローが言いたくなるほど聞いたセリフのあと、ミサトはマヤの横を通り抜けてタローに近づこうとする。
マヤはそれを許さなかった。
「ッ」
「お前ェ!!」
マヤはミサトの襟首を掴むと、そのまま自販機に彼女の背中を叩きつけて叫んだ。
想定外。それ以外の言葉が見つからないマヤの反応と言葉に、タローもミサトも目をパチクリさせた。
「それでも保護者かッ!?」
「ち、ちょっとマヤちゃん? 落ち着いて?」
「私は落ち着いてます! 少なくとも、タローくんと貴女をこれ以上近づけさせるわけにはいかない判断が出来るくらいには!!」
「いや、そうだけど! ちょっと話をさせて! てかタロちゃん助けて!!」
「だからやめましょうって言ったのに......」
やれやれ、とタローが二人の間に割って入る。
タローの体にある痣やらは全て特殊メイクによるもので、これは彼を大切に思う人がどれだけネルフ本部に居るのかを彼に理解させるための実験だ、とミサトが全てを説明し終わった頃。ようやくマヤの阿修羅のような雰囲気が収まった。
「なんだ、そういうことだったんですね。私、てっきり葛城さんがタローくんに暴力をふるっているのかと」
「イイエ、ワタシハソンナコトシマセン」
「そうですよね! すみません、怒鳴ってしまって......タローくんも、ごめんね」
「コチラコソスミマセン」
「オレも三割くらい悪いです。申し訳ありません」
すっかり普段の穏やかな様子に戻り、自分の行動を恥ずかしがって顔を赤くしながら謝罪するマヤ。それでも説明を聞いている時もずっとタローを隠すように立っていたし、本当に特殊メイクなのかと身ぐるみを剥がされたタローはほぼ上裸。
彼女がブチギレたことでの豹変具合は、タローはもちろんミサトにとって思った以上のものだった。現にミサトは、マヤのことはリツコ以上に怒らせてはならない存在だと恐れ言葉がカタコトに。
業務中は自分の意見をしっかり発言するとはいえ、控えめで潔癖気質な印象のある彼女が、お前、などという言葉を叫び、挙句の果てにはタローの上半身を血眼で観察したのだ。そうなるのも無理はない、とタローは思った。
「あっ、そうだ! 私、赤木博士を探していたんです。葛城三佐、どこかで見かけたりしませんでした?」
「アンナイ、シマス」
感情を失った悲しきロボットよろしく声に抑揚の無いミサトが、マヤを連れて行く。別れ際に『またね』と言って手を振るマヤに、同じように手を振り返しながら、タローは一息つく。
「マヤさん超コエェ、小さい時に危機感がないとかってアスカにブチギレられたの思い出しちゃった。でも、オレのためにあんなに怒ってくれたのは嬉しかったかも」
うぅ、と自分の体を抱いて怯えるタロー。そんな彼に、一人の男が声をかけた。
「白露」
低く無愛想な声。タローはギギギと首を動かし、その声の主を見た。
「い、碇司令......」
声の主は、ネルフ本部の総司令ことマダオこと息子といい感じで近頃ずっとルンルン気分な碇 ゲンドウだ。
ゲンドウは、上裸で体中に痣の特殊メイクをされ、自分の体を抱いているタローを見て。メガネの真ん中、ブリッジ部分を手袋を履いた左手中指で上に上げ、いつものゲンドウポーズの時のように光を反射させた。
「先程、伊吹二尉を押して歩く葛城三佐を見た」
「あ、それはぁ」
「本日付で葛城三佐をプライム・チルドレン及びセカンド・チルドレンの保護者役から解任、懲罰処分とする。後任が決まるまではジオフロント内の居住施設で暮らすように。明日、私と冬月は南極へ調査に向かう。お前も来い」
「......ミサトさぁあああん! 早く戻ってきてえええええ!?」
タローにはシンジとの仲を取り持った恩もあるのか、ゲンドウは速攻でミサトを切る判断に。
もうこれは本人をこの場に召喚して謝るしかない、とタローが叫ぶ。ミサトは悪い気配とタローの叫び声を聞き、マヤを残してUターンし猛ダッシュ。
ゲンドウとタローの間に、スライディング土下座で飛び込んできた。
「スンッッッッッマセンシタァ!!」
そしてマヤにしたのと同じように、状況説明。全てを聞いたゲンドウは。
「......ふん」
かける言葉が見つからなかったのか、鼻を鳴らして去っていった。
「クッソッ! 屈辱!」
「人を試すように騙すって、やっぱりいい結果にはなりませんね」
「でも面白いのも見れたからオッケーよ!」
ゲンドウに対してスライディング土下座したこと、鼻で笑われたことに地面を殴りつけるミサトとそれを慰める上裸のタロー。
急に走り出したミサトの後を追ってきたマヤが『キャッ!』と短い悲鳴のあとに両手で顔を隠し。指の隙間からタローを見て言う。
「タローくん!? 服着ないと!」
「いやあなたさっき散々見てたでしょ......」
「しかも今もみてるし。やっぱマヤちゃんは危険ね、未成年はマズイから勝負はもうちょっと待つのよ」
「わ、私はそんな破廉恥じゃありません!」
ネルフ本部は、今日も平和である。
うちのマヤさんはブチギレるとQの時みたいになります。
滅多にこういう怒りかたはせず、どちらかというと溜め込んで溜め込んで泣くタイプです。背中をさすってあげたいですね。
物語の密度と1話ごとの文字数について
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サクサク進む(3000~4000字程度)
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少し書き込む(5000~6000字)
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ガッツリ書き込む(7000字以上)
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サクサク書き込め