ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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7話 ミサトのプレゼント

 丘の上で朝食を食べたオレ達は、先程まで見下ろしていた街に向かう。そこそこ距離があるからと言って雪が降ってたアウトバーン、日本でいう高速道路をミサトさんがかっ飛ばした時は正直生きた心地がしなかった。

 

「さっすが平日、ちゃんと空いてるわね~」

 

 パークシャイベ掲示で三時間無料。そう書かれた標識がある場所でミサトさんは車を止め、車のダッシュボードの収納から一枚の青い板を取り出して裏面のツマミをくるくる回し、ダッシュボードの上に置く。

 

 時間制限ありの路上駐車場と駐車時間をカウントするパークシャイベの文化は日本には無いが、ミサトさんはちゃんと適応してるみたいだ。

 

「さ、とりあえず適当にブラブラしましょうか。ゲヒルンから出る機会はあんまないって聞いてるし、きっと歩くだけで楽しいわよ」

 

 エンジンを止め、車から出る準備をするミサトさんとアスカ。オレは一足先に車外へ出て歩道に足をつけ、アスカに手を差し出す。

 

「アスカ」

「うん、ありがと」

 

 何度も何度も紳士気取りがしつこいって? オレも流石にくどいとは思うし恥ずかしいときもあるさ。

 でもアスカのこの笑顔見たら、また次もその次も、やめられない止まらないってなるんですよ。アスカはかっぱえびせん。

 

 それに、どんな形であれアスカがオレの手を必要としてくれることが嬉しいんだから仕方ない。始めのうちなんて「余計なお世話!」とか言われたし、飲み物を差し出した手をひっぱたかれたりしたからな。

 今となっては、それも良い思い出よ。

 

「タロちゃ~ん、私も~」

 

 アスカをおろしおわると、気づかぬうちにわざわざ助手席に座り直したであろうミサトさんから声をかけられる。まあ、悪い気はしないのだが。

 

「はいはい、いきますよ~。どっこいしょ」

「お~凄い! 力持ち!!」

「......まあ、ミサトのは介護みたいなもんだから良いか」

 

 無邪気に両手を伸ばしてくるミサトさん。その腕を掴み、後ろに引く力と自分の体重とを利用し、ふわりと浮き上がらせたすきに脇に手を差し込んで持ち上げる。

 

 前世では先祖様が武家だったこともあり、親父から色々なことを教えられた。それを世間には古武術と呼ばれまるで神秘的なもののように扱われていたが、古武術ほど科学的なものは無いだろう。身長も体重も上のミサトさんを短い間とはいえ苦労なく持ち上げられるのだから。

 

 アスカも自分にやったのとミサトさんにやったのとは違うということを感じてくれたのか、特に何も言われなかったからヨシとしよう。

 

「ここは色々なお店があるのよ。大体のものはここで揃うし食べられるの」

 

 三人並んで歩き、もちろんオレは紳士なので車道側、始めるとミサトさんがそんなことを言ってくる。確かにこの街は商店街なのか、見渡す限りお店が多い。それにクリスマスが近づいてくる事もあってか、レンガや石で出来た建物が綺麗にライトアップされている様は見ているだけで面白い。

 

「ふ~ん。何か良さげなのがあったら買おうかしら」

「あら、私が払うわよ? なんてったって今日のアスカは誕生日。欲しい物や食べたいものがあったら遠慮なく言ってちょうだいね」

「ミサトさんだけじゃなくて、オレにもね」

 

 アスカにそう伝えると、彼女は照れくさそうに笑った。めちゃんこ可愛いし、ミサトさんもそれには同意なのか口元を手で抑えて叫びたい衝動と戦っているようだ。

 けど不自然に胸をこちらに向けてボールペン型カメラでアスカの姿を抑えているあたり、さすがは第二東大卒といったところか。

 

「あっ、ここ入っても良い?」

 

 しばらく歩いていると、アスカが一つの店舗を指差す。見てわかるが、服屋さんだろう、それもかなり年季の入っている。

 これだけの商店街で続いていけるってことは、多分相当愛されている店舗だなこれ。さすが我らのアスカちゃんはお目が高い。

 

「ええ、もちろん。行きましょうか」

 

 ミサトさんを先頭にして店の中に入る。服屋さん独特の香りと暖かなオレンジ色の照明に照らされた店内は、居るだけでほっこりしてしまいそうだ。

 

「こんにちは、何か欲しい物があるのかい?」

「ええ、手袋が欲しいの。あたしの手に合うやつ」

 

 店内を歩き回っていると、お店の奥から腰の曲がったおばあさんが優しげな笑みを浮かべながらゆっくりと近づき、そんなことを聞いてきた。

 アスカはおばあさんの前に両手を突き出して答える。おばあさんはそれを見た後に、「ちょうど良いのがあるよ」と言って歩き始めたので、その後を追う。

 

「ほら、これなんかどうだい。暖かくて多少は伸びるから、これからぐんぐん可愛くなるお嬢ちゃんにぴったりだよ」

 

 おばあさんが手にしていたのは、落ち着いた赤色の毛糸で編まれた親指とそれ以外に分かれているミトン型の手袋。コイツ、できる......!

 アスカもそれを気に入ったのか、目を輝かせて見ていた。

 

「すみません、試着させても良いですか?」

「もちろんよ。ほらお嬢ちゃん、どうぞ」

 

 ミサトさんの確認をおばあさんは快く受け入れ、アスカに手袋を手渡す。アスカはそれを両手でしっかりと受け取り、すっと手を差し込む。

 

「暖かい......」

「うん、やっぱりぴったりだ。可愛いね」

「ですよね!? 私もそう思います! 可愛いわよアスカッ!!」

 

 素晴らしいセンスの持ち主です! このお店の雰囲気も、貴女の慧眼によって生み出されているのですね!! と鼻息荒く興奮しながらおばあさんに話しかけるミサトさん。

 あの人ついに本性表しちまったよ、おばあさんの受け入れ耐性高くてよかったな。

 

「タロー、どう?」

 

 両手を目の前で広げたアスカが、日本語でそう問いかけてくる。破壊力が高すぎてミサトさんと一緒に発狂しそうだったが、アスカと三年間一緒にいたオレの自制心を舐めないで欲しい。

 

「うん、すっごく可愛い。やっぱりアスカは赤色が似合ってる」

「良かった。でも、コレだとちょっと手がつなぎにくいわね」

 

 手袋をしたまま、横に並んでオレの手を取ってくるアスカ。予想外の行動に思わず飛び跳ねて抱きしめそうになったが、なんとかこらえて手を握り返すに留める。

 さすがアスカちゃん、オレの予想を常に超えてくるぅ!!

 

「見てくださいよおばあさん、あの二人。本当に可愛いでしょう!?」

「そうねえ。まるでお姫様と王子様だ」

「そうなんですよッ!姫と王子! おばあさん、言い値で買わせていただきます!!」

「......もう恥ずかしい......」

 

 暴走が止まらないミサトさんをみて、恥ずかしさのあまり右手で顔を覆うアスカ。

 でも繋いだ左手は離さない、そこが可愛いんだろお前ッ!!

 

「そうだ、もう一つ良いのがあるんだよ。ちょっと待っててね」

 

 おばあさんは奥に戻り、また赤色の毛糸で編まれたものを持って来てアスカに近づく。赤色のもの、それは耳あての付いたイアーワッチ帽。

 てっぺんに白いボンボンが付いた可愛らしい帽子を、ゆっくりとアスカの頭に被せた。

 

「「カワイスギルッ!!」」

「うんうん、本当に可愛いねえ」

 

 思わずミサトさんと一緒になって叫んでしまうほどに、アスカが可愛い。こんなんもう天使より天使してるでしょ、エンジェリック天使だよ。

 

「さ、ここは私が払うから、アスカとタロちゃんは待ってて。おばあさん、お支払いを」

「はい、こっちだよ」

 

 ミサトさんとおばあさんが、奥に引っ込む。支払ってるところを見せないのポイント高いですね。なんか「安すぎです!」とか聞こえてきたけど。

 

「......タローは、手袋とか買わないの?」

「え? ああ、オレはポッケに手を入れれば暖かいからそれで良いかなって」

「ふーん、じゃああたしがちゃんと温めないとね」

「っ......はは、ありがとう」

 

 いたずらっぽい笑みを浮かべるアスカに、ドキリとしてしまう。それがアスカにバレたのか、してやったりといった笑みに変わった頃、ミサトさんとおばあさんが会話しながら戻ってきた。

 

「あの、本当に良かったんですか?」

「物の価値は、値段じゃないのさ。お嬢さんもいつかわかるようになるよ」

「......はい、ありがとうございます。タロちゃん、アスカ。行きましょう」

 

 店を出て振り返る。おばあさんはまたいらっしゃいと手を振ってくれたので、お辞儀してから歩き始めた。

 

「ミサト、ありがと」

「ふふ、良いのよ。アスカによ~く似合ってるもの。あのお店はリピートしなくっちゃね」

 

 多分だけど、あのおばあさんは相当割り引いてくれたんだろうな。ミサトさんの目から布教せねばという強い意志を感じるし、ゲヒルン職員御用達の服屋さんになりそう。

 お店に並んでた服も質が良さそうだったし、この帽子も......ん?

 

「確かにこれは、アスカにピッタリだな」

 

 帽子の耳あて部分に、おそらく店名だろうか。質感の違う糸で小さく施された「ASK」という文字をみて、誰にも聞かれない声量で呟いた。




帽子は新劇の式波過去回想シーンで被ってたやつをイメージしてください

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