ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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人称が変わってからクオリティが下がった、という意見をいただきましたが、私の語彙力の無さがモロに出ているので自分でもそう思います。最近になって書き方も迷走していましたので。
ですが今になって変えるとちょっとややこしいところがありますし、あえて三人称にしようと思っていたのでこのまま続けます。全て書き終えた暁には全部一人称で時期によってバラけている書き方を統一したのも投稿する予定です。

最後に、この投稿からはいわゆる心の声を () で固定しようと思います。最近は特にここがどうしようと迷っていた部分なので。


25話 On your marks. Set.

「にしてもミサトのやつ、無茶言うわよね」

 

 宇宙より飛来する第10使徒サハクィエル。ミサトがそれをエヴァの手で受け止めると言ったことに、各機がセット位置についたところでアスカが言う。

 その声は他の誰にも聞かれないプライベート回線で、タローにだけ繋がっていた。

 

「仕方ないとはいえ、無茶だっていうのには同意するよ。なんか結構デカい球体だったし」

「弐号機が持ってくれればいいけど」

 

 愚痴を言った割には、アスカ本人は自分が受け止める気満々。弐号機次第だ、と口に出してしまうほどに。

 なんとなく彼女には予感がしていた。あの使徒を受け止めるのは自分なのだろうと。

 

(ミサトはエヴァ配置の根拠が女の勘って言ってたけど、あたしの女の勘は降ってきたのを受け止めるのは自分だって言ってるのよね)

 

 切り開かれた山々を繋ぐ、弐号機の背丈ほどもある人工の壁。

 それを背に腕を組んで仁王立ちする弐号機の中で、アスカは深呼吸する。

 ピカン、という音と共にこっそり視界の端に映し出したのは、自分とは真向かいの位置からスタートするタローの顔。目を閉じて集中する彼の顔を見てアスカは一度眉を落とし、今度は大きく上げた。

 

「......あーあ! これが使徒を受け止めるとかいうシチュエーションじゃなかったら、一度あれやってみたかったのに」

「あれ、って?」

「よく日本の恋愛ドラマとか漫画であるでしょ。物語の最初で、主人公とヒロインが出会う時の!」

「んん? ......あっ、あれね! 遅刻遅刻ゥ! ってやつ!」

「そっ! 面白そうじゃない?」

 

 アスカの言葉でタローが導き出したのは、遅刻する食パン少女とも言われる王道のシチュエーション。

 彼女は葛城家のリビングにあるテレビや暇つぶしに買った漫画で、そんな出会い方をする学生の男女たちを見てきたのだ。一昔前はよくありがちなシチュエーションだったが、昨今の異世界転生モノブームの中でアスカにはそれが珍しく見えた。

 

「でも、あれって普通に怪我しそうで怖いな。っていうかアスカだったら足が出てくるでしょ」

「そりゃあ急にぶつかりそうになったら避けるか、反射的に飛び蹴りでもかますわね。だからこそやってみたいのよ、タローとならちゃんとぶつかれそうだし」

「怪我させるわけにはいかないし、なにより咥えたパンがちぎれないように走るのって結構難しいと思うよ? いける?」

「あんたが咥えるのよ、パン」

「あ、オレがヒロインなのね」

 

「その発想は無かった......」と自分がヒロイン側であることに苦笑するタロー。

 それでも真面目にどうすれば実現可能かを考えている彼に、アスカは胸が熱くなるのを感じた。

 

「今ではちょっと珍しい展開だから、面白そうではあるな」

「でしょ? だいたい最近はどいつもこいつも異世界に行きたがってるのよ。自分の世界で幸せになれるよう努力しなさいよね」

「あはは......」

 

 眉間にシワを作りながら言うアスカ。

 彼女にとっての異世界転生モノとは、上手く行かない現実を全て捨て、特別な能力を得てやり直すという展開。

「現実から逃げているだけじゃない」と、よほど異世界転生モノが嫌いなのかため息までつくアスカに、タローは口をキュッと閉じた。

 

(オレなんてまさに異世界転生してる側の人間になるんだろうけど、トラックとかに轢かれた覚えは無いからセーフで......)

 

 貰ったギフトはドイツ語理解能力だけだから、と頭を左右に振ってから両手で頬を張って集中するタロー。

 相変わらず彼のシンクロ率は70前半代。リツコも仮設を立てて注視するその数値に若干肩を落としたタローは、気にしないようにとアスカに話を振る。

 

「運命的な出会いで激突、一目惚れ~ってのもあるのか気になるし」

「一目惚れは無いわね。あたしにとって」

「そう? アスカはしたことないの、そういうの」

「無いわよ。一目惚れなんて。あんたはどうなのよ」

「オレかあ」

 

 う~ん、と腕を組んで考えるタロー。

 彼が口を開くのを、アスカは心臓の音を大きくしながら待っていた。

 

「一目惚れ......は無いかな。出会ってすぐに、あっ、この人はいい人そうだな、っていうのは男女ともにあるけど。見ただけで好き、とかは無いかも」

「へ~。じゃあたしは? 名乗るよりも前に、可愛い、とかって口説いてきたの。忘れてないから」

 

 期待していた答えが得られず、若干不機嫌になるアスカ。

 タローにとって黒歴史に片足を突っ込んでいる自分とのファーストコンタクトの話を持ち出した。

 

「一目惚れじゃない。最初に会って可愛い子だなって思って、一緒に過ごして素敵な人だなって思って、今はずっと側に居たいって。知れば知るほど......みたいな」

「ン゛ッ」

 

 カウンターに悶絶するアスカ。

 言われた方もだが、言った方も最中から恥ずかしさが込み上げ、言葉は尻すぼみになっていた。

 

(なにコイツ、何こいつナニコイツなにコイツ!? 本ッ当どんだけあたしのこと狂わせれば気が済むワケ!? の割には全ッ然手ェ出して来ないし!)

 

「でもそういうとこが良いのよ! ああもうッ!!」

 

 タローとのプライベート回線を即座に切ったアスカは叫ぶ。

 ダンッ! とインテリアを拳で叩きつけたあとに自分の体を抱いてクネらせながら、キャー! と黄色い悲鳴を上げるその姿は人に見せられたものではない。

 だからこそ通信を完全に遮断したわけだが、タローはブーンという低い音しかしなくなったエントリープラグの中で、一人体育座りをしていた。

 

「......引かれたよ.......どうしよう壱型......」

 

 両目が横線になったタローは、自分の発言がキモかったからアスカが回線を切ったのだといじける。

 実際は正反対に嬉しさで悶えているところとは知らずに、ズーンと重たい空気を出しながら人差し指でインテリアの座席に丸を描き続ける。

 今のアスカの姿は人に見せられたものではないが、タローの姿もまた人に見せられたものではない。

 

『タローがあたしのこと好きなのは当然でしょ?』と自信満々に彼の好意を正面から受け止めるアスカが、実はそのたびに自分を好いてくれる嬉しさと愛しさが限界突破してミサトのようになっていることは弐号機しか知らない。

 同じように『アスカのためなら何でも出来る』とアスカ・ファーストなタローが、実は自然体な自分の言動一つ一つでアスカに嫌われていないか不安だ、といじけたミサトのようになっているのは壱型しか知らない。

 

「どう、四人とも。集中出来てる?」

 

 子は親に似るというが、タローとアスカの恋愛関係でのリアクションは今まさにオープン回線でエヴァパイロットに声をかけたミサトそっくり。

 助け舟だ、とその声にあやかりタローとアスカはシンジとレイよりも先に返事をした。

 

「あれ、アスカなんか顔赤くない? どったの」

「な、なんでもないわよ! ちょっと痒かったからこすっただけ!」

「え? そーお? つかタロちゃんもいつの間にそんなクマが」

「いや、オレもこすっただけです......」

「なにそれ。流行ってるわけ?」

 

 似てしまうほど一緒に過ごしたミサトだからこそ、二人の様子がいつもと少し違うことに気付く。

 適当に誤魔化した二人を不思議に思い追求したい気持ちは、作戦開始が近いため抑えた。

 

「一応、改めて作戦内容の復習を。使徒が降ってくる、走って落下地点まで行く、受け止める、手が空いた人が撃破。はい以上」

 

 四コマ漫画かと思うほど完結すぎる説明。ただ、それ以上にミサトたちのほうでどうにかしようが無い、というのをパイロットたちは理解しているため何も言わなかった。

 

「本作戦では目標のATフィールドによって正確な落下予測地点が掴めないうえ、二次的データも当てにならない。よって以降は、現場各自の判断を優先します。......作戦開始まではもう少しあるわ、各自集中を切らさないようにね」

 

 そこまで言ってミサトは通信を切る。

 彼女が居る発令所には、普段の戦闘時と変わらない人数の職員たちが居る。当然、部内警報Cによって非戦闘員とD級勤務者は強制的に退避させたのだが、ミサトは該当しない職員たちにも自己判断で退避するようにと命じていた。

 にも関わらず、発令所は人で溢れている。最前列で大型スクリーンを見ていたミサトは振り返り、マコトたちに声をかけた。

 

「もう一度言うけれど。皆まで危険な場所にとどまる必要はないわ、ここは私一人で大丈夫」

 

 ミサトが言うと、マコトとシゲルは目を見合わせた。

 

「いえ、これも仕事ですから」

「子どもたちばかり危ない目に合わせるわけには行きませんよ。それに」

 

 マコトは視線を右隣に向ける。そこに座るマヤは、真剣な表情でリツコと共にMAGIに膨大な量のデータを計算させ続けている。

 その指がキーボードを叩く音は、まるで川の流れのようにとめどないものだった。

 

「同僚があんなに頑張ってるところを横目に退避出来ませんって」

「そうですよ。タローくんが言っていた当然の結果を作るなら、わざわざ退避する必要もありませんしね」

「......そうね。ありがとう」

 

 それ以上の言葉は要らなかった。ここに残る全員が、タローのあの言葉を信じていることがミサトに伝わったから。

 一人、気合の入り方が尋常ではない女性オペレーターは特にあのセリフに勇気づけられていた。

 

「落下予測修正、いつでもいけます」

「上出来ね」

 

 思わずリツコも目を見開くほどの速度で作業を終えるマヤ。

 MAGIに様々な演算をさせ学習させることで、第10使徒サハクィエルの落下地点が予想とズレた場合即座に修正出来るよう対応させた彼女は「ふぅ」と一息つく。

 その姿に「たくましくなったわね」とリツコが小さくこぼしたところで、シゲルが観測所からのデータを受け取った。

 

「目標接近、距離およそ2万5000!」

「おいでなすったわね。エヴァ全機、スタート位置」

 

 ミサトの声を聞き、パイロットたちがエヴァをかがませ両手の指先を地面に設置させる。

 俗に言うクラウチングスタート、その最初の段階。

 

「マヤちゃんのお陰で、距離1万から少し先まではMAGIで誘導可能よ。ただ、その後の誤差修正は計算の都合上多少のタイムラグが生じる。その間の判断は、あなたたちに全て任せるわ。頑張ってね」

 

 ミサトからの激励に、パイロットたちはただ黙って頷く。

 最速で飛び出すことに集中しているのだ。言葉を発することすら惜しいと言わんばかりの返事に、ミサトはその邪魔をしないよう指示することに務めた。

 

「......セット」

 

 短距離走等に本気で取り組んでいたわけではないにしろ、クラウチングスタートの要領はミサトも知っている。

 静かに彼女が呟くと、エヴァ四機はゆっくりと腰を持ち上げた。

 

「目標、距離およそ2万!」

 

 いよいよ作戦開始の時間になった。

 青葉からの続報に、ミサトは胸にある十字架のペンダントを握りしめて幸運を祈った。

 

「作戦開始」

 

 バシュン! とアンビリカルケーブルがエヴァから切り離される音がスターターピストルの役割を果たし、四機のエヴァが大きく一歩を踏み出す。

 同時に、エヴァ各機のエントリープラグ内部では5分のタイムリミットがカウントされ始めた。




とっとと受け止めようと思っていたのに冒頭の二人の会話で文字数が稼げすぎたので、中途半端なところですがぶつ切りにします。
だいぶん前にアンケートをさせていただいた結果をもとに、1話は5000~6000字程度を目安に考えていますが、キリの良いところで終わりたいので結構前後しています。何卒。

物語の密度と1話ごとの文字数について

  • サクサク進む(3000~4000字程度)
  • 少し書き込む(5000~6000字)
  • ガッツリ書き込む(7000字以上)
  • サクサク書き込め
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