ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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女だけの昇進祝い *キャラ崩壊

『昇進、おめでとう!!』

 

 パンッ! と葛城家のリビングでいくつかの乾いた音。クラッカーを鳴らす音と僅かな煙が上がる。

 その先に居たのは『本日の主役』と書かれたタスキをかけるミサト。クラッカーから出た色紙と紙紐を頭に乗せながら、ニッコリと微笑んだ。

 

「ありがとう、みんな」

 

 ミサトの視線の先に居るのは、同居人のアスカ、彼女と同じエヴァパイロットのレイ、大学時代の同期であるリツコ、その部下であるマヤ。

 早い話がミサトと特に交友の深い女性陣であった。

 

「階級、何になったんだっけ?」

 

 包帯の巻かれた右手に持つ、コップに入った果汁100%のオレンジジュースを一口飲んでアスカが聞いた。

 

「一応、三佐よ。階級的には一つ上がった、っていう感じかしら」

「ふ~ん。立派じゃないの、その年齢で」

「そうかしら」

 

 三佐とは、諸外国の軍隊では少佐に当たる階級。

 軍隊ならば基本的には前の階級を何年間か経験し、その後に昇進するというのが普通。30代前半で三佐になるのが普通であることを考えれば、20代のうちに三佐に昇進したミサトはエリートコースを歩んでいるといえるだろう。

 現にアスカもそう思っての発言だったが、肝心のミサトはどことなく他人事だった。

 

「それで? 若くして葛城三佐になった訳だけれど。三佐に昇進したことに対する今後の抱負とかはないのかしら」

 

 からかうような目付きでリツコが言う。

 彼女は科学部門、言ってしまえばエヴァ開発責任者という立場であるため階級等は特に設けられていない。

 

「抱負、ねぇ。う~ん......」

 

 手に持っていたビール缶をテーブルの上に置き、腕を組んで唸るミサト。

 ミサトが考えている間、リツコたちは抱負を聞き逃さないようにと食事をする手を止める。

 やがて彼女は、唸るのをやめてまっすぐ前を見た。

 

「頑張る!」

 

 ドテーッ! とリツコとアスカが体勢を崩す。

 あれだけ考えておいてそれかよ、と顔に出ている二人に、ミサトは「まあまあ」と言って両手を向ける。

 

「冷静に考えてみなさいよ。私の仕事、役割は変わってないんだから。いつも通り頑張る、しか言えないワケ」

「にしたって他にもあるでしょーが! 頑張る、なんてその辺の子供でも言えるわよ!?」

「本当よ。せめて具体的に何を頑張る、とかくらいは欲しいものね」

「えー? じゃあ今後とも、アスカやレイ、タロちゃんやシンジくんたちパイロットが無事に帰ってこられるよう頑張る! になるけど」

 

 笑顔で言うミサト。アスカとリツコはそれはそれでどうなんだ、と首をひねってしまった。

 

「けど、三佐に昇進してそうそうにあの作戦。お疲れ様でした」

「おっ、ありがとマヤちゃん」

 

 グビグビと一缶を飲み干したミサトに対し、マヤが新しいビール缶を開けて手渡す。

 今日ばかりはアスカによって特別にアルコールの制限を解除されたミサト。悲しいかな、その理由が『タローが居ないなら貞操の危機が無いから』であるとは知らないのだが。

 そんなミサトはマヤから受け取った缶ビールを、また一口飲んだ。

 

「っぷはー! やっぱたまにはこう、良いお酒をチビチビ、じゃなくてガッツリいきたいわよネー!!」

「あまり、飲みすぎないようにしてくださいね。体にさわるといけませんから」

「もちろん。マヤちゃんも今日は無礼講なんだから、遠慮しないでね」

「はい」

 

 腰を浮かせ先ほどまで座っていた場所に戻るマヤ。

 その横では、レイがもぐもぐと無言で肉無しの肉じゃがを頬張っていた。

 

「あんた、ほんっといつもそればっか食べてるわよね。じゃがいもが好きなの?」

 

 出前を取ったピザを食べながら、アスカが聞いた。

 

「白露くんの、味がするから」

「ッ!」

 

 瞬間、アスカが手に持ったピザを置いて箸に持ち替え、掴む時間も惜しいと一口サイズになっていたじゃがいもに突き刺して自身の口へ放り込む。

 レイが反応することも出来ないほどの高速。ゆっくりとじゃがいもを噛み締めたアスカは、細い首をゴクンと鳴らして飲み込んだ。

 

「なんだ、レイが意味深な言い方するから何かと思えば。いつも通りのあいつが作った肉じゃがね」

「いつも通りが一番よ。心がぽかぽかするから」

「......わからなくもないけど。たまには違ったもの食べてみなさいよ、ほら」

 

 そう言うと、アスカは箸を置いて再び自分が一口食べたピザを手に取り、レイの口元に向かって差し出す。

 具材盛りだくさんのジャンキーなピザとは別に、肉が苦手なレイのために取ったトマトソースとチーズ、バジルだけのマルゲリータ。アスカを見たあと、それを見たレイは意を決したような口を開き、小さく齧った。

 チーズが僅かに伸びたそれを静かに咀嚼するレイ。飲み込んだのを見計らってアスカが声をかける。

 

「どう?」

「......アスカの味がする」

「ブフッ!? ちょっとあんた、なによそれ! からかうのも大概にしなさいよ!」

 

 白露くんの味がする、の次はアスカの味がすると言ったレイに、アスカは眉をVの字にして言う。

 対してレイは、静かに口元を緩ませるだけ。その様子にアスカは怒るに怒れなくなってしまった。

 

(チーズはいけるのね、少なくともマルゲリータは大丈夫と)

 

 やや強引に食べさせたが、断れないレイのことだから無理をしていたのではと考えていたアスカは安堵する。そして、レイが食べられるもののレパートリーが増えたことに、彼女に肉を食べさせるのが目標のアスカは一歩前進と心のメモに書き留めた。

 その光景をつまみに、大人たちは晩酌をする。

 

「イイわねぇ~青春って感じで。花が見えるわよ、花が」

「本当ですね。やっぱりアスカが来てから、レイちゃんも表情豊かになったというか。私もなんとなくあの娘の気持ちがわかるようになってきました」

「それはね、マヤ。綾波レイ検定の初級に合格したのよ」

 

 普段なら言わないであろうことを言うリツコ。彼女もだいぶん酔いが回っているが、滅多にお酒を飲まないマヤは疑問に思うことがなく。そういえば、と口にする。

 

「出前以外の料理は、アスカが作ってくれたんですか? あの肉じゃがとか、準備されてるお味噌汁とか」

「んーん。味噌汁はアスカだけど、肉なし肉じゃがはレイのためにってタロちゃんが作ってってくれたやつ。あと他のもね」

「肉を極力使わないように、全部レイのために作っていったのね。あの子もまだ手にダメージが残っているというのに」

 

 サハクィエルを受け止めたことで、一番ダメージのあった弐号機、そこに乗っていたアスカは両手と腕に炎症が現れている。特に左腕の前腕部に関しては、筋繊維の損傷が著しく見られ。早い話が筋肉痛のレベルマックス状態で満足に動かすこともできない。

 その他皮膚にも軟膏を塗り、その上から包帯を巻いているため痛々しい状態となっているが、アスカ本人は全く気にしていない様子。

 

 壱型とタローも弐号機とアスカよりはマシとはいえ、同じようにダメージを負っている。ただシンクロ率の関係で、タローの場合は筋繊維の炎症止まり。動かしにくいなぁ、という程度だった。

 レイとシンジに関しては、幸いにもパイロット自身へのダメージはそこまでではなく。アスカやタローのように包帯やらシップやらはせずに済んだ。

 

「綾波に変なもの食べさせないでくださいよ! って、釘を差されちゃったし」

「それは貴女に前科があるからよ」

「前科って、一体何を食べさせたんですか?」

「醤油味のカップ麺、レトルトカレーがけ」

「うわぁ......」

 

 なぜか自信満々に言うミサトに、その味を想像したマヤが顔を青くする。

 あれがレイに対してトラウマを植え付けているとは知らずに、ミサトは唇を尖らせた。

 

「いやほんと美味しいのよ? あの味はカレー味のカップ麺じゃあ出せないのよ!」

「でも、先輩が前科って言うほどなら......」

「具合が悪くなってお泊りすることになったわ。その節はどうも、葛城三佐?」

「うぐっ。い、いやそれはあれよ! 新しい味にレイの味覚がビックリしちゃっただけというか......」

「誰でもビックリすると思うんですが」

 

 同期と後輩に詰められ、ミサトはごまかすようにビールをあおる。

 ゴクゴクゴクと三回喉を鳴らしたあと、そういえばとレイに声をかける。

 

「レイ。こないだの作戦前に言ってたと思うけど、私の奢り。どこ行きたいとかある?」

「行きたい場所」

「そうね、どうせならレイに決めてもらったほうがいいわね。あたしもタローもあんたに合わせるし、碇も『タローくんが行くなら』って賛同するわよ」

 

 肉類がNGなレイに、他の三人が合わせる。ミサトの奢りだから何だっていい、という考えなら当然の提案だ。

 全ての決定権は自分にある、とレイは考える。彼女もまたみんなで楽しく食べられるならどこでもいい、というのが本音ではあったが。変に気を使わなくても良い場所で、食べたいものを考えた時。彼女にはあるものが浮かんだ。

 

「ラーメン」

「お?」

「ラーメン、ちゃんとしたやつを食べてみたい。それなら、チャーシュー抜きにすれば食べられる」

「ふ、くくっ。ちゃんとしたやつ、ね。わかった? ミサト。あんたのアレはゲテモノなのよ!」

「な、なんですってぇ!?」

 

 醤油味カップ麺のレトルトカレーがけ。大人たちの間で出ていたその話題はレイとアスカの耳には届いていなかったが、レイはミサトの顔を見てかつてのトラウマを克服しようと決心しラーメンと答えた。

 それも、ちゃんとしたやつという注文付き。暗にレトルトカレーをぶっかけた醤油味のカップ麺はちゃんとしたやつじゃない、と伝えたいような言い方に便乗し、同じく具合を悪くしたアスカが勝ち誇ったように宣言してみせた。

 

「わ、私の味を理解してくれる人はどこにも......」

「往生際が悪いわね。何にしても良いところを一つは見つけてくれるタローとイェーナが無理な時点で、そんな人を探すのは砂漠から折れたシャー芯を見つけようとしてるみたいなもんよ」

「い、いいもん! 理解されなくたって、あの味の良さは私だけが知ってれば! じゃあ今度パイロットみんなとラーメン食べに行くわよ、レイ!」

 

 ふてくされるミサトにレイは黙って頷き、ようやくラーメンに対しての苦手意識を切り替えるチャンスがやってきたと安堵する。

 そこで話題は、普段なら確実にこの場に居たであろう葛城家の一員に移った。

 

「にしてもタロー、大丈夫かしら」

「あら、心配なの? 別に女の子が居るってわけでもないのに」

「そりゃ心配になるわよ! やけにタローを見る視線が熱い碇と、何考えてんだかわかんないその父親! あの親子にうちのタローがなんかされたら、悪いけどドイツに連れ帰るわよ」

「シンジくんも碇司令も、そんなに悪い人じゃないわよ。タローくんが了承したんだから、それはアスカもわかるでしょう?」

 

 枝豆を手にしたリツコが言う。タローが断らずついて行ったのだから、アスカが思うほど悪い親子ではないぞ、と。

「だとしてもその前に!」とアスカが声を上げる。

 

「ミサト! あんた昇進って実はちょっと前だったんでしょ?」

「そーよー。まあ多分、あの作戦前に碇司令と冬月副司令が南極に行くから、その間に私を責任者にするための役割付けでもあったんでしょうね」

「もっと先に言いなさいよ! ってゆーか、なんでわざわざタローが居ない日に昇進祝いをやるわけ?」

「ふふ、それはね」

 

 カン! と音を立てて残りの少ないビール缶を勢い良く机に叩きつけるミサト。

 酔いで顔が赤くなっている彼女は、じろりじろりとアスカ、レイ、リツコ、マヤと時計回りに顔を見て言った。

 

「女同士でしか出来ない話もあるでしょう? 例えばそう......恋バナとか!!」

「......は? そんだけの理由?」

「なんで呆れるのよアスカぁ。大事なことよ、これはとっても。なんせ、本人が居ると話しづらいこともあるでしょうし、ねぇ」

 

 チラッ、とアスカから視線を移すミサト。そこに居たのはマヤ。

 マヤは両手を膝の上に置き、うつむいた。

 

「......」

「いやちょっと待ちなさいよ、ハ? なんであんたが顔赤くしてるわけ?」

「はいとゆーワケでぇ! チキチキ! 第一回ネルフ本部の男事情ゥーッ!!」

「品性の欠片もないネーミングね」

「男事情......」

 

 本格的に酔っ払ってきたミサトに対し、あまりにもドン引きして少し酔いが覚めたリツコがツッコむ。

 レイが一体なにが始まるのか、とやや困惑しているが、お構いなしにミサトが進めた。

 

「まずは言い出しっぺの私からー! 好きなタイプはもちろん我らのタロちゃん! 家事全般出来て甘やかしてくれる、でも鞭もあるそのギャップ......三度の飯よりタロちゃんとアスカ、略してタロアス! この葛城ミサト、二人を一生養って行く所存よ!」

「貴女が言うとちょっと洒落にならないわね」

「ほんとよ。つかくっつくな酒臭い! 嗅ぐなバカミサト!」

「んなこと言わず嗅がせなさいよ嬢ちゃん! あんたいい匂いねぇほんとお、この首筋をしゃぶらせて!」

「完ッ全にタガが外れてる......やっぱアルコール解禁すんじゃなかった......」

 

 右側から体を密着させ、首筋で何度も鼻を鳴らすミサトに、抜け出させた右手で頭を抑えるアスカ。

 どれだけ酔っ払って本能のまま動いていても、アスカの体に負担にはならないようにするミサトだからこそ、彼女は突っぱねるより諦めを選んだ。

 

「そんでぇ~? アスカは結局どうなのよ。乗り換えるんだったらありがたく頂くわよ」

「寝言は寝て言いなさいよ。タローに決まってんじゃない」

「ぇえ? でもさあ、アスカってなんだかんだ言ってタロちゃんにちゃんと、好きって言ってなくない?」

「う」

 

 痛いところを突かれたアスカは、気まずそうに視線を逸らして口を一文字に閉じる。

 彼女自身、言葉にして伝えたことはないという心当たりがあったのだ。

 

「イチャコラするし寝てるほっぺにチューするくせに、どうして好きとは言えないわけ?」

「な、み、見てたの!?」

「リビングでウトウトしてるタロちゃんの」

「アアーッ! 黙って! それ以上言うんじゃないッ!!」

 

 今の手で抑えるのは大変だと、ミサトの顔を自らの胸に押し付けて黙らせるアスカ。

 チャンスと言わんばかりに深呼吸を始めるミサトだが、今のアスカはそれに気づく冷静さが無かった。

 

「意外ね。てっきり毎日好き好き言ってるものかと」

「どーいう意味よそれ! そ、そんな、好き、とか......簡単に言えるものじゃ、ないでしょ......」

「......何。この娘もウブなの。なんなの一体」

 

 あれだけ抱きついたりしてるくせに、と言いそうになったリツコはビールといっしょに飲み込んだ。

 

「でもねアスカ、ちゃんと言葉にしないと伝わらないこともあるのよ? そういう意味ではタロちゃんにも言えるけれどね。あの子も恥ずかしがってるとこあるし」

「わかってるわよ......けど、キスはこっちから頑張ってしたんだし、それくらい向こうからしてほしい」

「ん~そうね。その気持ちはわかるわよ。ちなみにどんくらい好きなの? 一目惚れ?」

「なんかデジャヴね......」

 

 サハクィエルを受け止める、という作戦前にタローとそんな話しをしていたアスカは、今一度考える。

 本当に一目惚れではなかったのか。そうだとしたら、この気持ちはいつからなのか、と。

 アスカには自分でも驚くほど納得の答えが、すっと浮かんだ。

 

「やっぱり、一目惚れじゃない。8歳の誕生日の時、ミサトを探しに行こうとしたあたしを止めてくれた時からずっと......」

「ずっとぉ?」

 

 およそ人間の限界を超えて眉と目を大きく上げたスケベ顔のミサトが、アスカの顔を胸から見上げる。

 アスカの大絶叫が響き、ミサトは放り投げられた。

 

「いっ、たたぁ......あ~こりゃあちょ~っちやりすぎちゃったかしら」

 

 自室まで走っていったアスカの後ろ姿を見ながら、ミサトは四つん這いで歩きテーブルの上の缶ビールを手にし、一口飲んだ。

 

「アスカは」

「ん? 大丈夫よレイ、落ち着いたら戻ってくるから。そんなあなたはどうなのよ」

 

 アスカを心配してミサトに声をかけたレイ。逆にミサトから言われ、ピザに夢中になって話の流れが頭に入っていなかった彼女は、どうとは何がだと首を傾げる。

 そんな様子のレイにリツコが補足した。

 

「レイ、貴女には好きな人がいる?」

「好きな、人」

 

 ゆっくり視線を落とし、余計な情報を遮断して考えるレイ。

 奇しくも彼女の視界には肉無し肉じゃが写っていた。

 

「わからない、です。でも、ここに居るみんなと白露くんは、他の人とは違う。もっと、一緒に居られれば」

「ぁ嗚呼、レイ。ごめんなさい、貴女が可愛すぎるから少し席を外すわね」

「珍しくリッちゃんが自分に素直ね。つか逃げる前にあんたのタイプも言っときなさいよー!」

「一番マシだから白露くんよ。ミサト、ちょっと貴女の部屋を借りるわね」

 

 スッと立ち上がり、足音を立てずにミサトの自室に向かうリツコ。引き戸を後手に閉めたあと、そこからは声に鳴らない叫び声が聞こえた。

 レイたちがよく耳をすませると、断片的にだがその内容が聞こえた。

 

~レイ! 貴女は立派......とても......サイコウ......かわ~......!!

「赤木博士、大丈夫かしら」

「大丈夫よ。大人にはね、子供に見られたくない一面ってのもあるの。だからああやって声に出して発散しなきゃいけないのね」

「まるで、アスカと白露くんと一緒に居る時の葛城三佐のようになってしまったわ」

「フッ、それでいいのよレイ。幸せってことだから」

 

 ドヤ顔で言うミサト。彼女は視界の端でそーっと抜け出そうとしている二十代前半を捉えると、肩に手を置いた。

 

「ヒッ!?」

「マヤちゃあん? 私たちのを聞くだけ聞いといて、それは無いんじゃないかしら?」

「い、いや、でも......あの......」

「年齢なんてただの数字よ、文句は言わないし言わせないわ。自分に正直になりなさい! 若い男が好きなんだと!」

「その言い方はヤメテください!?」

 

 マヤの悲痛な叫びとリツコの口を腕で塞いだ叫び声、そしてミサトの「ワーッハッハッハ! ハーレムじゃあ!!」という大魔王のような笑い声を聞きながら、レイは空になった自分のコップを手にする。

 オレンジジュースを注ぎ、反射する自分の顔を見て呟いた。

 

「......これが、楽しいってことなのね」

 

 私史上一番笑えてるわ、と笑顔の自分を褒めながら、オレンジジュースをぐいっと飲んだ。

 

 

 


 

 

 

「どうだシンジ、美味いか」

「うん、美味しいよ父さん。白露くんはどう?」

「うまい。今日はお誘いいただきありがとうございます、碇司令。シンジくんも」

「礼には及ばんよ」

 

 第三新東京市のとあるレストラン。完全予約制のそこで、碇親子とタローはディナーを食べている。

 のだが、タローは表面こそ取り繕いつつも。限界が近かった。

 

(くっそマダオのやつ、頼むからシンジくんとコミュニケーション取るたびに『どや? ちゃんと喋れてるやろ?』みたいな顔でこっち見るのやめろよ! おもろすぎて味がわからねぇ!!)

 

 面白さから震える手をなんとか動かし、スープを口に運ぶタロー。その前でゲンドウが満足そうな顔をして言った。

 

「ここは私の行きつけでな。シンジも気に入るだろうと」

「そうだね、この味をどうにか再現できないかな」

「無理に似せる必要はない。お前にはお前の料理がある」

「父さん......!」

 

(その親子漫才をやめろっつってんだよ! 助けてくれアスカ、ミサトさぁん!!)

 

 雰囲気を崩すわけにはいかないと心の中に留めたタローの叫びは、誰にも届くことなく咳払いになって消えていった。

物語の密度と1話ごとの文字数について

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