ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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主人公の年齢をミサトさんに引っ張られて間違えてたのに気付いたので修正することをここで発表させていただきます。前世の主人公の年齢は23歳です。申し訳ありません


8話 アスカの誕生日

 服屋を出たオレ達三人は、食べ歩きをしたり、特に意味もなく雑貨屋さんに入ったり、街をひたすら練り歩いた。

 外れにあるベンチで並んで休憩している時、時計が目に入る。時刻は十二時ちょっと前。ここに付いたのが九時すぎだったから、そろそろ路上駐車場の無料時間が終わる頃だな。

 

「はー、もう食べられないわ」

「そうねえ、私もちょっち食べすぎたかも」

 

 アスカとミサトさんが、二人揃ってお腹を擦りながら満足げな顔をしている。イカンイカン、良からぬ想像が頭をよぎってしまった。コレも悲しい男の性かな。

 

 しかし紳士なので、途中にしれっとアスカへのプレゼントを買うことには成功している。アスカどころかミサトさんにもバレないようにこっそりと抜け出して手に入れた一品だ。

 ただ正直なところ、オレのプレゼントが無駄になるのではないか疑惑はある。ちょっと古臭いし、もっと簡単なのを女の子は沢山持ってるだろうから。

 

「さて、アスカはこの後どっか行きたいとこある?」

「ん~特に無いわね、今日は十分楽しんだし。タローが行きたいところあるなら付き合うけど」

「あっ、おオレ? 特にないよ、うん。大丈夫」

 

 考え事をしてたせいで、いきなり話を振られて焦ってしまった。アスカは鋭いから、何かあると感づかれてなければ良いけど。

 

「そ、じゃあ帰りましょ」

「おっけー。車持ってくるから、二人はここで待ってて」

 

 ミサトさんの言葉に、二人で返事をする。

 

「あっ、鍵落としましたよ」

「ごめんごめん、ありがとね」

 

 オレの横を通り抜けようとしたミサトさんが、ポケットから車の鍵を落としたため呼び止めて手渡す。ミサトさんはそれを受け取ると、体をかがめてオレの耳元に口を近づけて囁いた。

 

「ちょっち遅くなっちゃうかもしれないから、上手くやるのよ」

「ッ!?」

「じゃ、行ってくるわね~」

 

 笑顔でひらひらと手を降りながら、車を取りに行くミサトさん。あの人、気付いてやがったか......。

 さてどうしたものか。ここで上手くやれるかどうかで、男を試されてる感じがするな。プレッシャーが凄い。

 

「どうしたのよ」

「え、何でも無いよ! なんでも無い、あはは......」

「......変なの」

 

 唸りながら頭の中でシミュレーションをしていると、アスカがひょこっと横から顔を覗いてくる。それに驚いてのけぞると、アスカは心なしか不貞腐れたような顔になる。

 そんな顔をさせたいわけじゃないんだ、男を見せろよオレ。

 

「あ、あのさアスカ」

 

 心は決心をつけても、体はまだビビっているようだ。声が裏返ってしまい、その恥ずかしさともう一つの恥ずかしさが合わさってアスカの顔をまともに見れない。

 

「なんか変よ、さっきから。風邪でも引いたの?」

「うわっ!」

 

 左の手袋を外したアスカが、オレのおでこに手を当てようと近づいてくる。思わず叫びながら一歩引いてしまい、アスカはその場に固まってこちらを凝視している。

 こちらを見つめるアスカの青い瞳が、徐々に揺れていくのがわかった。マズイ、今の反応は悪手過ぎた。急いで誤解を解かねば。

 

 そんな思いでアスカに手を伸ばすが、彼女は勢いよく後ろに振り返り顔を隠してしまった。両手を胸の前でギュッと握っているアスカの後ろ姿が震えるのに、気づかない訳がない。彼女を泣かせてしまったのだ。

 

「き、今日はごめんなさい。あたし、ちょっと浮かれてたかも」

「え......」

 

 言葉が詰まる。どう答えれば良いのかわからない。謝ることなんて無いと言えば良いのか、でもアスカを泣かせて謝らせてるのはオレなんだ。そんなこと言う資格は無い。

 

「タロー、朝からずっと、難しい顔してたじゃない。その、困らせようってつもりはなかったんだけどね」

 

 迷っているオレの気持ちがアスカに伝わるわけはなく、彼女は続けていく。

 

 情けねえなあ。実質三十代なのに、女の子泣かせるだけじゃなくて自分の気持ちも伝えられないとは。

 

 自分の震える手を見ながら、自分に対して嫌気がさしてくる。怖いんだ、アスカに拒絶されるのが。

 可哀想な少女、惣流・アスカ・ラングレーを救うという建前で接していたが、本当は違う。ただ単に、アスカが好きなんだ。

 溢れ出しそうな気持ちをアスカに拒絶されたくないから、アスカの手を払い除けてしまった。

 頭は三十代でも、精神は肉体に準じた八歳児ってか。

 

「......遅いわね。あたし、ミサト探してくる」

 

 再び雪が振り始め、アスカはミサトさんを探すと行って彼女が通った道。オレの横を走り抜けようとした。

 

「アスカ」

 

 それを腕を掴んで止める。良かった、体は動く。ここでアスカを行かせてしまえば、きっとオレ達は元には戻れない。戻れたとしても、いつになるかわからない。

 

「何よ、どうしたのよ。あたし、ミサト探しに行かなきゃ」

「行かないで欲しい。ミサトさんが来るまでの間だけでも良いから、オレの話を聞いて欲しい」

 

 ちゃんと声も出せる。精神がガキに戻ってても、口に出さなきゃ伝わらないことがあるって理解出来てる。

 

 覚悟を決めて語り始めようとした時、アスカの帽子から赤色の何かがつるりと滑り落ち、それと同時に彼女のツーサイドアップの左側がだらんと垂れた。

 

「あっ、切れちゃった......」

 

 アスカが拾い上げたそれは、赤色の玉が付いたヘアゴム。それをポケットに入れた彼女は、申し訳無さそうな顔をしてこちらを見てくる。その目はまるで、出会ったばかりのときのように。期待と不安が入り混じっていた。

 

 アスカも同じなんだ。オレが彼女に拒絶されるのを恐れるように、彼女もオレに拒絶されたことを恐れて立ち去ろうとしていた。でもそれと同時に、受け入れてくれるかも知れないという淡い期待も抱いている。

 

 だからオレは、その期待に答えなければいけない。そして、オレがアスカを拒絶することはないと分からせてやる必要がありますねえコレ。オレやっちゃうよ!

 

「っ......タロー?」

 

 ポケットからアスカに渡す予定だったあるものを取り出したオレは、アスカの頭に手を伸ばして帽子を取る。アスカに渡そうとしていたものは薄い箱に入っていたが、それをなるべく丁寧に開ける。

 

「朝からしかめっ面してたならごめん。アスカはいつも側に居るものだと思ってたから、居なくて取り乱してた」

「謝るのはあたしの方よ。何も言わずに出て行ってごめん」

 

 目を伏せながら今にも消え入りそうな声のアスカ。謝らせたいわけじゃないけど、アスカは頑固だから引かないだろうな。

 

「良いんだ。前にも言ったけど、アスカを見つけることとアスカを証明することがオレの役割だから」

「そんなこと言ってたわね。嬉しかったわよ」

 

 箱の中から取り出したものを使うために、アスカから取った帽子を彼女に手渡して両手を自由にする。アスカの髪に触れる。

 おほ、ツヤッツヤでスベッスベでござる!

 

「もしそれがただの建前で、本当はアスカの側にいたいだけだとしたらどうする?」

「え?......う~ん、どうかしら」

 

 困った顔をしたアスカの髪の毛を取り分けて、素早く箱の中から出したもの。赤に黒の差し色が入ったリボンを結ぶ。

 赤ばっかだけど、アスカには赤が似合うから。世界Aではインターフェイスヘッドセットずっとつけてんなーと思ってたから、そのイメージでひらひらするタイプじゃなくて短くキッチリまとまるタイプ。

 

「多分、嬉しいかも」

「嬉しい?」

「うん。理由も無く側にいたいってタローが思ってくれてるなら、あたしはそれだけで嬉しい」

「そっか......出来たよ、アスカ」

 

 アスカの答えに、思わず笑みがこぼれてしまう。いや、ニヤけてしまう。

 それを隠すために、わざとらしくリボンをキュッと結んでアスカの意識をそらす。オレの結んだリボンを撫でたアスカに、同じデザインのものを見せる。

 

 それを見たアスカは、ツーサイドアップの右側。元々つけていたヘアゴムを取り外してこう言った。

 

「こっちも結んでくれる?」

「もちろん。でも、良いの?」

 

 解いたヘアゴムは、アスカが出会った頃からずっとつけていたもの。きっと、アスカにとって何かしら思い出があるはずだ。でなければ、女の子がずっと同じものを身につけるわけない。

 

 そんなオレの思いを察したのか、彼女はにっこりと笑う。

 

「あたしの支えは、もう一つじゃないから。それに、普段身につけるものをくれるってことは、そういうことでしょ?」

「そうだよ」

 

 アスカの問にノータイムで返事する。脊髄反射で答えてしまったが、この嬉しそうな笑みを見れたのだから間違った答えでは無いだろう。そう考えて反対側も同じように結ぶ。

 

「はい、どうぞ」

「ありがと。うん、良い感じ」

 

 満足げな顔で髪を揺らすアスカ。ミサトさん、気遣って二人きりにしてくれたのはありがたいけど、貴女の盗撮がないと今この瞬間を映像に収められないのが辛いです。

 そう考えていると、車の走る音が聞こえる。黒のボックスカー、ミサトさんだ。

 

「......」

「あれ、気に入らなかった?」

 

 急いだように帽子を被ったアスカ。ミサトさんに見られたくないのかもしれないと思いそう聞くと、彼女はフルフルと頭を横に振った。

 

「今日これを見れるのは、タローだけだから」

「は? 可愛いかよ」

 

 はは、嬉しいな。

 

 ......ヤベ、脳内の言葉と口に出す言葉が逆になっちまった。

 でもずっと可愛い可愛い言い続けて来たのに、まだ可愛いと言われることに慣れてないのか赤くなるアスカは相変わらず可愛い。

 オレの中で絶対的にアスカは赤色というイメージ強いのは、彼女がすぐ赤くなるからかもしれんな。

 

「ごめんごめん、ちょっち迷っちゃって。待った?」

「全然よ」

「大丈夫です」

 

 助手席の窓を開けて身を乗り出しながら聞いてくるミサトさんにそう返しながら、後部座席の扉を開いてアスカを先に乗せた後に、雪をはらってオレも乗り込む。

 

「ん、ん」

 

 わざとらしく咳払いをしたミサトさんがルームミラー越しにこちらを見ていることに気がついたので、ウインクで返す。

 

「ナ・イ・ス」

 

 ミサトさんはオレのウインクに口パクでそう答え、口角を上げた。

 

「二人共、発進準備よ~。シートベルトは?」

「しました」

「したわ」

「うし、では目標ゲヒルンドイツ支部、はっし~ん!」

 

 愉快な発進コールとともに、オレ達はゲヒルンドイツ支部へと出発する。

 車が動き出してから少しして、アスカがオレの上着のポケットに手を突っ込んできた。そこに入っているのは、アスカに渡したリボンの箱。アスカはそれを引き抜くと、箱を開く。

 

「これ、貰っとくから」

 

 朝やったように、小声で早口のドイツ語で言うアスカ。彼女は箱の中にあったメッセージカードの横に笑顔を作っていた。

 

「誕生日おめでとう、アスカ」

 

 大事そうにメッセージカードを仕舞うアスカに伝える。レディへの誕生日プレゼントにメッセージカードは必須だろう?

 

 まあ初めてアスカに誕生日プレゼントする時にイェーナさんから教えてもらった入れ知恵だけど、カッコつけるためにそれは内緒だ。

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