ただひたすらアスカを愛してみた   作:たっちゃん☆

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短くなったので、ついでに女性たちの日常会話とオリキャラの初出し情報を。


35話 3号機 +イェーナ・レーマンという人物

「聞いたか碇、米国第二支部の話は」

 

 ネルフ本部の薄暗い司令室で、冬月がゲンドウに言った。

 

「ああ。詳細な情報は不明だが、エヴァ4号機及び関連施設の一部消滅と聞いている」

「老人たちの失敗か?」

「その可能性が高い。強引な稼働時間延長実験が原因だろう」

 

 冬月の質問に顔色一つ変えずに淡々と答えるゲンドウ。

 つい先日、ネルフ本部に緊急の電報が入った。内容は米国第二支部の半壊及び保有するエヴァ4号機の消滅。

 表向きには実験中の事故とされているが。ゲンドウはある伝手から、エヴァ4号機の稼働時間を延長するために半端なモノを使った、という情報を仕入れていた。

 

「焦っているようだな。エヴァが消滅するリスクを取ってでも先を急いだとは」

「ドイツ支部があらかじめ用意されていた建造予算を全て壱型の改修に費やした。ここから先に協力させるのは本格的に難しいと考えたんだろう」

「まさか、レーマン博士の本部異動はそれが理由か?」

「......いや、レーマン博士に関しては何もしていない。彼女とそれに続く職員たちの独断だ」

 

 ドイツ支部職員からの本部出向願い、その鬼気迫る様子を思い出し僅かに身震いするゲンドウ。

 彼の言う通り、イェーナたちがネルフ本部にやって来たのはゲンドウの要請ではなく彼女たちが決めたこと。

 使徒に取り込まれたエヴァンゲリオン:プライマルの信号途絶えたことで、ネルフ本部のMAGIから救助要請があったのだが。そのことはイェーナしか知り得ていない。

 

「だがレーマン博士の居ないドイツ支部を、老人たちが野放しにすると?」

「あそこに手を出そうものなら、奴らの切り札であり新世界の神になるエヴァンゲリオン:プライマルとそのパイロット、さらには世界最高の頭脳までをも敵に回す。いくらゼーレと言えど五体満足では居られんよ」

「エヴァの消滅も厭わなくなっている。奴らをいつまでも欺けるか」

「これまでは博士の発見した真聖典通りに進んでいるが、老人たちが裏死海文書を完璧になぞるつもりなら我々も先を急ぐだけだ」

 

 ゲンドウの言葉に冬月も同意し、頷く。それとは別に、冬月はある書類を取り出した。

 

「話は変わるが、米国第二支部が3号機をこちらに押し付けようとしているんだろう?」

 

 バサリ、とゲンドウの前に置いた書類。4号機が消滅した今、満身創痍となった米国第二支部に残されたエヴァ3号機に関連する文書だ。

 その書類には既にゲンドウも目を通しており、彼は端的に答えた。

 

「3号機の受け入れは避けられない」

「やはりか......壱型と同じように、所有権は米国の第二支部から第一支部へと移して保持し続けるつもりらしいが」

「目的がわからない以上、下手に拒絶するのはかえって危険だ」

「私もそれには同意する。ただ、プライドの高いあの国だ。4号機の消滅で被った汚名をなんとしてでも返上しようと躍起になっている。そうだろう?」

 

 複数ある書類の中から、一枚の書類を持ち上げた冬月が言う。

 彼の手にある書類には『エヴァンゲリオン3号機の起動実験』と書かれている。

 

「ああ。自分たちの建造したエヴァには問題がない、そう示したいのだろう」

「そのためだけに3号機をよこしてくるとは、よほど切羽詰まっているようだ。当然、起動実験の後は実質的な凍結だろう? それ以上米国支部に手を貸してやる義理はないぞ」

「そのつもりだ。もともと3号機も4号機も米国が建造権を主張し、強引に進めたもの。我々にとってはむしろ、稼働しないほうが好都合だ」

「......その様子だと、何か考えがあるとみた」

 

 手袋越しの手に隠された口元を僅かに動かしたゲンドウ。彼と長い付き合いの冬月は、すぐにゲンドウにはアイデアがあることを見抜いた。

 

「パイロットは米国第一支部から指名されている。フォース・チルドレンの選出を待つのではなく、ネルフ本部にて優秀な成績を収めたパイロットをと」

「万全の状態で起動実験を行いたい訳か。そうなると、撃破数のプライム・チルドレンかテスト数値のセカンド・チルドレンのどちらかになるが......およそ、前者をご所望だろうな」

「米国は過程など気にしない、あの国に必要なのは結果だけだ。よって、白露をテストパイロットに選出した」

 

 冬月の予想通り、ゲンドウはタローのことをエヴァ3号機のテストパイロットに決めていた。

 本来ならばエヴァパイロットはマルドゥック機関によって候補者の中から選出される。実際にファースト、セカンド、サードの三名はマルドゥック機関によって選ばれたが、そもそもマルドゥック機関とはただのハリボテ。その実態はゲンドウ自身であると言っても良い。

 しかし、プライム・チルドレンの選出は全くの別。マルドゥック機関ではなく、ゲンドウの言う真聖典にその名前を記された予言の子である。

 

「上も白露の選出に文句は無い。計画のために使徒殲滅が必要な以上、戦力は出来る限り保持したいだろうからな」

「エヴァ壱型の次世代化改修か。しばらくはレーマン博士主導のもとドイツ支部のメンバーによって改修を受けるところ、3号機を代替機に使うわけだな」

「そうだ。動くかどうかは別だがな」

「フッ、相変わらずいい性格をしておる。3号機はまだ一度も起動していないと聞いているが......そんなものに白露を乗せれば彼女が。壱型が暴れるのではないか?」

「も......問題、ない」

 

 思わず言葉を詰まらせてしまったゲンドウに、冬月は顔をそむけて吹き出すのを我慢する。

 彼らは既に壱型、初号機、そして弐号機の中に眠る魂が目覚めていると考えているが。その中でも一際強烈かつゲンドウへの当たりが強いのが壱型の中にある魂。

 直接名前を出さずともこの有様ならば、いくら冬月といえどイジらずに居られない。

 

「だが警戒しておく必要はあるな。米国は3号機の手柄をどうしても自分たちのものにしたいらしい。起動実験に関与する職員は全て米国の第一、第二支部の職員で固める予定のようだ」

「言わなくとも彼女たちから名乗り出るだろうが、念のため赤木博士と葛城三佐を同行させる。レーマン博士に関しては、米国支部の連中から先手を打たれた」

「自分たちの宇宙産業が発展したのは、どこの国のお陰だと思っているんだろうな」

 

 ドイツ人であること、そして世界最高と評される頭脳の持ち主であることが災いし、イェーナは米国支部側から名指しでNGが出されてしまった。

 理由としては、最新鋭機である3号機の情報を必要以上に漏らすことはしたくない。というもの。

 活動時間等の問題はあれど、エヴァは既存の兵器とは一線を画す存在。故に軍事転用は条約で禁止されているが、自らを棚に上げて数十年前のことをネチネチと掘り返しては都合の良いように解釈する米国を、右側にいるリツコの影響で冬月も嫌悪感を抱くようになっていた。

 滅多に見せない目付きのまま、冬月は机の上で散らばる資料をまとめた。

 

「このことはまだ誰にも話していないのか?」

「ああ。近く、レイの主催する食事会がある。白露にはそこで私から伝えるつもりだ」

「赤木くんと葛城くんには私が伝えよう。食事会、私は都合が悪くて参加できないが......なにやら最近では、赤木くんとレーマン博士と共に食堂に居るのを見るな」

「......そうか」

「新聖典の通りに進めるなら、彼女は駒ではなく一人の人間として存在するべきだ。そうだろう?」

「レイのバックアップは無い、あるのはオリジナル。全てが終わったあとにユイの帰ってくる器のみだ」

 

 冬月が突き刺すような視線をゲンドウに向けるも、彼は眉一つ動かさず答える。

 納得した答えを得られた冬月は、まとめた資料を手に踵を返した。

 

「プライム・チルドレンとセカンド・チルドレンの遺伝子情報も加えれば、彼女たちの器も完成に近づく。それが気に入るかはあの二人次第だがな」

「その件に関しては最善を尽くさねければならない。気に入らなかった場合、何をしでかすかわからないからな」

「いずれにせよ、その時が来ればまず何よりも我が子との再会を喜ぶ結果になるだろう」

 

 それだけ言い残し、冬月は司令室を出ていく。

 広い部屋に一人残されたゲンドウは、いつものゲンドウポーズのまま呟いた。

 

「......予算を、回さなければな」

 

 プライム母とセカンド母、二人を恐れるゲンドウは予算を引っ張り出す手段に頭を悩ませた。

 

 

 


 

 

 

 一方その頃、食堂では。ミサト、リツコ、マヤ、そしてイェーナの四人が昼食を取っていた。

 おにぎりを手にしたマヤが、サラダを食べているイェーナに言う。

 

「レーマン博士って、本当にお綺麗ですよね。所作が洗練されているというか......」

 

 ただ食事をしているだけでも画になる女、イェーナ。

 彼女を前に、マヤは思わずそんなことを口走る。慌てて口元を抑えながら「ご、ごめんなさい」とごまかすも、イェーナはサラダを飲み込んだあとに目を細めながら言った。

 

「ありがとう。マヤの様な女性にそう言われると、とても自信になるわ」

「い、いえ......」

 

 自分の容姿についてはさんざん称賛され慣れているイェーナ。その言葉にマヤは恥ずかしさから目を伏せながらおにぎりを頬張る。

 二人のことを見ていたミサトとリツコは、顔を見合わせた。

 

「どうしてタローくんとアスカが皆から好かれているのか、なんとなくわかったわ」

「ドイツ支部の女性職員からの人気も凄かったわよ。でも、ある一定の年齢から上の人には、なぜかちゃん付けで呼ばれてたのよね。イェーナさん」

「あら、そうなの。確かにとても若々しいけれど、雰囲気は当時と変わらないんでしょう?」

「私が入所してドイツ支部に配属された時からずっとあんな感じよ。あれ、そういえば年齢とか聞いてなかったわね......私よりも二年先に入所してるらしいけど......」

 

 実際のところ年齢不詳なイェーナ。ミサトは自分よりもイェーナが二年先に当時のゲヒルンに入所していることと、彼女の落ち着き払った雰囲気から少なくとも自分より二つは上であろうと考えながらイェーナを見る。

 陶器のように透き通った肌、最低限の化粧、しっかり手入れされた髪。そして年齢が顔よりも出ると言われる手は、ハンドモデルをしていると言われても納得するほど瑞々しく細長い指に爪を保護するためのジェルネイルが施され。初めてイェーナをしっかり観察したミサトは、どこからどうみても自分より年上だとは思えなかった。

 その視線を感じとったイェーナは、垂れた髪の毛を耳に掛けながらミサトを見る。

 

「どうしたの、ミサト」

「......いや~、はは......」

 

 その行動から滲み出る色気に、ミサトは笑うことしか出来なかった。

 

(私があれやったらリツコあたりに無理すんなって鼻で笑われるわね、絶対)

 

 イェーナの真似をした自分のことを、おそらくリツコはゴミを見るような目で見てくるだろう。そう考えたミサトは思わず肩を落とす。

 しかしミサトはイェーナの年齢をどうしても知りたかった。女性に年齢を聞くのは良くないことだと知りつつも、美女という言葉がこれだけ似合う存在。どうか年上であってくれ、と祈るような気持ちでフランクにたずねてみた。

 

「そ、そういえばイェーナさんってお幾つでしたっけ? 私より二年先輩っていうのは聞いてましたけど、よくよく考えたら年齢とか知らなかったなと思ってぇ~......」

 

 わざとらしく身振り手振りをしながら聞くミサト。相変わらずごまかすのが下手だ、と隣のリツコはため息をつくが。彼女もまたイェーナの年齢には興味があった。

 ミサトより二年先となれば、自分より一つ上くらいだろうか、と予想するリツコ。醸し出される雰囲気から年上認定をしていたマヤ。

 彼女たち三人の視線を受け、イェーナは僅かに首をかしげながら言った。

 

「二十歳になったけれど......それがどうかした?」

「は?」

「え?」

「な......」

 

 ミサト、リツコ、マヤの順でイェーナの言葉に顎を落とす。

 イェーナは続けて言った。

 

「そういえば、日本ではアルコールが二十歳からだったわね。といっても、私はそういったものは飲まないのだけれど」

「あれ。ドイツってエチオピア暦とかでしたっけ? 何歳か若くなるみたいな」

「貴女はドイツ支部でどう過ごしてたのよ。日本と同じ西暦に決まってるでしょう、ほら」

 

 懐から革製のカードケースを取り出すイェーナ。そういった小物でさえ洒落ているのだから、二十歳な訳無いだろうとミサトたちは思うが。カードケースの中から引っ張ったネルフのIDカードには、こう書かれていた。

 

「年齢20、生年月日が1994.12.8......ミサトと同じ誕生日なんですね」

「そうなのよ、イェーナさんと私は誕生日が同じ......ってハァ!? せ、1994年ン!?」

「わ、私よりも年下なんですか......!?」

 

 一周回って冷静になったリツコと、生まれた歳を聞いて机に両手を叩きつけながら立ち上がるミサト、驚きのあまりおにぎりを喉につまらせるマヤ。

 イェーナはリツコに同意し、ミサトを座らせ、マヤに水を渡して言った。

 

「そうよ。だから、タローとアスカと出会ったときはまだ11歳で、ミサトと出会った時は13歳だったかしら。当時は舐められないように必死で、毎日無理してヒールの高い靴やシークレットブーツを履いたり、慣れないお化粧に時間を掛けていたものだわ。時間がない日は、伊達メガネで誤魔化したり」

「いや、確かに久しぶりにお会いしてずいぶんと背が高くなったなと思いましたけど! てかよく見たら今はヒールとか厚底じゃない普通のローファー!?」

「IDカードには身長が170センチになっていますが......」

「ごめんなさい、ちょっとサバ読み? してるわ。本当は175センチちょっと」

「サバ読みはサバ読みでも、逆サバ読みですか......」

 

 背が高くてスタイルが良い、というのはネルフ本部の女性職員たち全員が思っていることだが。具体的な数字を出されて、マヤの視線は隣に座るイェーナの頭からつま先までを数回往復する。

 もともとオーラがある上に、実際の身長まで高いとなれば存在感があるのは当然だった。

 二十歳、というイェーナの年齢に、リツコとマヤはなぜだか納得した。業務上科学者としての彼女を知る二人は、天才を自分たちの常識に当てはめるのはお門違いであると半ば諦めにも近かったが。それでもミサトは、イェーナが自分より9つも下であることがまだ信じられない様子だった。

 

「い、いやでも! 本当に二十歳なんですか!? 失礼ですが、そうなら13歳の時点であまりにも完成されすぎていたというか......」

「レーマン家は早熟なのよ。ミサトは私のパパとママに会ったことあるでしょう? あの二人も、若い時からずっとあのままよ。老け顔というのかしら」

「老け顔ぉ? 何を馬鹿な言ってるんですかイェーナさん! ご両親もあなたも全盛期がずっと続いてるってことじゃないですか!!」

「どうも。そうね、信じられないようなら私の子供の頃の写真とか見せましょうか」

 

 イェーナはスマートフォンを取り出し、いくつか子供の頃の自分と両親が写っている写真を三人に見せる。

 ミサトの記憶の中のレーマン両親と顔が変わっておらず、またイェーナもすっぴん故に幼さはあれど今と大差ない顔立ちで身長も高い。当時イェーナは十歳、両親は40代後半。どう見ても10代後半と30代、年の離れた兄妹にしか見えない写真だった。

 

「ってことは、私がイェーナさんのご実家に行った時、イェーナさんは日本ならまだJKだったってわけ......?」

「あ、その言葉は知ってるわよ。女子高生、でしょう? 15か16歳の時だから、そういうことになるわね」

「......嘘やん......タロちゃんとアスカともちょっと歳の離れた姉くらいやん.,....ええ? そんなことが許されるの? ......ェエ??」

 

 衝撃のあまりエセ関西弁の宇宙猫状態になるミサト。

 リツコとマヤも同じだけの衝撃を受けてはいるが、本部にやってきてからの付き合いであることと、ミサトと違って彼女にガチギレされたこともだらしないと注意されたこともないため、ダメージ自体は少なかった。

 しかしマヤは、どうしても疑問に思うことがあり、イェーナに聞く。

 

「ドイツでは、そんなに早くから働くことができるんですか?」

 

 イェーナのいうことが真実ならば、彼女は11歳から働いていたことになる。セカンドインパクトとその後の戦いで労働人口が減ったといえ、日本では大っぴらに11歳が働くことはできないだろうと考えていた。

 それも、彼女ほどの優秀な人材となれば話は別らしいが。

 

「ドイツでも本来ならば不可能よ。けど、私は早く自立したかったから大学を飛び級で卒業して、ゲヒルンの職員ではなく外部の業務提携、という立場を取っていたのよ。13歳からは親の同意や学校との兼ね合いと言った規則を厳格に守れば公に働けるから、そこは法の抜け穴を突いていたの」

「と、飛び級......タローくんやアスカよりも早くにですか?」

「ええそうよ。飛び級があの子たちだけのものと思わないことね」

 

 いたずらっぽい笑みを浮かべながらウインクするイェーナ。

 タローの前では格好いいお姉さんで居たい、と言った手前キャラを作ってはいるが、彼の居ないところでは度々お茶目さが見えるイェーナ。こういうところがあってか、ウインクに思わず赤面してしまったマヤは彼女が二十歳であると割とすんなり受け入れられた。

 

「そこまでして自立したい理由があったんですか? 写真を見る限り、ご両親とは仲が良さそうでしたけれど」

「パパとママのことは尊敬しているわ。でも、だからといって甘えることはしたくなかったの。海洋学者アーデルベルト・レーマン、脳科学者エルナ・レーマン、二人の顔に泥を塗るわけにはいかないもの」

「今、すっごい聞き覚えのある名前が二つ出てきたんですが......レーマン博士」

「ええ、パパとママは凄いのよ。だから私は、二人が誇れるような科学者になりたいの。といっても、両親はちょっと過保護なところがあるからゲヒルンに入ると言ったら止められると思って。ブラフでお花の研究もしているんだけれどね」

 

 両親には花屋で働いている、と言っているイェーナは、スマートフォンでいくつかの論文を出す。

 科学的視点で見たお花によるセラピー効果、新種の発見、遺伝子組み換えでの絶滅した植物の擬似的再現。全ての著者がイェーナであり、植物学に疎いリツコもイェーナが第一人者であることは早々に理解できた。

 

「植物学者との二足のわらじですか。人間MAGIは伊達じゃないわね」

「イェーナさんが......二十歳......年下に怒られてた......」

「ちょっとミサト、早く目を覚ましなさい。貴女、アスカの作ったお弁当を粗末にしたら承知しないわよ。ほら」

 

 イェーナはミサトの頬を軽く叩く。パシン! と勢いの割によく響いた音で、ミサトはようやく復帰した。

 

「ぅう......イェーナさん、これからは師匠と呼んでも? 私のことはお姉ちゃんと呼んでいただければ......」

「絶対に嫌よ。そもそも、年齢なんてただの数字。私からすればミサトも、本部の人とはいえ赤木博士やマヤも可愛い後輩みたいなもの。これからも厳しくいくつもりだから、変わらず接して頂戴」

「イェーナさぁあああああん! 一生付いていきますぅぅぅぅウウ!!」

「いいから座りなさい」

 

 テーブル越しに抱きついてきたミサト、その頭を鷲掴みして強引に座らせるイェーナ。

 タローやアスカのみならず、イェーナにも怒られて喜ぶミサトは嬉しそうにしながら食事を続けた。

 

「レーマン博士の年齢って、あの二人には言ってるんですか?」

 

 ミサトでさえ知らなかったのなら、タローとアスカはどうなのだろうと、マヤが聞いた。

 

「言ってないわよ、だから秘密にしてちょうだい。二十歳だってバレると、アスカが嫉妬しちゃうもの。マヤもわかるでしょう?」

「ぁ~、はは......確かにそうですね。私も、ついムキになっちゃうこともあるんですが」

「いいことよ、若いのだから。それに、アスカに警戒されて二人に近づけなくなったら苦しいもの。そのせいでせっかく育て上げた逸材をどこの馬の骨ともわからない女に取られるなんてことになったら、成果の横取りをされるのなんて癪だから」

「そ、育て上げた、ですか?」

「ええ。私、タローのことを真剣に一人の男性として見ているから。アスカとは義理の姉妹になりたいわ、私があの娘をお姉さんと呼ぶことになるかもしれないけれど」

 

 白い頬を、ぽっと僅かに赤く染めるイェーナ。リツコとマヤは彼女の爆弾発言にガチンと固まった。

 

「そのためには法改正が必須ね。ドイツなら人口事情が苦しいところがあるし日本よりは早くに出来そうだけれど、彼に想いを向ける女性は日本にも多いでしょうから。やるべきことがまだまだあるわ」

「......先輩。レーマン博士って、その」

「それ以上は言ってはならないわ、マヤ。ミサトと違って常識があるのだから」

「愛情深さ故に新しい常識を作ろうとしている気がするんですが......」

 

 壮大すぎるヴィジョン、それを実現出来てしまうのではと思わせる力。自分の世界に入ったイェーナを見て、とんでもない人物だとリツコとマヤは小さく笑う。

 

 その一方で、第壱中学校屋上でパイロットたちと昼食を取っていたアスカは寒気を感じたとかなんとか。

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