メダロットHERMIT   作:CODE:K

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3-3 Journey through the Zako3

 

「うらーっ、ロボトルファイト!」

 

 レフェリーのMs.ウォッカからロボトル開始の宣言が出された。

 同時、マゼンタキャットはスタッグに飛び掛かる。

 

「先手必勝! やっちゃって」

 

 まさに俊足だった。

 神宮寺さんが言い終える頃には、マゼンタキャットは至近距離から右腕を突き出して電流を放った。

 

 しかし、スタッグはかわして逆に右腕のソードで相手を薙ぐ。

 

 続けて、

 

「うおおおっ! 竜〇旋風脚!」

 

 と背後から威勢よく跳躍からの回し蹴りをするブルーティスを、スタッグはカウンターで左のアッパーを当てて殴り飛ばす。

 さらにソードで回転斬り。

 

 相手二機にまとめて追撃をぶつけた。

 

「きゃあ!」

「うわぁ!」

 

 マゼンタキャットとブルーティスはそれぞれスタッグの前後で宙を舞うも、倒れず二本の足で着地。

 

「すっげぇ」

 

 赤城くんが少々興奮気味にいった。

 

「まさか、相手は昇〇拳が使えるなんて」

「すみません、ただのアッパーです」

 

 スタッグは真面目に返事するも、

 

「しかもリ〇クの必殺技、回転斬りまで」

 

 やっぱり赤城くんも男の子。こういった漫画やゲームの必殺技が好きらしい。

 

「いえ、あれもそんなつもりでは」

 

 一方のスタッグは必殺技を真似たつもりはなく困惑してる様子。

 

「ふぅん」

 

 マゼンタキャットは、ふたりのやり取りを眺めながら、

 

「気に入らないわね」

 

 と呟く。

 赤城くんがいった。

 

「ところで、ピンクキャットは大丈夫か?」

「ピンクじゃない、マゼンタよ」

 

 即座にマゼンタキャットが睨む。

 

 正直、ピンクより赤なのでは?

 アズキは思ったけど、こちらまで睨まれそうなので口には出さないでおいた。

 

「とりあえず、なんとか全パーツ無事みたい」

 

 神宮寺さんはいって、

 

「フクのブルーティスは?」

「ギリギリだけど、こっちも無事だよ」

 

 ふたりの反応から、パーツの機能停止には至らないも開始早々かなりのダメージを与えてしまったらしい。

 

「スタッグ?」

 

 もしかして、大人気なくやりすぎた?

 なんて思ってメダロッチから話しかけるも、

 

「大丈夫です。二対一ですから、今回は油断しません」

 

 と、スタッグは脚部からフォースを放出しはじめる。

 アズキは気づいた。

 

(あ、これ先日のクワトロさんとのロボトルで相当懲りてる)

 

 スタッグは真面目だから。今回は不覚を取らないよう相当気を引き締めてるのだろう。

 これは可哀想だけど、ふたり相手に完全試合があるかもしれない。

 

「マゼンタキャット。頭部パーツ使って」

「了解」

 

 神宮寺さんの指示の直後、マゼンタキャットの目が赤く光る。

 続けてブルーティスの目も。

 

 再びマゼンタキャットは飛び掛かって右腕で殴ってきた。

 

 スタッグはかわしてソードで迎撃。

 前回とは斬撃の軌道を変えていたが、今回は避けられてしまう。

 

「くらえええっ!」

 

 続けてブルーティス。

 今度は普通に右の拳だったが、やはりスタッグは避けつつ左腕でカウンター。しかし、こちらにも回避されてしまった。

 

 アズキはすぐ気づいた。

 ふたりの反応速度が異常に上がっている。間違いなくマゼンタキャットの起動した頭部パーツの効果で、赤い目の恩恵だ。

 

 スタッグはソードの追撃に入ろうとするも、ふたりはすぐに後退。

 

「あっ」

 

 しまった! アズキはさらに重大なことに気づく。

 相手は常にスタッグの前後を位置取りし、挟み撃ちにしていたのだ。

 

 いまロボトルしてる場所は学校の廊下。

 前後の奥行はあるけど横幅が狭く、スタッグから相手の位置取りを崩しにいくのは難しい状況にある。

 

(スタッグなら、迷彩を駆使して敵の横を抜けるくらいならできそうだけど)

 

 現時点で試してないのだから、おそらく不可能なのだろう。

 

 今度はスタッグから動いた。

 

 後ろに残像を残しながら、ソードで二度三度とマゼンタキャットを斬りつけるも、相手は猫の動体視力を再現したみたいに見切ってきた。

 体をそらす程度、最小限の動作で次々とかわし、最後はスタッグの腕をぺちんと叩いて弾く。

 

「その面、気に入らないわ」

 

 マゼンタキャットは、スタッグを睨みながらいった。

 

「真面目腐った態度、その喋り、その物腰、何からなにまであいつを思い出す!」

「あいつとは?」

「マゼンタキャット!」

 

 マスターの神宮寺さんによばれ、彼女は口を紡ぐ。

 なにかタブーに触れる内容だったのか。

 

「そうね。どうせ私たちが負けたら間違いなく知る事だもの。ここで言う必要なんてないわね」

 

 といってマゼンタキャットは両腕をあげ、

 

「だからこそ、絶対に勝って教えてやらない」

 

 電流を放ちながら、同時に振り下ろす。

 不意を突かれ、ついにスタッグは被弾。かと思ったらスタッグは光の粒子に変わって消滅していく。

 

 いつの間にかスタッグは残像むしろ分身とこっそり入れ替わってたのだ。

 

 で、本体はというと。

 左の甲を有線射出して床に転がし、こっそり車輪のように進ませて待機中のブルーティスの足元を狙っていた。

 

「あっ、ブルーティス!」

 

 赤城くんが気づいた時にはもう遅い。

 床を這い進むヨーヨーがブルーティスの足にぶつかると、高速で回転し鉄を削るような音を響かせ、

 

「うわああ!」

 

 ブルーティスの脚部が爆発を起こす。

 衝撃で片足がティンペットから外れ、床に転がった。これは脚部を機能停止に追い込んだと判断していいだろう。

 

 が、この様子をみた赤城くんは逆に目を輝かせて、

 

「あれはまさか、ヨーヨーのトリックがひとつ。その名も犬のさんぽ(ウォーク・ザ・ドッグ)!」

「ばかぁっ! ブルーティスがピンチになったのよ?」

 

 今回は逆に神宮寺さんが突っ込みに回るも、赤城くんは続けて、

 

「すげぇ! ヨーヨーの技ってロボトルに組み込めるのかよ。しかも犬のさんぽを犬型メダロットにぶつけてくるなんて」

「チッ」

 

 空気に嫌気が差したのか、マゼンタキャットはマスターの指示を待たずスタッグに左腕で一突き。

 スタッグには当たらないも躊躇わず相手は電流を放って、

 

「やっぱり、気に入らないわ」

 

 マゼンタキャットは苛立ちを言葉にしてぶつける。

 

「一番嫌なのは、私があいつに口酸っぱく忠告してもできなかった、その搦め手や悪質なフェイントをあんたは使いこなしてくるところよ」

 

 スタッグは、相手の声を律儀に最後まで聞いてから、突然みんなの視界から消える。

 ステルスを起動したのだ。

 

 スタッグは移動を開始。音を立てず、今回は輪郭のブレも残さないのでメダロッチで視界を共有するアズキ以外、現在位置を掴むことができない。

 で、

 

「ずっと知らない誰かを重ねて見られ続けても困ります」

 

 姿を見せたときには、ブルーティスは後ろから首を斬られ背中のメダルが弾きだされていた。

 

「ブルーティス!」

 

 赤城くんが叫ぶ。

 

「これで挟み撃ちは攻略しました」

 

 スタッグはいった。

 

(いや、まあそりゃあ相手を一機倒せば攻略したことにはなるけど)

 

 それともブルーティスの背後に立った事を言ったのだろうか。一応、さっきの一撃が決まらなくても挟み撃ちの攻略にはなってるわけだし。

 あと、

 

「スタッグ。どうしてマゼンタキャットを狙わなかったの?」

 

 一対一なら問題ないけど、公式ロボトルにはリーダー機というルールが存在し、相手の全滅ではなく先にリーダーを機能停止された側が勝利なのだ。

 

 で、間違いなく相手のリーダー機はマゼンタキャット。

 ここでブルーティスではなくマゼンタキャットの首をはねれば、その時点でスタッグの勝利が確定したはずなのに。

 

「あちらだと、避けられる危険性がありましたから」

 

 スタッグはいった。

 

「さらに万全な状態の彼女が相手だと、姿を消しても廊下のような狭い空間で近くを動けばわずかな風の動きで気づかれ、迎撃される危険がありまして」

「ずいぶんと評価してくれるのね?」

 

 マゼンタキャットの言葉に、スタッグは「はい」と返事し、

 

「おふたりとも、それだけの実力があると感じましたので」

「オレのブルーティスも?」

 

 赤城くんにもスタッグはうなずいて、

 

「ですので、脚部を潰すまでステルスで横切る手段は温存してました」

「このっ!」

 

 マゼンタキャットが憤慨してスタッグに飛び掛かる。

 

「やめてよそんな過大評価! なによ上から目線で、なにも知らないくせして、何様のつもりって感じ!」

 

 両手のプラグを交互に突き付け、かすりそうなら遠慮なく電流を起動。

 

「え、えっと、すみません」

 

 言いながらもスタッグは残像を作りながら左右にステップを踏んで回避行動。

 

 残像は一個一個が相手のレーダー反応を引き付ける性質を持つ。

 複数の残像と本体が常に位置を入れ替え、相手の目やレーダーを混乱させる狙いだったと思われるが、マゼンタキャットの赤い瞳は段々と本体を捉え始める。

 

 で、ついに相手の一撃がスタッグに当たりそうになるも、

 

「駄目、後ろにしっかり跳んで!」

 

 急に神宮寺さんが叫んだ。

 

「っ」

 

 言われるままマゼンタキャットは後ろに()()跳ぶ。

 直後、スタッグと無数の残像たちは一斉に左のヨーヨーを射出し、相手の左腕に当てて破壊した。

 

「に゛ぁぁっ!」

 

 マゼンタキャットは悲鳴をあげるも、もう一度後ろに跳んでスタッグと距離をとる。

 神宮寺さんがいった。

 

「ごめんなさい、マゼンタキャット。間に合わなかったわ」

「いいえ。あのまま攻撃を続けてたら、あいつのヨーヨーが頭に当たってたもの。私の回避が甘かっただけ」

「でもっ」

「ああもう! だから女々しい顔しないでよ雑魚マスター!」

 

 自分のマスターを叱咤しながらマゼンタキャットはジャンプし、

 

「次で決める!」

 

 窓の鍵を足場に、さらに天井近くまで跳躍。脚部の内側がアズキの目に飛び込んだ。

 黒だった。

 

 マゼンタキャットは猫のように体を丸め回転しながら電流を自ら浴び、全身に電気を纏った姿で跳び蹴りの姿勢に。

 スタッグに向けて上から真っすぐキックが放たれた。

 

 これを見たスタッグはすぐヨーヨーを射出し直し、回転させる。

 

「あっ、駄目だマゼンタキャット!」

 

 赤城くんが叫んだ。

 

「ヨーヨーにはあのトリックが、アラウンド・ザ・ワールドがある! ヨーヨーは上にも強いんだ!」

 

 直後、スタッグはヨーヨーを投げ、縦に大きな円を描いた。

 マゼンタキャットは真下からヨーヨーで殴り飛ばされ、

 

「に゛ぎゃっ」

 

 姿勢も崩れ、無防備の状態で天井付近を舞う。

 さらに間髪入れずスタッグはブルーティスから外れた片足を掴んで投擲。マゼンタキャットは天井に叩きつけられた。

 

「マゼンタキャットーッ!」

 

 神宮寺さんの絶叫も空しく、マゼンタキャットはボディに足の爪がめり込んだ状態のまま床に落下。

 機体からメダルが弾かれ、

 

「リーダー機能停止。この勝負はスタッグの勝利だよ」

 

 Ms.ウォッカはいうのだった。

 





トラブルがなければ第3話の残りも21時過ぎに投稿したいと思います。
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