メダロットHERMIT   作:CODE:K

103 / 103
19-7 贄-nie-7

 

 トウコ先生の車が見えなくなると、メダロッチ越しからスタッグが、

 

『良かったのですか? トウコさんに全て話してしまって』

「話しておかないと、自分から下手に踏み込んでもっと危険になりそうだったからね」

 

 アズキは返事して、

 

「それに、この事は早めにラエドさんにも伝えておかないといけないかなって。クワトロさんは敵だ、下手に調べると危ないって」

『まあ、それはそうですけど』

 

 と、心配するスタッグに、

 

「それよりも、トウコ先生の事はこれで終わりにしても、問題はまだまだ残ってるという話。ティナさんの件、春日くんにどう説明しよう」

『いっそ何も伝えないほうがいいのでは』

「それは駄目。春日くんはあまりにティナさんと距離が近すぎるし、すでに違和感に気づいてるという話だから、誤って問題に踏み込んじゃったら」

『口封じにあう、という事ですね』

 

 スタッグの言葉にアズキは「うん」と頷く。

 

『ならもう、せっかくですからモッチーズと合流して四人で情報共有しませんか? 神宮寺さんも巻き込む事になりますけど』

「いや、モッチーズはクワトロさんの事でいっぱいいっぱいだろうから」

『赤城さんはもう巻き込んでますよね?』

「うっ」

 

 それを言われると何も反論できない。

 

『ですから、私たちが何かしなくても近いうちに神宮寺さんも関わる事になると思うんです。なので警告も兼ねてこちらから動いてしまいましょう』

「警告、ああ、そっか」

 

 間桐さんがあれだけマッドサイエンティストな人間だったと判明した以上、神宮寺さんの身の安全は気を付けないといけないのだ。

 アズキに恋してアプローチをかけてると知られたら、同じようにメダルを埋め込んで追加のプレゼントとして渡してきそうだから。

 

「だね、私たちもTMZとして出来る限りみんなを護るけど、神宮寺さんはそれでも最低限の自衛はしてもらわないと」

 

 神宮寺家はそれが出来る力もあるわけだし。

 

『そういう事です』

 

 スタッグは言った。

 

『では、近いうちにアズキ、春日さん、赤城さん、神宮寺さんの四人で集まって、ティナさんに起きてる事を伝えるでよろしいですね』

「うん。細かな時間の調整はスタッグお願いできる? 主にメッセージとかで」

『分かりました。あ、キクナさんはどうしましょうか?』

「あ、確かに」

 

 アズキはうなずき、

 

「キクナの力は借りたいかも。今ならまだ学校にいるはずだから、いまから私が直接伝えに行くよ」

 

 と言って、アズキは職員室に戻る事にした。

 そんな移動中の廊下で、

 

『そういえばアズキ』

 

 突然、スタッグがどこか恥ずかしそうに言った。

 

『その、えっと、嬉しかったです』

「え、なにが?」

『ティナさんに体の関係を迫られた時、私と付き合ってるから他の子に手を出せないって言ってくれた事です』

「あー」

 

 言われてアズキは、今朝の光景を思い出す。

 と同時に罪悪感に包まれた。

 

 実際は、口ではああ言って断ったけど、それでもティナさんに迫られ、本心では手を出してしまいたい欲望に駆られてしまったからだ。だから動揺もしたわけで。

 でも、そんなアズキの内心もスタッグには筒抜けだったらしい。

 

『とはいえ、アズキの事ですから本当はここぞとティナさんを慰み者にしたかったのでしょうけど。アズキはロリコンですから』

「うっ」

 

 アズキは再び動揺したけど、

 

「だ、大丈夫。この葛藤は彼女になってくれたスタッグで解消するから」

『具体的には?』

 

 スタッグが言ったので、アズキは、

 

「今日、帰ったらまたカメオスタッグの姿にする。だから横乳見せて」

『嫌です』

「嫌です」

『まさかの嫌です返し!?』

 

 驚くスタッグ。

 

「というより、この会話してたらスタッグのカメオスタッグ姿思い出しちゃって、なんかもう限界。メダロット転送」

 

 アズキはスタッグをその場に出して、

 

「そしてパーツ変更」

 

 早速スタッグの姿をカメオスタッグにしてしまう。

 で、アズキは言った。

 

「スタッグ、横乳見せて」

「嫌です」

「嫌です」

「ですから、どうして嫌ですに嫌ですを返すのですか」

 

 と、スタッグが言うので、

 

「今まで散々嫌です言われ続けてきたんだし、そろそろ私が言ってもいいでしょ」

「まあ、それはそうですけど、って納得しかけましたけど駄目です」

「って言われても、スタッグと付き合った私はもう無敵という話だから」

「こんな馬鹿な事で無敵にならないでください」

 

 って反抗するスタッグの横から、アズキは彼女の胸を強引に覗き込もうとする。

 スタッグは慌てて胸を隠して、

 

「だから駄目です」

「駄目です」

「今度は駄目です返し!?」

「だって、その、ごめん。欲望が抑えられない」

 

 アズキは言った。

 

「そりゃそうだよ、白状するけど確かに今朝ティナさんに誘われて私は発情してたよ? 本当は今すぐ個室に押し込んでめちゃくちゃにしたい気分だった」

「ドン引きですね」

「うん。だから可愛い彼女に発散してもらわないと、という話で」

 

 アズキは自分の胸を隠そうとしているスタッグの腕に手を伸ばすが、全力で振り払われて、

 

「嫌です。確かにアズキと付き合うとは言いましたけど、性の捌け口になるとは言ってません」

「そんな! じゃあ、このムラムラはどう解消すればいいという話なの?」

「知りません」

 

 なんて、いちゃいちゃ話してたところ、

 

「アズキさん、スタッグさん、こんなところでじゃれ合ってどうしたのですか?」

 

 キクナが現れて、話しかけてきた。

 鞄を持ってる点から、おそらく今日はもう帰るところだったのだろう。

 

「あ、キクナ」

 

 アズキは言って、スタッグも、

 

「ちょうど良かったです。いまキクナさんに会うため職員室に戻る途中で、入れ違いになるところでした」

「僕に用事という事は、今度は何がありましたか?」

 

 さすがキクナ。スタッグの言葉だけで、もう何か事件が起きた事を察してくれたらしい。

 

「実は」

 

 と、アズキはティナさんに起きた諸々を説明する。

 キクナは難しい顔で、

 

「生徒の頭の中にメダルですか。そんな狂気みたいな事を考える研究者がTMZの外にもいたのですね」

 

 やっぱりキクナもTMZならやりかねないと判断した様子。さらに今回やったのはTMZではなく、

 

「しかも博物館の研究員とは」

 

 キクナが苦手としている博物館の人間なのである。先ほどは難しい顔と表現したけど、たぶん嫌悪の感情も混ざってるだろう。

 まあ、それはともかくとして、

 

「という話だから、春日くんを非日常に巻き込んでしまうのは心苦しいけど、下手を打って口封じされる前に教える方向でスタッグと話を進めてたんだけど」

 

 アズキが言ったところ、

 

「僕は反対ですね」

 

 キクナは言った。

 

「いまはまだ様子がどこか変で済んでるのですよね? でしたら、彼の精神を考えても真実は伝えないほうがいいと思います」

「でも、そうしたら口封じの危険が」

「僕たちは世界の裏側で動いてるから身近なだけで、基本的に彼が口封じに遭うような情報は一般人の耳には入らないようにできてますよ」

 

 でなければ、この世にある都市伝説の大半はすでに解明されて白日の下に晒されてるはず。との事らしい。

 続いてスタッグが、

 

「ではモッチーズはどうしましょうか? 特に神宮寺さんは第二のプレゼントにされる危険があるので伝えたほうがいいと思うのですけど」

「そうですね、モッチーズには伝えましょう」

 

 キクナは、今度は肯定した。

 

「彼女たちはもう世界の裏側に巻き込まれてる方々ですし、スタッグさんの推測もまさにその通りですから」

「つまり、神宮寺さんは狙われる可能性があるとキクナさんも思ってるのですね」

「そうなります」

 

 頷くキクナ。

 

「なにせ相手の狙いはアズキさんですからね。次の交渉材料として神宮寺さんはうってつけです」

 

 それにはアズキも頷くしかなく、

 

「だよね」

「ところで」

 

 キクナは話を切り替えて、

 

「その間桐さんという研究員はこの前のピアノ演奏会に顔を出していたのですよね?」

「うん」

 

 アズキがうなずくと、

 

「となると、ティナさんが狙われたのは偶然ではなく、あのピアノ演奏会が関係してるのではないでしょうか?」

「どういう事?」

「簡単ですよ。あの場でアズキさんの知り合いとしてロックオンされてしまったのではないか、というだけです」

「あー」

 

 確かに、アズキは演奏会のホールでティナさんと親しげに話しもしたし、何なら間桐さんとの会話でもティナさんの名前を出してしまったのだ。

 

「でも、だからってそれだけの接点で誘拐の対象にしちゃうのかな?」

「もしくは」

 

 ここでキクナは何か言いかけたけど、

 

「いえ、何でもないです」

 

 と撤回する。

 

「ごめんなさいですよ。博物館が関わっていたせいで、少し考えすぎてしまっただけです。気にしないでください」

「それならいいけど」

 

 とはいえ、アズキも少し思うところがあるのだ。

 

 以前、神宮寺さんはロボロボ団が博物館からユスグさんに近い生態反応を発見したという情報を明かしている。

 もしも、この情報が確定だったとしたら、ユスグさんの問題に間桐さんも関わってるのではないか。

 

 そうなると、彼女を誘拐したクワトロさんも無関係ではなくなってくる。

 間桐さんもクワトロさんの雇い主もアズキを狙っていた。という事はつまり、ふたりは繋がってる?

 

(ああ、駄目だ)

 

 アズキは首を大きく振って、

 

「ごめん、私も何か色々と変な推測が浮かんできちゃった」

「アズキさんもですか」

 

 キクナは言って、

 

「こういう時はどんどん変な方向に思考が進みますからね。今日は一旦、この話は中断にしましょうですよ」

「そうだね」

 

 アズキはうなずく。けど、キクナはここで、

 

「あ」

 

 と思い出したように、

 

「いまのティナさんを研究施設には連れてきてませんよね?」

 

 と聞いてきた。

 アズキは、

 

「さすがにしてないよ」

「良かったです。もし連れてきてたら、そこからTMZの情報が洩れる可能性がありますからね。このまま彼女を放置して助けないわけにもいきませんけど」

 

 確かに、このままティナさんを間桐さんの下に置いておくわけにはいかない。

 出来る事なら保護する必要がある。

 

 しかし、いまの彼女をTMZの研究施設に呼ぶ事は不可能だった。理由はキクナが言った通り、彼女を通じて情報漏洩する可能性があるからだ。

 

 現在の藤稔ティナは間桐さんのメダルであり、絶対服従を強いられた駒である。

 きっと、彼女が研究施設の内部に足を運ぶ機会ができてしまったら、間桐さんはきっと情報を持ち帰らせるような策を取ってくるだろう。

 

 あらかじめスパイとして情報を抜き取るよう命令もするだろうし、ティナさんに自覚がなくても脳に送信機や何かを入れられたりする可能性だってある。

 だからアズキは、いまティナさんを助けたくても助ける手段がないのだ。

 

 ちなみに、アズキの家に保護は普通に犯罪とする。

 キクナは鞄を持ち直して、

 

「では、今日は僕はこれで失礼しますですよ。アズキさん、また明日」

「あ、待って。私もいま帰るところだから、途中まで一緒しない?」

 

 アズキが言うと、

 

「そうですね」

 

 キクナは頷いて、

 

「でしたら、気晴らしにカラオケにでも一緒に行きませんか?」

 

 と言うのだった。

 





これで第19話は終了になります。

また、19-4で投稿回数が100回に到達してた事が発覚しました。
ここまで付き合ってくださって皆さまありがとうございます。
なお20話の完成の目処はまだ立ってませんので、もしかしたら今回が今年最後の更新になるかもしれません。
なのでよいお年を、はさすがにまだ早いですが、改めて今年も皆さまに読んで頂けて本当に嬉しく思っております。ありがとうございました。
これからもメダロットHERMITをよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。