メダロットHERMIT   作:CODE:K

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3-4 Journey through the Zako4

 

 ロボトルが終了した。

 

(ほんとにスタッグ、無傷で勝っちゃった)

 

 なんてアズキが思ってると、メダルが外れ意識のないマゼンタキャットから左腕パーツが突如として消失。

 直後、アズキのメダロッチに消失したパーツである「スタンスティック」のデータが追加された。

 

「あっ」

 

 しまった。今回は事前に生徒のパーツは賭けないと伝えるのを忘れていたのだ。

 

「ごめん、すぐ返すから」

「え?」

 

 アズキの言葉にきょとんとする神宮寺さん。ここで「そういえば」と赤城くんが、

 

「クーの時は、オレたち生徒からはパーツを取らないって条件で真剣ロボトルしてくれたんだっけ」

「え、そうだったの?」

 

 そういえば神宮寺さんもクワトロさんのことを「クーちゃん」と呼んでいた。

 生徒たちにとっては、割と定番の愛称なのかもしれない。

 

 神宮寺さんはいった。

 

「大丈夫です。私、スペアならまだ持ってますから」

「でも」

 

 今後も生徒からパーツは奪わない路線でいきたいので、ここは神宮寺さんの言葉に甘えずしっかり通さないと。

 けど、

 

「その話は後にしましょうですよ」

 

 って言いながら奥からキクナがやってきた。そういえばロボトル前、アズキは助けを呼んでいたのだった。

 しかも隣にはクワトロさんの姿も。

 

「クーちゃん!」

 

 神宮寺さんが呼びかけると、クワトロさんはすまなそうに、

 

「ごめんなさい、捕まってしまいました」

「キクナ、もしかしてロボトルしたの?」

 

 それらしい物音がなかったので戦ったなら瞬殺という話になるけど、相手は重装甲なうえ簡単に勝てる相手じゃないので、それは難しいはず。

 

「いいえ、お互いロボトルを邪魔しない条件で素直に従ってくれましたですよ。それはともかくとして」

 

 キクナは神宮寺さんたちに近づくと、

 

「たしかアズキさんが勝ったら色々聞かせてもらう条件でしたよね? いま、そのお時間を頂いても大丈夫ですか?」

 

 赤城くんがどこか納得した顔で、

 

「いきなり外から学年主任で気にはなってたけど、紅下先生とタッグ組んでたのかよ。オレはいいけどリーダー、時間は?」

「私も大丈夫です。えっと、通杭(ツテクイ)先生?」

 

 神宮寺さんは頷く。

 キクナはいった。

 

「では最初に、あなたたちが勝ったらしばらく紅下先生を言いなりにする約束でしたけど、具体的には先生に何をさせるつもりだったのですか?」

「口封じです」

 

 と、神宮寺さん。

 いきなり不穏な言葉が飛び出してきた。

 

「先生たちはもう知ってますよね? 去年、私たちのクラスで行方不明になった子がいること」

 

 まさか、相手のほうからこの話に触れてくるなんて。

 

「教室ではみんな明るく振舞ってるけど、まだ多くの子がトラウマになってるの。だから先生には不用意に事件のこと触れないで欲しくて」

 

 神宮寺さんは赤城くんとクワトロさんにアイコンタクトをとってから、

 

「私たちモッチーズの三人で先手を打つことにしたんです」

「先手?」

「このクラスは私たちが中心ってわからせて、先生に命令できる立場になって、クラスのみんなに事件の話題を出せないようにしたかったの」

 

 彼女が口にした想像と全然違う動機に、アズキとスタッグが揃って「え?」となる。

 スタッグが横から口を挟んだ。

 

「そのためにアズキに色仕掛けまでして脅迫しようと思ったのですか?」

「え、脅迫? そう、なるの、かな?」

 

 首をかしげる神宮寺さん。

 スタッグはさらに踏み込んで、

 

「アズキがあなたの下着に食いついたら、それを脅迫材料にするつもりだったのでは? 逆らったら通報してわいせつ罪や懲戒に追い込んだり」

「し、しないわよそんな事!」

 

 神宮寺さんは絶叫。

 さらに顔を真っ赤にして、

 

「そもそも、そんな酷すぎる作戦思いつくわけないじゃないですか」

 

 と、彼女はいうも。

 

「ごめんなさい。私はそういう作戦なのだと思ってました」

 

 クワトロさんはいい、さらに赤城くんが、

 

「お、オレは逆にそう受け取られるんじゃねーかって警戒してた」

「えぇーっ!」

 

 驚く神宮寺さん。

 赤城くんが、

 

「だってよ。普通あそこまでやらねぇよ。もうこの時点で先生にセクハラされたって捏造する材料はできてるし、その気なら勝ち確でロボトルする意味ねーじゃん」

「でもでも! クーちゃんだっておっぱいでユーワクしたり色々したんでしょ?」

「ですから、私は」

 

 すまなそうに言うクワトロさん。

 誰がといわず、

 

「あ」

 

 と、声を漏らし神宮寺さん含めて全員が察した。先述の通りクワトロさんは「そういう作戦」を実行してたのだって。

 

「ごめんなさい。私、たまに加減が分からないところがあって」

 

 しゅんとなるクワトロさん。

 

 つまり神宮寺さんの言葉を信じるなら、彼女はクラスを護ろうとしただけで本当にアズキを脅迫する気がなかったことになる。

 口封じって言葉も、言い換えるなら口止めや箝口令に近い意図だったのだろう。

 

 が、ここでキクナはさすがに申し訳なさそうにしながらも、

 

「ごめんなさいですよ。まだ皆さんの疑惑は晴れてなくて」

 

 なんて話を戻す。

 

「あなた方モッチーズは前任までの担任をすべて異動に追い込んだそうですね」

「それは」

 

 落ち込む神宮寺さん。そんな彼女を庇うように赤城くんが、

 

「ここはオレが話す。まず事件当時の担任からはオレたちが事件の犯人だって疑われてたんだ。アイツ、御萩(おはぎ)ユスグとは対立してたからな」

 

 御萩ユスグ。

 少し思うところがあって、この名前が出てきた時アズキは小さく反応。しかし誰も気づかないまま彼の話は続く。

 

 赤城くんが言うには、御萩さんは真面目な風紀委員タイプの少女だったらしい。

 対してモッチーズ、とくに神宮寺さんは学年の賑やかし役。言いかたを変えれば悪ガキ三人組で、彼女とはイタチごっこの関係にあった。

 

「まあ、実際の御萩は普通にリーダーと仲良くて、対立といってもじゃれ合ってるだけだったんだけどな。当時の担任にはそう見えなかったらしい」

 

 だからこそ、実際より神宮寺さんを不良と思ってた当時の担任は、邪魔に思ってた御萩を排除したんだと早とちりして暴走。

 最終的に先生はクラスメイトが見てる前で神宮寺さんに暴力を振るい、他の教師に取り押さえられた。

 

 事件は警察の耳に入る前にもみ消されたが、クラスメイトたちは心の傷やトラウマを悪化させ、先生は異動となる。

 

「で、その後は外から臨時の担任が来るんだけど、どいつもこいつも興味本位ですぐ御萩の話を聞きたがるんだ」

 

 当然ながら、その度に生徒はトラウマ諸々を思い出し、クラスの空気が破壊されていく。

 だからモッチーズ三人で「やめてくれ」と訴えると教師たちは二か月以内に、

 

「全員、やってられるかって辞めていくんだ」

 

 どうしてかは三人とも知らない。

 ただ事件当時の担任と連絡を取ったとか、問題に踏み込んで何かヤバい情報に辿り着いたとか生徒の間では密かに噂されている。

 

 ここでクワトロさんが、

 

「あまりにどんどん辞めていくので、教師の間では私たちが臨時の担任を追い込んで遊んでるとか、事件当時の担任が正しかった説まで出てるそうです」

 

 その誤った情報が、今回はキクナに流れてしまったらしい。

 いや、どちらが正しいのかはまだ分からないけど。

 

「私は!」

 

 神宮寺さんがいった。

 

「私は、楽しいことが好きなの。みんな楽しいのが一番いいの。だからクラスの笑顔を護りたいし、先生を追い込んで遊ぶなんて絶対にしない!」

「リーダー」

「神宮寺さん」

 

 赤城くんとクワトロさんが顔を向ける中、

 

「お願いします。私たちを信じて!」

 

 頭を下げる神宮寺さん。

 アズキはいった。

 

「分かった」

 

 って。

 

 彼女がクラスを盛り上げてるのは初日で知ってたし、今日だけでも神宮寺さんがいい子なのはすごく伝わった。

 仮に神宮寺さんが脅迫を手段に入れてたとしても、他の供述が真実ならアズキとしては許したい気持ちのほうが強い。脅迫材料を白紙にしてくれたらだけど。

 

 ただ、あえてスタッグとキクナには確認を取らない。

 あくまでアズキ個人の判断に留めておきたいから。

 

「ありがとうございます」

 

 神宮寺さんは嬉しそうに感謝を伝えた。

 

 もちろん、彼女を疑おうと思えばいくらでも疑念を抱ける状況ではある。

 現に前担任が暴力を振るった理由は赤城くんの供述では無理を感じる。アズキでさえ思うのだからキクナはもっと疑ってるだろう。

 

 けど、

 それでも、教え子を信じるってアズキの判断はきっと間違ってないはずだ。

 

 

 

「先生、ロボトル中マゼンタキャットが色々いってたの覚えてますか?」

 

 神宮寺さんはいった。

 キクナは先に職員室に戻り、クワトロさんは用事、赤城くんは塾を理由に先に帰った。

 

 神宮寺さんも今から下校だけどもう少しアズキと話がしたいそうで、スタッグを含めた三人は昇降口に向かってゆっくり廊下を歩いている。

 

「実は、スグのことなんです」

「スグ?」

「あ、行方不明の、御萩ユスグちゃんのことです」

 

 神宮寺さんは言い直す。

 もうこの時点で、神宮寺さんと行方不明の子は本当に仲が良かったのだろうと伝わってくる。

 

「マゼンタキャットね、気が強くてよくスグに突っかかってたのよ。対立って意味なら、私よりずっとスグと対立してたわ」

「あー」

 

 なんだかすごく分かる。

 実際、今日だってスタッグに色々言ってたし。

 

「でも同時にお節介なところがあって」

「色々とアドバイスをしてあげてたそうですね」

 

 スタッグがいうと、

 

「うん。スグのことすごく気にかけてたわ。だから、あの子ぜったいスグを救えなくてずっと後悔してるのよ」

 

 そういえばスタッグにも「過大評価するな」「何も知らないくせに」って。

 で、神宮寺さんはいうのだ。

 

「だからね。私たち、モッチーズのみんなもだけど、早く事件を解決したいの。スグが生きてるなら、絶対にまた会いたい」

 

 そういって、彼女は頭を下げ、手を合わせる。

 

「お願い! みんなを刺激しないでって言いながら、こんなの頼むって変だけど、事件解決に協力して。なにか情報があったら教えて欲しいの」

 

 そんなの、こちらが取るべき行動は決まっている。

 

「わかった」

 

 アズキはいった。

 

「何か有益な情報が手に入ったら、君たちに伝えればいいのね」

「本当?」

「かつ、三人以外の生徒の前でこの話はしないよう気をつける」

 

 この言葉を聞いて、神宮寺さんは涙声で、

 

「ありがとうございます」

 

 といった。

 

 

 一階の昇降口に到着した。

 

「では神宮寺さん、また明日」

 

 スタッグはいった。

 けど、神宮寺さんはここで返事はせず、ぴたっと足を止める。

 

「紅下先生、実はもうひとつ頼みがあって。いいですか?」

「え、なに?」

 

 アズキが何気なく返事すると、神宮寺さんは自らのスカートを摘まんで、

 

「また、先生に下着みせちゃってもいいですか?」

「え゛っ?」

 

 当然アズキは激しく動揺。

 きっと顔も赤くなってるはず。

 

「ちょっ、まっ、じ、じじっ、じんぐーじさん?」

「あっ」

 

 対して、神宮寺さんの顔がぱあっと明るくなる。

 

「きゃーっ! やったぁ。やっと先生、私に食いついてくれた」

「え、いや、その」

 

 本当は初手からずっと理性が限界寸前だったとはいえない。

 神宮寺さんは嬉しそうに歩み寄るとアズキの耳元で、

 

「ざぁこ♡ ざぁこ♡ 小〇生の下着に反応しちゃってへんたーい♡」

「あうあうあうあうあうあう」

 

 アズキがほんと雑魚雑魚に反応する中、神宮寺さんはすっきりした顔をみせて、

 

「やっと言えたぁ。クーちゃんがこう言うと面白いよって教えてくれたのに、先生ってば全然言わせてくれないんだもの」

「むしろ言うチャンスしか無かったと思うのですけど」

 

 スタッグがつぶやく中、神宮寺さんは下駄箱から靴を履き替えて、

 

「先生、スタッグちゃんまた明日ー」

 

 って校舎を後にする。

 

「そういえばアズキ」

 

 彼女の姿が見えなくなった辺りで、スタッグがいった。

 

「先ほどの、神宮寺さんに協力するという話ですけどキクナさんにはどう伝えるつもりですか?」

「え? 協力しないけど?」

 

 アズキは断言。

 

「協力関係になれば三人の動向を掴めるはずだから、反対に危険に足を踏み入れないよう見張る予定」

 

 って、こちらの真意を伝えると、

 

「驚きました。アズキもちゃんと考えてたのですね」

「あのね、いや、うん」

 

 正直言い返したいけど、普段がスタッグ頼りなので何も言えない。

 

「あと、キクナはまだ三人を疑ってると思うから、信用させるためにも三人の動向を伝えないと」

「なんだか今日のアズキは別人みたいです」

 

 さらに驚くスタッグに、

 

「たぶんだけど、ここ数日の神宮寺さんに脅迫されるかもって恐怖から解放されて頭が冴えてるんだと思う」

「ずっと冴えてるままなら私も助かるのですけど」

 

 スタッグは嬉しそうにいった。

 

 

 なお、スタッグはまだ知らない。

 今日の夕方、アズキが通販で購入したSLR型ラストセーラーが自宅に届くという悪夢がこの後待ってるという事を。

 




サブタイトルは仮面ライダーディケイドのOP曲である「Journey through the Decade」より。
今更ですが、シルコ弄りでZakoをサブタイトルに入れてしまったのは失敗でした。

第3話はこれで終了になります。
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