メダロットHERMIT   作:CODE:K

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今回は一話完結の短編になります


SS 天国の島

 その日の体育はミニサッカーだった。

 

「それでは、試合を開始してください」

 

 生徒たちを五人一組のサッカーチームに分けて、スタッグの呼びかけでゲーム開始。

 アズキとスタッグ、

 

「そしてMs.ウォッカが審判役として、それぞれの試合をみてるんだ」

 

 と、なぜか割り込もうとしてきたロボトル協会公認レフェリーを名乗る不思議生命態をセレクトに通報して追い出し、二手に分かれて試合を観察した。

 

 なお生徒たちは全員体操服。

 この姿の女子小学生を好きなだけ拝めるのはあまりに幸福である。

 

 アズキの担当するコートでは、早速モッチーズが敵味方に分かれて戦っていた。

 

「うおおおっ」

 

 赤城くんが自身のメダロットに負けない熱いノリでボールを蹴り進む。しかしテンションに反して彼のドリブルは意外と遅い。

 ゲームや玩具の類で男の子らしい趣味を持つ彼だけど、その成績は眼鏡をかけた知的少年という第一印象通り座学に強い反面、体育は少々苦手なのだった。

 

 ここに、クワトロさんが敵チームとして立ちはだかる。

 赤城くんは、

 

「げっ」

 

 って露骨に嫌な顔をみせた。

 

 彼とは逆に、クワトロさんの成績は見た目とは全く一致しない。

 まず、小学生離れの爆乳である彼女が体操服なんて着たら、当然動きづらそうな山脈の存在感が半端ではない。

 

 さらに左右に分けたお下げの髪に普段みせる物腰の低さもあって一見鈍間なイメージ。

 

 しかし、クワトロさんは赤城くんに近づくと、涼しい顔で足を引っかけ、いとも簡単にボールを奪ってしまう。

 そのままゴールに向かってドリブルするクワトロさん。

 

 彼女の足は格別速いわけではなかったが、赤城くんの足はボールを蹴りながらのクワトロさんより劣る。

 

「くっそう」

 

 言いながら赤城くんは走るも追いつけそうにない。

 

「お、丁度いいくらいの相手がいるじゃねぇか。こんな女のボールなら俺でも取れるぜ」

 

 ここでクワトロさんに対峙したのは、赤城くんチームであるパーフェクトロクショウのマスター、葛切くん。

 

「赤城お前はひっこんでろ、俺は成績を上げたいんだよ。成績が上がったら先生から勝てる秘訣を聞けるからな」

「だめだよせ。お前では」

 

 赤城くんの制止を聞かず、葛切くんが突っ込んだ結果。

 

「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は奴のボールを奪ったと思ったらいつのまにか抜かれてた」

「おそろしく早いフラグ回収。オレでなきゃ見逃しちゃうな」

 

 赤城くんは「知ってた」って反応だった。

 

「何なんだお前は」

 

 葛切くんの言葉にクワトロさんは、

 

「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け?」

 

 えっ、懐かしい。

 

「私はクワトロ・チーゼス。それ以上でも、それ以下でも」

 

 クワトロさんが明らかに名前ネタな台詞をいう横を、

 

「ざーこざこざこざこボール」

 

 と、さらに神宮寺さんがボールを奪う。

 足の速さはこちらのほうが数段上のようで、クワトロさんは追いかけるも神宮寺さんはそのままゴール下まで一気にドリブルしシュートを決めてしまった。

 

「やったぁっ」

 

 はしゃぐ神宮寺さん。

 クワトロさんはいった。

 

「これが板さですか」

「って、私痛いキャラじゃーい!」

 

 即座に神宮寺さんは反応して喚くも、ちょっと言い辛そうに赤城くんが。

 

「いや、たぶんアレは胸板のほうだと」

「胸板?」

 

 神宮寺さんは一度きょとんとするも、その意味に気づくと、

 

「うわーん。フクのばかーっ! サイコロ葛切より足遅いくせにー」

「あいつより遅いは余計だろ」

 

 まあ、なんだろう。

 アズキは思った。

 

(この子たち、試合中ずっと喋りながら動いてる。さすが小学生という話ね)

 

 生徒たちの元気さを前にして、アズキもまだ五つほどしか離れてないのに老いみたいなものを感じてしまった。

 なお、

 

「なんで俺がディスられるんだよ! ってサイコロ葛切って何だよ」

 

 という葛切くんの叫びは無視された様子。

 

 

 

「あ、モッチーズのみんなちょっといい?」

 

 放課後。

 アズキは他のみんなが下校した教室にて、校舎に残ってお喋りしてる三人に話を持ちかけた。

 

「あ、先生」

 

 神宮寺さんが人懐っこい笑顔を向けて、

 

「どうしたのですか?」

「あ、うん」

 

 彼女は机の上に片足座りしてたが、今日は下着が見えそうで見えない。

 アズキは安心したようなちょっと残念な気持ちを覚えながら、

 

「今日のミニサッカーだけど、今回は私とスタッグでチーム編成決めたじゃない」

「何か問題でもあったのか?」

 

 言いながら赤城くんが神宮寺さんの前に立ち、見えそうで見えなかったスカートの内側が完全にアズキの視界から遮断させられる。

 

「実は前年度の実績とか成績とかを元に実力が拮抗するように組んだつもりだったんだけど、神宮寺さんが想定より凄すぎてバランスが崩壊しちゃって」

「あー」

 

 三人はそれぞれ納得の顔をみせる。事実、今日のサッカーは赤城くんと神宮寺さんがいたチームの全勝だったのだ。

 クワトロさんがいった。

 

「実は神宮寺さん、前の担任から嫌われてたせいで通知表の成績を一段階下げられてたみたいで」

「えっ」

 

 アズキは驚き、

 

『そんな事あるのですか?』

 

 ってメダロッチからスタッグもいう。

 アズキは続けて、

 

「けど、前担任が異動になった後、臨時の担任がつけた成績も低いままなのは」

「全員二か月以内で交代されちゃったので、誰も神宮寺さんの不当な成績に気づかなくて」

『アズキでさえ一か月経たずに気づいたのに、それは酷くありませんか?』

 

 スタッグの言葉に、クワトロさんは「はい」と苦笑い。

 おまけに、

 

「実は私、中学受験する予定だったのだけど、去年の内申点が悪かったせいで志望校が難しくなっちゃって」

 

 って、神宮寺さん本人は割と洒落にならない事をいう。

 さらに彼女のメダロッチからマゼンタキャットが、

 

『雑魚担任! アンタも教師ならシルコの成績なんとかしなさいよ!』

「がんばります」

 

 アズキはいった。しかし、この当たり障りない返事が癇に障ったようで、

 

『がんばるって何? そんな適当な態度でマスターの受験が失敗したらどうするのよ』

「そう言われても、はい分かりましたでオール五にするわけにも」

『誰がそこまで盛れと言ったのよ! 零か百でしか考えられないわけ?』

 

 って怒るマゼンタキャットにスタッグが、

 

『マゼンタキャットさん、メダロットなのにキャラが濃いですね』

『アンタにだけは言われたくないわ!』

 

 さらに怒るマゼンタキャット。しかし同意ではある。

 神宮寺さんが自分のメダロットを落ち着かせる中、アズキはいう。

 

「まあ、オール五はやりすぎにしても神宮寺さんの能力は私やスタッグには伝わってるから、そこは安心して」

「ほんと? よかったぁ」

 

 神宮寺さんは安心した様子をみせる。

 

『それでも、今日の体育みたいな問題はまだこの先も起こりそうですけど』

 

 と、スタッグ。

 

「じゃあ、まずリーダーの得意科目を教えてやったらどうだ? ここだけは五を外せないって先生にアピールするチャンスだし」

 

 赤城くんがいうも、神宮寺さんは一回考えてから、

 

「なんだろ?」

「え?」

「私、元々勉強嫌いだから何が一番ってわからなくて。頑張らなくてもテストで満点は普通だし」

「マジかあ」

 

 赤城くんが頭抱える。

 

「じゃあ逆に苦手なものは何があるリーダー?」

「それも、うーん」

 

 悩む神宮寺さん。クワトロさんが、

 

「あえて言うのでしたら、算数とプログラミングでしょうか?」

「いや、そこはクーが数字強すぎるだけで普通はリーダーも十分すごいんだよ」

「国語は、もっと問題なかったですね」

「逆にクーは問題あるけどな」

 

 で、悩む三人。

 少しの間、声をかけづらい空気が続いた後、

 

「まな板にしようぜ」

 

 赤城くんがいった。

 

「もうリーダーの苦手分野はまな板だ。まな板にし、まな板にしようぜ! まな板に、まな板にしたら! まな板にしようぜ! かなりまな板だよコレ!」

「嫌よ! そんなの絶対」

 

 神宮寺さんが叫ぶ。

 さらに涙を浮かべて、

 

「ねえ、クーちゃんはこんな結論にしないよね?」

 

 クワトロさんはここぞと淑やかな笑みで、

 

「赤城さん。でしたらここに性格ざぁこ♡も追加しませんか?」

「よし、完璧だ!」

 

 ガッツポーズをみせる赤城くんに、

 

「完璧じゃなーーーい!」

 

 ついに神宮寺さんが号泣。

 

「うわーん、先生、みんながいじめるーっ」

 

 その顔はまさにざこかわいかった。

 

 

 結果、神宮寺シルコの暫定成績は以下とする。

 勉強:5

 体育:5

 性格:ざぁこ♡

 ルックス:かなりまな板

 




サブタイトルはDASH島のテーマ曲で使われた「天国の島」より。
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