メダロットHERMIT   作:CODE:K

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4-3 我が心明鏡止水 されどこの掌は犬歯の如く3

「フフフ、怖いロボ? 恐れるがいいロボ」

 

 会場内から謎の安心感が漂う中、ロボロボ団たちの笑い声が響き渡る。

 

 アズキの目からみて、一応ロボロボ団たちは会場の襲撃に成功していた。スタンドという高い位置から四方を包囲し、会場の中心であるステージも制圧済。

 来場者の全員が人質にされたも同然で、本来なら相当危険な状況である。

 

 しかし、

 

「ファンシーロール。やっちゃって」

「はい」

 

 どこからか来場者のひとりが指示すると、一機のファンシーロールがロボロボ団にマスコットを投げつけた。

 しかもマスコットはロボロボ団に当たると爆発。

 

「ロボッ」

 

 会場内にいい音が響く中、攻撃されたロボロボ団のひとりは弧を描くように宙を舞う。

 

「痛てて、ロボ」

 

 ロボロボ団は一度倒れてから起き上がるも、

 

「いっけー! いっけー!」

「やっちゃえ、やっちゃえー!」

「きゃーっ! 汚物は消毒よー!」

 

 最初のファンシーロールを皮切りに、みんな好き勝手にロボロボ団を攻撃しだす。

 しかも、

 

「ちょっ! 待つロボ」

「メダロット三原則はどうなってるロボ?」

 

 と、ロボロボ団が指摘するように、本来メダロットは人間に危害を加えてはいけないとリミッターがかかってるはずなのに、なぜか今回は適用されてない。

 メダロットにとってロボロボ団は人間ではないかのように。

 

 ここで、

 

『アズキさん、聞こえますか?』

 

 キクナから連絡が入った。

 

『ドーム内でロボロボ団の襲撃を確認しました。いま現地にセレクトが向かってますから、時間稼ぎと鎮圧をお願いできますか?』

「あ、えっと」

 

 アズキは一瞬どう伝えるべきか迷いながら、

 

「なんかもう、こちらが何かする前に来場者たちがロボロボ団に直接攻撃してるのだけど。メダロットを使って」

『万一病院送りにしたら普通に警察沙汰ですから、なるべくロボトルで拘束するよう呼び掛けてください』

「よね」

 

 アズキは返事。しかし、どうすれば伝わるだろうか。

 スタッグがいった。

 

「ステージのロボロボ団を狙いましょう。相手のマイクを丁寧にお借りして私が呼びかけてみます」

 

 どうやら、マイクを持ってるのはステージに立つロボロボ団だけのようだった。

 アズキはうなずいて、

 

「わかった」

 

 と、スタッグを追いかける形でステージに向かう。

 一番狙いやすい位置にいるせいか、ステージの周りにはより多くのFSL型メダロットが群がっていたが、

 

「少しすみません」

 

 スタッグが断りを入れると、メダロットとそのマスターたちはすんなりロボロボ団の近くまで通してくれた。

 

「失礼します。マイクを貸していただけますか?」

 

 ロボロボ団の前に立つと、スタッグがいった。

 

「こ、断るといったらどうするロボ?」

 

 すでに乱暴されたボロボロ団、じゃなかったロボロボ団がいうとスタッグはわざとらしく慎ましやかな態度で、

 

「その時は、箒で脳天を叩き割」

「どうぞロボ!」

 

 片膝をついてマイクを贈呈するロボロボ団。当たり前である。

 

 なお人数は二名で、どちらも女性だった。全身タイツに身を包んだ姿は女性ならではの体つきをしっかり強調し、ロボロボ団なのに色っぽい。

 ただ、この二人組だけどアズキはどこかで見た気がするのだ。

 

 背丈やプロポーションから受け持ちの生徒たちより年上なのは間違いないけど。

 

「ありがとうございます」

 

 スタッグはマイクを受け取ると、

 

「皆さん、一旦攻撃を中止してください。信じられないと思いますけど、ロボロボ団に対する物理的攻撃は普通に傷害罪にあたります」

 

 周囲の反応は「えぇーっ」という驚きと「あっ」という気づきで半々だった。

 ならどうすれば、と声が聞こえだしたのでスタッグはすぐ続けて、

 

「現在セレクトがこちらに向かっています。できれば出口を塞いだうえでロボトルによって袋叩きをお願いします。メダルを失えばロボロボ団は何もできません」

 

 なんか今日のスタッグは妙に毒々しい気がする。たしかに彼女は意外とロボトルでやんちゃな戦いをするタイプではあるけど。

 

「フフッ」

 

 突然、ステージのロボロボ団が笑い出した。

 なにかと思うと、彼女たちはスタッグを指さして、

 

「ロボトル、と言ったロボね? だったら我々は、二対一でロボトルをしかけるロボ!」

「え?」

 

 ってスタッグが反応する中、今度は巨大モニターの映像が急に歪みだして、

 

『ボンジュール。合意とみてよろしいかい?』

 

 Ms.ウォッカのツンドルがバストアップで映し出された。

 しかも今回はフランス語だった。

 

「あっ! やられました」

 

 スタッグがいった。

 アズキは「えっ?」となって、

 

「どういうこと?」

「公認レフェリーのついた真剣ロボトルになってしまうと、数の暴力で袋叩きにするのが困難になってしまいます」

 

 スタッグ、そんなに袋叩きにしたかったの?

 

「フフフ、その通りロボよ」

 

 ロボロボ団が得意げに笑う。

 が、ここで。

 

「ちょっと待った!」

 

 言いながら赤城くんとブルーティスがステージに乱入してきた。

 

「スタッグはまだ合意してないよな。だったらオレがスタッグと組んで二対二だ。それくらいはいいだろ?」

「ちょ、なに勝手なことをロボ!」

 

 ロボロボ団は抵抗の意志をみせるも、

 

『ハラショー、乱入を許可するよ』

 

 ウォッカはいった。

 

「ありがとうございます。赤城さん」

 

 スタッグが頭を下げて感謝を伝える。

 

「まあな。スタッグならロボロボ相手なんて二対一でも余裕だろうに数で有利を取られて焦ってたから、何かあると思ったんだ」

 

 赤城くんがいった。

 たしかに言われてみると。

 

「それは」

 

 スタッグは肯定すると、メダロッチを介して小声で、

 

『今の姿は飛行メダロットですから、さすがに対空射撃を持つゴーフバレット相手では分が悪いと思って』

「あ、そっか」

 

 アズキと赤城くんは納得する。

 この会話をロボロボ団に聞かれては不味いのでそれぞれ小声ではあるけど。

 

「くっ、ガキのせいで数の有利は叶わなかったけど我々には切り札があるロボよ」

 

 ロボロボ団はいった。

 

「実はここに来る前、ステージで発表予定だったと思われる新型メダロットの回収に成功してきたロボ」

「えっ」

 

 それって、ネットで噂されていた新型のFSLメダロットのこと?

 

「見るがいいロボよ。これぞ最新FSL型ファンシーベール!」

 

 といって二名のロボロボ団は同時にメダロットを転送する。

 

 こうして現れたのは、男型。

 筋肉隆々のマッチョマンが白とピンクの魔女っ子コスチュームを纏いステッキを握る、見る者に吐き気を催させる冒涜的なメダロットだった。

 

「ひっ」

 

 同時に四方を包囲するスタンド側のロボロボ団も同様の変態メダロットを呼び出したらしい。辺りから来場者たちの悲鳴が響く。

 

「こ、これは」

 

 アズキは思った。

 TMZ社だ。これは間違いなくTMZ社の凶行だって。

 

 メダロット開発の最大手であるメダテックに対し、TMZ社はジョークのようなメダロットや、色んな意味で変態の発想としか思えない機体を作るので有名だ。

 普段スタッグが使ってるセーラースタッグだって、コンセプトはソニックスタッグを女型にTSさせるって変態の発想で生まれた機体なのだ。

 

(あれ、待って)

 

 もしかして目の前のファンシーベールも、スタッグと同じく性別を逆転させたTSシリーズなのでは。

 以前、TMZ社が他にもTSメダロットを開発してると聞いたことがあるのだ。

 

 怖いのでアズキは考えるのをやめる。

 

『それは正しい判断だよ』

 

 ウォッカが言った。

 心を読むのも、今回だけは正解だと追い打ちをかけるのもやめて欲しかった。

 

『ハラショー。これより、紅下アズキ・赤城フクカゼペア対ロボロボ団二名の真剣ロボトルを始めるよ』

 

 ウォッカが宣言すると、互いのメダロットはそれぞれパートナーと並び立ち、相手に向かい合う。

 

「リーダーはスタッグでいいな?」

 

 赤城くんが小声でいった。

 

「うん」

 

 アズキはうなずく。この会話はメダロッチを介してスタッグたちにも伝わり、

 

「分かりました」

「分かりました」

 

 スタッグとブルーティスがそれぞれ返事。

 

『うらーっ、ロボトルファイト!』

 

 戦いが始まった。

 

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