メダロットHERMIT   作:CODE:K

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4-4 我が心明鏡止水 されどこの掌は犬歯の如く4

 

 

「いくロボ、ファンシーベール」

 

 ロボトル開始からすぐ、相手メダロットの一機はスタッグに向けて真っすぐ低空飛行で接近してくる。逆にスタッグは珍しく一歩遅れたのをみて、

 

(あれ?)

 

 とアズキは違和感を覚えた。

 そういえばスタッグって普段以外の体で戦ったことってあるのだろうか。

 

 他の機体に扱い慣れてない。そんな疑惑はすぐ確信に変わった。スタッグは相手が振りかぶるステッキを避けきれず手持ちの箒で受け止めたのだ。

 性能上はむしろ今のほうが回避力が高いというのに。

 

「うぅっ」

 

 スタッグ自身にとっても受け止めたくない事態だったのだろう。声色から彼女の心情が伝わってくる。

 それでもスタッグは箒で相手の攻撃を強引に弾こうとするも、

 

「パルランチェスト!」

 

 ここで後ろにいたもう一機のファンシーベールが、衣装越しの胸筋を強調したポーズをとって発光。

 力負けしかけていた前方の敵機がその光を浴びると、逆にスタッグの箒を弾き、ステッキではなく腕の筋肉から無数の光弾を放ち、スタッグは被弾。

 

 アズキはすぐに、

 

「スタッグ、大丈夫?」

「はい。至近距離で筋肉モリモリを見せられて精神衛生的には辛いですが、それ以外は平気です。次はありません」

 

 スタッグは返事。

 しかし、ここで後ろの敵機が向かってきたのだけど、

 

「次こそは」

 

 自分に言い聞かせるように呟くスタッグの動きが止まった。

 スタッグは軽く動揺した声で、

 

「体が、動かな」

「師匠ーーーーーーッ!!」

 

 敵の攻撃をまた受けてしまうと確信した矢先、ブルーティスが間に割り込み、ステッキを振ろうとした敵の腹を思いきりぶん殴る。

 赤城くんがいった。

 

「スタッグ、敵の右腕パーツはウイルスプログラムを搭載している。落ち着いてすぐ修復すれば問題ない」

「っ、わかりました」

 

 スタッグはハッとした様子で返事。

 

 実際、すぐスタッグは何かしら行動を起こしたのだろう。

 アズキもメダロッチでスタッグの状態を確認したけど、最初表示されていたウイルス症状がすぐ解除されたのを確認。

 

「ありがとう赤城くん」

 

 アズキがいうと、赤城くんは呆れ顔で、

 

「全くだよ。こんなペアにオレたちモッチーズが負けたなんて思わせないでくれ」

「すみません」

「ごめんなさい」

 

 アズキとスタッグはそれぞれ謝る。

 

「お返しです!」

 

 スタッグはすぐ最初に攻撃してきた敵機(以後A)に接近すると、頭部のプロペラを回転させてハート型のナノマシンをぶつける。

 これを見た赤城くんはすぐ、

 

「ブルーティス。木○葉旋風で攻撃だ」

「はい! 竜○旋風脚!」

 

 名称が違う。とはいえブルーティスはスタッグの攻撃を受けた敵機Aに先日のロボトルでも見せた跳躍回し蹴りを放った。

 

 敵機Aは防御行動がとれずブルーティスのキックをそのまま受ける。

 なお、ブルーティスの蹴り技は空中で連続スピンとはいかず、一度着地してから跳躍回し蹴りを繰り返すという本当に子供が真似したような竜○旋風脚だった。

 

 実はいまのスタッグから出るハート型のナノマシンにはプログラムバグが仕込まれている。

 ぶつけた相手に強制インストールされ、いくつかの行動をエラーさせる。スタッグが受けたウイルスとほぼ同質の攻撃である。

 

 今回はこのバグによって防御行動にエラーが出てるのだろう。敵機Aはブルーティスのキックを見事に全てノーガードで受けていた。

 

 ところで言い訳込みの余談をいうと、

 本来FSL型メダロットは頭部パーツに相手の変調を催す攻撃を持つのが基本でステッキや箒にそういった機能は持ってない。

 

 だからアズキは敵機ファンシーベールの攻撃内容を読み間違えたのだ。たぶんスタッグも同様。

 FSL型の基本構造は頭に症状攻撃、右腕に鈍器、でもって左腕はロボトル前に散々ロボロボ団をボロボロにしたアレである。

 

「ブルーティス。一度しゃがめ」

「はい、マスター」

 

 赤城くんの指示にブルーティスが素直に従う。この時点でアズキは何の意図にも気づかなかったけど、

 

「スタッグ。ナパームだ」

 

 赤城くんがまさかのスタッグに指示。

 

「え? あ、はい」

 

 スタッグは敵機Aにマスコットを投擲して追い打ち。

 マスコットは投げられた勢いに加えて背中につけたロケットで加速。敵にカミカゼアタックして爆発した。

 

「ま、待つロボ! そっちのファンシーエールは中身クワガタでしょ? クワガタは射撃スキルは苦手なはずロボよね?」

 

 ロボロボ団がスタッグに向けていう。たしかに相手の言ってることは間違ってないのだけど。

 

「私、よく戦闘に投擲を使ってますから」

 

 スタッグはいった。

 

 ゴーフバレット戦ではマイクロミサイルを掴んで投げ返した。

 クワトロさん戦では石を相手のカメラアイにぶつけて照準をぶれさせたり、機能停止した左腕の一部を切断して投げぶつけた。

 神宮寺さん、赤城くんとの時はブルーティスの片足を投げ槍にしたり、スタッグって実はロボトルで色んなものを投げてるのだ。

 

 これには今回指示した本人である赤城くんでさえ若干納得してない顔で、

 

「スキルではなくアートです理論かよ」

 

 で、ロボロボ団が、

 

「ずるいロボ、ズルいロボー」

 

 なんて嘆く。

 

「うわあっ!」

 

 が、ここでブルーティスから苦痛の叫びがあがる。

 もう片方のファンシーベール(以後B)にステッキで殴られ、ウイルスの光弾を受けてしまったのだ。

 

「ブルーティスさん!」

 

 すぐスタッグは両手で箒を握り、敵機Bを殴りつけた。

 しかし攻撃は相手の肩に当たったものの、ダメージが浅いように映る。

 

 すぐ敵機Bはボディビルダーなポージングを取りスタッグに腕の筋肉を見せるも、スタッグはBを足蹴にしながら空を飛ぶ。

 さらに箒のスラスター機能を前方に使用して後退。敵の筋肉から光弾は放たれるも射程は短くスタッグには届かない。

 

「スタッグの一撃があまり響いてないような」

 

 アズキが呟くと、一旦近くまで戻ってきたスタッグが、

 

「ごめんなさい。あまりに気持ち悪くて生理的に力が出なくて」

「おそらくですが」

 

 ウイルスを解除したブルーティスが、ファイティングポーズから左右の腕で敵機Bを殴りながら、

 

「このマッチョはチャームを持ってます」

 

 チャーム。

 脚部特性のひとつで、その色気や魅力で異性メダロットから受けるダメージを軽減する事ができる。けど、

 

「うわっ」

 

 アズキでも誰でもなく、このロボトルを見守ってた来場客でさえなく。ファンシーベールを操っているロボロボ団ご本人が思わず呟いた。

 で、相手の反応は無視して赤城くんが、

 

「過去最悪のチャームだな」

 

 アズキとスタッグはうなずく。

 ただ、チャームならいまのスタッグ、ファンシーエールも持っているから条件は相手も同じはず。アズキは思っていたのだけど、

 

「しかも相手の頭部は味方の攻撃力を上げるサポート系のようだ。素で殴り合ったらこちらのほうが不利だ」

 

 って赤城くん。

 そういえばBのファンシーベールが胸筋を光らせた結果、光を浴びたAにスタッグが力負けしていた。

 

「分かりました」

 

 スタッグはいい、手持ちの箒に跨る。

 

「よくも悪くもチャームの影響を受けないブルーティスさんをいかに護り、攻撃の要にできるかが勝負の鍵ということですね」

 

 スラスターを起動して勢いよく戦場に戻ったスタッグは、そのまま敵機Aにわざと衝突して箒の柄で刺突。

 まさにBと連携でブルーティスをリンチしようとしていたAは鳩尾を抱えて倒れ、スタッグは衝撃で箒から弾き出されるも普通に箒なしで空を飛ぶ。

 

 ブルーティスと合流したスタッグは、さらに敵機Bの首に胡坐をかくように両脚で組みつき、重力落下も使い横向きに回転して敵の頭部を直接ねじ切ろうとした。

 

「うわ、スタッグそれ使うの?」

 

 アズキがドン引きしてると、赤城くんが。

 

「先生? あれも漫画か何かの技なのか?」

「うん。グ○ップラー刃牙の烈海王ってキャラは聞いたことない?」

「悪い範囲外だ」

「そっか。そのキャラが使う転蓮華って技なんだけど、内容は見ての通り」

 

 アズキが説明する中、漫画の題名じゃないけど「バキッ!」って何かが盛大に折れる音が鳴って、

 

『ファンシーベールB機能停止』

 

 ウォッカから宣言。

 あっさり倒してしまった。ブルーティスが攻撃の要とは一体何だったのか。

 

 さらに起き上がった敵Aのステッキを避けながら、再び敵を踏み台にして空に移動。

 相手も飛行型なので空を飛んで追いかけ、二人組の天使を模したマスコット、いや爆弾を射出した。

 

 追尾機能持ちと判断したスタッグはすぐ自分のマスコットを投げ当てて誘爆。

 ダメージを爆風だけに留める。

 

 相手は煙の中から飛び出し、左の拳で直接殴りかかってきた。

 スタッグは頭のプロペラを回転しハート型のナノマシンを射出。相手に緊急回避させる事でスタッグも拳を回避。

 

「師匠、箒です」

 

 床に転がってた箒をブルーティスが投げてくれた。

 スタッグは箒をキャッチし、

 

「ありがとうございます」

 

 そのまま、下から振り上げる。

 

「おオッ!」

 

 脚部に当たって敵ファンシーベールは悶絶。なお当たった場所を詳しくいうと、

 

「相手が人間だったらここでノックアウトだったのですけど残念です」

「わざわざ言うロボ?」

「恐怖を煽るのも戦術でしょう?」

 

 スタッグは涼しい顔していった。つまり金的である。

 

「オオオッ!」

 

 激昂したファンシーベールがスタッグに襲い掛かった。

 右腕でパンチ。スタッグは体を逸らして避け、筋肉が光りはじめた腕を箒で弾いてウイルス攻撃も回避する。

 

 さらにキック。

 が、スタッグは体中のスラスターを駆動した三次元機動で逃れ、そのまま相手も三次元の動きで殴る蹴るを繰り返すもスタッグはその全てを回避。

 

 赤城くんが、

 

「スタッグはもう今のパーツを使いこなしてるみたいだな」

「うん」

 

 アズキはうなずく。

 最後に相手はマスコット爆弾を撒きだしたが、スタッグは高く上空に逃げながら自身のマスコットをそのまま下に落して対処。

 

 巻きあがる爆風の上でスタッグはいった。

 

「いちど、言ってみたかった台詞があります」

 

 そういってスタッグはマスコットをふたつ出すと背後に投げる。

 同時にウォッカを映していたモニターはスタッグの姿に切り替わり、大画面の前で彼女は両手で大剣を構えるサ○ライズ立ちを箒で披露。

 

「ナパームは、こうやるんです!」

 

 なんか変なこと言いだした。

 スタッグの背でマスコットが爆発し、ふたつの煙が翼を演出。スタッグは衝撃を利用して急降下し、敵を箒で思いっきりぶん殴る。

 

 さらにスタッグは箒のスラスターを起動。

 発射口の穂先が相手に向いてる、どころか現在進行形で腹に殴りつけた状態の零距離からエネルギーを放出して、ファンシーベールを一気に床に叩き落とした。

 

 チャームの効果なんてお構いなしな全力全開の一撃。これをモニターの大画面で映されたのもあって辺りは大歓声。

 しかも、後で知った話だけど「ナパームは」って台詞は魔女っ子戦士ファンシードの台詞をアレンジしたものだったらしい。

 

 気づいた人は余計に興奮した事だろう。

 ただ、

 

(あれ?)

 

 落下の衝撃が凄まじくファンシーベールが爆発を起こし、ステージに煙が上がる。なのにウォッカからは一向に機能停止の判定が出されずにいたのだ。

 もしかして、相手はまだ頭部を破壊されてない?

 

(スタッグ、気をつけて!)

 

 アズキはスタッグに目を向けるも、すでに彼女は気づいてるようで左手でマスコットを握り、いまにも真下に投げつけようとしていた。容赦ない。

 けど、

 

「ブルーティス」

『はい』

 

 ふと耳に入った、赤城くんとメダロッチ越しに返事するブルーティスのやり取り。

 さらにブルーティスが何やら構えだしたのを見て、

 

「スタッグ?」

 

 気づくとアズキは、すごく遠慮がちに、自分でも何言ってるのか分からないまま言っていた。

 

「えっとその、もし余裕があったらでいいんだけど。攻撃中断して待機できる?」

『え?』

「ナパームじゃなくて箒を構えて、いつでも迎撃できる準備に入れたら、その」

『アズキ? わかりました』

 

 受け入れてくれた。

 

 スタッグはマスコットを左腕の操縦席に戻して、かわりに右腕の箒を両手持ちで構えた。

 程なくして、煙の中からファンシーベールが飛び出しスタッグに襲い掛かる。

 

 アズキはいった。

 

「スタッグ! アレをブルーティスにパスして!」

『はい!』

 

 スタッグは箒を振りかぶって迎撃。

 殴り飛ばされた相手が、ブルーティスの下に殴り飛ばされる。

 

 赤城くんが吠えた。

 

「ブルーティスッ!!」

「はいっ!!」

 

 走るブルーティス。

 

 同時に、今度はモニターの大画面がブルーティスに切り替わり、さらに会場内に大音量のBGMが流れ出す。

 たしかこの曲は、魔女っ子武闘伝Gファンシーのもの。我が心なんたらとかいったはず。

 

 赤城くんとブルーティスが叫ぶ。

 

「いくぞブルーティス! オレの犬歯が!」

「真っ赤に燃える!」

「勝利を掴めと!」

「バウワウ叫ぶゥゥ!」

 

 犬の顔を模したデザインの、ブルーティスの左腕がファンシーベールを掴む。いや噛みついた。

 

「パワーハンマー! ケモノアギト起動!」

「はあアアアッ!! ばくねつうッ! ドッグフィンガー!!」

 

 ファンシーベールの体から、牙が食い込んで生まれた裂け目が広がっていく。

 最後に、

 

「ヒィィィト!」

「エンドッグ!」

 

 ブルーティスの左腕は、ついにファンシーベールを噛み砕き、

 

『ファンシーベール機能停止。この勝負、アズキ・フクカゼペアの勝利とするよ』

 

 今度こそ、ウォッカから判決が下される。

 

「おっしゃあ! オレたちの超必殺、決まったぁーーーっ!!」

 

 赤城くんは拳を振り上げ、ジャンプまでして喜んだ。

 ポロシャツ一枚だったせいで、おへそが見えた。

 





[機体名]
ファンシーベール
[型式番号]
TMZ-FSL-TS00
[性別]
筋肉モリモリマッチョマンの変態
[パーツ]
◆頭部:パルランチェスト(補助/アタックブースト//4回)
◆右腕:マジカルセップス(格闘/ウイルス/)
◆左腕:テロレタスプレッド(射撃/ナパーム/ねらいうち)
◆脚部:ハッフンヒップ(飛行/チャーム)
●HV:0/0/0 合計:0/3
[使用者]
ロボロボ団
[備考]
当作品のオリジナル。
名前と(あくまで)外見の元ネタは「魔法少女プリティ☆ベル」の主人公(ボディビルダー)だけど、型式番号ではFSL00ファンシーロールのTS機体となっている。
性能面では、
頭部パーツにはメダロットDUAL、ガールズミッションのファンシーロールで採用されたメダロットS未実装のアタックブーストを採用。
かわりに右腕のステッキがウイルスとなり、酷いことにこちらのほうがオリジナルよりも若干魔法のステッキらしくなっている(ただし魔法は筋肉から出る)。
脚部はメダロットS以前の脚部特性であるチャームが使われている。……チャーム?
なお外見設定上Hvリミット0は無いだろうという事で、Hvリミットは3まで引き上がっている。
[アタックブースト]
メダロットDUAL、ガールズミッションで存在していたスキル。
味方全体に格闘・射撃パーツの威力を上昇させる症状を付加する。
ファイトブースト、シュートブーストの威力上昇のみを纏めた反面、成功の上昇はない。
※このスキルはメダロットSにて同名のスキルが実装次第、内容を差し替える可能性があります。

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