メダロットHERMIT   作:CODE:K

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1-2 Days of Typhoon2

「な、なにしに来たロボ!」

 

 全身タイツ姿のロボロボ団たちは、アズキやセレクトを前に慌てながらいった。

 ポテチの袋片手に。

 

(むしろ私のほうが何にしに来たのって言いたい。という話だけど)

 

 わざわざ深夜の学校に不法侵入までして。

 アズキは心の中で突っ込んでから、おもむろにスタッグの隣に立って、

 

「スタッグ、これのどこが酷い光景なの?」

「そこは失礼しました。あまりに馬鹿らしい光景が広がっていたもので私も思考が真っ白になってしまい」

「まあ、気持ちは分かるけど」

 

 逆にこの緊迫した状況からの落差に脱力しない人がいたら見てみたいほどだ。

 

「ロボロボ団! 無断で深夜の学校に侵入した挙句、校内の書物を菓子類で汚しながらの宴会騒ぎ。許さないであります」

 

 いや、目の前に脱力しない人たちがいた。

 セレクトたちはこの状況の中でもブレずに、むしろブレなさすぎて彼らもギャグに見えてしまう台詞を大真面目に言い放つ。

 

「こ、こうなったら返り討ちロボ」

 

 ロボロボ団たちは一斉に腕のメダロッチを掲げて、

 

「メダロット転送ロボ」

 

 と、計五体のメダロットをこの場に呼び出した。

 そのうち四体は、コウモリの姿をした飛行メダロット「ゴーフバレット」で、残り一体はシャチホコのようなポーズをとった名前の分からない魚型メダロット。

 

 残念ながら、見たところアズキが見たお姫様メダロットは見当たらない。

 

「メダロット転送であります」

 

 先に突入したセレクト三名もメダロットを呼び出した。

 現れたのはどれも両腕に針を持った蜂モチーフのメダロット「プロポリス」。

 

 しかも正規のロボトルじゃないからって、相手がひとり一体しか出してないのにセレクト側は三体ずつ。計九体もの蜂メダロットが並んだ。

 正義のやる事じゃない。

 

「これで数の上では圧倒的に我々の有利。プロポリス、いくであります!」

 

 誰かが合図を鳴らずともロボトル開始。

 

 相手のゴーフバレットは魚メダロットの前方で隊列を組んでるので、まずプロポリスは四機に狙いを定め飛び掛かる。

 が、敵機はプロポリスの刺突攻撃を軽やかに回避。逆に、

 

「ゴーフバレット! 対空射撃ロボ!」

 

 ロボロボ団の指示を受けたゴーフバレットは両腕のランチャーから複数のマイクロミサイルを発射。

 

「あっ」

 

 相手の攻撃をみてすぐ、スタッグが叫んだ。

 

「これは、駄目です!」

 

 しかし彼女の叫びはすでに遅く、ミサイルの雨は正確にプロポリスを追尾しては一発また一発と着弾し、爆発していく。

 

「プロポリス!」

 

 セレクトの叫びも空しく、いきなり四体。ほぼ半分のプロポリスが機能停止し床に落下した。

 アズキは驚き、

 

「スタッグ、これって」

「間違いありません。あのメダロットの攻撃は飛行機体に対し高い成果を発揮するアンチエア仕様になってます。けど、多分それ以外にも何か」

「というと」

 

 アズキの問いにはスタッグより先にアズキと行動を共にしていたセレクトが、

 

「ロボロボ団のメダロットが俊敏すぎる。飛行メダロットが室内であれだけ動けるのはおかしいであります」

 

 言われてみると。

 

 セレクトの出したプロポリスは天井の存在や机に棚といった障害物で自由に動き回れないのに対し、相手のゴーフバレットにはそれがない。

 まるでホームグラウンドと言わんばかりに縦横無尽の動きを見せ、次々とセレクトの蜂を撃ち落としていく。

 

「マスター。原因はあの魚メダロットです」

 

 残ったプロポリスがいった。

 すでに最後の一機だった。

 

「奴から重力コントロール波が出てるのを確認しました。おそらく、これが敵機の自由な移動力を可能にしうわあ!」

 

 が、報告の最中ゴーフバレットのミサイルを浴びて機能停止。

 ロボトル開始から間もなくして、スタッグひとりを残しこちら側のメダロットは全滅してしまっ

 

「やるしかないね。いけるスタッグ?」

「はい」

 

 アズキの問いにスタッグはうなずくも、

 

「待ってくれ」

 

 アズキと行動を共にしていたセレクトがいった。

 

「子供に無茶はさせないと最初に言ったであります。ここは我々に任せて欲しい」

 

 と、セレクトはメダロッチを操作。そういえば彼はまだメダロットを転送してなかったのだ。

 

「わかりました」

 

 アズキがいうと、セレクトはメット越しに笑顔を向けてから、

 

「メダロット転送。プロポリス!」

 

 やっぱりプロポリスを三機出すのだった。

 

「うわぁ!」「ぬわーっ!」「ぎゃあ!」

 

 で、前のプロポリスたちよりは頑張ってくれたものの、やはりゴーフバレットに一撃も与えられないまま対空射撃の前に倒れる。

 

「ぐっ、すまないであります」

 

 膝をつき、悔しそうにいうセレクト。

 

「これで残すは一体だけロボ! ゴーフバレット大勝利、希望の未来へレディロボーだロボ!」

 

 ロボロボ団たちは勝ちを確信し喜びを口にする。

 が、すぐ「ロボ?」と首をかしげた。

 

「最後のセーラー服メダロットはどこロボ?」

 

 というのも、スタッグの姿が図書室から消えていたのだ。

 

「まさか逃げたロボ? 逃がさないロボ、探すロボ!」

 

 ロボロボ団の指示によって敵メダロットたちは室内を捜索をはじめる。

 そんな中、一機のゴーフバレットは低空に浮かんで直立したままロボロボ団の指示に反応せず、

 

「な、なにしてるロボ。早く動くロボ!」

 

 叫ぶロボロボ団。

 その刹那であった。ゴーフバレットの頭部がゆっくり胴からずれ始め、

 

「ろ、ロボ?」

 

 敵機はそのまま床に落ちて機能停止。

 よく見ると、背後には右腕でゴーフバレットの首をはねたスタッグが輪郭だけの姿で立っていた。

 

 スタッグの頭部には光学迷彩(ステルス)機能がついてるのだ。

 

「なっ」

 

 と驚愕するロボロボ団。

 スタッグはいった。

 

「セレクトの皆さんありがとうございます。おかげで全ての準備が完了しました」

 

 直後には彼女の輪郭さえも視認できなくなる。

 次に発見したのは開けっ放しの窓を足場にジャンプする瞬間で、スタッグは上空のゴーフバレットに肉薄すると、今度は左手の甲を敵機の脳天に叩きつける。

 

 落下の衝撃で二機目のゴーフバレットも機能停止。

 

「しゃ、射撃攻撃ロボ!」

 

 残りの二機が多量のミサイルを射出するも、スタッグは飛行メダロットでないせいか、または単純にロックに失敗したせいか攻撃はスタッグに当たらない。

 

 逆にスタッグは向かってくるミサイルを一本掴むと相手の脚部に投擲。

 自分が射出したミサイルの爆発で飛行機能が損傷した敵機はなんとか床に着地するも、待ち構えていたスタッグが右腕を突き出す。

 

 手首から伸びたソードが杭打ち機のように敵の頭部を貫き、これで倒した数は三機。

 

 いまも輪郭しか視認できないが、敵機を次々に撃墜する彼女の動きはとても軽やかで、室内を激しく動き回ってるのに足音をまるで立ててない。

 脚部の性能もあるのだろうけど単純にスタッグの実力が高いのだ。

 

 結果。最後のゴーフバレットは勝てないと判断したようで、ロボロボ団のひとりを背に抱えると窓から脱出してしまった。

 

「あ、ずるいロボ!」

 

 残ったロボロボ団のひとりがいうも、すでに遅い。

 アズキはいった。

 

「残りはあの魚一匹だけ。スタッグ」

「はい」

 

 うなずき、スタッグは最後の敵機に飛び掛かる。

 

「まだ終わらないロボ、ピスケス! メダチェ」

 

 ロボロボ団がなにか指示しようとしてたが、その前にスタッグは最後の敵メダロットを切り伏せていた。

 

 

 

「にしても、結局ロボロボ団と一緒だったあのお姫様メダロットは何だったんだろ?」

 

 翌々日。

 アズキは自室のベッドに寝ころびながら、先日の任務を思い返していた。

 

「絶対に似合うと思ったのに、スタッグもそう思うでしょ?」

「私は実物を見てませんから」

 

 スタッグはアズキの隣で不機嫌そうにいった。

 アズキは悔しげに、

 

「頭にティアラみたいな装飾がついてて、脚部がドレス姿だったのよ」

「そうですか」

「気品があって、清楚みたいな感じもあってロボロボ団には絶対似合わない。ってスタッグ聞いてる?」

「そうですか」

 

 明らかな生返事に、

 

「どうしたの一体」

 

 と、アズキがきいてみると、

 

「いまの私を前にして、本当に何も分かりませんか?」

 

 スタッグは、あの時に戦った魚の姿をしていたのだ。

 

 アズキの所属は、TMZ社を母体とするメダロット研究施設のエージェントである。

 今回の任務はセレクト側の仕事であるロボロボ団の逮捕に協力し、見返りとして彼らのメダロットを回収することにあった。

 

 結果、ピスケスという魚型メダロットの入手に成功。

 先述の通りアズキはスタッグを可愛く着飾る趣味がある。

 

 可愛いメダロットが手に入ると鑑賞目的で換装する事が度々あり、今回もせっかくなのでスタッグに着せてみたのだけど。

 

「もういいですか?」

 

 さすがに限界とばかりにいうスタッグにアズキはうなずき、

 

「うん。今回は失敗だったわ」

 

 といってスタッグにパーツを転送。元のセーラースタッグの姿に戻す。

 

「やっぱり、スタッグはこの姿が一番安定して可愛いよね」

「そう思うなら、すぐ私を着せ替え人形にするのやめてください」

 

 ようやく人型に戻れたスタッグは、呆れのあまり脱力した様子でアズキのベッドに腰かける。

 

「さすがに今回は換装されないと思ってました」

「そこはごめん、ほんとに」

「まあ、アズキの思い付きや暴走には慣れてますけど」

 

 といってから、スタッグはふと思い出したように、

 

「そういえばセレクトが男ばかりで助かりましたね」

「まるで人を男好きみたいに言わないで」

 

 アズキは半眼で言い返す。

 

「むしろ逆なの知ってるでしょ」

 

 逆というのは男嫌いという意味ではない。

 

「そうですね」

 

 スタッグはいった。

 

「実はレズでロリコンのド変態さんですものね」

「す、ストライクゾーンが広いだけだから」

 

 アズキはなんとか言い返すも、

 

「おかげで思春期、いえ発情期を必死に隠してる男子中学生みたく挙動不審になるアズキを毎回サポートする私の身にもなってくれると嬉しいのですけど」

「うっ」

 

 そこを言われてしまうとぐうの音も出ない。

 全部事実なのだから。

 

 そもそも本来アズキは口下手でコミュ障な性格なのだった。

 

 当時セレクトはクールで堂々としてると褒めてくれたが、実はこれも感情表現が苦手なだけ。意識して態度を隠すのも下手なのでポーカーフェイスでさえない。

 だから可愛い女の子を前にすると目は泳ぐし、心臓バクバクするし、内心では浮足立ってたりする。

 

「ですから周りが男ばかりで今回は楽な仕事でした。アズキもガワは綺麗ですから、今度はそちらの心配もあるにはありますけど」

 

 スタッグはいった。

 正直マスターなんかよりよっぽどクールで堂々としている。

 

「たぶん押しも弱いほうだから何かあったら助けてね」

「はいはい。手の掛かるマスターでほんと大変です」

 

 セーラースタッグの存在しない口元がやさしく緩んだ気がした。

 

 

 なんて、ほっこりしかけた空気を自らぶち壊す形になったが、

 

「だからスタッグ、次はこれという話ね」

 

 アズキはパーツを転送し、スタッグを別の姿に換装する。

 

「え?」

 

 ってスタッグが反応したとき、彼女はプロポリスとはまた別の蜂メダロットの姿に変わっていた。

 

 機体名「スイートネクター」。

 蜂を幼い女の子に擬人化させたマスコットのような姿をしており、ピンクを基調とした縞模様のフードとワンピースドレスで蜂の造形を表現している。

 羽も生えており、いまの彼女はまるで、

 

「妖精」

「やめてください」

 

 中身はスタッグなので、ファンシーな姿に変わって喜ぶなんてことは一切なく本気でげんなりしている様子。

 

「それによりによって。蜂タイプは味方側で二桁も撃墜される姿を見させられてあまり良い印象がないのですけど」

「うん。その二桁の断末魔が耳に焼き付いちゃって」

 

 アズキの言葉にスタッグは、

 

「最悪です」

「プロポリスには興味ないから代用に同じ蜂タイプで可愛いのを探したのよ」

「変態」

 

 普段とは違う幼さ全開な見た目まま、じとっとした視線を向けられ、

 

「ごめん。もう一度変態って言ってくれる? その蔑むような目のまま」

「『ような』ではなく本当に蔑んでるのですけど」

「小さな女の子にゴミを見る目を向けてもらって、そのうえ罵倒してもらうのはスタッグじゃないと無理なのよ。しかもご褒美をもらっても逮捕されない」

「セレクトに通報すればよろしいですか?」

「ごめんなさい」

 

 アズキは謝る。

 

「あと今大事な事に気づいた。蜂少女の悲鳴を求めて最高のロリタイプ機体に巡り合えたのに。スタッグを虐めたりわざと負けロボトルするなんて無理」

「すでに精神的にいじめ抜いてるようなものですけどね」

 

 なんてやり取りしてる時だった。

 突如、メダロッチから一本の電話が届いたのだ。

 

「わっ」

 

 びっくりした。アズキは驚きながら鳴り響くメダロッチを確認。相手は所属先の研究施設からだった。

 アズキは応答に出て、

 

「はい、紅下です」

『お疲れ様ですアズキさん』

 

 相手は名乗らなかったが、その声からすぐ、

 

「キクナもお疲れ様」

 

 とアズキは返す

 性別については後々。キクナは来月から同じ高校に通うひとつ下の後輩で、仕事のエージェントとしては同僚にほぼ近い関係の先輩といった子である。

 

『次の任務が入りましたですよ。共同作戦です』

 

 キクナはいった。

 

『一昨日アズキさんが潜入した小学校ですけど、今度は教師として潜入してください。なので今回は現地で生徒との接触も前提になりますですよ』

 

 

「え?」

 

 改めて。

 アズキはレズで、ロリコンのド変態である。

 

 繰り返す。

 アズキはレズで、ロリコンのド変態である。

 

 つい先ほどパートナーメダロットをロリ機体に換装して遊んでいた人間に、たったいま出てはいけない任務が下されたのだった。

 

 





[機体名]
セーラースタッグ

[型式番号]
TMZ-KWG-TS08

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ツインテレイ(補助/ステルス/なし/3回)
◆右腕:スライドボクトー(格闘/ソード/なし)
◆左腕:ブラッキヨーヨー(格闘/ハンマー/がむしゃら)
◆脚部:ルーズソックス(二脚/ミラージュ)

[使用者]
紅下(コシタ)アズキ

[備考]
当作品のオリジナル。

SLR型風のKWG型メダロット。
見た目はツインテールのセーラー服女学生にしか見えないが、後ろから見る事でクワガタモチーフであると分かるデザインとなっている。
実はTSソニックスタッグというコンセプトによってTMZ社の独自で開発された機体で、少なくとも通常時のスペックはソニックスタッグとほぼ同等らしい。
右腕のソードは普段腕の中に収納され攻撃の際に展開するギミック。
左腕パーツは手の甲を高速回転させる機能を持ち、そのまま殴れる他、ヨーヨーとして有線で射出も可能となっている。
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