「お疲れキクナ」
アズキは一度プールサイドに上がってキクナに接触。
「お疲れさまです」
キクナは上着をビーチチェアにかけて乾かしながら、自らも座ってメダロッチから何か映像を眺めていた。
「ごめんなさい、着たまま水に入れるタイプではあったのですけど」
「まあ、乾いてたほうが動きやすいのは間違いないよね」
アズキはいって、
「隣いい?」
「はいですよ」
許可を貰ったので、アズキは同じビーチチェアに腰をかける。
上着を脱ぎ、露出の増えたキクナは改めて至近距離からみても女にしか見えなかった。
元々が華奢で小柄なせいか脱いだところで異性らしさは全然なく、腰から下なんて近くで見ても股間に違和感はないし完全に女性な美脚がとても眩しい。
「あまりジロジロ見ないでくださいですよ。これでも骨格は男なのですから」
ってキクナはいうが、その骨格でさえまるで気にならなかった。
よく見れば女性と違うのは分かるけど。
「あ、えっとごめん」
アズキは一度謝ってから、
「えっと、そういえばなに見てたの?」
「センサー機能でロボロボ団を監視してました。あの黒い特殊なタイツに反応する仕様にしてたのですけど」
「いないって事?」
「少なくとも、センサーで感知されるほど堂々と動いてはいないようですね」
と会話してた時だった。
「よう、お嬢ちゃんたち」
突然アズキたちは声をかけられた。
「君たち可愛いね、もし暇だったら俺と一緒に遊ばない?」
知らない男だった。喋りからしてチャラく、日焼けした黒い肌に筋肉質のボディ、無精髭にサングラスのパリピ系。
間違いなくナンパである。
「ひぁっ」
で、対人能力の乏しいアズキは当然こういうタイプの男が苦手で、ついキクナに体を寄せて怯えてしまう。
「おいおい怖がらなくてもいいだろ」
男は言いながら、アズキの体を舐め回すように見てくる。ひいっ!?
「ごめんなさいですよ、今日は子供連れで来てますから」
キクナはいったが、
「そんな事いうなって。キミくらい可愛い子なら俺は大歓迎だぜ」
とかいって男は引き下がらない。しかも、相手は断るための嘘と思ってるのか、会話がまるで噛み合わず。
「それに俺も子供連れだから、セーフセーフ」
男はいって、
「おーい」
遠くに向かって呼びかける。
声に応じて向かってきたのはひとりの女の子だった。
というか、
(あれ?)
とアズキは思った。どことなく彼女に見覚えがある気がしたのだ。
しかも、
「げっ」
って、相手もアズキを見て嫌そうな顔をみせたので、間違いなく彼女とはどこかで顔を合わせている。
男はいった。
「紹介するぜ! ガールフレンドの日吉だ」
「ってロボロボ団!?」
名前を聞いてアズキは思い出した。
彼女はこの前のFSL型イベントで騒動を起こし、アズキとロボトルまでした女性ロボロボ団の片割れだったのである。
フルネームはたしか日吉ササミ。
髪はブロンドで、ビキニによって晒された女体は、水着ギャルとして一線級のプロポーション。
さらに運動部所属は嘘でないらしく、引き締まった腹筋や肢体が彼女の魅力をさらに引き出していると思った。
なお以前は黒髪だったので、おそらくフェスの後に染めたのだろう。
「なんでアンタがここに」
「え、そ、それは私の台詞という話だけど」
まだ軽く怯えながらアズキが言い返すと、
「ハハハ、ロボロボ団がオフで遊びに来てて何が悪い」
って男が豪快に笑う。
キクナがいった。
「この人はセレクトに逮捕されてたはずですけど」
「俺が脱獄させたんだ。やったのは名前も不明なロボロボ団で、ふたりはただ事件に巻き込まれただけ。って証拠を書き換えてな」
まさか、この男も?
男はサングラスを外し、先ほどとは一転して笑顔もなく冷たさを感じる声でいった。
「俺はタコス。こいつの上官だ」
聞いてアズキたちが警戒を強めると、
「そう敵意剥き出しにするなよ。可愛い子ちゃんが台無しだぜ」
タコスはサングラスをかけ直し、再びチャラい素振りを見せ始める。
「言っただろ、俺たちは遊びに来たんだ。証拠にクソダサなタイツも頭弱そうな語尾もいまは使ってない」
ロボロボ団にとっても、あの黒タイツはダサくて語尾のロボを恥ずかしく思ってる人はいたんだ。むしろプライベートでは使わないらしい。
当然といえば当然である。
しかし、
「で、付き合ってくれるよな? お互い子供連れだ。条件は悪くないはずだぜ」
この強調された子供連れのワード。
(不味い)
アズキは思った。
やつらはモッチーズを人質に取る気だ。ここでアズキたちが断ったら、連れの子供に手を出す。タコスはそう言ってるのだろう。
「おいこら!」
日吉さんがタコスの足を蹴飛ばす。
「痛ぇっ」
「誰が子供よ。アンタだって一つ学年が上なだけで同じ中学生だろ」
彼女の言葉に、
「え、えっ?」
アズキは目を丸くする。
日吉さんはいった。
「なに驚いてるんだよ、テニス部だから当たり前だろ?」
「え、あ、テニス部なんだこの人も」
なら当たり前か。
それと日吉さんも中学生でしかも二年生なのだった。よく見れば彼女の顔や体つきはまだ成長の余地みたいなのを十二分に感じる。
アズキは納得した。さも当たり前に言われすぎて、一度本気で納得しちゃってから、
(え、まって。その理屈おかしいよね?)
と疑問を抱いたけど時すでに遅い。
「オイオイばらすなよ。テニス部のせいでオッサン顔になった数少ない利点なんだからよ。大人のフリしてナンパできるってのは」
タコスは日吉にいってから、続いてこちらにも、
「それはそうと、なあいいだろ? 日吉なんて一度セレクトに捕まったせいで駄目元の変装で髪染めたしよ。過去の事は大目に見て付き合ってくれや」
「ちょっと何ばらしてるのよ」
「ヘヘッ、仕返しだ」
「カッコ悪いじゃない! そんな理由で校則違反したなんて」
といったふたりの会話によって、見事「テニス部だから老けてるはおかしい」と突っ込むタイミングは消えてしまう。
あったとしても、アズキでは突っ込めなかったと思うけど。
って、あれ?
(そもそもテニス部の前に人質と脅迫に対処するべきでは?)
アズキは状況を思い出し、
「どうしよう、キクナ」
小声でキクナにいう。
相手のペースで振り回されたアズキと違い、キクナはすでに難しい顔で思考を巡らせてたようだったけど、
「そうですね。僕もロボロボ団に用事がありましたから、そちらから出向いてくれたのは好都合ですよ」
キクナはさりげなく一歩前に出て、腕でそっとアズキを庇うようにしていった。
「僕でよろしければお相手します。けど、隣は見ての通り男遊びに慣れてなくて怯えてますから、今回は無しでお願いできますか?」
「そんな事いうなって。人数的に丁度いいんだしよ」
「セレクトを呼んでもいいのですけど」
「チッ、わかったよ」
タコスはいった。
「なら二対二のロボトルだ。そっちが勝てば相方は解放するしお前の用事にも付き合ってやる。逆に俺たちが勝てば、ふたりとも俺に付き合ってもらうぜ」
げっ! アズキは慌てて、
「キクナ。いま私がロボトルに参加したら色々と不味い」
小声で伝える。
現在、スタッグはモッチーズのそばにいるのだけど、ロボトルするとなったら呼び戻すしかない。
しかも、そうなったら生徒たちを護る手段がなくなるわけで。
が、キクナはいうのだった。
「分かりました。二対二のロボトルでよろしいですね?」
「ああ、問題ない」
タコスがうなずく。
「ちょっと。キクナ?」
ってアズキが慌てるも、
『ナマステ。合意とみてよろしいかい?』
ビーチチェアの下からツンドルが現れてしまった。ウォッカが登場しちゃった以上、もう逃げられない。
「まま、待って私は合意してな」
アズキが必死にいう中、ウォッカはいった。
『これより、つい先ほど負けたばかりのタコス対』
「おい! さっきの負けは関係ないだろ!」
『改め、敗北者チーム対通杭キクナのロボトルを始めるよ』
「おい!」「待ちなさいよ!」
喚くタコスと日吉さん。
「キクナ、待ってほんとどういうつもり?」
一方、アズキが必死に嘆いてると、
「落ち着いてください」
キクナはいった。
「今回のルールは二対二のロボトルであって、別にチームである必要はないのですよ」
「え?」
それって、どういう。
「これなら問題ないはずです。メダロット転送」
キクナは自分のメダロッチに呼びかけた。
こうして現れたのは二体のメダロット。
一体目はOPS型オフィニクス。複数の蛇が巻き付いた形状の杖を持つ、蛇遣い座をモチーフにしたメダロット。
しかもキクナの機体は白金色をベースに所々が黄金に輝く特殊なカラーリングが施されている。
もう一体は両手がモップや盆と一体化したメイド型メダロットであるメダメイド。
たしかメダテック製のMDM型とTMZ社製のMID型という二種類が存在し、見た目はほぼ同じだけど性能が全く別だったはず。
「そんなにお友達を関わらせたくないのか? 可愛いなぁオイ」
タコスが笑う。
「悪いが遠慮はしねぇぞ。メダロット転送!」
そういってタコスが出してきたのは、TMZ社製のタコ型メダロットであるカネハチまーく3。
メダテック製の初代カネハチやまーく2と違って潜水型の射撃機体で、まだ人型に近いメダテック製に対し、こちらは頭が異様に大きく見た目が完全にタコ。
「日吉。お前も遠慮なく最新型のアレを使っちまえ!」
「分かってる。メダロット転送!」
続けて日吉さんによって姿をみせたのは、ひとりの黒ギャルだった。
持ち主である日吉さんより豊満かもしれない谷間をビキニで見せつけ、ローライズなホットパンツを穿いた大きなお尻に、タトゥー入りでムチムチの太股。
髪は編み込んだツインテールでサンバイザーを被り、脚部は一足のブーツ型機械に両脚で装着している。
(えっ、なに?)
メダロットらしからぬ刺激的なデザインに、アズキの胸が劣情に高鳴った。
データを確認した結果、このメダロットの名称はSWS型リーフィータン。
潜水型メダロットで、両腕の巨大なマズルとフィンはモチーフのリーフィーシードラゴンを表現しているらしい。
アズキは慌てて、むしろ興奮しながら、
「スタッグ! あれ、あれ回収しよう。っていない」
そうだった。いまスタッグはモッチーズたちと一緒だから、この場にいないのだ。
こんな時に限って地に足がつかない精神状態。どうしよう。
「き、キクナえっとその」
アズキはもじもじと相手の様子を窺う。
さすがにスタッグ以外を相手に強く頼み込む勇気はない。けど、アズキはあのメダロットを入手したいという気持ちがどうしても抑えられないのだ。
神宮寺さんのパンツやクワトロさんのおっぱいは我慢できたのに。
キクナは呆れた顔で、
「都合良く事が進めば試みてみますですよ」
「え、いいの?」
「都合良くいけばですよ」
キクナは小声で、
「相手が人質や脅迫を確定する言葉をいえば、すぐにでも拘束できるのですけど。相手の口が意外と堅くて」
さらにキクナはいう。
「相手の言葉不足を利用して、騙すようなロボトル合意でイラつかせる形での誘導も通じなかったですし」
「うぁ」
キクナがロボトルを受けたのはそういう意図だったらしい。
通じなかったとはいえ、キクナの手口を前に改めてアズキは敵に回したくないと思うのだった。
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
[機体名]
メダメイド(MDTver)
[型式番号]
MDT-MDM-00
[性別]
女
[パーツ]
◆頭部:ホーコニア(補助/レーダーサイト//4回)
◆右腕:モップル(射撃/ガトリング/)
◆左腕:オボンコボン(守護/ガード500/)
◆脚部:コマネヅム(二脚/オールラウンダー)
[使用者]
[備考]
メダテック製のメダメイド。
パーツ名およびデザインはR版のものであり、型番はMDMを使用している。
なおゲーム版だと左腕は防御(ガード)だったが、
情報によるとRでは攻撃が強すぎて脆くみえるだけでメダメイドの防御威力が59と高いとの事でガード500を採用。
脚部はオールラウンダー。Rでは飛行メダロット並の速度をもつ二脚だったそうで、脚部特性によって再現している。
(後にメダメイドが最新ゲーム版に登場した際、設定を公式にあわせて変更する可能性があります)
[機体名]
メダメイド(TMZver)
[型式番号]
TMZ-MID-00
[性別]
[パーツ]
◆頭部:ダイレクター(守護/光学ガード//4回)
◆右腕:ダイスキン(格闘/ブロウアウェイ/)
◆左腕:ティートレイ(射撃/サクション/)
◆脚部:ゴーイング(二脚/オートガード)
[使用者]
[備考]
TMZ社製のメダメイド。
パーツ名およびデザインはnavi版のものであり、型番はMIDを使用している。
なおゲーム版だと左右パーツはそれぞれ範囲外固定・範囲内固定だった。
仮にnavi版がメダロットSに実装された場合、ブロウアウェイ・サクションに差し替えられるだろうと推測して採用。
頭部は元々は光学無効であり、脚部特性オートガードによって旧仕様を実現している。
(後にメダメイドが最新ゲーム版に登場した際、設定を公式にあわせて変更する可能性があります)