ロボトル開始から直後、
「飛び込めカネハチ!」
タコスの指示を受け、カネハチはスタッグやモッチーズがいる場所とは別のプールに飛び込んだ。
市民プールとしては深めで、カネハチは全身を水中を沈ませ、さらに奥に潜り進む。
「日吉、リーフィータンも潜らせるぞ。得意フィールドから一方的に攻撃だ」
「了解」
指示を受けて、リーフィータンもプールに飛び込む。
ここでキクナのメダメイドが自発的に動き、右腕のモップから弾丸を連射。
たしかガトリングを武器に持ってるのはメダテック製だったはずなので、
(キクナ、TMZ研究員の実子なのに自社製を使わないんだ)
アズキは心の中で指摘した。
なお肝心の攻撃だけど、水中では速度が下がり相手は簡単に避けてしまった。
人間用の実弾よりも水の抵抗に強そうだったけど、これではあまり意味がない。
逆に、
「よしよし。ならコイツでお返ししてやれ」
タコスの指示で、カネハチは右腕に該当するタコ足をこちらに向けてアンカーを飛ばしてきたが、相手は水中から攻撃しても支障がない様子。
アンカーは撃ち続けてたガトリングの残りで撥ね退けたので、最初の射撃戦は引き分けの形。とはいえ、
「駄目ね。このままだと一方的です」
メダメイドが言ったように、現状ではプールサイドから戦ってる限り形勢が不利なのはアズキでも分かった。
(どうするのキクナ?)
不安のあまり、アズキの視線がキクナに向く。
「オフィニクス。頭部パーツ使用」
キクナがメダロットに指示。直後オフィクスの前方に電子画面が開かれ、何かを操作した結果、オフィニクスとメダメイドの体がわずかに輝いた。
「ふたりとも、相手を追いかけて戦場を水中に移しますよ」
二機のメダロットがプールに飛び込む。
って、わざわざ相手の土俵に立つなんて。潜水型を相手に水中戦が無謀なんてアズキでも分かるというのに。
「むしろ都合がいい。カネハチ、もう一度アンカーを飛ばせ。回避シールだ!」
「こっちもいくよリーフィータン。マッドショット!」
当然、相手はキクナのメダロットが同じプールに入った瞬間を狙って攻撃を仕掛けてくる。双方とも射撃系だ。
しかし、二機は頭までしっかりプールに潜ると、どちらも左右に揺れながら気持ち悪いほど滑らかな水中機動をみせて敵の攻撃をそれぞれ避ける。
アズキは気づいた。
「これって、もしかして」
「たいちせいぎょです。僕のオフィニクスは味方の体にコーティングを施し、どんなフィールドだろうと滑らかに動く機能を与えられるですよ」
キクナはいった。
広義的にはピスケス、夜の学校でロボロボ団が使った魚型メダロットの重力コントロール波と同じ機能である。
敵に使われて厄介だったのを知ってる分、アズキにはとても頼もしく映った。
「助かりました。さすがに潜水相手に完全な対等とはいきませんけど、これでロボトルが成立致します」
続けてメダメイドは言いながら再び右手のモップから弾丸を撒く。
今回は水中だろうが全く問題なく弾が相手を襲い、リーフィータンに傷を負わせた。
「この気持ち悪い動作を強制されるのは嫌ですけど」
メダメイドは言いながら水中を滑らかに移動、というより蛇行した。蛇遣いが使う機能なだけあって滑らかな動きはヘビを参考にしてるらしい。
この間にオフィニクスが接敵。
リーフィータンに狙いを定めたようで、正面から向かっていくも、
「カネハチ!」
タコスが叫び、カネハチが両腕からアンカーを射出。攻撃はキクナのメダロットそれぞれに一発ずつ向かっていく。これを見てオフィニクスは方向転換した。
自分に向かったアンカーは体をよじっての水中機動で避けながら、右腕の杖をメダメイドに向かうアンカーに伸ばして、杖の先である蛇の口から放電。
破壊して味方を護った。
「そこよ、リーフィータン」
姿勢が崩れた瞬間を狙ってリーフィータンが右腕のマズルから水を球状に圧縮して発射。しかしオフィニクスはこれも杖から出した電撃で弾く。
キクナがいった。
「今です」
「はい」
メダメイドがモップからの射撃でリーフィータンを狙う。しかし、この弾丸はすべて横からのレーザーによって消し飛ばされる。
「させねえよ」
タコスだった。口から炭を吐くように発射されたカネハチの光線は、そのまま何発かがメダメイドまで届く。
しかしメダメイドは無傷のまま、
「このっ」
と、続けてリーフィータンに射撃。けど今回は人魚が水中を舞うような動きで避けきられてしまう。
メダメイドは驚き、
「どうして? さっきまでは当たったのに」
「大丈夫です。続けて射撃してください」
キクナはいった。こちらは全く動揺していない。むしろ避けられた点まで織り込み済ではとアズキには映った。
「元々、回避に優れた潜水型を相手に水中で戦ってますからね」
アズキとメダメイドの疑問を察してかキクナが説明しだす。
しかし小声ではない。
「今までは相手がマッドショットを使った直後の隙を狙って攻撃できたから当たっただけ。本当ならリーフィータンに攻撃を当てるのが難しいのは当然ですよ」
「でも」
メダメイドが反論。キクナが説明する間にオフィニクスは杖をリーフィータンに押し当てて放電。
しっかりと攻撃を当てて、電流を浴びせて動けなくしてるのをみて、
「オフィニクスはしっかり攻撃できてます」
「当たり前ですよ」
が、キクナはいう。
「メダメイド、あなたは元々戦闘用じゃないのですから」
この言葉にメダメイドが、
「カチン」
と怒りを露わに。わざわざ口に出しちゃってるのがとても可愛い。けど、
「ほう」
ここにタコスが反応。
(あっ)
しまった! キクナが普通に喋ってたせいで、会話が相手に聞こえてしまったらしい。
「そいつはいい情報を知った。カネハチ! 両腕のアンカーをあいつに飛ばしまくれ」
指示を受け、カネハチがメダメイドに集中攻撃を開始。
その場で生やし、飛ばされたアンカーが刺さると、本体から切り離されたコードが体中に巻き付いて、
「いやっ、気持ち悪い」
メダメイドが心底嫌そうに悶える。なんだか不健全なものを見ている気分。
タコスは笑って、
「こいつは回避シールだ。これが体にひっついてる限りテメェは一切の回避行動が行えないぜ。で、カネハチのレーザーで貫いてジ・エンドだ」
が、相手の言葉を前にキクナがにこりと笑って、
「いいのですか? 本命のオフィニクスをスルーしてしまっても」
直後、オフィニクスは左腕を伸ばした。
腕はカネハチに向かって伸びながら、牙を持った不気味な顔に変形して相手の片腕に噛みつき、引きちぎる。
「なっ」
タコスが驚き、
「くそっ! カネハチ、レーザーだ。オフィニクスを狙え!」
カネハチの口からレーザーが発射される。
オフィニクスは避けきれず相手の光線に貫かれそうになるも、
「くすっ」
「フフッ」
キクナとオフィニクスが同時に悪い笑みを浮かべた。
ここで間に入ったのはメダメイド。左腕と繋がった盆を構えながらオフィニクスを庇い、その身で光線を受け止めながら前回と同様に完全無傷。
「は?」
タコスがあぜんとした。
「いやいや、メダメイドの左腕パーツはガード系だからよ。味方機の盾になる事態は機能的にも間違っちゃいねえ。けどよ! なんで無効にしやがるんだ」
さらにタコスは慌てながらご丁寧に、
「たしかにTMZ製なら頭部パーツの光学ガードを脚部特性で常に無効する能力に進化できるけどよお、てめぇメダテック製だろ? どうやったらそんな、あっ」
と、ほぼ正解の内容まで吐露して、ここでやっとタコスとアズキは気づいた。
キクナのメダメイドは純正ではない。
両腕をメダテック製、頭部と脚部にTMZ製を用いたカスタマイズ機なのだ。
「うーん、戦闘用ではないは語弊がありましたですね」
キクナはいった。
「正しくは攻撃用ではないでした。彼女の仕事は身の回りの世話と警護で、手持ちの銃で敵を制圧するのは二の次です」
「いやそこは関係ねえよ!」
「でも、戦闘用ではないと聞いて警戒を解いたのは事実ですよね? 純正なら、ここまでガードに特化してるはずがありませんから」
つまりキクナはわざと相手に聞こえるように喋ってたらしい。
言葉で相手のターゲットを巧みに誘導し、こちらの都合が良いようにロボトルを運んでいたのだ。
「メダメイド、もう少しだけ盾役をお願いします」
「はい」
キクナはメダメイドに指示すると、
「ユディト、遊びはここまでにしましょうですよ」
「おや?」
オフィニクスが反応した。どうやらユディトという名前を与えられてるらしい。
「よろしいのですか? もう少し遊んでもいい訓練になると思うのですがねぇ」
「うーん。それでもいいですけど、噛みつかれるのは趣味ではありませんから」
「何をいまさら。今まさにメダメイドが噛みつかれてるではありませんか」
ユディトはずっと黙ってた姿から一転、妖艶で胡散臭いと感じる喋りを見せはじめた。
「まあ、いいでしょう」
ユディトがカネハチに杖を突きたてた。
キクナと楽しく会話してるように見せかけて、ちゃっかりカネハチの死角に潜り込んでいたようで、
「げっ」
会話に気を取られてたタコスの反応に、
「いい反応ですね」
「ええ、素敵な反応です」
キクナとユディトは笑顔。
ユディトが放電を開始。カネハチはもう片腕のパーツも破壊され、ついでに痺れて動けなくなる。
日吉さんが怒鳴った。
「何やってるのよタコス」
「テメェこそ、いつまでメダロット動けないままにしてやがる。さっさと動け」
「無茶いわないでよ。リーフィータン、痺れが治ったらすぐオフィニクスにマッドショットを撃ちなさい」
敵が喋ってる間に、さらにユディトは左腕にカネハチの脚部を噛み千切らせて破壊。
ここで、リーフィータンがやっと動いた。
「よし、いきなさい!」
日吉さんの指示と同時に、リーフィータンが右腕から射撃。
しかし、この攻撃もメダメイドが庇い、圧縮されたボール状の水が破裂し泡となってメダメイドに絡みつく。
「くっ、ユディト。後は頼みました」
メダメイドが苦しそうにいう。
直後、日吉さんとユディトはそれぞれ、
「これで終わりよ!」
「これで終わりです」
まず、ユディトが杖を両腕で握りなおしてカネハチの頭部に突き立てる。
一方リーフィータンは左腕から対潜ミサイルを発射。
マッドショットには相手を疑似的に潜水メダロット扱いにする能力があり、今放たれたミサイルは間違いなく潜水メダロットに効果を発揮するアンチシー仕様。
メダメイドについた泡に追尾機能が働いて、超高速で飛来して爆発。
「きゃあああ!」
メダメイドは悲鳴をあげ、機能停止によって体からメダルが弾かれるも、同時にユディトの電流を受けたカネハチからもメダルが外れる。
ウォッカがいった。
「ハラショー。メダメイド、カネハチまーく3共に機能停止。なおカネハチはリーダー機につき、ロボトルはキクナの勝利とするよ」
こうしてロボトルは終了した。
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
[機体名]
カネハチまーく3
[型式番号]
TMZ-OCT-0NF
[性別]
男
[パーツ]
◆頭部:チャイニィインク(射撃/レーザー/ねらいうち/6回)Hv
◆右腕:ボールアーム(射撃/かいひシール/)
◆左腕:ラウンドアーム(射撃/かいひシール/)
◆脚部:シャープマズル(潜水/クライマー)
●HV:1/0/0 合計:1/2
[使用者]
タコス
[備考]
naviに登場したメダロット。メダロットS未参戦につきデータはnaviを元にした当作品のオリジナル。
実は従来のカネハチの型式番号であるCLAではなく、オクトカイトと同じOCT型。
以上から、当作品ではまーく2以前のカネハチがメダテック製である事を前提に、まーく3はTMZ社製のカネハチという設定になっている。
頭部は外見からHvに設定。左右の腕パーツはメダロットnaviでは妨害行動の回避無効だった(メダロットS未実装)。
[機体名]
メダメイド(キクナver)
[型式番号]
TMZ-MID-00(頭部からの判定)
[性別]
女
[パーツ]
◆頭部:ダイレクター(守護/光学ガード//4回)
◆右腕:モップル(射撃/ガトリング/)
◆左腕:オボンコボン(守護/ガード500/)
◆脚部:ゴーイング(二脚/オートガード)
[使用者]
[備考]
キクナの手でカスタマイズされたメダメイド。
頭部・脚部はTMZ社製、右腕・左腕はメダテック製メダメイドのパーツをそれぞれ使用している。
これによって、光学無効のガード500を持ちガトリングによる攻撃も行える防御機体となった。
一番の仕事は身の回りの世話と警護、ではなくキクナとユディト(オフィニクス)のおもちゃになる事。