メダロットHERMIT   作:CODE:K

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8-6 BRAVING!6

 

「スタッグ、ふたりに伝えるのお願い」

 

 大きな脱衣所に戻ってきた。

 

 アズキはスタッグに伝えると、まず室内に逃げるための着替えがないか確認する。

 かごには神宮寺さんのパジャマが用意されてあったけど、多分この緊急事態では着替える時間がどこまであるか分からない。

 

(あった、バスローブ)

 

 アズキは備え付けから大人用と子供用を一着ずつ引っ張り出す。

 

 直後、脱衣所の扉が破壊され、奥からフリフリの魔女っ子衣装を着たマッチョなメダロットが姿を現した。

 先日のイベントでTMZから発表されたFSL型の新型TS機、TMZ-FSL-TS00ファンシーベールである。

 

 しかも目が真っ赤に輝いており、暴走してるのがアズキには分かった。

 

「うそっ」

 

 もう、こんな場所にまで暴走メダロットが侵入してきたの?

 予想より遥かに早くこの事態に至ったせいで、アズキは驚きとショックで思考が一度止まる。

 

 が、この隙を逃すわけがなくファンシーベールは二人組の天使を模した爆弾をアズキに投げつけ、

 

「アズキ!」

 

 浴室から飛び出したスタッグが風呂桶を投擲し、爆弾に当てて誘爆させる。

 

「メダロット転送」

 

 ボウショウさんがメダロットを出した。

 現れたのは赤い翼を生やし剣を握る、昔のアニメを思わせるデザインの合体ロボ型メダロット。TMZ-TNT-03ヤマジロー。

 

「ヤマジロー。フレアパンチ!」

 

 指示を受け、ヤマジローは左腕からロケットパンチを発射する。

 攻撃はファンシーベールに直撃。だけど思ったよりダメージが入らなかったようで、

 

「そんな。距離は十分のはず」

 

 アズキはメダロッチから情報を確認した。

 ヤマジローの使ったロケットパンチは、ジェットブローという技に分類されるようで、相手と距離が遠いほど威力が上がる性質を持つらしい。

 

 スタッグが何かに気づいて、

 

「もしかして、ヤマジローってこれで女型メダロットですか?」

「はい。ヤマジロー自体は性別を持たないニュートラル機で、ティンペットが女性型のものを使ってます」

「やっぱり」

 

 ここでアズキも気づいた。

 

「そっか。あのマッチョはチャームを持ってるから」

 

 異性メダロットからのダメージが軽減されてしまうのである。

 

「それだけではありません」

 

 スタッグは左腕の甲を外し、ヨーヨーとして投げてつけてファンシーベールの喉にワイヤーを何重にも絡ませる。

 で、即席のワイヤーソーとして一気に引っ張って敵機の首を摩擦で千切った。

 

 ファンシーベールの首から上がティンペットだけ残して弾け飛んだが、それでもファンシーベールは機能停止してくれない。

 わけではなかった。

 

 ハッチからメダルが外れる事はなかったが、それでも頭部パーツが破壊された事でファンシーベールは一度動かなくなる。

 本当は頭部を普通に機能停止にするだけでは動き続けると伝えるため「それだけではない」と言ったのだろう。

 

 とはいえ、すぐ再起動する恐れを考えたスタッグは、相手の後ろに回り込むと力ずくでハッチからメダルを外して、

 

「想定より絶望的な状況ではなくて助かりました」

『私のときは頭部パーツが機能停止してもエラーで動き続けたものね』

 

 メダロッチ越しにマゼンタキャットの声が鳴った。

 アズキは徹底して浴室から背を向けて女性陣の裸を見ないようにしてたので分からなかったけど、神宮寺さんもすでに脱衣所にいるらしい。

 

「それでもハッチからメダルは外れませんでしたから、単純に通常の機能停止から暴走の強制起動までタイムラグがあるのかもしれませんね」

 

 スタッグがマゼンタキャットに返事する。

 アズキは言った。

 

「神宮寺さん、ボウショウさん。ごめん、体を拭いたり着替えたりする余裕は無さそうだから、そこのバスローブで我慢できそう?」

「大丈夫です。もう着てるわ」

 

 と、神宮寺さんが言ったのでアズキはここで初めて後ろを見て、バスローブを着たふたりを確認。

 スタッグが言った。

 

「貴重品を持ってきてたら、それだけ回収してすぐにみんなと合流しましょう」

「私は大丈夫。ボウショウは?」

「私も問題ありません」

 

 ふたりが頷いたので、アズキは脱出の前に脱衣所から外の様子をそっと覗いてみる。

 廊下には別のファンシーベールが徘徊する姿が見えたが、アズキには気づかずそのまま奥に通り過ぎて行ったので、

 

「脱出するなら今みたい」

 

 と、みんなを誘導。

 ついでにキクナと通信を繋ごうとしたけど、

 

「やめたほうがいいと思います」

 

 スタッグが言った。

 

「余計な電波が妨害されてる区域ですから、逆に私たちの通信で位置を特定されるかもしれません」

「でしたら屋内駐車場は如何でしょうか?」

 

 ボウショウさんが言った。

 

「むしろ屋敷から脱出するなら車しか手段はありません。キクナ様たちもそちらに向かってるのではないでしょうか」

 

 異議を唱える人は誰もいなかったので、アズキたちは暴走メダロットに見つからないよう細心の注意を払いながら、駐車場に向かって足を進める。

 

 場所は移動中に教えてもらった。駐車場は屋敷の離れに用意されており、基本は庭園を通って行くのだけど、母屋からも直接行けるらしい。

 どちらにしても、入るにはメダロッチにインストールされた専用のデジタル認証キーが必要なので、車がすでに破壊されてる可能性は低いとの事だった。

 

 で、アズキたちが移動してる途中だった。

 

「ろ、ロボー!」

 

 って悲鳴が聞こえたのは。

 

「行きましょう」

「そうですね」

 

 ボウショウさんとスタッグは見捨てるつもりで言い、本来の目的地に向かって足を進める。

 けど、

 

「分かったわ」

 

 と、よりによって神宮寺さんは「助ける」という意味で頷いてしまい、ひとりだけ声がした方角に足を進めてしまった。

 なお、アズキは一度どちらの意味か分からず迷ったが、スタッグがロボロボ団を助ける意図で即答は無いと思ったので最終的には見捨てた側である。

 

「スタッグ、神宮寺さんが」

 

 まさか全員見捨てる判断をしてたとは思ってない神宮寺さんは、三人も一緒という前提でどんどん足を進めていくので、アズキが慌てて報告。

 

「ああもうお嬢様は」

 

 ボウショウさんは困った顔で言い、なるべく音を立てないよう気を付けながら神宮寺さんの後ろを追いかけた。

 

 声がした先はリビング。

 中に入ると、数匹のロボロボ団が、複数のメダロットに攻撃されてる最中だった。

 

 ロボロボ団も応戦しているが、使用メダロットはゴーフバレット。数は五体。

 

 対して襲う側のメダロットは両腕で頭頂に水瓶を掲げた浮遊物体といった見た目の機体であった。

 雑にメタ表現をすると水瓶座の黄金聖衣を青と白のカラーリングに変えた姿そのもの。

 

 数は三体。

 アズキは内心「げっ」て驚きそうになったのを抑えながら、

 

「あれは、水瓶座型アクエリアスのTMZ製TSメダロット。ホカリスエット」

「よく名前で訴えられませんでしたね、TMZ社は」

 

 ボウショウさんがつっこみを入れる中、

 

「神宮寺さん、諦めましょう。アレの相手は無理です」

 

 スタッグが小声で言った。

 神宮寺さんは「え?」って顔で、

 

「どうして?」

「すぐ惨状を見て分かるはずです」

 

 スタッグが言う中、

 

「ゴーフバレット! 撃って撃って討ちまくるロボ」

 

 ロボロボ団が言い、ゴーフバレットは両腕の翼に搭載されたランチャーからマイクロミサイルを撃ちまくる。

 しかし、ホカリスエットは脚部で防御しながら、平然とした様子で右腕パーツからクロスセットを使用。

 

 専用攻撃を行うための発射装置を設置すると、二体目のホカリスエットが即座に今の装置を使って左腕パーツからクロスファイアを使用した。

 発射装置である水瓶から過剰な程に濃縮されたオーロラみたいな粒子砲を放つとゴーフバレットを全パーツ貫通の機能停止に追い込み、

 

「ロボーッ!」

 

 さらに攻撃が真後ろにいたロボロボ団まで届いて、一匹が膝から崩れるように倒れる。

 しかし、惨劇は終わらない。

 

 ゴーフバレットが攻撃を撃ち尽くして冷却状態に入る中、即座に三体目のホカリスエットがクロスセットして、冷却を済ませた一体目がクロスファイア使用。

 

「ロボーーッ!」

 

 ゴーフバレットとロボロボ団がまた一組倒れ、

 

「え、もしかして」

 

 神宮寺さんが呟く中、二体目がクロスセットし、三体目がクロスファイア。

 

「ロボーーーッ!」

 

 さらに一組、ロボロボ団が倒れていく。

 スタッグは言った。

 

「このように、ホカリスエットは隊列を組んで行動し、戦車級の防御性能を持った浮遊脚部で耐えながらひたすらクロス攻撃を繰り返す機体です」

「すごい耐久力と攻撃力だったわ」

 

 うなずく神宮寺さん。スタッグはさらに、

 

「はい。事実トラウマ製造機と呼ばれた時期もありまして、時代が進んだ今でも複数のホカリ相手に対策一切なしで挑むのは少々難しいと思います」

 

 よりによって、まさかTMZがこのメダロットを配備してたなんて。

 スタッグだけでなく、同じくTMZ関係者のアズキもこの事態には絶望さえ感じる。

 

 でも、

 

「危険な賭けだけど、手がない事もないと思う」

 

 アズキは言った。

 





メダロットS版のアクエリアスにクロス攻撃が実装されてなかったので、TS機体を使って代用させていただきました。
大好きなメダロットでしたので本当はアクエリアスのまま出したかったです。
けど、小説としてはプレイ時の悪夢を描写したかったので。アクエリアスが好きな同志の方々ごめんなさい。
詳しく詳細を知りたい方は、メダロットNaviのプレイ動画でアクエリアスが出てくるロボトルを探してみることをお薦めします。もう戦いたくない。


メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。

[機体名]
ヤマジロー
[型式番号]
TMZ-TNT-03
[性別]
N
[パーツ]
◆頭部:フレアビーム(射撃/ビームソード/がむしゃら/1回)Hv
◆右腕:フレアソード(格闘/エミットブレード/がむしゃら)Hv
◆左腕:フレアパンチ(格闘/ジェットブロー/がむしゃら)Hv
◆脚部:フレアハート(浮遊/スーパーアーマー)
●HV:1/1/1 合計:3/3
[使用者]
[備考]
メダロットSに登場した他作品とのコラボ機体『KSN01 ゲキ・ガンガイ3』を原型とする、オリジナルメダロット。
由来は機動戦艦ナデシコの登場人物ダイゴウジ・ガイの本名「山田二郎(ヤマダジロウ)」より。
作中では合体ロボ型メダロットと表記されており、型式番号のTNTはトリニティ(TriNiTy)から。
こちらはメタリックガーディアンRPGのトリニティ級が由来になっている。
原型といくつか技が違っており、
右腕のオーバーチャージがアドニスシンク(エステバリス)のエミットハンマーを意識してエミットブレードに変更。
頭部パーツも元のワイドビームからビームソードとなり、使用スキルが格闘一色に調整された。
かわりに技構成の使い勝手は大変、大変悪くなった。
全てのパーツ名に「フレア」がついてるので、ノリと相応しい場面さえあればどの武器でも演出上「ゲキガンフレア」と叫ぶことができる、かもしれない。


[機体名]
ホカリスエット
[型式番号]
TMZ-AQR-TS00
[性別]

[パーツ]
◆頭部:オーエスワソ(補助/CGアッパー//2回)Hv
◆右腕:クリーンダカラ(設置/クロスセット/)
◆左腕:ケータレート(射撃/クロスファイア/)
◆脚部:ミツヤサイター(浮遊/フォートレス)
●HV:1/0/0 合計:1/1
[使用者]
TMZエージェント(だったと思われる)
[備考]
当作品のオリジナル。
水瓶座型メダロットであるAQR00アクエリアスのTS機体。
外見は頭頂に水瓶を掲げた浮遊物体で、本編でも隠す気もなく某漫画に登場する水瓶座の黄金聖衣そっくりと表現されている。
ただしカラーリングはアクエリアスと同様。
舞台裏設定としてはメダロットNavi版のトラウマ製造機なアクエリアスを小説で出すために作られたメダロットであり、
ゲーム版と同じく複数体で現れて戦車級の防御性能を持った浮遊脚部からクロス攻撃を繰り返す機体となっている。
なおHERMIT作者もプレイ当時アクエリアスでトラウマを負いました。
メダロット名から脚部を除くパーツ名まで全てスポーツドリンクや経口補水液のパロディで統一されている。
一方、脚部だけは水瓶座に関係する逸話由来のドリンク名が使われてる模様。TMZはおそらくこれで水瓶座モチーフの体面を守ったつもりなのだろう。
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