メダロットHERMIT   作:CODE:K

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2-2 君は完璧で究極のKWG2

 

「えっと、色々あったけど」

 

 アズキは教壇に立って改めて自己紹介した。

 本当、色々ありすぎるくらい色々あったけど、

 

「今日から前任の先生に代わってこのクラスの担任になった紅下アズキです。よろしく」

 

 なお、

 

『次は、一年間よろしくお願いしますですよ。アズキ』

「一年間よろしくお願いしますで、お願いします」

 

 といったように、アズキ自身は頭がショートしきってしまいスタッグが言うままを復唱するという教師の威厳も信頼もすべてゴールした状態ではあるけど。

 

 当然、生徒の大半からすでに舐められてるのは態度からよく伝わる。

 男子を中心に半数以上はもうアズキを見てないし、見てくれる生徒も九割九分がにやにや、または微笑ましいものを見る目。

 

 真面目にアズキの話を聞いてそうな生徒は、窓際の席にいる大人しそうな女子生徒ひとりだけだった。

 

(どうしよう)

 

 いまはスタッグのおかげで乗り切れてはいるけど、問題を後伸ばしにしてるだけ。これでは初日から任務失敗ルート確定である。

 わずかに残った思考力で判断してたところ、良い意味で想定外が起きた。

 

「せんせー。せんせーのメダロット見せて」

 

 突然、男子生徒がいった。

 

「え?」

「スタッグってせんせーのメダロットだろ? どんなのどんなの?」

 

 断れば良心が痛みそうなほど純粋でキラキラした眼差し。

 とは関係なく、アズキは思考が機能してたせいで、

 

「ん」

 

 と、ロクに考えずメダロッチを操作。

 隣に一見セーラー服女学生タイプにしか見えないKWG型メダロット。スタッグを呼び出してしまう。

 

「え?」

 

 スタッグは自分が転送されたことに気づくと、

 

「アズキ。なに勝手に出してるのですか。いまの時間は基本メダロットは禁止で」

 

 と、スタッグが注意するも、もう遅い。

 

「きゃーかわいい」

 

 数人の女子生徒が一斉に食いついたのだ。

 最初に見せろといった男子生徒こそ、

 

「なんだSLR型か」

 

 って反応だったけど女子たちはスタッグに詰め寄り、

 

「何この子、見たこない」

「もしかして藤〇建△デザイン?」

「スマホでカシャっと。あ、黒」

 

 なんて大はしゃぎ。なんかスタッグの内側を撮影した女勇者もいたけど。

 

(まあ、わかる。私も女型メダロットの下着部分は興味あるもの。ただ私はスタッグの下着全然覗けないのにあの子はさらっと成功させてくるの少しずるい)

 

 勇者の行動にアズキは心の中で嫉妬混じりにうなずく。

 

「けど所詮はセーラータイプだろ?」

 

 最初の男子生徒が不満そうにいった。

 

「スタッグっていうからクワガタだと思ったのによ」

「い、一応KWG型らしいよ」

 

 おずおずとアズキがいうと、

 

「嘘だ。こんなナヨナヨしたクワガタメダロットがいるかよ」

「ま、まあ」

 

 そう思われて当然だとアズキはスタッグを見る。

 彼女自身、一見すると上品で柔和な言動をしてるから。性格はクール系だけど。

 

「これなら俺のメダロットのほうがずっと強いぜ」

 

 といって男子生徒もメダロットを転送する。

 

「どうだ! これが俺のヘッドシザースだ」

 

 直後、別の男子生徒が、

 

「お前のは脚部だけじゃねーか」

「うっさい! 脚しか持ってねーんだよ」

 

 というのも、本来ヘッドシザースはロクショウの愛称で有名なKWG型の初代なのだけど、彼が出したメダロットは両腕に斧をつけた象さんだった。

 象の鼻先は鎖で吊り下げられた鉄球になっている。

 

 メダロッチで調べたところ、どうやら「メガファント」ってメダロットの頭部パーツ、両腕に「キン・タロー」のパーツをそれぞれ使ってるらしい。

 

「バーカバーカ、そんなカッコ悪いヘッドシザースいるかよ。お前のほうがへなちょこクワガタメダロットだ」

「くっそう!」

 

 スタッグを馬鹿にするはずが逆に横から馬鹿にされた男子生徒は逆上して、

 

「ロボトルだ! 俺のメダロットでテメーのニセモノをヘナチョコにしてやる」

 

 アズキを指さし宣戦布告。

 

「悪いけど、いまの時間はロボトル禁止だから」

 

 ってアズキはいうも、

 

「試してみますか?」

 

 意外や意外。

 スタッグご本人はやる気な模様。先ほどアズキに今はメダロット禁止の時間だと注意していたのに。

 

「よっしゃ!」

 

 男子生徒がガッツポーズを見せる。と同時に生徒たちは机を後方に移動させスペースを作りはじめた。

 みんなこの場でロボトルを観戦する気満々らしい。

 

「よろしいですか、マスター」

 

 スタッグがいった。

 

 

 という話で、始業式直後のホームルームで早速ロボトルをすることになってしまった。

 スタッグとヘッドシザース(仮)が対峙する中、

 

「それでは、これより非公認ロボトルをはじめるわ」

 

 女子生徒のひとりが間に入っていった。

 髪型はワンサイドアップを入れたセミロングヘア。自分の可愛らしさを自覚してるタイプのようで、他の子たちよりお洒落で華やかな印象を覚える。

 

 名前は神宮寺(ジングウジ)シルコというらしい。

 

「今回は双方が可哀想だから勝者が敗者のパーツを奪うルールはなしでいいよね?」

 

 シルコちゃんの言葉に男子生徒は、

 

「おい! なんだよ双方が可哀想って」

「だってぇ」

 

 シルコちゃんは口角を上げ、

 

「キミって普段から雑魚雑魚だから負けそうじゃない。仮に勝っちゃっても紅下先生は態度がざこざこだから、いきなり小学生にパーツ取られたら可哀想でしょ?」

 

 あ、このシルコって子。

 メスガキだ。

 

「俺は雑魚じゃねー!」

 

 吠える男子生徒。なおアズキも口には出さないものの、

 

(態度がざこざこって)

 

 なんて内心でショックを受けてたりする。

 

「始めましょうか」

「ああ」

 

 一方メダロット側は今回のルールで問題ない、というより双方ともパーツの与奪が絡まない今の内に始めようとしている。

 スタッグは生徒のメダロットからパーツを奪うのは嫌と考えるだろうし、相手メダロットも仮に負け癖がついてるとしたら今のほうが気が楽なのだろう。

 

「それじゃあ、公認レフェリー無しでロボトル開始!」

 

 メスガキ、じゃなかったシルコ改め神宮寺さんは男子の訴えを無視して開始を宣言。

 しかも実際に戦うメダロットたちは互いに頷き合ってから、撤回はさせないとばかりに示し合わせて真っすぐ相手に突撃する。

 

「ああもうチクショー! ヘッドシザース、ライトアクスだ!」

 

 諦めた男子生徒はメダロッチから命令。

 ライトアクスとはパーツの名称だったようで、相手はスタッグに接近すると右腕の斧を振りかぶる。

 

「スタッグ」

「はい」

 

 一方アズキ側は言うまでもなかった。

 こちらが指示するより先に、スタッグは迷彩機能を使い姿を消して、

 

「っ」

 

 目標を見失い、迷いの生じた相手の一撃を彼女は涼しげに回避。

 

「くそ、次はグレートアクスだ!」

 

 男子生徒が指示。しかし相手メダロットは困惑し、

 

「ですが目標が」

「そこにいるだろっ! いいから何でも振り回すんだ!」

「了解」

 

 今度は左腕の斧を、言われるままがむしゃらに振り回す相手。その間にスタッグは余裕をもって音を立てずに移動し、

 

「何やってんだ! そっち行ったぞ!」

「そっちとは」

「あっちだ、あっち!」

 

 男子生徒は背景に残るわずかな輪郭から目視でスタッグを捉えてる様子。

 しかし、肝心のメダロットが位置を掴んでないせいで「そっち」「あっち」と曖昧な表現を前に混乱している。

 

 で、そんなスタッグの位置はというと、

 

「後ろです」

 

 わざわざ位置を伝えながらスタッグは右腕に収納していたソードを展開。相手の左腕を斬りつける。相手は振り返りながらも回避どころか防御も間に合わず、

 

「左腕機能停止? チクショー」

 

 と、男子生徒が嘆く。

 

「ライトアクスだ! 今度こそぶちかませ!」

 

 相手は再び右腕の斧を振るうも未だスタッグを正確に捉えておらず、微妙に逸れた一撃を彼女は後ろに跳んで回避。

 

「ヘッドシザース、トランプルだ!」

 

 相手の頭部から鼻の鎖が伸びる形で鉄球が射出された。

 が、狙った場所にスタッグはおらず、

 

『決めに入ります。よろしいですか?』

 

 スタッグがメダロッチを介して話しかける。

 アズキが、

 

「うん」

 

 と伝えると、スタッグは「分かりました」と相手の懐に飛び込み、左手の甲を高速回転させヨーヨーとして有線で射出した。

 

 何度も何度も甲を投げてぶつけ、瞬く間に胴体を破壊。

 相手が爆発を起こした。

 

「あっ、あっ、あっ」

 

 男子生徒が声を震わせる中、

 

『頭部パーツ機能停止』

 

 機械音が鳴り、相手の背中からメダルが弾きだされた。

 これはメダロット自体の機能停止を意味しており、

 

「えっと、こっ、紅下せんせ、ううんスタッグちゃんの勝ちっ」

 

 神宮寺さんが宣言。

 ロボトルはアズキの勝ちで幕を閉じた。

 

「きゃーっ」

 

 再び、女子たちはスタッグを取り囲んで、

 

「スタッグちゃんかっこいい」

「すごーい。あのヘッドなんとかよりずっとクワガタしてるー」

 

 なんてはしゃぐ。

 

「チクショー」

 

 こんな光景の中、負けた男子生徒は悔しさのあまり自分のメダロットを蹴り飛ばし、

 

「このポンコツが! やっぱりクワガタのパーツじゃないと勝てないのかよ」

「それは違います」

 

 スタッグがいった。

 彼女は自分を囲む女子たちに「すみません」と一度断り男子の前に立つと、

 

「あなたのヘッドシザースですが、パーツはとても良いものを使ってますよ。それこそ純正のKWG型と比べても遜色ない程に」

「慰めなら要らねぇよ」

 

 男子はいうも、

 

「かつてヘッドシザースは頭部を象の頭に差し替えてパーフェクトロクショウと呼ばれる光景がよくあったそうです」

「え?」

「それにキン・タローの両斧も、ヘッドシザースの両腕よりパワーがあるので代用や互換品として最有力だったと聞きますよ」

「そうなの?」

 

 きょとんとする男子。のみならず、他の生徒たちもスタッグの話に「え?」「うそ?」って反応だ。

 

「じゃ、じゃあ俺のメダロットはちゃんとクワガタなのか?」

「はい。あなたのメダロットはちゃんと名誉純正KWG型パーフェクトロクショウといって過言ではありません」

 

 スタッグは優しく微笑みかける。

 

(いや、そこはさすがに過言だと思うけど)

 

 アズキは思ったけど、スタッグにも何か狙いがあるのだろうと思い、言わないでおく。

 

「なのに勝てない理由があるとすれば、パーツではなくもっと別のところに問題があるのではないでしょうか」

「じゃあ教えてくれよ! 俺はどうしたら強くなれるんだ?」

「まずは」

 

 スタッグは転がったままのメダルを拾うと、

 

「いまの言葉を『俺たちは』に変える努力からですね。ロボトルはまずメダロッターとメダロットの絆が第一ですから」

 

 といってスタッグはこちらを向いて、

 

「ですよねアズキ」

「まあ、うん」

 

 一応アズキはうなずく。

 肯定できるだけの関係を築けてるかはともかく、少なくともアズキにはスタッグが必要不可欠な存在だし、大切に想ってるのは間違いない。

 

 色んな意味で。

 

「じゃ、じゃあその後は、次は?」

 

 さらに聞き出そうと食いつく男子。

 スタッグはいった。

 

「続きは、そうですね。次のテストで八〇点以上を取ったら教えてあげます」

「なんだよそれ!」

 

 がっくりする男子にスタッグは、

 

「これでも私は紅下先生のメダロットですから。強くなりたいのでしたら明日から授業、頑張って受けてくださいね」

 

 といって彼の頭を撫でるスタッグの姿は妙に強かに映った。

 




セーラースタッグは当作品オリジナルメダロットのため、藤岡建機先生との関係は一切ありません


[機体名]
パーフェクトロクショウ

[性別]


[パーツ]
◆頭部:トランプル(格闘/パワーハンマー//5回)
◆右腕:ライトアクス(格闘/ハンマー/)
◆左腕:グレートアクス(格闘/ハンマー/がむしゃら)
◆脚部:タタッカー(二脚/チャージファイト)
●HV:1/0/0 合計:1/1

[使用者]
初代メダロットをプレイしたみんな

[備考]
初代メダロットゾウバージョンの主役機。
ロクショウ(ヘッドシザース)の頭部をメガファントに差し替えたもの。作中では両腕もキン・タローのパーツとなっている。
人によって定義が異なる可能性があるため、詳細は割愛。
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