「作戦があるのですか?」
スタッグは驚きながら小声で言った。
アズキは、
「うん。でも、相手がまだ私たちに気づいてないのが前提。ロボロボ団が私たちに助けを呼ぶような事を言ったりして気づかれたら全力で逃げるしかないよ」
「そんな」
嫌がる神宮寺さん。でも、これだけは本当にどうしようもない。
「で、今からが作戦だけどヤマジローにはどうにかして不意打ちで誰か一体の両腕を一撃で破壊して欲しい」
「分かりました」
「ただ、機能停止でもパーツが腕についたままだったら失敗と思って。暴走メダロットの場合、その状態でもパーツを使ってくるかもしれないから」
「厳しいですね」
言いながらも分かりましたと腹をくくるボウショウさん。
「スタッグはいつも通りステルス状態になって一匹の首を刎ねて。ただこっちは両腕が残ったままだからすぐメダルも回収する事」
「はい」
うなずくスタッグ。
「これで残るは一体だから、スタッグとヤマジローで左腕パーツを完全に破壊。相手はクロス攻撃しかできないから、これで敵勢力を無力化できるはず」
なんだけど、普段こうやって指揮するキャラじゃないので、不安だし上手くいく自信さえ全くない。
でも、
「つまり相手のクロスファイア発射を許す前に三体全て機能停止か左腕の破壊に持ち込めばいいのですね? 簡単な仕事です」
スタッグが気を利かせて言ってくれた。
実際は、敵側が連携で即クロス攻撃を仕掛けてくるので、相手にパーツの使用を許した時点でこちらの負けも同然という危険な作戦だというのに。
しかも今回の暴走がアズキの過去と同じなら、暴走メダロットに倒されると暴走する側に仲間入りする危険だってあるのだ。
普通のロボトルとは違う。本当に負けたらメダルの死と思っていい。
ここで、
『マスター? きっと私を出せれば難易度はずっと下がると思うわよ』
マゼンタキャットが神宮寺さんに言ったが、当の本人はメダロッチをぎゅっと握ってメダロットを転送できずにいる。
「大丈夫だから」
アズキは、彼女の隣に近寄って、不器用ながらなんとか伝える。
「神宮寺さんに無理はさせないから。大丈夫だから」
って。
ここでボウショウさんが、
「ヤマジロー、チャージ開始」
と宣言し、ヤマジローのフォースを補充する指示を出した。ジェットブロー以外の攻撃でいく予定らしい。
この時点で気づかれる可能性があったので緊張が走ったが、幸運にも敵メダロットはこちらに気づいてない模様。ただし、
「ぐえええっ、ロボ」
ホカリスエットのうち一体がロボロボ団に直接クロスファイアを発射し、ロボロボ団がさらに一匹、床に倒れた。
どうやら残りのゴーフバレットはマスターを残して逃げてしまったらしく、まだ意識のあるロボロボ団もあと二匹だけ。
おそらく、逃げたゴーフバレットのマスターだろう。
「な゛んんで逃げるんだロボ、ごーふばれっどぉぉぉ」
と情けない声をあげている。
「チャージ完了。攻撃に入ります」
ボウショウさんが言い、ヤマジローが右腕の剣を構えた。
同時にスタッグも、
「ステルス使用します」
と言ってその場から消える。
ボウショウさんが言った。
「ヤマジロー、フレアソードをがむしゃらモードで使用」
指示を受けてヤマジローが飛び掛かった。
さすがにホカリスエットたちは気づくも、そのうち一体が防御もできずヤマジローの剣で滅多斬りにされていく。
同時に、別のホカリスエットが突然硬直し、頭部パーツが胴から外れて床に転がった。
ステルスが解除され姿を見せたスタッグはそのまま首から上の無いメダロットからメダルを抜き取って、
「まずは一体」
けど、ここで神宮寺さんが叫ぶ。
「スタッグちゃん、すぐ三機目の左を狙って」
ヤマジローの一撃が、ターゲットの右腕パーツを破壊し損ねていたのだ。
おかげでクロスセットの使用を許してしまい、三機目のホカリスエットが左腕でスタッグを狙う。
(あ、間に合わない)
どう考えても、スタッグやヤマジローが次の攻撃に入るより先にホカリスエットのクロスファイアが発射されてしまう。
作戦失敗。
「ごめん。スタッグ」
アズキはメダロッチを通してスタッグに謝る。
直後だった。
隠れていた二体のゴーフバレットが姿を現し、ホカリスエットの左腕に対空射撃の弾幕を浴びせたのは。
「~~~ッッッ!?」
暴走中でもわずかに感情が残ってたのか、ホカリスエットがこの場の誰よりも驚く。
左腕は見事機能停止に追い込まれ、それでも暴走中だったせいで強制的に左腕パーツを使おうとするも、ここでスタッグが飛ばしたヨーヨーが届く。
今度こそホカリスエットは暴走状態でも左腕が使用不可能になり、後は二機ともハッチからメダルを強引に抉り出されて機能停止した。
犠牲になったロボロボ団が転がる中、たった二名の生還を果たしたロボロボ団は、
「どう、どうだ。やってやったロボ」
「こ、これでも俺たちを雑魚と罵る気かロボ、TMZの野郎共め」
まだ恐怖に怯えたままのか、全身を震わせながら虚勢を張る。そんなふたりに神宮寺さんはうれし涙を流しながらしがみついて、
「すごいじゃないふたりとも。とってもかっこよかったわ」
「し、シラタマ様」
「お嬢様」
いま、初めてメンバーの中に神宮寺さんがいた事に気づいたのだろう。
たちまち、恐怖も興奮も冷めて冷静になっていくロボロボ団の姿が見える。彼らにとっても神宮寺さんは愛して護るべき偶像や象徴のような上司なのだろう。
ボウショウさんが言った。
「それで、どうしてロボロボ団がこんな場所にいるのでしょうか? 神宮寺の家とロボロボ団との繋がりは知られてはいけないのでしょう?」
その笑顔は、聖母のように優しそうだった。怖い。
片方のロボロボ団が、
「ひえっ」
となる中、もう片方が、
「じ、実は神宮寺の奥様より、いつTMZが攻撃してきてもお嬢様を護れるよう敷地内に隠れておけと言われておりまして、ロボ」
「そうロボ。それで実際TMZは日が暮れるタイミングで平和な会談を破棄して攻撃を」
「TMZは敵じゃないわ」
神宮寺さんが言い返した。
「パパが家の外から怪しい気配を見つけて、それを報告したらTMZが夜なのに捜索に入ってくれたのよ」
「では、どうして攻撃を」
「TMZが襲われちゃったのよ。しかも襲ったメダロットに倒されたら暴走メダロットにされちゃうらしくって」
ここで横からスタッグも、
「規模からみて、暴走メダロットに倒されたメダロットも同じく暴走すると思って間違いありません」
「え、それはおかしいロボ」
ロボロボ団が言った。
「その理屈だったら、さっき水瓶座に倒されたゴーフバレットも今ごろ暴走してるはずですロボ」
「そういえば」
誰がというより、この場のほぼ全員がうなずく。
アズキはふと、
「神宮寺邸の妨害電波のおかげかも。推測だけど暴走したTMZのメダロットはみんな屋敷が出してる電波の範囲外で襲われて暴走したんじゃ」
『なら、家の敷地内でなら仮に倒されてもまた暴走する事はないのね』
食いつくマゼンタキャット。
アズキは自信なく頷いて、
「確証はないけど」
と、言いながらアズキは倒れたロボロボ団たちに触れて、
「脈がある。よかった、みんな無事生きてるみたい」
この人たちをすぐ病院に連れて行くのは無理だけど、救急車を呼ぶためにも、まず自分たちが早く駐車場に向かわないと。
神宮寺さんは、
「よかった」
と、ロボロボ団の無事に安心した様子だったけど、マゼンタキャットを転送する気には、まだなれないようだった。
「それで、俺たちはどうすればいいロボ?」
ロボロボ団が言った。
「みんなが許可してくれるなら、俺たちも同行してお嬢様を護りたいロボだけど」
「我々じゃ足手まといっスよねロボ。メダロットもゴーフバレットでは」
「ゴーフバレット?」
スタッグが、何か気になったようで呟いた。
「ゴーフバレットはたしか男型メダロットですよね?」
「ロボ」
「そのうえ、メイン武器はたしかアンチエア」
「はいですロボ」
この受け答えを前にしてスタッグは、
「アズキ。もしかしたら、今回ロボロボ団はとてつもない戦力になるかもしれません」
なんて言い出したのだ。
アズキはきょとんとして、
「え、どうして?」
「あの魔女っ子を冒涜した筋肉対策です」
「あっ!」
そういえば今回、大勢のファンシーベールが敵側にいる可能性がある。
いまアズキたちのメダロットは全員女型で、相手の脚部特性チャームのせいで有利に戦う事ができない。
その点、味方にゴーフバレットがいたらファンシーベール戦が相当楽になるのは間違いないのだ。
アズキはロボロボ団の前に立って、頭を下げた。
「ロボロボ団さん、どうか私たちの力になってください」
ロボロボザコ が なかまに くわわった
これで第8話は終了になります
同時に、今回が年内最後の更新になる予定です
今年一年、メダロットHERMITに付き合っていただき、本当にありがとうございました
来年もどうかよろしくお願いします
良いお年を!