メダロットHERMIT   作:CODE:K

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9-3 Strike Enemy3

 

 話は少しだけ前に戻る。

 アズキの指示で三機一組で動いてたホカリスエットのリーダー機だったらしい真ん中だけ倒し、残りの二機と一緒にファンシーベールを倒したスタッグ。

 

『次のターゲットは誰ですか、アズキ』

 

 指示を待つスタッグを前にして、アズキは周囲を見渡し、

 

「大丈夫。いまのところ見当たらないから、次の指示まで適当に他の暴走メダロットを倒してくれる?」

 

 アズキは言ってから、すぐキクナに接触。

 キクナは一度メダメイドを呼び戻し、庭園内の樹木に身を隠していた。

 

 キクナはアズキに気づくとまず、

 

「お疲れ様です」

 

 けど、アズキは挨拶で返す事なく、

 

「キクナ、ちょっと変な事態が起きた」

「どうしましたか?」

「暴走ホカリスエットの姿が消えた。まだ庭園には二、三体ほどいたはずなのに」

「それは妙ですね」

 

 キクナは顔をしかめて、

 

「敗戦色が強くなったと判断して敵が撤収指示を出したのかもしれません」

「それならいいんだけど」

「いえ」

 

 キクナはよくないと否定し、

 

「ホカリスエットと第一部隊に搭載されてるメダルはTMZの主力に近いものです。回収されて今後も敵に使われたら不味い事になりますよ」

「そっか」

 

 たしかにメダルはやばい。そのうえ、

 

「ホカリスエット自体もパーツチューニングで僅かにですけど市販品より性能を高めた業務用ですから、量産されるわけにはいかないはずです」

「げっ」

 

 アレを量産されたらもっとヤバい。

 

「あれ? でも、ブルー博士は第一部隊も諦めてみんなで逃げろって」

 

 第一部隊のホカリはメダルもパーツも相手の手に渡るのは絶対避けないといけない代物なのに。どうして、それを手放せと指示を出したのだろうか。

 

「ですから、僕は逆に赤城さんクワトロさんから許可をもらって暴走メダロットを全滅させる作戦を選びました」

 

 キクナは言った。

 

「報告の時点では言う時間がありませんでしたけど、僕は裏で偽の博士と敵側が組んだマッチポンプだったのではと推測してます」

「あっ」

 

 言われてみると、自分の目と体験で得たものを照らし合わせた結果、そうとしか思えなくなる。

 仮に車に乗り込んで脱出してたら、今ごろその車自体を爆破されて全員命が無かったのではないだろうか。

 

 反応が顔に出てたのだろう。キクナはくすりと微笑んで、

 

「アズキさんは、そういうところは素直ですからね」

「ごめん」

 

 アズキは言った。そんな横から、

 

「悪いけど、俺は違うと思うよ」

 

 話に入ってきたのは、さっきアズキに感謝をしてくれた男だった。たしか第一部隊のホカリスエットのマスターのはず。

 

「襲撃を受けた時、第一部隊がブルー博士から受けた指示は直ちに屋敷に戻って君たちや神宮寺のお嬢様を護る事。つまり人命を第一に考えろって任務だったんだ」

 

 つまり、ホカリスエットの回収が目的だったら、こんな任務を与えられるはずがない。彼はそう言いたいのだろう。

 事実、屋敷内なら暴走しない事を知ってたとしたら、わざわざ第一部隊を安全圏に送る必要はない。

 

「特に襲撃犯の顔を見たなら、君たちに情報を伝える必要がある。俺もそのひとりだ」

「目撃したのですか? 最初に襲ってきた敵の顔を」

 

 驚くキクナに、男は「ああ」と返し、

 

「襲撃犯の名前は」

「ライオンモチーフのKLN-TS01ユニトリースで間違いありませんか?」

「そうそう。って」

 

 突然、樹の上から出された声に男は見上げて驚く。

 

「あれだ! あいつが例の襲撃犯だ」

 

 男が指さす先には、樹の枝に腰かけてこちらを見下ろす女型メダロットがいた。

 

 顔立ちはウォーバニットやユニトリス辺りを女性化させたデザイン。

 しかし額当ては薔薇の花冠つまりリースになっており、後頭部のパイプはリースと繋がった形で下に伸びてシスターベールを表現。

 

 胴体はシスターや女神官を連想させるローブを着ており、首にはロザリオのネックレスが飾られている。

 右腕には銀色の銃が一本。逆に左腕は銃を内蔵しないかわりに神官の杖を握っており、先端は無数の銃口で象られた薔薇のブーケになっていた。

 

 アズキの目にはまるで聖女が座ってるように映るのだけど、まさかこれが襲撃犯で敵なの?

 

「あなたに用はありません。退場していただきます」

 

 ユニトリースは別の枝に銃撃を当てると、一本が根本から折れて落下。

 

「危ない」

 

 と、アズキが手を伸ばすも遅く、男は落ちた枝の下敷きになってしまう。

 

 アズキはすぐ枝をどかそうとするも、これが結構重くて女ひとりでは難しい。

 キクナに協力を求めて、ふたりでなんとか救助しながら、

 

「どうしてこんな」

 

 アズキが問うと、ユニトリースは別の方角を見て、

 

「マスターに用はありませんけど、そのメダロットには用がありますので」

 

 視線の先には、一機のホカリスエットがいた。

 前にスタッグが助けた、いま倒れた男のパートナーメダロットだろう。

 

「マスター!」

 

 慌てて駆け寄ったところを、ユニトリースは杖の先から無数の弾丸をホカリスエットに向けて発射し、

 

「ぎゃああ!」

 

 一気にボロボロな姿になったところを、今度は右腕の銃から銀の弾丸による二発撃ち(ダブルタップ)

 

「あっ」

 

 銃弾はホカリスエットの眉間を貫き、

 

「マスター。任務失敗、助けられなくて、ごめ……な、さ」

 

 機能停止。メダロットのシステムによって一度メダルハッチが開くも、

 

「エラー、エラー発生」

 

 メダルは弾かれる事なく、再びハッチが閉じると、ホカリスエットの赤い瞳が狂気に取り憑かれたように輝きだした。

 暴走したのである。それもフィクションなら大抵は魔を祓うために使われる銀の弾丸に貫かれた事によって。

 

 ユニトリースは言った。

 

「私ならこの空間内でも倒したメダロットを暴走させられる。この情報を伝えないままなのはフェアではありませんから」

「だからって、わざわざ犠牲者を作る姿を見せるなんて」

 

 アズキは言ってから、すぐメダロッチに向けて、

 

「スタッグ、暴走メダロットはっけ」

 

 って指示を出そうとしたけど、続きを言う事ができなかった。

 

 ユニトリースは敷地内でもメダロットを暴走させてくる。もしスタッグを呼ぶのが罠だったとしたら、確実にスタッグを倒す算段があるとしたら。

 一度考えてしまったら、アズキはスタッグを呼ぶ選択ができなくなってしまったのだ。

 

「改めまして、私はユニトリース。かつてのマスターからはユニィという大事な愛称を頂いているわ」

 

 ユニィは言った。

 立ち振る舞いからは凛々しさの中に奥ゆかしさが感じられ、まさに銃を握る覚悟を決めて戦いの道を選んだ戦場のシスターといった印象を覚える。

 

 現状、やってる事は外道だけど根は高潔な性格であるとアズキは思った。

 

「紅下アズキ様、私の目的はあなたです」

「私?」

「神宮寺の屋敷とそこに暮らす全ての方々を人質として、私の現マスターの下まで同行をお願いします」

 

 アズキは周囲を見渡した。

 人数差で圧倒的に不利だったはずの戦いは、すでにTMZ・神宮寺側に大きく傾いている。

 

 けど、暴走したホカリスエットが早速クロスセットを使ったのを見て、

 

「ここで私が拒否したら、まずふたりの命がないという話?」

 

 というのも、現在キクナは倒された男の応急手当を行っていたからだ。

 ホカリスエットのクロスファイアは、一撃でふたりの人間の命を奪うだけの威力がある。生きていたロボロボ団が異常なだけ。

 

「それだけではないわ」

 

 ユニィは左腕のブーケを屋敷の窓に向けて発砲。

 銃弾の雨が、割ったガラスと一緒に屋内を襲う。しかも、その先にいたのは間違いなく、

 

「神宮寺さん!」

「おそらく、今はホカリスエットと二名のロボロボが庇ってくれたでしょう。ですけど、もし私の手によってホカリスエットが倒されたら」

 

 神宮寺さんを護るはずだったホカリスエットが、逆に彼女を襲う事になる。

 しかし直後、キクナを狙っていたホカリスエットの左腕がビームを受けて爆破した。

 

 クワトロさんのバグスティンクだった。

 

 しかもバグスティンクは破壊された窓ガラスの前に立つと背中の装甲板を正面に出して神宮寺さんたちの盾になる。

 さすがクワトロさんだ。しかも両者の位置はそれなりに距離があって、あの場所からビームを狙って当てるのは他のペアでは不可能だったに違いない。

 

 さらに、

 

「アズキ。遅くなりました」

 

 事情を察したスタッグが走って合流し、ついでにホカリスエットの背中にソードを突き刺す。

 ブルーティスと赤城くんも一緒だった。

 

 ホカリの頭部が再び機能停止すると、スタッグがそのままソードでハッチをこじ開け、中のメダルをブルーティスが抜き取る。

 スタッグが樹を見上げて、

 

「アズキ、あのメダロットは誰ですか?」

「今回の襲撃犯。ユニィって言うらしいよ」

 

 アズキが返すと、

 

「ユニィだって!?」

 

 赤城くんが驚いて、言った。

 

「おまえ、ユニィなのか? 本当にあのユニィなのかよ?」

「残念ながら本当です。大きくなりましたね、フク様」

 

 ユニィが言う。

 ここで話が繋がるのだ。

 

「な、なんでだ。なんでお前がそっち側にいるんだよ!」

 

 って、赤城くんが叫ぶ形で。

 





オリジナルメダロットであるユニトリースの設定は次回公開予定です。
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